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上海市の下水道管路管理に関連する法律と基準及び規定には、地方法規、規定、基準 と技術規定がある(表3-3-3)。1989年に上海市は「排水管理方法」を発表し、国内で 比較的に早く下水道関連の地方規定を公布する地方政府の一つとなっている。1996 年 に、「上海市排水管理条例」が正式に公布され、上海市排水管理の法体系を更に充実さ れる結果となった。

表3-3-3 下水道管路施設管理に関連する法規・基準と規定

分類 名称 コード

地方法規 上海市排水管理条例 —

地方規定 上海市下水道施設使用料徴収管理方法 — 上海市合流汚水治理施設管理方法 — 業界基準

技術規定

城市下水道への汚水排出基準 CJ 3082-1999 城鎮排水管渠とポンプ場維持管理に関する技術規定 CJJ 68-2007 排水管路維持管理安全に関する技術規定 CJJ6-2009 地方基準

技術規定

城市下水道への汚水排出基準 DB31/445-2009 上海市公共下水道管路CCTVとソナー調査に関する

評価技術規定 —

城市道路マンホール蓋に関する技術規定 DB31/T 324-2004

本報告書の後部には、上記の規定や基準の原本を参考資料として添付されている。そ の中の代表的な法規及び規定について、以下のように紹介する。

 上海市排水管理条例

「上海市排水管理条例」は、1996 年に最初に公布され、現行版は 2006 年までに三 回の修正を行ったものである。この条例には、下水道施設の計画、建設、運営及び維持 管理方法について詳細に規定し、地方法律の形で上海市公共下水道の管理及び経営方式 などを明記した。

下水道施設の維持管理について、第32条項にその責任主体を次のように規定した。

①公共下水道関連施設については、入札方式でその施設の維持管理業者を決めなけれ ばならない。

②道路計画区域外の住宅地内の下水道施設は、住宅管理部門や業者がその施設を管理 する責任がある。

③独自の排水施設は、その所有者或いは所有者が委託した管理業者がその施設を管理 する責任がある。

維持管理者は、下水道施設に対して必要な維持管理業務を実施するとともに、市水務 局或いは区(県)下水道行政の主管部門の管理と監督を受けなければならない。

条例の中に、公共下水道の施設管理業務は入札方式でその業者を選ばなければならな いと規定されているため、条例が公布された後、各区と県で、施設維持管理会社が相次 いで成立し、行政管理監督と業務実施が完全に分離されることとなった。

 上海市下水道施設使用料金徴収管理方法

「上海市下水道施設使用料金徴収暫定方法」は1989年に初めて公布された。その後、

意見徴集や改正などを経て、1995 年に正式に「上海市下水道施設使用料金徴収方法」

として公布された。

この地方性規定の中には、上海市城市排水公司が下水道料金の徴収と管理を行うこと を明記するとともに、下水道料金の徴収額は市物価局、財政局や市政局などの関係部署 が共同で提案し、市人民政府の批准が必要であることが記述されている。また、下水道 料金は下水道施設の建設、維持管理の用途に限定して使用しなければならないとされて いる。

 下水道管路施設維持管理安全に関する技術規定

2009年に住房と城郷建設部(以下は建設部と略す)は、1985年に制定した旧規定を 改正し、新たに「下水道管路維持管理安全に関する技術規定」を公布した。規定の内容 には総則、用語、基本規定、維持管理作業、管内作業、安全設備と用品、事故時の応急 救援などが含まれている。第4部の維持管理作業編には、作業場の安全確保、マンホー ルの開け閉め、管路調査、管路疎通、清掃作業及び管路・付属構造物のメンテンナンス について詳細に規定した。

 上海市公共下水道管路CCTVとソナー調査に関する評価技術規定

「上海市公共下水道管路CCTVとソナー調査に関する評価技術規定」は、2006年に 最初に公布された。その内容には、総則、用語、基本規定、CCTV調査、ソナー調査、

管路評価と作業報告書及び調査の検収が含まれている。そのほかに、管路調査の技術要 求、機器仕様、管路損傷の分類と定義、表示方法、評価基準などの内容を多岐にわたっ て詳細に規定した。その一例として、管路調査頻度に関する規定は表3-3-4に示すとお りである。

表3-3-4 管路調査頻度

調査分類 管路の分類 調査頻度(年/回)

機能調査 重力流れ 中小口径の管路 2 大型口径以上の管路 5

圧送管 10

構造調査 全ての管路 管齢<30年 7 管齢>30年 5

注:機能調査は、管路の流下状況や通水能力を調べるもので、構造調査は、管路の構造上の問題 点を調べるものである。

4.下水道管路施設管理の現状

4.1下水道管路施設維持管理業務の概要

下水道管路施設維持管理業務の目標は、管路流下能力の確保、浸水防災上の安全性 の確保、管内土砂堆積量の低減による公共用水域水質汚染保全等となっている。 下 水道管路施設維持管理は、以下の業務内容を対象としている。

 下水道管路の検収・移譲

 下水道管路施設の使用に関する規定遵守の監督

 通水能力確保のための点検、清掃、洗浄及び疎通

 管路と関連施設の修繕、突発事故の処理等

上海市下水道管路の特徴として、管路勾配が緩やかで、管内流速が低く、堆積物量 が多い。下水道管路の閉塞は、以下の三つの要因に起因するものと考えられる。

①道路工事や建築工事によるごみや土砂が管内に流入、または道路上のごみ等の異 物が雨水管への流入

②地震による管路のずれ

③管路材質の腐食

下水道管路施設維持管理技術の向上に伴い、上海市の維持管理業務の実施は従来の 人力・簡易機械式から自動化機械の維持管理方式への転換を図っている。2008 年 10 月から2009年9月までの一年間に全市(浦東新区を除く)の管路疎通距離が7,870km で、マンホールや雨水枡の清掃数が106.44万個(回)となっている。表4-1-1には、

上海市水務局排水管理処が定めた管路施設維持管理業務の年度保全率である。詳細は、

上海市下水道管路施設維持管理業務年度予算標準(3.2.5節)を参照すること。

表4-1-1 上海市下水道管路施設維持管理業務の年度保全率

類型 名称 保全率

雨水管

小型(<Φ600) 200%

中型(Φ600~1000) 150%

大型(Φ1000~ 1500) 50%

特大型(>Φ1500)

汚水管 汚水管 50%

取付管・連絡管 取付管・連絡管 200%

マンホール マンホール 400%

雨水口 雨水口 600%

吐口 吐口 100%

潮閘門 潮門 400%

閘門 400%

管路調査 テレビ(CCTV)調査 8%

ソナー調査 16%

出典:「上海市下水道管路施設維持管理業務年度予算標準」

4.2排水管路施設の調査

(1)調査項目

排水管路施設調査は、その調査結果の用途に応じて、管路施設の現状調査、管路引渡・

受取調査と応急事故調査に分類されている。また、調査対象管路施設の問題点によって、

機能調査と構造調査の二種類がある。機能調査は、管路の流下状況や通水能力を調べる もので、ソーナ調査、CCTV調査がこの分類に属する。一方、構造調査は、管路施設の 構造上の問題点を調べるもので、一般的にCCTV、手持式探査機(quick view:QV)、

人工録画などの方法で調査する。構造調査の頻度は、原則として5~10年一回である。

表4-2-1には、管路の現状に関する主な調査項目をまとめている。

管路引渡・受取調査対象項目には、水漏れ、継ぎ手ズレ、水溜り、土砂などが含まれ ている。応急事故調査の主要な対象項目には、水漏れ、クラック、変形、継ぎ手ズレ、

水溜りなどがある。

表4-2-1 管路施設現状調査項目

機能調査 構造調査

管路内の汚泥堆積 クラック マンホール内の汚泥堆積 変形 雨水マスの汚泥堆積 腐食 放流口の汚泥堆積 継ぎ手ズレ 汚泥垢と油脂付着 離脱

樹木根進入 破損と空洞

水位と水の流れ 水漏れ

(2)調査方法

管路現状調査方法には、地上巡視、目視、染料調査、送煙調査や管内潜行目視調査な どのような従来法のほかに、水面勾配調査、ソナー調査、テレビ(CCTV)調査などの 新型調査方法も採用されている。表4-2-2には、管路施設調査に使用されている方法を まとめている。

表4-2-2 調査方法のまとめ

分類 調査方法 内容

従来法

ルーチン法

地上巡視により、路面上の排水の溢れや道路沈没の有無等 を調べ、間接的に管路の問題点を見つける。

マンホール蓋を開けて、目視や専用の泥深さを測る工具で 排水管路(端)内の土砂の堆積状況を調べる。また、バッ クミラー(図4-2-1を参照)等により、マンホールと管路内 部の変形、崩れ、漏れ箇所や樹木侵入等を調査する。なお、

ウィンチにという機械を用い、管路内部の継ぎ手ズレの場 所などを特定する。

染 料 調 査 と

送煙調査 日本と同様に、雨水管と汚水管の誤接調査に使用される。

管 内 潜 行 目 視調査

過去には、管内水位を下げて、調査人員が管内に入り、直 接調査する方法が多く採用されていたが、最近、安全面の ことから、あまり採用されなくなっている。

水面勾配調査

管底勾配、複数時間の水面勾配とマンホールの底高や地表 高データを用いて、マンホール間の管路を調査する方法で ある。管路内にボトルネック、逆勾配、閉塞や除去忘れの プラグの有無等の調査に用いる。

ソナー調査

ソナー調査(Sonar Inspection)とは、ソナー機器を用いて、

水を媒体とし、管路内壁に対してのスキャンデータをコン ピューターで処理された後に得られた管路内壁の通水状況 を調査する方法である。ソナー調査は下水道管路の機能調 査に多く使われている。この調査は管路内の水を止めるこ となく、管内調査ができる利点がある一方、水面以下の管 路部分しか調査できない欠点がある。しかも、管路変形、

異物や土砂堆積など管路の構造上の問題点を発見すること が困難である。管路維持管理業務実施状況の確認や違法に 土砂を下水道に流した行為の摘発の立証などに用いられ る。

テレビ(CCTV)調査

管路内視録画調査(Close Circuit Television Inspection)は、

上流マンホールにテレビカメラ車を配置し、上流から下流 に向けカメラを移動しながら、管内の状況をモニターテレ ビに写し、写真及び調査記録表を作成しながら、ビデオテ ープに収録する。この調査は、管内の状況を全面的に調べ ることができる。そのため、調査の前に、管路内部を洗浄 する必要がある。また、欠点としては、調査時に管内水位 を下げる必要があるため、高い水位で使用されている管路 に対しては、管内排水の分流や管路閉めのような準備作業 が必要である。

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