(1) 中国経済と中国小売業
CVSの概況を検討する前に,まずはマクロ経済状況として,中国経済と中国小売業の動 向を確認しておく。
中国の国家統計局によれば,2016年の国民総生産(GDP)は74兆4127億元であり,前 年比の成長率が6.7%であった。小売業については,2016年の社会消費財小売総額は33兆 2316億元であり,前年比10.4%増であった。図5-1は,中国のGDPと社会消費財小売総額 の推移を表すものである。それをみると,近年においては中国のGDPと社会消費財小売総 額の伸び率がともに低下傾向にあるものの,中国経済と中国小売業そのものは成長を続け ていることがわかる。
また,中国における主要小売業態の市場シェアをみると,販売額ベースでは百貨店,ス ーパー,大型スーパーの市場シェアがそれぞれ 14%,11%,9%となっているのに対して,
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CVSの市場シェアはまだ2%しかない82。そして,中国連鎖経営協会が公表している『中国 便利店発展報告』によれば,CVSは近年において,販売額ベースでは15%前後の伸び率を 維持しており,しかも成長のポテンシャルがまだ大きいという83。
図5-1 中国のGDPと社会消費財小売総額の推移
出所)中華人民共和国国家統計局編『中国統計年鑑』(各年版),中国連鎖経営協会『中国 連鎖経営年鑑』(各年版)より筆者作成。
(2) 中国における CVS の概況
中華人民共和国商務部[2004]はCVSを,顧客の利便性需要を満足させることを主な目的 とする小売業態であると定義している。具体的な構成要素としては,①商業中心地域,交 通要所や駅,病院,学校,娯楽場所,オフィスビル,ガソリンスタンドなどの公共活動地 域に立地し,②営業面積が 100 ㎡前後で,③即席食品,日用雑貨を中心とする 3000SKU 前後の即時消費性,小容量,応急性のある商品を取扱い,④営業時間が16時間以上で,⑤ 即時性食品の補助的施設や様々なサービスを提供し,⑥セルフサービス方式を採用してレ ジでまとめて会計を行い,⑦主に小商圏における単身者や若者をターゲット顧客とするな どが挙げられている。
中国連鎖経営協会が公表した『2017 年中国便利店発展報告』によると,2016 年に中国 におけるCVSチェーンの数は260を超え,また市場規模としては店舗数ベースで約9.8万 店舗があり,販売額ベースで約1334億元である。
82 中国連鎖経営協会『2014中国連鎖経営年鑑』23頁による。
83 中国連鎖経営協会『中国便利店発展報告』(各年版)。
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表5-1 2016年主要CVSチェーンの概況 順
位 チェーン 運営会社名 主な展開地域 店舗数前年比
(%)
単店平均 日販
(元)
1易捷 中石化易捷銷售有限公司 全国 25000 3.3 3847 2崑崙好客 中国石油銷售公司 全国 17000 3.0 2337 3美宜佳 東莞市糖酒集団美宜佳便
利店有限公司 広東 9300 25.7 2774 4天福 広東天福連鎖商業集団有
限公司 広東 3311 17.0 2119 5紅旗連鎖 成都紅旗連鎖股份有限公
司 四川 2704 18.9 11763
6セブン-イレブン 柒―拾壹(北京)有限公 司,ほか
北京,天津,
成都,広東,
香港,マカ オ,上海,山 東,重慶
2357 8.0 11510
7十足,之上 十足集団股份有限公司 浙江 1936 18.6
-8ファミリーマート 上海福満家便利有限公 司,ほか
上海,広州,
蘇州,杭州,
成都,深圳,
無錫,北京 市,東莞
1875 22.5 9952
9快客 上海聯華快客便利有限公 司
上海,北京,
広州,大連,
浙江,江蘇
1551 -3.3
-10唐久便利 太原唐久超市有限公司 太原 1420 2.2 -14ローソン 上海華聯羅森有限公司,
ほか
上海,重慶,
大連,北京,
江蘇,浙江
1003 53.1 4723
- ミニストップ 青島迷你島便利店有限公
司 青島 65 6.6
-合計(62チェーン) 85478 10.1
上位 10社
その 他の 日系
出所)中国連鎖経営協会『2016年主要連鎖便利店企業発展状況』,『2016年中国連鎖百強』,
『2016年中国快速消費品連鎖百強』,および日系CVS各社ウェブサイトより筆者作成。
表5-1は,2016年に100店舗以上を持つ主要CVSチェーンの概況から,上位10チェー ンおよびその他の日系CVSをまとめたものである。それをみると,中国におけるCVSは 全体的に店舗数の伸び率が高く,大量拡張期であると認識できる。1位と2 位は全国展開 のガソリンスタンド型CVSチェーンで規模が大きく,店舗数の合計が業界全体の約半分を 占める。3位は広東省にあるCVSチェーンであり,ウェブサイトで掲載されている紹介や 店舗のレイアウトを見る限り,いわば日本型CVSである。一方,日系CVSとしては,セ ブン-イレブンが6位,ファミリーマートが8位,ローソンが14位にランクインしている。
ミニストップも中国市場に参入しているが,店舗数がまだ少ない。また,一部のチェーン について単店平均日販を計算すると,基本的には日系CVSの日販が地場系より高いことが 判明できる84。
84 5位の紅旗連鎖は例外として,単店平均日販が高くなっているが,同チェーンの主な業態は「便利 超市」であるため,店舗面積が通常のCVSより大きい。それは,日本のミニスーパーに近いもの
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(3) 中国における日系 CVS の出店速度と店舗数推移
日系CVSの中国進出の歴史が長く,進出地域と都市も増えつつあるが,多くの市場にお いては当初の出店計画を達成できずにいる85。また,セブン-イレブンの成都,天津,上海 および山東市場,ファミリーマートの広州市場,ローソンの上海市場,ミニストップの青 島市場では,店舗数純減の年さえみられる。
とりわけ問題なのは出店速度である。主要ブランドについて,事業スタート時から2016 年までの年平均店舗純増数を計算してみると,中国資本の美宜佳と天福はそれぞれ 489.5
と275.9であるのに対して,日系のセブン-イレブン,ファミリーマート,ローソンはそれ
ぞれ 65.5,144.2,47.8 に過ぎない。また,中国における日系 CVS のこの数値は,表 1-4
でみた日本国内における出店速度(セブン-イレブン451.7,ファミリーマート411.9,ロー
ソン299.4)と比べるといかにも見劣りがする。つまり,日系CVSは中国において店舗数
を順調に伸ばせていないのである。
図5-2 中国における日系CVSの店舗数推移
出所)各社IR資料より筆者作成。
実際に,日系CVSに絞って,中国における店舗数推移をチェーン別に表したのが図5-2 である。セブン-イレブンの店舗数がもっとも多いが,その大半は 7-Eleven Inc.社(旧
であると思われる。
85 『上海証券報』2009年5月20日付,『第一財経日報』2007年2月15日付などによれば,例えば セブン-イレブンは上海市場において,3年で少なくとも165店舗,5年で300店舗を計画していた が,進出6年目にして100店舗に達していない。ファミリーマートの場合も,広州市場において3 年で100店舗を計画していたが,それを達成したのが進出6年目であったという。
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Southland 社,現在はセブン&アイ・ホールディングスの在米子会社)からのストレート
FCで参入した香港・広東省・マカオ市場の店舗である。究極的には日系CVSと言えるが,
その経営ノウハウは,フランチャイジーのJardine Matheson Holdings と,その子会社で1981 年から運営を始めていたDairy Farm社に由来する部分が多く,日本本社に由来するのでは ない。一方,SEJ が直接に関わる市場では,店舗数が伸び悩んでいる。日本本社からのマ スターFCに基づく部分ではファミリーマートの出店が相対的に順調であり,後発者にも関 わらず,店舗数ベースでは2009年にローソンを超えている。