第 7 章 実験 51
7.3 両パラメータの同時設定
0 5 10 15 20 25 30 35
SPECweb大 SPECweb標準
スループット [MB/s]
デフォルト設定 持続的接続時間のみ設定 最大クライアント数のみ設定 2つのパラメータを同時設定 最適設定
(a)スループット
0 2000 4000 6000 8000 10000
SPECweb標準 SPECweb大
平均応答時間 [ms]
デフォルト設定 持続的接続時間のみ設定 最大クライアント数のみ設定 2つのパラメータを同時設定 最適設定
(b) 平均応答時間
図 7.11: 両パラメータの同時設定結果
一方,平均応答時間は両パラメータを同時設定することで最小となっている.
図 7.11(b)では,デフォルト値の場合が見かけ上,最小の応答時間となっている.
しかし,これは背後で66.2接続/秒の接続失敗が発生しており,他に比べ遙かに少 ない接続数に対してしか処理を行っていないためである.もし接続のタイムアウ トを無限大とすれば,デフォルト値の平均応答時間が最大となる.他の設定の場 合には,接続失敗は全く発生していない.
7.3.2 ワークロードの変化に対する適応
ワークロードの変化に対する適応性を見るため,実験を行った.実験時間は 120分であり,途中でワークロードを2回変化させている.0分から40分までは SPECweb標準を使用し,40分から80分まではSPECweb大を使用する.80分以
降はSPECweb標準を再び使用した.
実験結果では,最適設定の結果を参考のため示す.これは実験中の結果ではな く,事前の実験で取得した結果である.
パラメータ値の時間的変化
図7.12に持続的接続時間と最大クライアント数の時間的変化を示す.図から,本 機構がそれぞれのパラメータ値を,ワークロードの変化に応じて適切に設定して いることがわかる.実験開始時点では,パラメータの値はそれぞれ,持続的接続時 間は15秒,最大クライアント数は50であった.最初のSPECweb標準ワークロー ドに対する設定に約12分必要とした.設定されたパラメータ値はどちらも最適設 定に近い.本機構は40分でワークロードの変化を検出し,パラメータ値の設定を 開始している.設定にかかる時間は持続的接続時間では約2分,最大クライアン ト数では約10分である.最大クライアント数の設定に多くの時間を要する原因は,
応答時間の正確な測定に多くの時間を必要とするためである.ワークロードが80 分に再び変化すると,両設定機構はこれを検出し,設定を開始している.
図7.12(a)の持続的接続時間の設定では,設定の完了後,細かく上下に変化して
いる現象が見られる.これは,TCP接続の切断により現在の持続的接続時間を超 えるリクエスト待機間隔を測定することができないために,3.3.3節の方式による 持続的接続時間の修正が繰り返し行われるためである.この修正をどの程度頻繁 に行うかは,設定機構のadj の値(式 (3.3)を参照)で調整することができ,この adj の値は平均的な持続的接続時間の値に影響を与えない.
また,提案機構はパラメータの設定に約10分程度の時間を要しているが,こ れは他の自動設定手法と同程度の設定時間である.文献[49]では,設定開始から 20分間の自動設定の振る舞いを観測し,設定方式を評価している.文献[21]でも,
1つの設定を試行するために数分程度の時間を必要とすることが述べられており,
サーバ性能の正確な測定のために多くの時間を必要とすることは広く知られてい る.本機構でも,回帰直線は過去3分間の測定結果から計算しているが,3分以下
0 500 1000 1500 2000
0 20 40 60 80 100 120
持続的接続時間 [ms]
経過時間 [min]
提案機構
SPECweb標準 SPECweb大 SPECweb標準
設定完了 設定完了 設定完了
設定開始
設定開始
最適設定
(a)持続的接続時間
0 200 400 600 800 1000 1200 1400
0 20 40 60 80 100 120
最大クライアント数
経過時間 [min]
提案機構
設定完了 設定完了
設定完了 設定開始
設定開始
最適設定
(b) 最大クライアント数
図 7.12: 両パラメータを同時設定した場合のパラメータ値の時間的変化
では最大クライアント数の設定に失敗することがあった.
サーバ性能の時間的変化
図7.13に,スループットと平均応答時間の測定結果を示す.どちらの結果も本 機構の結果は最適設定の結果に近い.実験が開始された時点では,適切でないパ ラメータ値のため,スループットは極端に低い.両パラメータの設定が12分前後 に終了すると,スループットは大幅に改善されている.一方,応答時間は低く抑え られたままである.図7.13(b)では,設定完了の直前に応答時間の若干の増加が見 られるが,これは最大クライアント数の微調整による影響である.ワークロード が40分に変化すると,応答時間が急激に増加している.一方,スループットは見 かけ上向上しているように見えるが,非常に負荷が高い状態となっており,サー バが停止に至る危険がある.これに対して,本機構は速やかにパラメータ値の設 定を開始し,10分前後で終了している.その間,スループットは一時的に低下す
0 5 10 15 20 25 30 35 40
0 20 40 60 80 100 120
スループット [MB/s]
経過時間 [min]
最適設定提案機構
SPECweb標準 SPECweb大 SPECweb標準
両パラメータの
設定が完了 設定完了 設定完了
(a)スループット
0 1000 2000 3000 4000 5000
0 20 40 60 80 100 120
平均応答時間 [ms]
経過時間 [min]
最適設定 提案機構
設定完了 設定完了 設定完了
最大クライアント数の 値が大きいために 非常に長い応答時間
(b) 平均応答時間
図 7.13: 両パラメータを同時設定した場合のサーバ性能の時間的変化
るが,その影響は最小限に抑えられている.設定が完了すると,スループット,応 答時間ともに最適設定の結果に近くなっている.ワークロードが80分に変化する と,最大クライアント数の値が小さいためにスループットが低下する.本機構は 直ちに設定を開始し,スループットと応答時間がともに回復している.
この実験とは異なりワークロードが徐々に変化した場合,持続的接続時間の設 定ではワークロードの変化に細かく追従し,最大クライアント数の設定では変化 がある程度蓄積し,前回の設定完了時点の標準偏差から大きく離れた場合に設定 が開始されることが期待される.最大クライアント数の設定機構でも,設定開始の 閾値の値を変えることでより細かく設定することも可能であるが,サーバの安定 性を向上させる目的から,現在はサーバ上のコンテンツの更新などそれほど頻繁 に起こらない事象によって最大クライアント数を変えることを想定しており,判 定のための閾値が大きく設定されている.