モデルを意識した地学教材,とくに地震分野
国際宇宙ステーションを活用した 21 世紀型科学 教育
−理科教員 の人的ネットワークで行う新たな 天文教育の試み
高田 淑子゜[1],長島康雄[2],伊藤 芳春[3],佐々木 佳恵[4], 松下 真人[5],斎藤 正晴[6]
[1]宮教大・地学,[2]仙台・天文台,[3]宮城教県育研修センター
[4]宮教大・T 課程・理科教育,[5] 宮教大 地学,[6]宮教・
教・理科
地学教育の根幹は、大地・星空などの「自然を観察する」ことであ る。しかし、このような直接的な学習は、時間的制約や安全性などの 制約下で遂行されざるを得ない。教員養成学部の小学校、中学校理科 免許取得課程の9割の学生は高校地学を履修していない。また、新課 程では、天文分野では、小学4年生で月の満ち欠け、中学3年生で惑 星の運動等を学習するが、「月が地球の衛星である」という記述が、
高校地学まで登場しない教科書もある。理科教員免許を取得する学生 自体、大学カリキュラムにおける地学関連の必須取得単位数は限られ ており、理科の教員を送り出す側としても地学分野は課題が山積して いる。
このような状況下で、宮城教育大学惑星科学研究室、仙台市天文台 と宮城県教育研修センターが中心となり宮城県内等で天文に興味を 持つ教師らとともに、星空観察ネット勉強会と称した勉強会等を実施 している。さらに、教員志望の学生が仙台市内の小中学校で星空観察 をテーマにした授業を展開する支援をし、総合学習における「星空環 境(光害)調査」、生活科目における「七夕とお星さま」など、理科 以外の授業でも天文分野を展開している。
その一例として、宮城教育大学インターネット望遠鏡による昼間の 星空観察の授業を紹介する。天文分野の授業展開の困難さは、夜に観 察する星を昼間の授業中に解説しなければならないことである。授業 の流れの中でインターネット望遠鏡を利用することを念頭におき、宮 教大インターネット望遠鏡で昼の星を観察する授業を、中学校理科の 日周運動の授業、総合学習の星空環境調査で実施した。
インターネット望遠鏡システムの構築には、情報システムの知識と 天文の知識が養われるため、理科教員としての教養の育成に役立つ。
さらに、授業実施のために、生徒・児童とのコミュニケーションのみ ならず、学校教育、通信会社など様々な関係者とのコミュニケーショ ンが必要となり、教員としての素養の育成に貢献している。現在では、
学生が主体となったインターネット望遠鏡の構築・運用・授業展開を、
教員側が支援する形式で実施している。ただし、インターネット望遠 鏡は実体験か仮想体験かという問題が残り、授業を実施する場合には、
一連の授業の中に、天体望遠鏡による実際の夜空の観察も取り入れて いるのが現状である。今後、新たなインターネット望遠鏡の活用方法 を開拓する必要がある。
J035-003 5
月9
日 16:37 - 16:48国際宇宙ステーションを活用した
21
世紀型科学 教育川上 紳一゜[1]
[1]岐阜大・教育
私たちは「触れる地球」に表示するコンテンツとして,地球環境や
地球史情報をweb化する作業を行ってきた.このコンテンツは,最新 の研究現場の雰囲気や研究を行っている研究者に光を当てたもので,
現在進行中の「科学(science)」をコンテンツ化することを特色として いる.また,「触れる地球」を触って興味や関心が高まった学習者に,
さらに深い情報を提供できるように工夫し,インターネットで利用で きるようにしようという意図で構築が進められた.その後,高校教科 書「理科総合B」の編集に関わり,関連する情報もweb化することに なった.さらに小中学校の理科で学習する内容についても,さまざま な画像を集めてweb化し,実際の授業での活用の仕方や補助教材の作 成などを通じて小中学校の先生を支援するようになった.教材の開発 に当たっては,実際に授業計画を立てて実践し,開発した教材を評価 し,改良を加えている.また,現職教員を集めた研修や大学の主催す る公開講座で,開発した教材を紹介し,利用者の拡大のために努力し ている.web教材はさまざま事象を紹介した画像を多く集め,児童・
生徒あるいは教師に実際に自分の目で観察するように注意を促すも のであったり,観測や観察結果を確認することを念頭においており,
天文分野における指導では,児童や生徒一人ひとりに天体望遠鏡(ス ピカ)を与えて継続的な観察を行って,観察事実をモデルで確認して 理解を深めるような指導を行っている.こうして私たちのところでは,
大学研究室と学校現場の連携実績が増えてきた. 2003年からは人工 衛星の観測を取り入れた星座学習の実践を開始した.人工衛星の軌道 は決まっているので,軌道情報をもとに人工衛星がやってくる方位や 時間をプラネタリウムに表示するソフト「人工衛星観測ナビゲータ」
をインターネット上で公開し,その使い方の講習を含めて観測会を開 いている.人工衛星観測会に参加した子どもたちは,人工衛星を見つ けたとき,移動の速さや明るさに感動しており,有効な教材であるこ とがわかった. 人工衛星の飛来する方向や時刻は,日によって異な るため,天体の日周運動,季節による移り変わり,月の満ち欠けなど の現象にひとりでに気づくことになる. 人工衛星を目撃した子ど もたちは,その人工衛星がどのようなものであるか興味を抱く.そこ で,「人工衛星観測ナビゲータ」には世界地図に軌道を表示した画面 や,国際宇宙ステーションの構造,スペースシャトルの運行,日本の 実験棟「きぼう」の構造,そこで行われる実験などを紹介したものを 追加した.国際宇宙ステーションが通り過ぎたとき,そこに宇宙飛行 士が搭乗していることを説明すると,国際宇宙ステーションからみた 地球や宇宙はどんなだろうと想像してみたようとする参加者がいる.
国際宇宙ステーションから見える地球の姿をその場で映像で示せた ら国際宇宙ステーションへの親近感がさらに高まるに違いない.そう したソフトウエアはデジタル世界地図と人工衛星の軌道があれば計 算し,インターネットで利用できるようにすることができる.私たち の現在の課題は「地球観測ナビゲータ」と名づけたこのソフトを早急 に開発し公開することである.このソフトを用いて学校で授業を行お うとする日を入力して国際宇宙ステーションの位置を計算し,その時 に見える映像を検索する.国際宇宙ステーションの「きぼう」実験棟 の曝露部に地球観測カメラが設置されていれば,得られた画像を教室 へ転送し,シミュレーションの結果と比較しながら学習を進めたら面 白いのではないだろうか.そもそも竹村真一教授らの「触れる地球」
は,直径1mのマルチメディアで地球情報を表示し,私たちの住むか けがえの地球の姿を宇宙飛行士になった気分で体感しようというね らいがあった.一方,小中学校の理科教材開発の取り組みが広がって,
人工衛星の観測をテーマとして野外へ出て天体の学習をし,人工衛星 を通じて宇宙活動へ興味を高め,「地球観測ナビゲータ」で宇宙飛行 士の気分を味わうという科学教育の構想ができあがった.どちらも宇 宙から地球を眺めて,見える範囲にどのような学習情報がちりばめら れているか探すもので,より深い学習への入り口である.当初の構想 が,一貫した学習メディアとして有機的に結びつき出した.さらにそ の先にある21世紀型科学教育の方向性は,地球そのものを生きた博 物館にすることであり,取り組むべき課題は,充実した地球情報を緯 度・経度座標から検索していけるコンテンツの開発である.
J035-004 5
月9
日 16:48 - 16:59地震防災力向上のための中学生を対象とした教 育支援システムの試作
森岡寛江゜[1],翠川 三郎[1]
[1]東工大・総理工・人間環境システム
1. はじめに
阪神・淡路大震災から9年が経ち、市民の防災意識を向上させるこ とは難しくなりつつある。地域の地震防災力向上のためには防災教育 が必要であり、子供のうちから自発的に防災について考える機会があ れば、将来いつ起こるか分からない大地震に対し、防災対策を担う世 代として、以前より十分な防災意識を形成できると考えられる。本研 究では、中学生を対象とした効果的な地震防災教育について検討し、
それに基づいた教育支援システムを試作し、その有効性を評価した。
2. 教育支援システムの試作
まず、中学生を対象に有効な防災教育として、学習内容を整理し、
教育方法を検討した。
阪神・淡路大震災での緊急対応における問題点を調査報告書や文献 等から調査したところ、市民は地震直後の身を守る行動や、消火・救 助・避難などの緊急対応で適切な行動ができなかったことが分かり、
中学生には、「自分の身を守るための対処法」、「消火・救助活動」や
「避難活動」、「避難所生活」に関する行動や知識を学習させることが 必要である。
また従来の防災教育は、教育を受けた直後の防災意識や防災体制の 向上への効果は現れるが、持続しにくい。そこで、中学生が防災に対 して興味をある程度長く持てるよう、自分の問題としてイメージしや すくし、現実の災害に遭った時に適切な防災行動がとれることを目標 とした、教育支援システムを試作することにした。
システムはHTMLとJavaScriptを用いて作成しCD-ROMで閲覧可 能である。コンテンツは以下の3段階構成となる。
第1段階では、生徒の意識にゆさぶりを与えるために、兵庫県南部 地震の震動中のビデオ映像や自分の住む地域(横浜市)のハザード マップ(震度、崖、液状化)を見る。
第2段階では、自分の町で大地震が発生したというストーリーの主 人公になる体験シミュレーション(木造編、マンション編、通学路編、
学校編)を見る。ストーリーの中で誰もが負傷したり失敗したりする 状況を与え、そこで何をしておけば良かったのかを問うことで考えさ せ、正解して話の続きへ進む。また、シミュレーション終了後にさら なる調べ学習を自主的にしてもらうよう、各ストーリーの復習編を設 けた。
第3段階では、自主的に防災について考えられるよう、防災マニュ アル(A4サイズ2枚、穴埋め式)を作成する。家族と一緒に話し合 いをしたり、生徒同士で情報やアイデアを交換するという行動に発展 することで、防災への興味をある程度長く持つことを目標とする。
3. 教育支援システムの試行
試作した教育支援システム(CD-ROM)が、中学生の防災意識を向 上させ、防災行動や防災対策につながるのかを確認するために、横浜 市の中学校において実験授業とアンケート調査を行った。参加した生 徒は14人(3年生6人、2年生1人、1年生7人)であり、うち13人 は情報科学部員である。実験授業は部活動の時間に行い、生徒1人に 対してパソコンを1台使用した。
実験の流れは、授業内で防災意識に関する事前アンケートを行った
後にCD-ROMで学習させ、授業後1週間の間に各自CD-ROM内の復
習編を見て、その後家族と防災マニュアルを作成し、最後にCD-ROM の感想とその後の防災意識や防災行動に関するアンケートを行った。
その結果、3〜4割程度の生徒の防災意識がやや上がったことが確認さ
れた。CD-ROMの内容に関しては、86%が理解しやすい、79%が役に
立つ、72%が面白い、使いやすいと回答された。生徒の意識向上と CD-ROMの感想との相関を見たところ、理解しやすさが生徒の危機感 の向上にやや関係があったが、面白さによる防災意識や防災行動への 効果は見られなかった。
また、実験後の防災行動の実施率を見たところ、復習編はほぼ全員 の生徒が行ったが、その次の段階の家族と防災について話す、防災マ ニュアルの作成、及び防災対策の見直しを行った人は半数弱であった。
そこで、防災行動に結びついた要因を調べるために、防災意識や CD-ROMの感想との相関関係を検討した。その結果、家族と防災につ いて話す行動に至るには、実験後の関心度が高い事に関係がみられ、
CD-ROMの使いやすさとやや関係がみられた。また、防災マニュアル
の作成は、実験による危機感の向上とCD-ROMが役に立つと思う事 とやや関係がみられた。そして、防災対策を見直す行動に発展するに は、実験後の危機感と関心度が高い事にやや関係がみられた。した がって、使いやすさの工夫や役に立つと思うコンテンツの充実が改善