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板状微小析出物の周りの格子歪みを示す断面図

3.3.9 斑点状のコントラスト

   図3−47 斑点状のコントラスト

 図3−47はZnドープGaAs試料をブラッグの反射条件近くで観察したものであ

る。右側に矢印で示すような斑点状のコントラストが見られた。この斑点状のものは円形 で皆同じような大きさ(0.2μmほど)である。円形の部分は周りよりもコントラス

トが少し落ちているので、この部分は周りと厚さが異なるのではないかと考えられる。図 3−34において厚さの異なる部分でのコントラストの違いについて述べたが、表面に荒 れがあって小さな厚みの変化があるとき、等厚縞の適当な条件に当たっていれば、その荒 れは誇張されて見える。また、結晶内部に小空洞があると、その部分の厚みが変わってい るから、非常に小さな空洞でもあれと同じく適当な条件下でそのコントラストがはっきり と現れることから、この斑点状の円形部分は表面の荒れまたは小空洞であると考えられる。

荒れだとすると、機械研磨からディンプリングまでの段階において見られた表面の凹みが イオンミリング時にArイオンによって滑らかに削られたものだと考えられる。

3,4 電子顕微鏡によるZnドープGaAsとSiドープGaAsとの欠陥の比較

 ZnドープGaAs、SiドープGaAsのどちらにも欠陥は見られたが、 Siドープ

GaAsのものは欠陥が少なく、ほとんど見られないものもあった。

 Znドープのものには図3−47(a)、(b)にあるような線状のコントラストをも った転位が見られた。これはループ状になっていたり、絡み合っていたりするところがあ った。図3−48(a)、(b)には一列になった斑点状のコントラストが見られるが、

微小析出物と思われる。図3−48(c)は平行に走った縞模様になった積層欠陥が見ら れた。図3−48(d)、図3−49(a)は線状ではなくある領域をもった黒いコント

ラストになった積層欠陥が見られた。積層欠陥の中には積層欠陥が重なったようなところ

(図3−48(c))もあった。図3−49(b)では干渉縞が交差した状態から、図の 左側の領域はブラッグの反射条件に近く、右側の領域は少し離れた状態になっているので 結晶方位が僅かにずれた小傾角境界となっていることが分かる。

 Siドープのものには図3−50(a)、(b)、図3−51(a)に見られるような転 位が見られた。図3−50(a)では転位が高密度で生成され、ほぼ同じ方向を向いてい

る。ループ状になりかけている部分も見えた。(b)では転位状の欠陥が長く(10μm ほど)一本の線状になっており、機械研磨後に見られた黒い線状コントラストにつながる ものと思われる。Pに見られるような点状の像は析出物に対応するという報告もあるqD。

図3−51(a)には転位線が数本集まったと思われる所があった。図3−51(b)に は図3−49(a)と同じような積層欠陥が見られた。図3−51(c)では線状の黒い コントラストになった積層欠陥が60。の角度で交わっている。ディンプリング後に見ら れた線状のコントラストと同じ種類のものと考えられる。 図3−51(d)は図3−4

9(b)と同じように干渉縞が途中で折れ曲がった部分が2カ所あり、3つの領域に分か れた結晶粒界と考えられる。どの領域も干渉縞がよく見えており、結晶方位が極く僅かに 異なる小傾角境界となっている。結晶粒界がある部分は図3−49(b)、図3−51(d)

のように回状になっており、他の部分より削られにくいと考えられる。・すなわち、結晶粒 界がある部分では試料が他の部分よりも強固になっていると思われる。

 図3−52(a)に比較として圧延した金属のNiを示すが、転位線の数も多く網目状 になった転位網となって至る所に存在していた。図3−52(b)のNiの回折図形では 回折斑点が2重、3重になっており、多結晶状態であることを表している。それと比べる

とGaAs半導体は単結晶性もよく転位線の数も格段に少ないといえる。 表3−1はZ nドープGaAsとSiドープGaAsに見られた欠陥の種類の比較である。Znドープ GaAsには転位、積層欠陥、結晶粒界、微小析出物が見られたが、SiドープGaAs には微小析出物と思われる欠陥が見られなかった。

  表3−1 ZnドープGaAsとSiドープGaAsに見られた欠陥の比較

Znドープに見られる欠陥 Siドープに見られる欠陥

転位 マ層欠陥 居サ粒界

小析出物

転位

マ層欠陥 居サ粒界

(a)転位      (b) 転位

   図3−47  ZnドープGaAsに見られた欠陥

(a)微小析出物 (b)微小析出物の拡木

(c)積層欠陥      (d)積層欠陥

   図3−48 ZnドープGaAsに見られた欠陥

(a)積層欠陥       (b)結晶粒界

 図3−49 ZnドープGaAsに見られた欠陥

(a)転位       (b)転位

   図3−50 SiドープGaAsに見られた欠陥

(a)転位

(c)積層欠陥      (d)結晶粒界

  図3−51 SiドープGaAsに見られた欠陥

(a)転位網 (b)回折図形

図3−52 圧延したNi

4 結論

 本研究では、三菱化学株式会社で作製されたZnドープGaAsとSiドープGaAs

をイオンミリングを用いて、化合物半導体の透過型電子顕微鏡観察試料の作成方法を確立 すること、また金属顕微鏡を用いて試料の表面状態を観察し、透過型電子顕微鏡を用いて 内部状態を調べ、欠陥の同定と分布状態を明らかにすることを目的とした。さらに、観察

により見られた欠陥を整理し、ZnドープGaAs試料とSiドープGaAs試料との比

較検討を行った。

(1)透過型電子顕微鏡観察試料の作成手順は、ウェーハから打ち抜き機で直径3mmの 大きさに打ち抜き、それを機械研磨で厚さ120μm〜180μmとし、ディンプリング により試料中央部を厚さ20μm〜30μmにした後、イオンミリングにより中央部に直 径50μmほどの孔をあけることにより孔周辺の薄膜化した部分が観察可能となった。こ の手順においては以下のような注意が必要であった。

a 打ち抜き機で打ち抜く場合、回転速度が高いと半導体試料が欠けることがある。それ を防ぐため最も低速の回転で打ち抜いた。

b 機械研磨の段階でSiドープGaAsは200μmほどの厚さになると欠けたり、割

れたりしゃすいので補強リングをつける必要がある。この場合、機械研磨を電動で行うと 割れが生じやすいので手動で行った。

c SiドープGaAsの場合、試料中央部の厚さを20μmに設定してディンプリング

を行うと割れが入ったり孔が開いたりしてしまい透過型電子顕微鏡観察試料として観察が 不可能になるため、ディンプリングにおいてはZnドープGaAsの場合は試料中央部の

厚さが20μmでよいが、SiドープGaAsの場合は30μm必要であった。

d イオンミリングは、ミリング角度100、印可電圧5kV、印可電流0.5mAで行

い、ZnドープGaAsは約3時間、SiドープGaAsの場合は約12時間ほどで試料

中央部に孔が開く。これより長くイオンミリングを行うと孔周辺の薄膜化した部分が割れ

落ちてしまい、透過型電子顕微鏡で試料内部を観察することができなかった。

(2)試料を打ち抜く前のウェーハを金属顕微鏡で観察すると、ZnドープGaAsと、

SiドープGaAsのウェーハの表面裏面共にざらざらした面となっており、裏面には三 角形で黒く見える部分がいくつか観察された。拡大して見ると三角形の中心部分から角頂 点に向かって線がついており、フォーカスを変えて観察すると凹んでおり、正四面体の凹 みであることが分かった。正四面体の凹みの密度は、半円形状のウェーハの下の部分が最 も高く、中心部分に行くに従って低くなり、そこから上部に行くにつれてまた高くなって いった。

(3)機械研磨後に金属顕微鏡で観察すると、ZnドープGaAs、SlドープGaAs

共に幾筋かの線と白い斑点部分が見られた。拡大してフォーカスを変えてみると溝と凹み であることが分かった。

(4)イオンミリング後に金属顕微鏡で観察すると、ZnドープGaAs、SiドープG aAs共に全体に網目模様の線が見られた。ZnドープGaAsには幾筋かの黒い直線も

見られ、表と裏を見比べると同じ所を通っていることから表から裏まで広がる内部欠陥で あることことが分かった。

(5)イオンミリング後に透過型電子顕微鏡で試料の孔の周辺をブラッグの反射条件で観 察すると、直線になった部分は電子が透過することができないくらい厚く内部状態が見ら れなかったが、曲線的なところは等厚干渉縞が見られ、理想的なくさび型になっていた。

場所によっては等傾角干渉縞が見られることから試料が曲がっている部分があることが分

かった。

(6)結晶方位は回折パターンと菊池ラインから(111)面で切断されたいることが確 認された。

(7)結晶内部の様子をブラッグの反射条件から1gほど外したところで観察すると、線 状のコントラスト、ループ状のコントラスト、三角状の黒い部分、直線的な縞模様の部分、

縞模様が鋭く折れ曲がった部分、点状のコントラストが見られた。線状のコントラストや ループ状のコントラストはブラッグの反射条件を外していくと消えていくことから転位や 転位ループであることが確認された。三角状の黒い部分や直線的な縞模様の部分は、ブラ

「ッグの反射条件から外していくと外形は見えていたが、内部のコントラストや縞模様が見 えなくなることから積層欠陥であることが確認された。縞模様が途切れた部分は、回折パ ターンの観察から結晶が非常に近い角度で傾いている結晶粒界であることが確認された。

点状のコントラストは、対になった斑点状をしていることから、微少析出物であると思わ

れる。

(8)ZnドープGaAsには、転位、積層欠陥、結晶粒界、微少析出物が確認されたが、

SiドープGaAsには転位、結晶粒界が確認され、転位は密集して存在しておりZnド ープGaAsよりもろい。SiドープGaAsには欠陥が観察されない試料もあり、Si

ドープにより欠陥が減少していることが判明した。

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