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CVS 業界におけるビジネスモデルの再構築と国際移転

テーマの通り,本稿の課題はCVS業界におけるビジネスモデルの再構築と国際移転を考 察することである。国内市場と海外市場の両方を同時に取り上げているが,それぞれの市 場において,CVSの発展段階が異なるため,注目するポイントも違う。日本の国内市場は 成熟市場であり,業態そのものの進化が求められているため,ビジネスモデルを再構築す る必要があると思われる。一方,海外市場においては,日系を含めてCVS業態はまだ発展 段階にある。そのため,日系CVSにとっては,日本で構築したビジネスモデルをどのよう に移転するかが課題となる。

それを論じるために,本稿では図6-1 のような分析枠組みを提示した。ここではそれに 従い,ビジネスモデルの再構築とビジネスモデルの国際移転という二つの部分に分けて,

事例から得られた示唆を論じる。

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モデルA モデルB1 モデルB2 モデルA モデルC1 モデルC2

日本 海外

FCで進出

6-1 CVS業界におけるビジネスモデルの分析枠組み(再掲)

出所)筆者作成。

(1) ビジネスモデルの再構築

言うまでもないが,CVSにとっては物流システムや情報システムにおいてイノベーショ ンを起こし,生産性を上げることが非常に重要である。そのことは,これまでのセブン-イレブン・ジャパンをめぐる実証研究からみても明らかであり,現にCVS各社もそのよう に取り組んでいる。しかし,それでも既存店成長が鈍化しており,生産性や効率性向上の 取組みだけでは日販などの経営指標を著しく伸ばすのは困難である。そのため,新たな市 場を開拓することが重要であり,いかに市場を創造するかが課題となる。

日本の国内市場について,本稿で論じてきたことは,たばこ依存の成長に限界がある以 上,CVSはそれに代わるマグネット商品を開発しなければならないこと,および来店しな い潜在的な顧客へのアプローチによる業態進化の重要性である。CVSは,それらを通して 新しい市場を開拓し,新たな成長軌道を切り開けるかどうかに問われている。本稿で取り 上げた事例でみると,カウンターコーヒーは小商圏における気分転換やリラックスといっ たニーズを満たし,ある程度の新市場を開拓しているだけでなく,たばこに代わるマグネ ット商品にもなりうると考えられた。一方,移動販売と宅配事業はこれまでCVSの主要客 層でなかった高齢者や働く女性などをターゲットとしており,それを通して業態の進化を 図っているが,事業そのものはまだ実験段階にあり,定着までの課題も多いことが判明さ れた。

また,本稿の分析枠組ではビジネスモデルの再構築について複数のパターンを提示した が,それを具体的な事例と照らし合わせることで,いくつかの示唆が得られた。まず,第

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Ⅲ章で検討したように,カウンターコーヒーの展開は業態そのものを変化させることなく,

しかも従来の事業システムを活用している。そのため,CVSにおけるカウンターコーヒー の取組みは,図 6-1 で言えばモデルA のままでの新たなマグネット商品開発に相当する。

一方,第Ⅳ章で検討した移動販売と宅配事業の事例を通して,来店しない顧客にアプロー チすることで,何らかの追加によって業態が進化する可能性が示唆された。そのため,CVS における移動販売と宅配事業の事例は,図6-1におけるモデルB1またはモデルB2に相当 するものになるだろう。ただし,移動販売と宅配事業がまだ模索段階にあるために断定は できないが,現状ではモデルB1に近い部分とモデルB2に踏み込んでいる部分があると思 われる。仕組みの検討でみたように,移動販売事業や宅配事業のうちお届けサービスの部 分は,店舗に納品された商品を店舗の外で販売するか,または店舗で販売した商品を顧客 の自宅等まで届けるため,これまでの事業システムを活用しながら,売り方だけを工夫す る側面が強く,どちらかというとモデル B1 に近いのである。それに対し,宅配事業のう ち物流センターを拠点とする部分は,店舗を経由しないゆえに,業態の部分で新たに追加 されたものに合わせて,事業システムのもっとも川下の部分を修正することになる可能性 が高く,モデルB2に相当するかもしれない。総じていえば,業態を進化させると同時に,

必要に応じて事業システムを部分的に調整することこそが,CVS業界に求められているビ ジネスモデルの再構築であると考えられる。

(2) ビジネスモデルの国際移転

一方,ビジネスモデルの国際移転では,事業システムやオペレーションの移転がポイン トである。日本において,FCシステムの導入による店舗開発はこれまでの成長の根幹とな っている。そのため,本稿では出店行動に焦点を当て,FCシステムの国際移転の様相を検 討した。

日系CVSにとって,国境を越えたマスターFCの場合は,現地事業に対するコントロー ルだけでなく,現地のビジネスパートナーとの協業も課題となる。また,時系列でみた時 に同じく合弁 FC であっても,ビジネスパートナーとの関係によって,出資比率と経営上 のイニシアチブが変化するケースも観察される。一方,サブFCの部分では,FC契約の日 中比較で判明したように,日系CVSは中国においても,日本のような粗利分配方式に基づ くFC契約を導入している。ただし,中国における事業リスクを考慮し,FC契約では一定 額の保証金を設定している。とはいえ,FCシステムの国際移転において現地の事情に合わ せて修正しているものの,現状では十分な成果を出していない。第Ⅴ章でみたように,日 販が低いことは,日系CVSが中国市場においては市場を創造できていないことを意味する。

マスターFCとサブFC の両方から考察した結果,日系CVSにとって,今後においてはさ らにビジネスパートナーの力を活用し,現地の事情に合わせてオペレーションや出店の仕 方を調整する必要があると思われる。

本稿の分析枠組み(図6-1)で言えば,中国における日系CVSの出店戦略の事例は,モ

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デルAを海外市場に移転した部分に相当する。しかし,第Ⅴ章で検討したように,中国に おける日系CVSの事業展開が順調に進んでいないことは,ビジネスモデルの単なる移転で はなく,現地に適応する必要があることが示唆される。ただし,実際に業態だけが変わる モデルC1になるのか,それとも業態も事業システムも変わるモデルC2になるのかは,本 稿の事例だけでは判断できないものであると思われる。