本稿ではカタカナで﹁スピリチュアル﹂
( 2)
と表記する
︒
﹁スピリチュアリティ﹂も訳さずにカタカナで表記する︒
また筆者が基礎とするのは初期仏教であり︑本論におい
ては
︑
いかなる宗派においても︑また宗派の枠を越えて
議論できるような材料を提供したい︒
先行研究
まずスピリチュアルペイン/ケアについての国内での
代表的な論者として︑窪寺俊之︑村田久行︑そして河正
子の論考を簡単に紹介する︒次に︑今後これらの﹁メイ
ンストリーム﹂に対抗していくであろう論者として︑大
下大園︑井上ウィマラそして伊藤向車の論考を紹介す
窪寺俊之﹀︿ る
国内の第一人者と言うべき窪寺は︑﹃スピリチュアル
( 3)
以下のように定義している︒ケア学序説﹄
の冒
頭で
︑
スピリチュアルケアとは︑肉体的苦痛︑精神的苦
痛︑社会的苦痛の緩和と並んで︑患者の
QOL
を高
めるには不可欠なケアで︑特に死の危機に直面して
人生の意味︑苦難の意味︑死後の問題などが問われ
始め
たと
き︑
その解決を人聞を越えた超越者や︑内
面の究極的自己に出会う中に見つけ出せるようにす
るケアである︒日常生活では︑知性・理性など合理
性が重視される傾向にあるが︑スピリチュアルケア
は︑日常生活では忘れられていた目に見えない世界
学的概念に基づいている印象が否めず︑日本的という点
においては限界があるように思える
︒ ﹁
超越者﹂﹁内的自
(5 )
己﹂という上向超越
・内 向超越(図二)だけでは︑日本
1危鍋によって盟関曹に現れる 2危機と,.人生磨支えてい仕土台
が酬亀町宮る体厳 3 暫稼珊組問反応そ示~(不安
怨倫副担感忽ど}
ペインの中島ま,.省学的 宗較 的問Hいをもっ{人生の.除目 的死後の笠命男質感広ど) 5ペインの解澗を求めるととが
必I!と悠る
図1 rスピリチュアリテイ」と「スピリチュアルペインJの関係(窪寺) 教 歴 ず 対 ウ 介 論 提 補 で て 羅 ル 人 的 史 、 人 ン ケ す で 起 完 に い で ケ の 建 的 自 援 セ ア る も し す 、 た き ア ス 造 も 然 助 リ の 。 そ て る 窪 筆 な の ピ 物 し ・ に ン 方 の お ( 構 寺 者 い 構 リ な く 芸 限 グ 法 図 り 旦 造 理 は と 造 チ
ど は 術 定 的 を を 、 図 論 、 感 を ユ に 宗 ・ せ な カ 紹 本 を を す じ 網 ア
1 べインの解測を必痩(ニー ズ)としている状思 2ベインの解消こ,.鍵..."与も
の(自己d汐りや究鍾的広包 の(自分のゆ)1ζ求める 3組息霊的認ものや突極的忽もの
との出会い(発見気づき 幡 町
1生命保存の性質
,
~べての人の生得的性信 3その佐賀{率五感心理的 狸"を超える('"り悠ど}「外的他者(超越者)への関心j 9完全忽自由
8超超者との一裁帰一 7自己献身 6慣じる(自己控企) 5.1買得欲求 4超越者への知的願望 3憧領(慣れ) 2聞待 1超越吾への関b
4 二 入
自己由生きる憲昧 目的画値の潔究 自己の人生との実存的出会い
自己の人生の豊富 尭盟、浬化の壇古い
1自己白人生への聞凸 2自己の人生への疑問 3自己と由緒園、苦悩葛輯 4自己の生の束"からの解依
願望、期間 5自 己 の 生 白 目 的 、 意 隊 晒
圃 へ の 媛 問 探 求 6輿の自己の尭見 7自己の生の承認、豊富 B自己の申に永遣の尭見 9永 遭 真 理 充実に生きる
タスキルに焦点が当
てら
れ︑
「内的自己への間心j 一一一一一一一一一一一一ーJ
外的他者と内的自己への関心の度合い(窪寺) よるケアを含 んでいるに点 は
ス ピ リ
チュアリティ
理解の広さ・
深さを感じさ
せる︒ケア提
供
者の教育に
つい
ては
︑ ス
‑ 63
図2
キルよりもメ
ビハ│ラ僧やチャプレンな
どのスピリチュアルケア専門職養成が意
識されている
︒
︿村田久行﹀
現在︑看護師等医療者に浸透しつつある﹁村田理論﹂
は︑
﹃臨
林看
護﹄
二
OO
四年六月の特集に詳しくまとめ
られている︒
村田はスピリチュアルケアを端的に﹁生き
る意味への援助﹂と表現し
スピ
リチュアルペインの構
( 7)
造理解を基礎に置いている︒
村田
は︑
まず終末期がん患者の抱えるスピリチュアルペイ
ンを﹁自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛﹂と
定義し︑その構造を人間存在の時間存在︑関係存在︑
自律存在の三次元から明らかにした︒そしてこのス
ピリチュアルペインの構造解明を基礎として︑援助
プロセスの枠組みに従ったスピリチュアルアセスメ
ントとケアの方法を開発(中略)そして︑臨床現場
で の 実 践 と フ ィ ー ド
パックを繰り返してき
村 田 理 論 に 基 づ く 人 間 存 在 を 支 える三本の柱(小;事)
た︒村田理論に基づい
て小津竹俊が明解な図
( を凶 ( 三旦提
。示 時 し
間 存 在 関
1ρ
て
る 係存在
・自律存在の三
要素を人間存在を支え
る三本の柱として喰え
図3
ておりスピリチュア ルペインの所在とケアの方向性もイメージしやすい︒
(9 )
この図について小潔は次のように説明している︒
村田理論では︑﹁安定した﹂人の存在は︑水に浮
かぶ水平な平面であると考える︒
そし
て︑
・こ
の平
面
を支えているのが︑三つの柱(時間存在︑関係存在
自律存在)
であ
る
︒この三つの柱が太く安定してい
るとき︑人の存在である平面を水平に保つことがで
きる
︒過去の経験から将来へ向けて今を生きようと
する時間存在の柱︑大切な人との関係性から強く生
‑ 64‑
きょうとする関係存在の柱︑そして自己決定できる
自由が与えられている自律存在の柱が︑人間という
存在の基礎となって存在そのものを安定する(ここ
では平面が安定した水平である)力となっている︒こ
の各存在の柱が太くしっかりしていれば︑多少の揺
れが生じても平面が傾いて水につかる心配はない︒
もし
︑
いずれかの柱が折れてしまったら(ぺイン)︑
そ
の柱を補修するかもしくは他の柱を強化する
(ケ
ア)
と
いうアプローチも事例と共に提示されている︒
村田理論の問題点はスピリチユアリティの要素の中
で実存性を強調しすぎるあまり︑超越性が弱いというこ
とである︒ケアの実際を紹介する中で﹁死をも超えた﹂
という表現が何度も見受けられるものの︑宗教性を排除
しようとするあまり︑超越性までもそぎ落とされてし
まったように見受けられる︒
またケア提供者の教育については︑死生観を含んだ
自己覚知にも触れてはいるものの︑全般的にスキルに焦
点が当てられている︒そのスキルは︑消極的傾聴に限定
されている︒スピリチュアルケアに関与する医療者全般
をケア提供者として意識している︒
︿河正子﹀
文献レビューに基づいて︑スピリチュアリティの基本
(
ω )
構造を考察している︒特に次の点が興味深い︒
個人が探求する対象として超越的なもの︑他者/
環境事象︑内的自己があり︑これらの対象への方向
性と統合のレベルを包括して検討することにより 個人のスピリチユアリティの特徴を理解する一
つの
視点となり得ると示唆された︒
ところが︑圏内のがん患者へのインタビュー調査を通し
て︑欧米の文献レビューから得られた示唆とは異なる結
果が提示されている︒それは︑﹁﹁内的自己﹂だけでなく︑
﹁外
的な
/物理的な存在としての自己﹂の位置づけがあ
ること︑﹁超越した存在﹂との関係があげられていない
(日)こと﹂である︒また﹁自分以外の﹁他者との関係﹂
域に含まれたものは︑家族や周囲の人であり︑自然や杜
(は)会のような大きなシステムは含まれなかった﹂︒
河は﹁理想や期待の現実とのギャップ﹂に注目して︑
このギャップによる苦痛をスピリチュアルぺインの主要
な一
因 と し て 捉 え て い る
︒
そしてその対応として︑
ギャップの統合を方向性としたスピリチュアルケアを模
索している︒スピリチュアリティの概念構造を図式化し(U) (図四)︑以下のように解説している︒
スピリチュアリティを構成している要素の主要な
ものの一つに︑神・自己・コミュニティなどと自身
の 領
Fhd
ハb