C がcopowerを持つとき,定理101を適用すればcopower がV-関手: V ⊗ C → C を定めることが分かる.更に系104より,a ∈ Cに対して− a a C(a,−) : V → C が分 かる.同様にしてpowerはV-関手⋔: Vop⊗ C → Cを定め,−⋔a a C(−, a) : V → Cop である.
定義. strict 2-category V-CATにおける同値をV-同値という.
定義. V-関手F: C → Dが本質的全射
⇐⇒任意のd ∈ Dに対して,あるc∈ C が存在して,U(D)での同型F c∼=dが成り立つ.
定理 108. F: C → D がV-同値⇐⇒F がV-忠実充満かつ本質的全射である.
証明. (=⇒) G: D → C でη: idC ∼= GF,ε: F G ∼= idD とする.F a G でη, ε がそ のunit, counitであるとしてよい(「2-category」のPDFを参照).η がV-自然同型だ から命題105よりF は忠実充満である.次に εがV-自然同型だからU(ε) : U(F G) ⇒ U(idD)も自然同型である.故に任意の d ∈ Dに対してU(ε)d: U(F G)(d) = F(Gd) → U(idD)(d) =dはU(D)での同型を与える.よってF は本質的全射である.
(⇐=) F が 本 質 的 全 射 だ か ら ,各 対 象 d ∈ D に 対 し て Gd ∈ C と D の 同 型 射 εd:F(Gd)−V→dが取れる.するとF がV-忠実充満だから,補題78と合わせると
C(c, Gd)−−−→ DFcGd (F c, F Gd)−−−→ Dεd◦− (F c, d)
はc∈ C について自然な同型である.故に系104よりF は右随伴を持ち,それはd 7→Gd で与えられる.またF aGのcounitはεであり,従ってF G∼= idとなる.
一方F aGのunitをηとすると
D D
C C
=⇒ η =⇒ε
idC
F G
F idD
=
D D
C C
idF
=⇒
idC F
F idD
だからF •ηはV-自然同型である.即ちc ∈ C に対してc成分F(ηc)は同型である.F がV-忠実充満だからU F は忠実充満,従ってconservativeであり従ってηc も同型であ る.よってηはV-自然同型である.
命題 109. T: Cop⊗ C → V をV-関手として,T のエンドhR
cT(c, c), ζiが存在するとす る.[idx, ζc] : [x,R
cT(c, c)]→[x, T(c, c)]はcについて自然だから,これが定めるwedge を[idx, ζ]で表すと,x ∈ V に対して h[x,R
cT(c, c)],[idx, ζ]iは[x, T(−,□)]のエンドで ある.(従って[x,R
cT(c, c)]∼=R
c[x, T(c, c)]であり[x,−]はエンドと交換する.)
証明. V の射σc: u→[x, T(c, c)]がc∈ C について自然だとする.このとき補題61より σc の随伴射σec: u⊗x→T(c, c)もcについて自然である.故にエンドR
cT(c, c)の普遍 性から,V の射h: u⊗x→R
cT(c, c)が一意に存在して u⊗x
Z
c
T(c, c)
T(c, c)
h
ζa
e
σa
が可換になる.このとき随伴により u
h x,
Z
c
T(c, c) i
[x, T(c, c)]
eh:=hの随伴射
[idx,ζa] σa
も可換である.hが一意だからこのようなehも一意である.
命題 110. T: Cop ⊗ C ⊗ D → V を V-関手として,任意の d ∈ D に対してエンド hR
cT(c, c, d), ζdiが存在するとする.このとき次の条件を満たすV-関手F: D → V が一 意に存在する.
(1) d∈ Dに対してF d = Z
c∈C
T(c, c, d).
(2) s∈ C に対して,counitが定めるζsd: F d →T(s, s, d)はdについて自然である.
証明. まずこのようなF が存在したとする.ζsd: F d→T(s, s, d)がd∈ Dについて自然 だから
[F a, F b]
D(a, b) [F a, T(s, s, b)]
[T(s, s, a), T(s, s, b)]
Fab [id,ζsb]
T(s,s,−)ab [ζsa,id]
が可換である.この下回りの合成は命題55, 71 より s について自然である.また命題 109よりh[F a, F b],[id, ζb]iはエンドである.故にこのエンドの普遍性から,このような Fab は一意であり,従ってF も一意である.
よって F が存在することを示せばよい.そのためには,上記のエンドによって得られ る射(次の図式の点線の射)をFabとして,
[F a, F b]
D(a, b) [F a, T(s, s, b)]
[T(s, s, a), T(s, s, b)]
Fab [id,ζsb]
T(s,s,−)ab [ζsa,id]
これによりF がV-関手となることを示せばよい.
まず次の図式が可換であることを示す.
D(b, c)⊗ D(a, b) D(a, c)
[F b, F c]⊗[F a, F b] [F a, F c]
mabc
Fac
Fbc⊗Fab
mF aF bF c
そのために次の図式を考える.
D(b, c)⊗ D(a, b) D(a, c)
[F b, F c]⊗[F a, F b] [F a, F c]
[T(s, s, b), T(s, s, c)]⊗[T(s, s, a), T(s, s, b)] [T(s, s, a), T(s, s, c)]
[T(s, s, b), T(s, s, c)]⊗[F a, T(s, s, b)] [F a, T(s, s, c)]
m
[ζas,id]
id⊗[ζsa,id]
m T(s,s,−)⊗T(s,s,−)
T(s,s,−)
[id,ζsc] m
F⊗F F
m
底面の四角は命題34より可換である.奥の四角はT(s, s,−)がV-関手だから可換であ
る.右の四角はFabの定義より可換である.手前の六角形は次の図式により可換である.
D(b, c)⊗ D(a, b)
[T(s, s, b), T(s, s, c)]⊗[F a, F b]
[T(s, s, b), T(s, s, c)]⊗[T(s, s, a), T(s, s, b)]
[F b, F c]⊗[F a, F b]
[F b, T(s, s, c)]⊗[F a, F b]
[F a, F c]
[F a, T(s, s, c)]
[T(s, s, b), T(s, s, c)]⊗[F a, T(s, s, b)]
T(s,s,−)⊗F
T(s,s,−)⊗T(s,s,−) [id,ζsc]⊗id [id,ζsc]
m F⊗F
[ζsb,id]⊗id
id⊗[id,ζsb]
id⊗[ζsa,id]
m
m
(F)
(F)
(35)
(33)
従ってエンドの普遍性から上面の四角が可換であることが分かった.
後は
I D(a, a)
[F a, F a]
ja
Faa
jF a (∗)
が可換であることを示せばよい.そのために次の図式を考える.
I D(a, a) [T(s, s, a), T(s, s, a)]
[F a, F a] [F a, T(s, s, a)]
ja
Faa
jF a
jT(s,s,a)
T(s,s,−)
[ζsa,id]
[id,ζsa]
(∗) (T)
(F)
(T)はT(s, s,−)がV-関手だから可換である.(F)はFab の定義より可換である.また 一番外側も可換である.よってエンドの普遍性から(∗)が可換であると分かる.
このF を Z
a∈A
T(a, a,−)で表す.
定義. T: Cop⊗ C → Dとするとき,
Z
c∈CD(−, T(c, c))を表現する対象をT のエンドと いい
Z
c∈C
T(c, c)と書く.同様に Z
c∈CD(T(c, c),−)を表現する対象をT のコエンドとい い
Z c∈C
T(c, c)と書く.
定義より
D d,
Z
c∈C
T(c, c) ∼=
Z
c∈CD(d, T(c, c)) DZ c∈C
T(c, c), d ∼=
Z
c∈CD(T(c, c), d)
である.命題109より,D=V の場合のこの定義は第4.1節での定義と一致する.
T のエンド
Z
c∈C
T(c, c)が存在するとする.即ちd∈ Dについて自然な同型
D d,
Z
c∈C
T(c, c) ∼=
Z
c∈CD(d, T(c, c)) が成り立つ.これをφd とする.またエンドR
c∈CD(d, T(c, c)) のcounitをζcd とする.
a∈ C,d ∈ Dについてτad を合成 D
d, Z
c∈C
T(c, c) φ
−−→d
Z
c∈CD(d, T(c, c)) ζ
d
−→ Da (d, T(a, a)) で定める.τad はdについて自然だから,命題99より,あるξa: R
cT(c, c)−V→T(a, a)が 存在してξa◦ −=τad と書けて,更に(簡単のためe:=
Z
c∈C
T(c, c)とすると) ξaは合成
I −→ Dje Z
c∈C
T(c, c), Z
c∈C
T(c, c)
φe
−→
Z
c∈CDZ
c∈C
T(c, c), T(c, c)
ζea
−→ DZ
c∈CT(c, c), T(a, a)
と一致する.故に命題53, 57よりξa はa∈ C について自然なDの射である.このξa は
「普遍性」を満たす.
...
) a について自然な D の射 σa: d −V→ T(a, a)を取る.これは V の射 σa: I →
D(d, T(a, a))であり,a について自然である.故にエンドR
cD(d, T(c, c)) の普遍性 より,V の射hが存在して
I
Z
c∈CD(d, T(c, c)) D(d, T(a, a))
h
ζda σa
が可換になる.このとき図式
I
Z
c∈CD(d, T(c, c)) D(d, T(a, a))
D d,
Z
c∈C
T(c, c)
h
ζad σa
φ−1
d
τad=ξa◦−
は可換である.eh := φ−d1◦h はD の射d −V→ R
c∈CT(c, c)である.よって命題 29よ りξa◦eh =σaである.
逆にf: d−V→R
c∈CT(c, c)がξa◦f =σaを満たしたとする.このとき図式
I D
d, Z
c∈CT(c, c)
D(d, T(a, a))
Z
c∈CD(d, T(c, c))
f
ξa◦−
σa
φd
ζad
は可換である.故にエンドの普遍性からφd ◦f =h が分かり,eh =φ−d1 ◦h = f で ある.
但し,逆にa ∈ C について自然なDの射 ξa: e −V→ T(a, a)が「普遍性」を満たしたから といってeがエンドになるとは限らない.
次にV-関手T, S: Cop⊗ C → DのエンドR
cT(c, c),R
cS(c, c)が存在するとして上記 のようにして得られるD の射をξa: R
cT(c, c) −V→ T(a, a),ζa: R
cS(c, c) −V→ S(a, a)と する.
θab: T(a, b) →S(a, b)をa, b∈ C について自然な Dの射とすると,命題54より合成 R
cT(c, c)−→ζa T(a, a) −−→θaa S(a, a)はa ∈ Cについて自然である.故にエンドの普遍性に より,次の点線の射hが存在して可換となる.
R
cT(c, c) R
cS(c, c)
T(a, a) S(a, a)
h
ζa
ξa
θaa
このhを Z
c∈C
θccで表す.
命題 111. F, G, H: C → D をV-関手,θ: G ⇒ H をV-自然変換とする.命題46 よ
りθb ◦ −: D(F a, Gb) → D(F a, Hb) はa, b ∈ C について自然だから,V の射 R
c(θc ◦
−) : [C,D](F, G)→[C,D](F, H)が得られる.このときR
c(θc◦ −) =θ◦ −である.
証明. エンドの普遍性により次の図式が可換であることを示せばよい.
[C,D](F, G)
[F c, Gc]
I⊗[C,D](F, G)
I⊗[F c, Gc]
[C,D](G, H)⊗[C,D](F, G)
[Gc, Hc]⊗[F c, Gc]
[C,D](F, H)
[F c, Hc]
evc id⊗evc evc⊗evc evc
θ◦−
λ−1
λ−1
θc◦−
θ⊗id
θc⊗id
m
m
(λ) (evc)
(θ◦ −)
(∗)
(θc ◦ −)
(θ◦ −),(θc◦ −)は定義より可換である.(λ)はλ の自然性により可換である.(evc)は evc がV-関手だから可換である.(∗)はevc◦θ =θcだから可換である.
補題 112. T: Aop⊗ A ⊗ Bop⊗ B → V をV-関手として,任意のa, a0 ∈ Bに対してエン ドhR
bT(a, a0, b, b), ζaa0iが存在すると仮定する.また対象x ∈ V,a∈ Aに対してV の 射σa: x →R
bT(a, a, b, b)を取りτa := x−→σa R
bT(a, a, b, b) ζ
aa
−−→b T(a, a, b, b)
とする.
このとき
σaがa∈ Aについて自然⇐⇒τaがa∈ Aについて自然 証明. (=⇒) 命題54より明らか.
(⇐=) τa が a ∈ A について自然とする.次の図式の(∗) が可換であることを示せば
よい.
A(a, a0)
[T(a, a, b, b), T(a, a0, b, b)]
hZ
b∈B
T(a, a, b, b), Z
b∈B
T(a, a0, b, b) i
h x,
Z
b∈B
T(a, a0, b, b) i
hZ
b∈B
T(a0, a0, b, b), Z
b∈B
T(a, a0, b, b) i
[T(a0, a0, b, b), T(a, a0, b, b)]
hZ
b∈B
T(a, a, b, b), T(a, a0, b, b) i
[x, T(a, a0, b, b)]
hZ
b∈B
T(a0, a0, b, b), T(a, a0, b, b) i
[σa,id]
[σa0,id]
[σa,id]
[σa0,id]
T(a,−,b,b)
R
bT(a,−,b,b)
R
bT(−,a0,b,b)
T(−,a0,b,b)
[ζbaa,id]
[id,ζaab 0]
[id,ζbaa0]
[id,ζaab 0]
[ζbaa,id]
(∗)
([−,□])
([−,□]) (110)
(110)
まず(110)は命題 110の証明より可換である.([−,□])は[−,□]が関手であるから可換 である.また一番外側の四角はτa がa について自然だから可換である.よって,命題 109よりh[x,R
bT(a, a0, b, b)],[id, ζaa0]iがエンドだから,エンドの普遍性より(∗)の可換 性が分かる.
補題 113. T: Aop⊗ A ⊗ Bop⊗ B → V をV-関手として,任意の a, a0 ∈ B に対してエ ンドhR
bT(a, a0, b, b), ζaa0iが存在すると仮定する.このとき Z
ha,bi∈A⊗B
T(a, a, b, b)∼= Z
a∈A
Z
b∈B
T(a, a, b, b).
但しこの式は,片方が存在するならばもう片方も存在して同型となることを表す.
証明. まずエンドhR
ha,biT(a, a, b, b), ξi が存在するとする.このときha, bi ∈ A ⊗ B に 対してξab: R
ha,biT(a, a, b, b) → T(a, a, b, b) でありこれはb ∈ B について自然である.
よってR
bT(a, a, b, b)の普遍性により,次の図式を可換とするσaが存在する.
Z
ha,bi∈A⊗B
T(a, a, b, b)
Z
b∈B
T(a, a, b, b)
T(a, a, b, b)
σa
ζbaa ξab
補題 112 より σa は a ∈ A について自然である.このとき hR
ha,biT(a, a, b, b), σi が R
bT(−,□, b, b)のエンドである.
...
) そのためにτa: x→R
bT(a, a, b, b)がa∈ Aについて自然であるとする.このと き合成
x−→τa Z
b∈B
T(a, a, b, b) ζ
aa
−−→b T(a, a, b, b) がa, bについて自然だからよってhR
ha,biT(a, a, b, b), ξiの普遍性により,次の外側の 四角を可換とするhが存在する.
x
Z
ha,bi∈A⊗B
T(a, a, b, b) Z
b∈B
T(a, a, b, b) T(a, a, b, b)
h
ξab
τa
ζbaa σa
右下の三角は可換だから,R
bT(a, a, b, b)の普遍性により左上の三角も可換となる.
このようなhは明らかに一意である.
次にエンドhR
a
R
bT(a, a, b, b), σiが存在するとする.このときξabを合成 Z
a∈A
Z
b∈B
T(a, a, b, b)−→σa Z
b∈B
T(a, a, b, b) ζ
aa
−−→b T(a, a, b, b) で定めれば,ξab はa ∈ A,b∈ Bについて自然である.hR
ha,biT(a, a, b, b), ξiがT のエ ンドであることを示せばよい.
そのためにτab: x →T(a, a, b, b)がa, bについて自然であるとする.R
b∈BT(a, a, b, b)
の普遍性により次の図式を可換とするhaが存在する.
x
Z
b∈B
T(a, a, b, b)
T(a, a, b, b)
ha
ζbaa τab
このhaはaについて自然だから次の図式を可換とするkが存在する.
x
Z
a∈A
Z
b∈BT(a, a, b, b) Z
b∈B
T(a, a, b, b)
k
σa
ha
このk は明らかに一意である.
定理 114. T: Aop⊗ A ⊗ Bop⊗ B → C をV-関手として,任意の a, a0 ∈ Aに対してエ ンドR
b∈BT(a, a0, b, b)が存在すると仮定する.このとき Z
ha,bi∈A⊗B
T(a, a, b, b)∼= Z
a∈A
Z
b∈B
T(a, a, b, b).
但しこの式は,片方が存在するならばもう片方も存在して同型となることを表す.
証明. R
ha,biT(a, a, b, b)が存在するならば,c∈ C について C
c, Z
ha,bi∈A×B
T(a, a, b, b) ∼=
Z
ha,bi∈A×BC(c, T(a, a, b, b))
∼= Z
a∈A
Z
b∈BC(c, T(a, a, b, b))
∼= Z
a∈AC c,
Z
b∈B
T(a, a, b, b)
だから Z
a∈A
Z
b∈B
T(a, a, b, b)∼= Z
ha,bi∈A⊗B
T(a, a, b, b)である.
一方R
a
R
bT(a, a, b, b)が存在すれば C
c, Z
b∈B
Z
a∈A
T(a, a, b, b) ∼=
Z
a∈A
Z
b∈BC(c, T(a, a, b, b))
∼= Z
ha,bi∈A×BC(c, T(a, a, b, b))
だから Z
ha,bi∈A⊗B
T(a, a, b, b)∼= Z
a∈A
Z
b∈B
T(a, a, b, b)である.
5 Kan 拡張
V-CATはstrict 2-categoryだったから,V-CATにおけるKan拡張を考えることが できる.これを具体的に書き下すと次の定義を得る.
定義. C,D,MをV-豊穣圏,F: C → D,E: C → M をV-関手とする.F に沿ったE の左Kan拡張とは組hF†E, ηiであって,以下の条件を満たすものである.
(1) F†E はV-関手 D → M,ηはV-自然変換E ⇒F†E◦F である.
D
C M
η =⇒
F
E F†E
(2) 他にV-関手 S: D → MとV-自然変換θ: E ⇒S◦F が存在したとき,V-自然変 換τ: F†E ⇒S が一意に存在してθ =τF ◦ηとなる.即ち次の等式が成り立つ.
D
C η =⇒ M
F
E F†E
S
τ =
D
C M
=⇒
F θ
E S
ηを左 Kan拡張のunitと呼ぶ.同様にして右Kan拡張,左Kanリフト,右Kanリフ トも定義する.
定義を言い換えればF に沿ったE の左Kan拡張とは,E から F−1: Fun(D,M) → Fun(C,M)への普遍射のことである.従って次の命題を得る.
命題 115. F: C → D,E: C → MをV-関手とする.このとき
HomFun(C,M)(E, F−1(−))が表現可能関手⇐⇒F†E が存在する が成り立つ.またこのときS ∈Fun(D,M)について自然な全単射
HomFun(D,M)(F†E, S)∼= HomFun(C,M)(E, F−1S)
が成り立つ.この全単射でid ∈ Hom(F†E, F†E)に対応するη ∈ Hom(E,(F†E)◦F) がF†E のunitである.
左Kan拡張F†E が存在したとしても,より強い条件である [D,M](F†E, S)∼= [C,M](E, F−1S) は一般には成り立たないが,逆に次の命題は成り立つ.
命題 116. F: C → D,E: C → M,T: D → MをV-関手として,S ∈[D,M]につい て自然な同型[D,M](T, S) ∼= [C,M](E, F−1S) が存在するとする.このときあるV-自 然変換η: E ⇒T F が存在して,hT, ηiがF に沿ったE の左Kan拡張となる.
証明. φS: [D,M](T, S) →[C,M](E, F−1S)をS について自然な同型とする.即ちV -自然同型
φ: [D,M](T,−)⇒[C,M](E, F−1(−)) : [D,M]→ V である.これにU: V-CAT→CATを適用して自然同型
U φ: U([D,M](T,−))⇒U([C,M](E, F−1(−))) : Fun(D,M)→V を得る.これにHomV(I,−)を適用すれば,例48により自然同型
HomFun(D,M)(T,−)∼= HomFun(C,M)(E, F−1(−)) を得る.よって命題115によりT はF に沿ったE の左Kan拡張となる.
通常の圏の場合の各点左Kan拡張の特徴づけに倣って次の定義をする.
定義. C,D,MをV-豊穣圏,F: C → D,E: C → M,T: D → MをV-関手とする.
またC は小さいとする.このときT がF に沿ったEの各点左Kan拡張
⇐⇒d∈ D,m∈ Mに対して自然な同型
M(T d, m)∼=Cb(D(F−, d),M(E−, m)) が成り立つことをいう.
定理 117. 各点左Kan拡張は左Kan拡張である.
証明. T がF に沿ったEの各点左Kan拡張だとすると,S ∈[D,M]について自然に [D,M](T, S) =
Z
d∈DM(T d, Sd)
∼= Z
d∈D
Cb(D(F−, d),M(E−, Sd))
= Z
d∈D
Z
c∈Cop
[D(F c, d),M(Ec, Sd)]
∼= Z
c∈Cop
Z
d∈D
[D(F c, d),M(Ec, Sd)]
= Z
c∈Cop[D,V](D(F c,−),M(Ec, S−))
∼= Z
c∈CM(Ec, SF c)
= [C,M](E, SF)
であるから命題116よりT はF に沿ったE の左Kan拡張である.
命題115によれば,この定理における左Kan拡張のunitは合成 I −→jT [D,M](T, T)∼= [C,M](E, T F) で与えられる.これをη: E ⇒T F とすると,ηのc成分は
I −→jT [D,M](T, T)∼= [C,M](E, T F)−−→ Mevc (Ec, T F c)
である.これは次の図式の左回りの合成である.
[D,M](T, T) Z
d∈DM(T d, T d) Z
d∈D
Cb(D(F−, d),M(E−, T d)) Z
d∈D
Z
c∈Cop
[D(F c, d),M(Ec, T d)]
Z
c∈Cop
Z
d∈D
[D(F c, d),M(Ec, T d)]
Z
c∈Cop
[D,V](D(F c,−),M(Ec, T−)) Z
c∈CM(Ec, T F c) [C,M](E, T F)
I
M(T F c, T F c)
Cb(D(F−, F c),M(E−, T F c))
[D(F c, F c),M(Ec, T F c)]
[D,V](D(F c,−),M(Ec, T−))
M(Ec, T F c) [I,M(Ec, T F c)]
∼∼∼
jT F c
∼
evc
evF c
∼
i−1 jF
evF c
evF c
evc
evc
[jF c,id]
(jF)
(∗)
(113)
(∗)
(94)
この図式で(∗)は同型の定め方より可換である.(jF)はjF の定義より可換である.(113) は補題113の証明より可換である.(94)は命題94より可換である.以上によりこの図式 は可換であり,従ってηc: Ec−V→T F cは
I −−−→ MjT F c (T F c, T F c)∼=Cb(D(F−, F c),M(E−, T F c))
evc
−−→Cb(D(F c, F c),M(Ec, T F c))−−−−→[jF c,id] [I,M(Ec, T F c)]
i−1
−−→ M(Ec, T F c) (118)
と一致する.
定理 119. 任意のd∈ Dに対して Z c∈C
D(F c, d)Ecが存在するならば各点左Kan拡
張F†E も存在してF†E(d)∼= Z c∈C
D(F c, d)Ec である.
証明. L:=
Z c∈C
D(F c,−)Ecと置く.d∈ D, m∈ Mについて自然に
M(Ld, m) =MZ c∈C
D(F c, d)Ec, m
∼= Z
c∈CM(D(F c, d)Ec, m)
∼= Z
c∈Cop
[D(F c, d),M(Ec, m)]
=Cb(D(F−, d),M(E−, m)) であるからLはF に沿ったE の各点左Kan拡張である.
定理 120. 左随伴は左Kan拡張と交換する.
証明. 2-categoryの一般論より従う.「2-category」のPDFを参照.
6 余極限
6.1 定義
V-豊穣圏においても極限,余極限を考えたい.しかし一般のV-豊穣圏の場合,∆が標 準的に定義できないため,∆の左随伴,右随伴として定義することはできない.そのため どのように定義すべきかを考える必要がある.
普通,どのような考えで定義するのかよく分からないが,ここでは「余極限による各点 左Kan拡張ができる」ように定義することを考える.通常の圏では
Hom(Hom(F−, d),Hom(E−, u))∼= Hom(F ↓d →C →U,∆u) だったから,F†E が各点左Kan拡張であるとすると
Hom(F†E(d), u)∼= Hom(Hom(F−, d),Hom(E−, u))
∼= Hom(F ↓d →C →U,∆u)
よりF†E(d)∼= colim(F ↓d →C →U)となる.そこで次の定義をする.