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世界へ発信する日本の助産

~アジアからアフリカ地域に向けて~

座長:安 達 久美子(首都大学東京 人間健康科学研究科 助産学専攻科)

   江 藤 宏 美(長崎大学生命医科学域)

 日本において、産婆の制度・教育が始まって約140年となる。当初、産婆の教育は、ドイツを参考にして 行われた。そして、40年後には、産婆教育が全国各地で行われるようになり、新しい知識と技術をもった産 婆は、新産婆と呼ばれ、地域における母子保健の要の存在となった。第二次世界大戦後、産婆から助産婦、

そして現在の助産師と名称は、変わったが、この140年の間に伝承されてきた智を、助産師は受け継ぎ、女 性とその家族に寄り添い、母子保健の向上と推進という大きな役割を果たしてきた。そして、現在の日本に おける周産期保健指標の向上の一翼を担ってきた。

 このような先輩諸氏から受け継いだ智と現代の周産期医療や母子保健における最新の智を活かし、世界の 母子のための活動、支援を行っている4名のシンポジストの皆様から、各国における母子や助産の現状、実 際の活動、課題や今後の展望についてお話しいただく機会を設けた。今回は、特に、モンゴル、タンザニア、

ベトナム、ミャンマー、ラオスといった、母子保健の発展新興国の状況を伺う。

 日本流のきめ細やかなケアと母子に寄り添う姿勢が、他の国々に受け入れられ、今後ますます、活動が充 実したものとなるよう願うとともに、会場に参加いただく皆様が、今度は、活動する側になって、さらに日 本の助産を世界へ発信するための一歩となることを願う。

市民公開講座/シンポジウム/ワークショップ/交流集会

3 月 3 日(日)9:00~10:30 第 2 会場 シンポジウム 2

座長:安達久美子(首都大学東京 人間健康科学研究科 助産学専攻科)

江藤宏美(長崎大学生命医科学域)

日本助産師会とモンゴル助産師会の Twinning Project の成果

佐 藤 洋 子(九州大学大学院医学研究院保健学部門)

【学歴】

2009 年 3 月  独立行政法人国立病院機 構九州医療センター附属 福岡看護助産学校 卒業 2015 年 3 月  九州大学大学院医学系学

府保健学専攻看護学 修 士課程 修了

【職歴】

2009 年 4 月  九州大学病院総合周産期 母子医療センター母性胎 児部門

2016 年 4 月  九州大学大学院医学研究 院保健学部門 助教

 モンゴルは人口約306万人(横浜市370万人)、国民の約4割が遊牧 民である。分娩施設から遠方に住んでいる妊婦は、分娩間際に地区で割 り振られている病院へ入院する。1990年代、妊娠分娩管理が産科医主導 型となり、約10年間助産師教育が中止された。周産期死亡率上昇等の 結果より、助産師の必要性が再認識され、2001年より助産師教育が再開 した。しかし、都市の助産業務の大半は分娩室勤務の分娩第二期からの 介助であった。また、元法務大臣南野知恵子先生のご尽力により2006 年にモンゴル助産師会(MMA)が設立したが、2014年まで産婦人科医 が会長を務め、助産師教育も未だに産婦人科医に頼っていた現状があっ た。

 そこで、日本助産師会(JAM)とMMAは共同して、2015年よりMMA 組織強化を目的としたICM Twining Projectを開始した。モンゴル助産師 たちが課題としてあげた妊婦肥満の現状解明に取り組むため、全国調 査を実施し介入方法を見出すアクションリサーチを展開した。PDCAサ イクルを用いて、①母子保健の現状調査、②妊婦肥満の意識調査(助産 師・母親を対象とした質問紙調査)、③助産師を対象としたWorkshop &

Seminar開催、④加盟団体能力評価ツール(MACAT)を用いた組織評価、

を1年ごとに繰り返し行った。

 2016年には共同考案した妊婦肥満予防パンフレットを全国に8万部無 料配布した。同年8月のWorkshop & Seminarでは、各々の施設でそのパ ンフレットを用いてどのように保健指導するか等について話し合った。

助産師たちから出た意見をもとに、2017年には妊婦肥満予防スマホアプ リを導入した。最終評価として、助産師、母親共に妊婦肥満の認識が増し、

何よりも母親にとっては正確な情報が得られることで助産師への信頼が 高まった。また、助産師も正確な情報で妊婦に指導できることで、専門 職としてのアイデンティティを確信していた。

 MMAは、この全国調査やTVカンファレンス等を利用し、理事会と 各県支部の連携、質の向上等の組織強化を図り、改善すべき助産業務を 模索した。2014年にMMA会長は助産師に委ねられ、2016年に行われた 初めての総会で助産師の会長が正式に承認された。また、2017年には助 産師業務に関する法を改正するに至った。これらの活動は助産師の社会 的役割向上の一助となり、2018年度のMACATの全体平均は2015年度 より2.5倍上昇した。

 本講演では、これらJMA & MMA Tinning Projectの3年間の成果を報 告する。

市民公開講座/シンポジウム/ワークショップ/交流集会

3 月 3 日(日)9:00~10:30 第 2 会場 シンポジウム 2

座長:安達久美子(首都大学東京 人間健康科学研究科 助産学専攻科)

江藤宏美(長崎大学生命医科学域)

タンザニアの知と世界の基準の融合:和(やわらぐ)の文化を活かした助産師教育

新 福 洋 子(京都大学大学院医学研究科人間健康科学専攻家族看護学講座)

【略歴】

【主な学歴および職歴】

2002 年 3 月  聖路加看護大学(当時)卒 2006 年 8 月  イリノイ大学シカゴ校大 学院看護学研究科博士課 程入学

2010 年 5 月 同大学院修了

2010 年 6 月  聖路加看護大学 看護実 践開発研究センター 博 士研究員

2010 年 8 月 まんまる助産院 助産師 2011 年12月  世界保健機関東南アジア

地域事務局 インターン 2012 年 4 月 聖路加国際大学 助教 2017 年 3 月  日本学術会議若手アカデ

ミー 特任連携会員 2017 年12月  同国際分科会委員長 2018 年 3 月 同副代表

2018 年 4 月  京都大学大学院医学研究 科人間健康科学専攻家族 看護学講座 准教授 2018 年5月  Global Young Academy

執行委員

【その他記載事項】

タンザニアの妊産婦死亡削減のため、

助産ケアの改善や妊娠期教育の開発に 取 り 組 む。 世 界 保 健 機 関 と 連 携 し た Early Essential Newborn Care に 関 す る 動画作成、セミナー開催などを実施。

2012 年  第一回「明日の象徴」看護・

保健部門受賞

2016 年  第 31 回国際保健医療学会学 術大会ベスト口演賞

2017 年  World Science Forum に世界中 の若手科学者から 20 名の代 表の一人として招待される 2018 年  International Network for

Government Advice(INGSA)

Pre-conference workshop 実 行委員長

2017 年 -2019 年

     JICA 草の根技術協力事業として タンザニア農村部の思春期教育 を行う移動図書館を実行中

 日本人の心に根付く「和を以て貴しと為す」とは、派閥や党派の対立 を深めるのではなく、和(やわ)らぐの状態を作って、皆の意見を聞いて、

納得いくまで議論をして物事を決めなさい、という意味を持つ。本演題 では、海外をフィールドとした助産研究において、対象や共同研究者と の対話を大切にしながら進めてきた研究活動を紹介する。

 タンザニアの妊産婦死亡率は、2015年に出産10万対556と、改善が 見られていない。主な原因は、産後出血、子癇及び子癇前症、感染症で あるが、多くが適切な時期に適切な医療にアクセスできれば重症化や死 亡を回避できる。妊婦自身が妊娠中に健康の維持向上へ向けセルフケア できること、また危険なサインに気づき、合併症が深刻化する前に医療 にアクセスすること、そのために助産師が必要な情報提供やケアをする ことが求められる。

 博士課程で人類学者に師事したことから、異国で研究をするのであ れば、最初はその文化や考え方を知るべきであると考え、博士研究で出 産直後の女性の声を聞くインタビュー調査を実施し、タンザニア農村部 の女性の出産経験を記述した。女性たちの中で、出産に伴う死に対する リスクの高さから、多くが安全に出産できたことに満足をしていた。し かし、陣痛中にサポートを受けられないことで、「もう出産したくない」

と語る女性もいた。農村部の出産数の多さに対し、助産師の数の少なさ による過重労働の問題、助産師と女性の関係性について、改善の必要性 が浮かび上がった。

 助産師の育成数を増加したい場合、育成課程の増加と、保健省でのポ ストの承認が必要となる。タンザニアのムヒンビリ健康科学大学の助産 学教員レシャバリ氏との協働から、タンザニア初の助産学修士課程が誕 生した。修了生は保健省の他、病院の看護部長や看護助産協会に就くこ とも可能となった。

 開発途上国では援助機関が主導して研修を行う場合が多いが、一時 的に改善しても、モニタリングと評価を持続しない限り、やがて忘れ去 られてしまう。持続するには、助産師各々が主体的に学ぼうという意思 を持ち、必要な教材や情報にすぐアクセスできることが重要である。そ うした意図から助産教育アプリの構想に至り、ケアに最も大切な「なぜ

(Why)」と「どのように(How)」を、イラストを用いてわかりやすく学 ぶツールを開発した。ダウンロードすればどの地域の助産師にも行き渡 る汎用性も重視した。タンザニア助産師に相談し、ベータ版の使用感を 確認したところ、「楽しい!これなら疲れていても読みたい」と語った。

 医療の質を高めるにあたり、「これができていない」という指摘はあっ てしかるべきであるが、現場の医療者のモチベーションの向上には、指 摘に起因する対立を起こさず、解決策の提示が必要である。和らぐ、つ まり争うことなくお互いの意見を話し合い、理解しあうことで、より効 果的な解決策に至ると考えている。

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