小学校国語B 4 意見文の組み立ての違いをとらえる
Ⅵ 三重大学からの提言
小学校・国語
橋本 博孝
○はじめに
子どもたちの学力を向上させ、生きて働くものにするとりくみの要は、何よりも授業の 改善にあります。学力調査問題の類題、あるいは漢字計算の反復練習をさせるだけでは、
異なる型の問いに対応できないことがあります。ここでは、08 年度の調査問題にかかわら せながら、小学校国語科の授業ついて考えていることを述べます。
1 参加
子どもたちの言語力が本当に試されるのは、子どもが主体的な、しかも責任ある言語活 動を行う時です。したがって、子どもたちが主人公となる場を学校は創りだしているかど うかが問われます。
例えば、08 年度の調査問題に、校内でのケガをなくすことについての意見文がありま した(Bの4)。その内容は、次のようなものでした。
中村さん=ふざけないで落ち着いて行動するようお互いに気をつける。放送などで呼 びかける。
山下さん=使った物はきちんと片づける。係活動として点検する。
問いは文章の構成についてですが、その前にこの主張の主権者意識が問われなければな らないと考えます。二つの意見文に共通しているのは、ケガの発生をいわば自己責任とし てとらえていることです。学校の施設や時間割などの仕組みに問題があるかもしれないと いう視点は抜け落ちています。すでに指摘があるように、言語活動の質的な向上には、必 要感・目的意識・相手意識などとかかわる意欲が必須です。これを、子どもたちの主体と しての学校参加という枠組みでとらえてみてはどうでしょうか。
2 漢字
漢字指導は、語彙指導として位置づけることが大切です。調査問題には「カイジョウ」
の意味(Aの2)、「走行と走るの比較」(Aの4)など、漢字の読み書きの知識のみを問 うのではない質的に高い出題がありました。この方向は、授業でも進めていくべきだと思 います。
例えば、「かぜをよぼうする」(Aの1)は、予防を「あらかじめふせぐ」と訓よみさ せること。「予」は「予感・予想・予定]などの語群から、何かが起きる前に、前もって、
という意味であることを類推させること。「防」も同様に、ふせぐことだと教えるのでは なく、「防衛・防波堤・防風林」などから意味を類推させること。これらを一体にした指 導を考えたいものです。時間があれば、対義語や類義語の学習にも広げましょう。すべて の新出漢字でこれらを行うのは時間的に不可能ですから、典型例で学習することになると 思います。この力は、社会科や理科で学習する新しい概念を表す語の理解に確実に生きま す。
3 場
全ての言語活動には「場」があります。そのことを意識する必要があります。
例えば、「春が来た」という文が、物語作品という場にあるなら、それは虚構の世界の 季節を語りだしているということです。叙述・表現としては同じでも、説明文とも作文と も違う、場における意味を持ちます。つまり、「情報の取り出し・解釈・熟考評価」とい う三段階の読解指導を機械的に当てはめてはならないということです。
中学校・国語
守田 庸一
「 平 成 20年 度 全 国 学 力 ・ 学 習 状 況 調 査 」( 中 学 校 第 3 学 年 )の 国 語 A ・ B 問 題 を ふ ま え た 国語科授業の改善
1「平成20年度全国学力・学習状況調査」(中学校第3学年)の国語A・B問題
国語A問題は「主として『知識』に関する問題」とされているが、実際には「活用」
的 側 面 も 有 して い る 。 こ う し た 事 情 から 、「主 と し て 『 活 用』 に 関す る 問題 」 とさ れ る 国語B問題の検討を通して得た視座から国語A問題をとらえる方が、要求されている力 を想定しやすい。そこで、本稿では国語B問題について先に言及する。
国語B問題では、言語に関わる知識があることを前提に、言語活動の場が設定されて、
下記の(1)〜(4)が求められている。
(1)短時間で複合的な言語活動を遂行する力 (2)論理的な(具体−抽象)思考力
(3)求められている条件や分量に応じて、論理的に表現する力
(4)PISA(Programme for International Student Assessment)を意識した読解力
①テキストの情報を取り出す力(PISAの「情報の取り出し」に該当)
②テキストを解釈する力(PISAの「テキストの解釈」に該当)
③テキストを根拠にして自分の考えを明らかにする力(PISAの「熟考 ・評価」に該当)
④テキストの目的や表現方法を把握する力
⑤複数の情報を関係づける力
一方、国語A問題では、言語に関わる知識に加えて、設定された状況における言語活 動を考えることも要求されている。また、国語B問題で求められていたものに通底する 次 の 力 も 問 われ て い る 。( 国語 A問 題で扱 われ てい ない上 記(1)・(3)及び (4)の ③が、A問 題とB 問題との違いを表しているとも言える。)
(2)論理的な(具体−抽象)思考力 (4)PISAを意識した読解力
①テキストの情報を取り出す力
②テキストを解釈する力
④テキストの(目的や)表現方法を把握する力
⑤複数の情報を関係づける力
加 え て 、 次の (5)の よ う に 、 小 学 校 の 国語 B 問 題 で 求 め ら れ てい た も の と 類 似す る 力 が、中学校の国語A問題で改めて要求されている場合もある。
(5)言語活動や言語表現を対象化して批評する力
2 国語科授業の改善
こ こ で は 、1に 記 し た 「 平 成 20年 度 全 国 学 力 ・ 学 習 状 況 調 査 」( 中 学校 第 3 学年 )の 国 語A・B問題に関する分析・考察もふまえながら、特に「読むこと」の学習指導に焦点 を当てて、国語科授業の改善点を指摘する。
「読むこと」の学習指導を構想し実践する上では、「読みの対象(何を読ませるか)」と
「読み方(どのように読ませるか)」の両方を検討しなければならない。
まず、「読 みの対象(何を読ませるか)」という点では、扱う教材のジャンルに偏りがあ ったり、ジャンル間で扱い方に極端な軽重が生じたりすることは避けたい。生徒の読解 力・表現力・思考力・認識力を育む上で、説明的文章の学習指導を充実させることは急 務の課題である。また、国語教育界の動向をふまえるならば、古典作品の学習指導につ いても検討する必要がある。加えて、図表やグラフなどのいわゆる「非連続型テキスト」
に つ い て も 留意 し な け れ ば な ら な い 。そ の 際 に は 、「 非 連 続型 テ キス ト 」が 用 いら れ て いる、国語科以外の教科での学習にも目配りすることが望ましい。
次 に 、「 読 み 方( ど の よう に 読ま せ るか)」に つ い て 述 べ る 。 こ れ まで の 「 読 む こ と 」 の 学習指導では、一般的な傾向として、教材は異なっても読ませ方が共通していることが 多かった。例えば、どの文学作品であっても登場人物に同化させて心情を読み取らせよ う と す る 授 業な ど が 、 こ れ に 当 て は まる 。 こ う し た 授 業 では 、「 読み の 対象 」 すな わ ち 教 材 は 数 多 く用 意 さ れ て い た と し て も、「 読み 方 」 は 一 定 なの で ある 。 これ か らの 国 語 科は「読み方」の多様性も追究しなければならない。一例を挙げるならば、文学作品を 扱う際に、登場人物への同化を求めるだけでなく、作品世界やそこに生きる人々を客観 的に見つめさせたり批評させたりすることが考えられる。あるいは、説明的文章を扱う 上で、述べられている内容を正しいものとして受容させるだけでなく、批判的に読ませ る こ と も 重 要 で あ る 。 ま た 、 説 明 的 文 章 の 表 現 方 法( 述 べ 方 )に 着 目 さ せ る 読 み 方 が 実 現すれば、それは生徒の表現力の向上にも結びつくであろう。なお、PISAでは「読 む 行 為 の プ ロ セ ス 」 を 「 情 報 の 取 り 出 し 」「 テ キ ス ト の 解 釈 」「 熟 考 ・ 評 価 」 に 区 別 し ている。これは、日々の授業で生徒に求めている読み方を整理する上で参考になるとら え方である。
参考文献
国立教育政策研究所編(2007)『生きるための知識と技能3 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)
2006年調査国際結果報告書』、ぎょうせい。
国立教育政策研究所教育課程研究センター(2008)『平成二十年度 全国学力・学習状況調査 解説資料 小学校 国語』。
国立教育政策研究所教育課程研究センター(2008)『平成二十年度 全国学力・学習状況調査 解説資料 中学校 国語』。
小学校・算数
上垣 渉 中西 正治 1 全国学力・学習状況調査で明らかとなった課題への取り組み
[A 問題]
正答率が 40%未満のものは、特に量に基づいた考え方が説明の基本となっている。計算の結果出た 数量を、実際に具体物を使って確認することによって、計算の仕方を納得させることは、現実と形式 的計算とのギャップを埋める意味で大切なことである。
正答率が 40%以上 70%未満のものは、割合に関する内容が多い。全体(基準量)を1とみる(小数)、
10 とみる(歩合)、100 とみる(百分率)見方を理解させること、および何が基準量で何が比較量なの かを見極める力をつける指導が一層必要である。そのためには、例えば、割合説明器などの教具を使 い、操作的活動を通して理解させることが大切である。
[B 問題]
正答率が 40%未満のものには、「わけを書く」「求め方を書く」「違いを書く」など、「~を書く」と いった説明をさせるような「活用力」に関する問題が多い。日頃から「~を書く」といった指導が求 められている。しかし、基礎・基本の指導に多くの時間を必要とするのが現状である。その場合、三 重県検証改善委員会が編集した冊子『授業改善支援プラン』や津市教育委員会が編集した『授業改善 に係る参考資料』(算数・数学編及び国語編)などを活用して、授業を改善したり、活用力問題を利用 することが考えられる。活用力に関する問題を扱う機会は各単元の終わりに1回、年間 10 回程度でよ いと考えられる。また、「~を書く」という力の育成は、学校全体の教育目標としても必要であり、算 数の授業だけでなく、他の学習活動も含め、組織的・意識的に取り組む必要がある。
正答率が 40%以上 70%未満のものは、日常の授業の発展的な内容に結びつくものが多い。授業で教 えている内容を少し発展的に扱えばよい。
2 算数好きな児童を育てるには
(1) 地域、県、全国それぞれのレベルの研究会等に参加し、質の高い理論や実践に学ぶこと
自分が悩んでいること、わからないことは、他の人も同じように感じていることが多い。全国のど こかに、よきアドバイスや助言をしてもらえる人が必ずいるものである。出かけること自身に意味が ある。現在や過去の遺産や成果に学ぶことは極めて重要なことである。
(2) 先生が算数の世界を楽しむこと
まず先生が算数を楽しんでいるかどうかである。先生が面白そうに楽しそうにすれば、児童たちも
「算数って楽しいものなんだ!」という思いは伝わる。子どもたちも積極的に話を聞いてくれる。
(3) いろいろな教具を作ること
教具は子どもの理解を助けたり、興味を持たせたりする有効な手段である。ただし、それは指導内 容の本質的な部分を表象しているものでなければならない。なぜなら、理解を助ける中心的な役割を 果たすものであるからである。
(4) 校内研修を充実すること
ついつい一人よがりな実践をしていたり、自分がよいと思って教えていたことが実はよくなかった りする。そのために他人の目で見てもらうことは、自分の成長にとっても大切であり、結局それは子 どもに返っていく。