湘 南工科 大学紀要 第
31
巻 第1
号
2.17 1989.
7,10
7
.
17の母を探求 し たり
,
自己に対して その母であるこ とを法的に宣 言さ せ たりすること は認め られ ない
.
3
) 胚 提 供の場 合…88
年 報 告 書は, 疑 問をのべ, 認め る と して も厳格な要 件に お いて の みであ ろ うとする.
89 年草案は,
余剰 胚につ い て の胚提 供を認め る方 向で,
その 条件 (精 子や卵子の 提 供と同一
)を定め る.
日本のエ イ ズ予防法 (
1989
年1
月17
日法律 第2
号)の施 行私 的国民 連帯基 金を創 設する た めの協 定の成立 (
・ −
1985. 10.20,
→ 7.
17,1991.9
月) (高山・
補償41
頁)・
対象二HIV
抗体 陽性 者, 被 害者が死亡 してい る場 合は そ の家族公 的国 民連 帯基 金 を創設する ための社会問題省ア レテ (
←1985.
10.
・20 ,
→ 1991.
9 月) (高山・
補償41
頁 )・
対象:エイ ズ発 症 者〔エ ヴァ ン協定 〕
・
上記2
つ の協定 (←7.10,7.17
)は,
その 衝に 当 たっ た 厚 生担当 副 大 臣 クロー
ド・ エ ヴ ァ ンの名 を とっ て こ う呼ば れ る。
〔エ ヴァ ン協定 成立の経 緯〕 (高山
・
補 償41
頁,
鎌田・
救 済 (上) 52〜3
頁 )
・
フ ラン ス の輸血セ ンター
は,1963
年以来, 供 血者に生 じ た損害をカバー
す る保 険に加 入・1980
年のア レ テ :受血 者の損 害も カバー
する保 険へ の加入を義務づ け.
・
し か し, 保 険会社は,HIV
感染 事故に よ る被害金額が莫大な もので あ ること を 知り, 保 険 契 約の 効力に疑 問を 呈 す る よ うに なっ た,
・1987
年 以降,
フ ラ ン ス血 友病協 会の政府に対する救済 策の要求が強まり, 同年末 頃か ら国民 議 会で もHIV
感 染 問 題が取 り上げ ら れ る よ うにな る.
他方で,
大規 模な損害 賠 償請求訴 訟が提 起 さ れ た.
・
政 府は,
保 険 会 社 を 巻 き込んで 「国 民 的 連 体 (solidalit6 ・nationale )」の理念に基づ く補償の制度 を 創 設 するこ と とした.
・
こ の 89 年 7月に,
政府とフ ラ ン ス血 友 病 協 会,
保 険 会 社 との間に補 償の た めの国 民 連 帯 基 金を創設 することにっ い て上 記 2っ の協 定が成 立 した
,
〔エ ヴァ ン協 定の問 題 点 〕 (高 山
・
補 償41 頁,
鎌田・
救済 (上)53
頁)
・
補償 額の点で も不 十 分だ っ た が,
そ の対 象が (輸 血 感 染 者の方が数が多か っ たの に)血友 病患者 に隈 られていた とい う点で も不 平 等な性 格 を 持っ て いた.
・
私 的 国 民 連 帯 基 金の場 合,一
時 金 を 支 払 う代わ りに以 後裁 判手段に訴え ない こ と を条件に して い た (それで も,
HIV 感 染 被 害に遭っ た 1200 入の血 友 病 患 者 中 1000 人が和 解に応 じ た とい わ れ る).
〔その後 〕
・
エ イズ補 償 問 題は本 協 定で一
旦解 決し た かに思わ れ た.
→ し か し,
そ れ か ら約3
年後 (91
年4
月), 週間誌 が 申 央輸血セ ンター
が 血 液 製 剤の汚 染 を知 りな がら販 売 し続 けた事 実を暴 露→
エ イズ問 題は
一
挙に政 治 問 題 化 (→ 1991.
4 月,
同 年9月 リュ カ報告 書 ).
(高 山)
・
〔ま た〕 国や輸血セ ン ター
の損 害賠償 責 任 を 認め,
基 金の給 付 額をは るかに超える賠 償を命ず る判 決が下される に及ん で
,
補 償 制 度の全 面 的な再 編 を余 儀なくさ れ 〔た〕(→1991.12.31
エ イ ズ補 償 基 金 法 ).
(鎌田。
救 済 (上 )53 頁 )〔こ の 当時の ヨ
ー
ロ ッ パ各 国 〕 (堀 田・
解 説186
頁 )・
エ ヴァ ン協定 が締結さ れ た 1989 年 頃,
ヨー
ロ ッ パ 各 国はすで に賠 償に乗り出してい た.
イ ギ リス :慈 善 基 金が国 会 を通 過し
,
設 立さ れて い た. 一
156一
1
一
フラン ス生命倫理の展 開 (上 野芳久)
1989.11.13
12
.
1312
.
15デ ンマ
ー
クニ国が感 染し た血 友 病 患 者に (1人にっ き20 万フ ラン相 当 ) 直接,
賠 償 し た.
ドイッ :加 入 保 険 会 社か らの支 払いを 当て る形で,
製 薬 会社が補 償 金 (患者の年収2
年 分 相 当 )を 支 払
。
そ の後.
フ ラン ス は本協定を見直し,
補 償基金 を創 設 (→1991.12.31
).
(→
1992.
1L9 ) 日本 初の生 体 部 分 肝 臓 移 植 (島 根 医 大 )(翌 年 8月 21 日一
手術か ら285 日 目死亡)破 棄 院
,
ア ル マ・
マ テー
ル協 会の破 棄 申立て を 棄 却 (←1988. 4. 29,
→ 1991.
5.
31)(野 村 607 頁,
北 村・
展 望170
頁,
高 橋・
動向 163 頁)〔ア ル マ
・
マ テー
ル 協 会 訴 訟 〕 (高橋 )
・
原 判 決 を 是認 し て上 告 を 棄 却 し た=
破 棄 院が代理母 問 題につ き消 極 的 姿 勢を明 確 化 し た (高 橋 ).
・
代理出産行 為 自体にっ いて も否 定論に与して い る ように思わ れ る (北村).
〔主 な 破棄理由 〕(野 村
607 〜8
頁)ア
・
マ協 会は, 代理母の生 殖 機 能を希 望 者に 自 由に利 用 させる こ と および生 ま れて くる子に関 して希 望 者と代理 母 との 間に民 法
1128
条に反し た合 意を締 結さ れ る よ うに助 長 する もの で あ る.
こ の よ うな合 意は人の身 分につ い て処分で き ない とい う原 則に違 反す る
.
ア
・
マ協会の活動は,
親の ない 子に家族を与え るとい う目的を有する養子制 度を濫用 する もの である.
「委 員会に よ る配偶 子お よび胚の提供につ い て の研 究状況に関する意見 」(
CCNE
)(←1986.
12. 15, →
1990.
7.
18〕(高橋・
動向175
頁)・
本 意見 は,
1986 年意見を維 持し,
その上に立 っ て特に胚の提 供につ い て論じて い る.
委員会は改 めて, 委 員会が導き出し た〜
般的原理 を再 確 認 すべ く,
本 意 見を発 表 した,
・CCNE
は,
従 来 自 己の意 見に基づ く政 策があ まり立て られな か っ た ことに失 望 して いた よ う で ある が
,88
年に首相か らコ ン セ イユ ・ デ タ に対し作 業 委 託され報 告 書が出され,
89 年に草 案が提 出 さ れ たこ と よっ て, ようや く政 府の 対 応を評 価 した.
また,
コ ン セ イユ・
デ タの グルー
プに はCCNE
メ ンバー
が数 人参加して お り,
コ ンセ イ ユ・
デ タの勧告の大 部 分が CCNE の報 告・
意 見に 着 想 を 得て い るこ とに好 感を もっ たよ うで ある (←
1988.
9月,
同 11月,
1989.
2月 )(176 頁 ).
〔概 要 〕
(1) 問題の提 起
・
委 員 会の主 要な倫 理 的 関 心は, 配偶 子や胚の提 供に よ っ て多くの危険に さ ら された人 間 存在の 現 在
・
未 来の尊 厳 を 守ることにある.
子
…
提 供 者の匿 名 性がいか な る場 合にも守ら れ る とする と,
遺 伝的な尊 属を知るこ と がで き ない こ と に な り,
心理的な トラ ブル にさ ら さ れ ることに な る.
提 供 者
…
その愛他的 な 動 機は認め ねば ならないが, そ れ以外の動 機も付随し う る
.
受け手
…
その 要求は人 間にとっ て理解で き る もの だ が,
し か し,
よく知ら れて い ない局 面や気 が か りな倫理的結 果を有す る冒険に入り 込んでい る といわ ざ る を え ない.
さ ら に配偶子や胚の提 供が拡大
・
合法化さ れ れば→ 親子 関係の法規が危 険に瀕 することにな る.
・
生 命の源で あ る 配 偶 子 や 胚 は も は や財産 とい う 外 見の点で し か考え ら れて い ない.
同 時に,
これ らの生殖 形態で は仲 介 者に頼る こと が不 可避なの で,
決 定は取引 目的に従 属 す るよ うになる お そ れ が あ る.
さ らに,
これ らには受け 入 れることの で きない優 生 学 を 導 く危 険 性 が あ る.
(
2
)選択さ れ るべ き価 値の対立
・
委 員 会はさ ま ざ まな意 見・
信 仰・
感 性・
経 験 を もつ人々か ら なる→ 精 子,卵 子の提 供, 胚の提 供 につ い て委 員 会 内 部で意 見が分かれ た.
ある者は その原 理 を拒否し,
法が そ れを禁止するこ と を望む
.
よ り多 数の別の者は,
法に よ り厳格に定め ら れ た条 件内で そ れ を認め る.
一 157一
湘 南工科 大 学 紀 要 第 31 巻 第
1
号1989
.
12.
25(3)委 員会で
一
致を み た点配 偶 子や胚の提 供によ る生 殖は
,
医学的 適用に基づ い て, しっ かりと し た カ ッ プル のた め にのみ検 討に あ たいする
.
それは公 的 性 格 を有する許可さ たセ ンター
の枠 内で,
医 学 的な責 任の も と,
厳格に取 決め ら れ,
非 常に少 数おこ なわ れ るべ きで あ る 〔−
1986 年 意 見で既に提起されて い た (高 橋 )〕.
あ らゆ る提 供は提供者の匿名性を尊 重 すべ きで あ り
,
特 定 性の な い被 提 供 物の伝達 は 必 ず し も 排 除さ れない.
こ の事項につ いての あ ら ゆ る立法は
,一
定 期 間の終 了 時に,
生物 学 的技 術の発展,
この領 域における倫理的考 察の深化と実 務の評 価
,
教 育との関 連で,
規 定が改正 さ れ う る よ う な見 直し期 間を 含ま な け れ ば な ら ない.
生物 学 的な研 究や公 衆衛生 政 策が
,
これ らの技 術に よう て,
特に不 妊の多数の原因であ る性 的に移り う る病 気の予防の努力に よっ て
,
関 連 事 例の数 をで き る だ け減 ずるべ く働 くこと が最 も望 ま しい.
(
4
) 問 題 別にみ る委 員 会の見解A
.
精子の提 供:すで に社 会 的な事 実に なっ ており,
非 合 法 化 すれ ば,
その規 制に よ る枠 付け よ りもっ と否定的な結果を もた らすこ と に な るで あ ろ う
.
した がっ て,
この原 則に意義を唱え る者で さ え, この規 制を実 務の正当化と混 同し ない とい う条 件 付で,
受け入 れるもの とみな す.
B.
卵 子の提 供:次の点でA
より困 難な問 題 を 提 供 する.
医学 的処置や, その 無害 性が疑わ しい人体へ の進 入を必 要とする
,
手 術やFIV
の試みの際に卵 子 を 採取で き るので,
提 供へ の同意 が 完 全に自由に な れ れ う る かにっ い て疑いが生 じ る
,
卵 子は男 性 配 偶 子 と異 なり, 胚の発展に必要な細 胞質を保 有 する
.
こ の細 胞 質は他の遺 伝 的物質の発展に有 用で あ り得, その こと は様々 な実験に道を開きうる
,
卵 子の提 供の匿 名 性にっ いて は、 精 子の場合以 上に, 提 供者を示唆する よ うに感じ ら れ るの で
,
母と子に予 測で きない心 理 的結果を も ら た す もの と な り う る,
卵 子の提 供は,
人 類が未だいか な る経 験 を も実際に は していない と こ ろの 「妊娠の」母と遺伝上 の母との分 離 を 伴 う.→
B はA より以 上の倫理 的 な留保を引き起こ さ せ た.
C .
胚の提 供:AB
以 上に重 大な問 題 を 提 起 する.
なぜ な ら, 胚は潜在的な人 間と認め なけ れ ばな ら ない の で
,
そ の物化は人間の尊 厳を守る とい う基本 的な要 求 を 侵 すこ とに な る,
両方の不妊 を 呈 するカ ッ プル に精子と卵 子を二重に提供するこ と は
,
同 じ異 議 を生 じさせる,
FIV
の 現 状に結びっ け られ た余 剰 胚の存 在は避けえ ない差 し迫っ た問 題 を 提 起 する,
か ら.
胚の提 供は, 次の ような法定の厳格な規 則に服 す る場 合の み考慮さ れ る
.
胚の由来する者は
,
余剰胚が不妊カ ッ プル に提 供さ れ る か研 究に提 供 され る か 廃棄かにっ き情報を与えられ た う えで,
書 面に よ る同意 を与え る.
同意は6
ケ月の考慮期 間の後 更 新さ れ る.
同 意はいつ で も取消しう る
.
同 意の要件は法定さ れるが司 法 官の関 与 が 望 ま しい.
胚の提供は い かなる報 酬や利益の対象に な ら な い
.
提 供 者の匿 名 性 は受 け手のカッ プル・
生 ま れる子・
第三者に関して総体 的に保 障さ れ な け ればな ら ない
.
子と胚 提 供 者との間に はいか な る親子関 係も確立 で き ない,
許可 され た医 療 介 助 生 殖セ ンター
の中で,
公的な性格を もつ少数の施 設の み が,
胚の譲渡に関 す る責 任 を 有 す る.
提 供者は, 既に親の経験 者で あ るこ と が望 ましい.
提 供 は,
不 妊カ ッ プル に対 するもの
,
ま た は例外 的に, 出生 前診断の可 能 性の ない遺 伝 病 者の た めの医 療 的なもの に 限 られる.
提 供で親となる女性の年 齢は通常の生殖年 齢に相 当 すべ きであ ろ うか 〔原 文 が 疑 問 形 (高 橋 )〕.
凍 結 受 精 卵に よ る 日本 初の出 産 (双 子の女 子 ) (東京 歯科大 )(← 1949