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一層ラーメン構造の信頼性解析への適用

第 5 章 橋梁維持管理計画策定への適用 85

6.3 一層ラーメン構造の信頼性解析への適用

構造物の信頼性解析に対する提案手法の有効性を示すために,本節では一層ラー メン構造への適用した数値実験を行う[12].解析の対象とするラーメン構造を図6.3 に示す.この構造物の破壊のメカニズムは古田[13]により明らかにされている.構 造物の損傷は4つの要因,垂直荷重P,水平荷重H,梁の全塑性モーメントMB,お よび柱の全塑性モーメントMCより生じる.数値計算例では,これらの要因は表6.1

に示す基本確率分布に従う確率変数として扱われる.構造物は図6.4に示す8つの 破壊モードを有する.これらのモードの破壊条件式を式6.2に示す.ここで,Lは柱 の長さを表す.この数値計算例では,Lを100と設定する.提案手法は破壊条件式 Zii=1〜8)を限界状態関数値として用いる.

Z1 = 4MB 2P L

Z2 = 2MB + 2MC 2P L Z3 = 3MB + MC 2P L

Z4 = 4MC HL

Z5 = 2MB + 2MC HL

Z6 = MB + 3MC HL

Z7 = 2MB + 4MC 2P L HL Z8 = 4MB + 2MC 2P L HL

(6.2)

MB

MC

H

4L P

L

図 6.3: 一層ラーメン構造

提案手法のパラメータは,粒子数を100,繰り返し回数を2,000,悪化受理率を

20%と設定する.行動ルールは3.3.2で用いた標準的なパターンを用いる.また,こ

の実験では,ネットワークを対象としていないことから,設計変数は確率変数値,評 価値は限界状態関数値の合計値を用いて,破壊モードの探索を行うこととした.な お,最小カットセットに基づくグループ分けは,0以下となった限界状態関数に従 うことで代用した.この実験における検証は,1億個のサンプルをモンテカルロ法 によって発生させた結果と比較することで行う.なお,この例で用いられている構

図 6.4: 一層ラーメン構造の破壊モード

表 6.1: 損傷要因の基本確率分布 損傷要因 基本確率分布

P N(50, 102) H N(50, 102) MB N(0.5, 0.12) MC N(1.0, 0.22)

造物の確率空間はシンプルであることから,モンテカルロ法によって得られた結果 は厳密解とみなすことができる.

提案手法とモンテカルロ法によって得られた損傷サンプルの探索結果を表6.2に 示す.表6.2の「破壊モード」の列は該当するサンプルが満たしている破壊条件式,

つまり破壊モードを表している.例えば,もし式6.2に示したZ7Z8がともに0 以下のサンプルであれば,「破壊モード」の列の値は”7, 8”と表される.表6.2では,

サンプルはそれぞれが満たした式6.2に示した破壊条件式に基づいてグループに分 けられている.そして,各グループ中で最も高い発生確率を持つサンプルは発生確 率の高さに基づいて順位付けされている.したがって,モンテカルロ法によって得 られた上位15のグループについて,それぞれの手法より得られたサンプルが表6.2 に示されている.

比較結果より,提案手法が厳密解と同等のサンプリング精度を持つことを示した.

これは,提案手法とモンテカルロ法によって得られたサンプルに大きな違いがなかっ たからである.さらに,本研究では,繰り返し回数が増加するにつれて,損傷サン プルのグループ数が増加することが確認されている.提案手法では,粒子は,まず 高い発生確率を持つサンプルを集団で探索する.その後,各粒子が探索履歴に基づ くことによって状況に応じて探索領域を変更する.これらのプロセスの中で,粒子 はリサンプリングによって,集中的探索と大域的探索を繰り返す.したがって,提 案手法は発生確率に基づいた多様な損傷サンプルを得ることができた.また,提案 手法は6万個のサンプル(粒子数を40,繰り返し回数を1,500とした)を用いて表 6.2に示す結果と同等の上位15のグループのサンプルを得られた.一方,モンテカ ルロ法は同等の精度を得るために150万個のサンプルを必要とした.これは,提案 手法がリサンプリングと探索履歴を用いて効率的に様々なサンプルを探索できるか

表 6.2: 提案手法とモンテカルロ法との比較 順位 手法 発生確率 破壊モード

1

モンテカルロ法 2.117E-03 提案手法 2.047E-03 8 2

モンテカルロ法 2.113E-03 提案手法 1.860E-03 7 3

モンテカルロ法 1.836E-03

7,8 提案手法 1.756E-03

4

モンテカルロ法 1.036E-03 提案手法 9.845E-04 4,7 5

モンテカルロ法 1.034E-03 提案手法 9.539E-04 1,8 6

モンテカルロ法 1.033E-03 提案手法 9.486E-04 1 7

モンテカルロ法 1.028E-03 提案手法 9.750E-04 4 8

モンテカルロ法 6.931E-04

4,7,8 提案手法 6.450E-04

9

モンテカルロ法 6.876E-04

1,7,8 提案手法 5.752E-04

10

モンテカルロ法 3.541E-04

4,6,7,8 提案手法 3.158E-04

11

モンテカルロ法 3.539E-04

1,3,7,8 提案手法 3.446E-04

12

モンテカルロ法 3.524E-04

4,6,7 提案手法 3.401E-04

13

モンテカルロ法 3.512E-04

1,3,8 提案手法 3.438E-04

14

モンテカルロ法 1.950E-04

1,2,3,7,8 提案手法 1.896E-04

15

モンテカルロ法 1.948E-04

2,7,8 提案手法 1.881E-04

らである.これらの数値計算例より,提案手法は構造物の信頼性解析に対して有効 と考えられる.