上海市は、中国で最も早く下水道管理体制を確立した都市でもある。改革・開放政策 の実施に伴い、上海市政府は積極的に下水道管理行政の改革を推進し、旧来型の計画経 済を基に形成されていた行政管理体制からいち早く市場経済に適応できる管理体制へ の転換を図ってきた。表3-2-1には、1986年からの20年間において、下水道管理行政 改革の主な段階を示している。
表3-2-1 下水道管理体制の発展段階
段階 時間 下水道管理体制の変化
1 1986 下水道料金の徴収。下水道施設の建設や維持管理費用は全額政府財政
負担から国、企業と個人の共同負担への改革
2 1989 「下水道管理方法」を発表。初めて下水道施設の管理、下水道料金の
徴収など下水道管理方法について明確に規定した。
3 1995
城市排水有限公司が設立。城市排水有限公司が元の排水管理行政部門 と合流建設管理行政部門が合併してできた組織である。管理体制も、従 来の役所管理方式から企業経営型に変革。
4 1996
権限移譲。下水道管路維持管理業務の監督権限を上海市政管理処から 各区に移譲し、市と区の二次管理体制となる。市中心部の主要幹線管路
(一部の主本管と郊外本管)、主要ポンプ場と下水処理場は上海市城市 排水公司(市レベル)の管理対象となり、区部の下水道管路施設は、各 区政府の管理監督対象となる。
5 1996
「上海市排水管理条例」が発表。地方立法の形で、下水道管理は企業 経営+政府監督という方式を明確に規定するとともに、市中心部の一部 公共下水道は城市排水公司が独占的に経営することも明記した。
6 2000
下水道関連企業が設立。元の排水公司に対して、資本、管理・運営、
監督責任の分割といった改革を実施。排水公司が資産所有者として資産 管理を行い、排水公司が所管範囲内の下水道施設の運営管理は、子会社 の市中、市北、市南運営会社が実施する。
7 2002
上海市竹園第一下水処理場BOT事業が開始。上海市水務局は市政府を 代表して、BOT事業の出資側と「特別許可経営契約」を締結した。市 中心部の一部の下水道施設を対象に、特別許可経営と独占経営を結合し た経営方式がスタートし、その後、郊外の下水処理場や竹園第二下水処 理場も同様な経営方式が採用されている。
8 2004
政府と企業の分離。水務局は、企業性質をもつ自身の一部の管理業務 を上海市城市投資総公司に移譲した。下水道業界の国営企業が資本、行 政、人事面において、政府から完全に分離されることとなる。
これらの改革段階を経て、上海市の下水道管理体制は以下のような特徴を有する。
① 下水道料金は、経営性徴収料金の性質をもつものと規定されている。排水公司 は、設立当初から、その主な収入源が徴収した下水道料金と浸水防災料金(政 府の購買行為)であることが明確に定められている。
② 市中心部の下水道管理業務は、市城市排水公司が独占的その経営を行うものと する。これは、地方法規として、上海市下水道管理条例に明確に定められてい る。
③ 独占経営方式と特別許可経営方式が混在している。上記のように、市城市排水 公司が一部の市中心部の下水道関連業務を独占して行うのに対して、その排水 処理区内の下水処理場(竹園第1処理場と第2処理場)は、市政府から特別許 可経営権が与えられた民間企業がBOT或いはTOT方式で管理する。
図3-2-1 は、上海市下水道管理行政と業務実施の組織図である。また、表3-2-2
には、組織図の一部行政組織に関する主要な役割や業務内容をまとめている。
上海国有資産管理委員会
上海城建集団 国資経営公司 上海城市投資総公司
BOT方 式で 竹園 第2処理場と青浦 第2処 理 場 の 建 設と運営管理
TOT方 式 で 竹 園 第1、竜華、長橋 と闵行等の四つの 処理場の 運営 管 理
上海市排水管理処 上海市下水道協会
全市の下水処理場、ポン プ場 、下水 道管 路施設 の管理と監督
上海市城市排水有限公司 上海城投汚水処理有限公
上海市中心部の一部のポンプ 場と排水幹線管路の維持管 理業務の管理と監督
上海市中心部の7つの処理場 と 上海城投公司のBOT事業として の郊外の8つ汚水処理場の運営
上海市水務局(上海市海洋局)
上海市政府
全市の水道・下水道・利水関連事業の主管部門
各区の下水道管路施 設 の 建設 ・維持 管 理 業務の行政管理機関
政府と企業の間の連携、業 界のサービス、業界の代表、
業界内部の自浄などの働き
市政管理署・
排水管理所等
維持管理業者
(約144社) 郷鎮管理
機関 直接管理
対象施設 管路施設の 移譲 陽晨投資公司
各区(県)建設交通委員 会・水務局
図3-2-1上海市下水道管理行政と業務実施の組織図
表3-2-2 下水道管理行政組織の概要 NO 行政機関・組織 主な役割と構成
1 上海国有資産 管理委員会
国有資産管理体制の改革、国営企業の改革や経営などに対し て監督、人事権の行使など
2 上海市水務局
(上海市海洋局)
上海市政府機関の一つとして、市全域の水関連行政(上下水 道、利水、河川、海洋)を統括する部署として、水関連計画 の策定と実施監督、関連法規・規定・基準等の策定と実施、
水関連事業の許認可、事業の実施の指導と監督など。
3 上海城建集団
上海市最大の国営建設専門の会社(ゼネコン)である。主要 な業務範囲は建築、道路、橋梁や上下水道分野の大型インフ ラ整備事業の設計、施工等となっている。下水処理場のBOT 事業にも参入している。
4 国資経営公司
上海市の国営資産を経営、管理する国営独資有限責任公司で ある。主要な役割と業務は、市政府に授権された一部の国営 資産の活性化を図るために、市場経済の手法で国有資産の売 買、証券化と非証券化企業資産の買収などとなっている。
5 上海城投資総公司
上海市のインフラ整備事業の投資(資金調達)、建設及び運 営管理を行う大型国営会社である。今までの15年間に累計 2000億元以上を投資し、道路、橋梁、地下鉄、環境保全、
上下水道、ガス、市営住宅供給事業などの建設を行ってきた。
6 上海市排水管理処
水務局の中に排水(下水・雨水)関連業務を統括する行政機 関で、主な分掌事務には、下水道事業計画の作成と実施監督、
下水道施設関連基準・規定・指針の策定と実施監督、浸水及 び下水道突発被害案件の処理、下水道施設の運転管理及び排 水処理の安全性管理の監督等がある。①
7 上海市下水道協会
下水道と関連する企業、機関及び経済組織が自主的組織した 非営利の社団法人として、トレーニング、資格管理、情報サ ービス、展示会の主催、技術交流、製品紹介、優秀な企業会 員の選定、コンサルティングや仲介業務等を行っている。
8 上海市城市排水 有限公司
上海城投資総公司傘下の市公益性体制の国営有限責任会社 である。上海市中心部の排水幹線管路施設や下水処理場の投 資、建設、運営管理が主な業務となっている。
9 上海城投汚水 処理有限公司
上海城投資総公司傘下の国営企業で、下水処理場の運営管理 が主な業務となっている。
10
各区の下水道管路施 設の建設・維持管理業
務の行政管理機関
市政管理署や排水管理所という役所で、各区の建設と交通関 連業務を統括する行政機関の下の組織で、各区の市政関連業 務(道路と下水道)を管理・監督する行政機関である。