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ワイブル分布のハザードモデルの特定化

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5.3  ハザードモデル

5.3.6  ワイブル分布のハザードモデルの特定化

表 5.3.6  性能低下のハザードと性能維持確率の関数形(ハザード形状統合型) 

確率分布の関数形  経過年数

t

における性能低下の 

ハザード

λ ( ) t

 

t

年以降も継続して要求性能が  維持される確率

S t ( )

 

ワイブル分布 

Weibull 

κ ρ , > 0, t ≥ 0

 

t

κ 1

κρ

exp ( ρ t

κ

)

 

図 5.3.6  供用年数と性能低下のハザード(ワイブル分布) 

 

図 5.3.7  供用年数と性能低下のハザード(ワイブル分布:続き) 

 

  以上のように,ワイブル分布は,ハザード形状の表現力が豊かであり,それを適用すると,指数 型を包含し,なおかつ性能低下リスクが時間の経過とともに逓増するケース,さらに逓減するケー スのいずれかをひとつの関数形により統合的に表現することが可能である。そして,ハザード形状 パラメータの推定結果を通じて,実状にあったハザード形状を選択的に使用することが可能である。

さらに,性能低下のハザードと性能維持確率の関数形がシンプルであり,比較的容易に尤度関数の 導出とパラメータ推定の数値計算が可能である。以下では,性能低下リスクと性能維持確率の関数 形としてワイブル分布に特定化することとする。  

 

に,累積到達確率は次式で表される。

( ) t ρ t

κ

Λ =

(5.3.24)

これを用いて,ワイブル型の寿命関数は次式で表される。

( ) exp{ ( )} exp{ }

S t = −Λ t = − ρ t

κ (5.3.25)

ワイブル型に従うライフタイム確率変数の性質として,累乗したもの

T

κは指数型なることがわか っている。たとえば,

q

次モーメントは,

E T [

q

] = ρ

− /qκ

Γ + / (1 q κ )

となる。平均は次式のように 表される。

[ ]

1

(1 1 )

E T = ρ

− /κ

Γ + / κ

(5.3.26)

さらに,ワイブル型のライフタイム変数の分散は,次式で表される。

2 2

[ ] (1 2 ) (1 1 )

Var T = ρ

− / ⎡κ

Γ + / − Γ + / κ κ

(5.3.27) このほか,ワイブル分布のライフタイム変数は,定数倍しても累乗をとってもワイブル性が保

持されるという優れた性質を有する。すなわち,c>0を定数とするとき,

T

Weibull ( ρ κ , )

従うならば,その定数倍のcT

Weibull ( ρ c

κ

, κ )

に従う。また,その累乗の

T

c

Weibull ( ρ κ , / c )

に従う。さらに,

M

個の互いに同一で独立の

Weibull ( ρ κ , )

に従うライフタイム確率変数の最小 値

min{ T

1

, , L T

M

}

の 分 布 は ,

Weibull M ( ρ κ , )

に 従 い , 確 率 変 数 の 最 小 値 が 安 定 的(minimum stable)となる点で優れた性質を有する。

さて,ライフタイム変数がワイブル分布に従う場合の尤度関数は,その到達確率と累積確率の 特定化した式を用いて次式で表される。

1 1

exp{ }

i

N D

i i

i

L

ρκ T

κ

ρ T

κ

=

= ∏ −

(5.3.28)

両辺において対数をとると,対数尤度関数は次のように導出できる。

1

log log( ) ( 1) log

N

i i i i

i

L

D ρκ D κ T ρ T

κ

=

= ∑ + − −

(5.3.29)

  図 5.3.8  最尤パラメータの探索(例示) 

この対数尤度を最大化するようなハザード形状パラメータ

κ

と構造特性パラメータ

ρ

を求める には,ニュートン・ラフソン法を用いて最尤パラメータを探索することが可能である。対数尤度 関数は凹関数となり,唯一の最大値が存在する。ブロイデン法,ブレント法等の準ニュートン法 は,1階条件やヘシアン行列を導出しなくても最大化の数値解を計算できる点で実用的である。

また,生存時間分析の市販ソフトがあり,ワイブル分布,指数分布,対数正規分布,対数ロジス ティック分布等が標準装備されている。

-2724.7 -2473.5

-2330 -2236.4

-2173.8

-2133.9-2112.0 -2105.3 -2112.2 -2131.3

-2161.4 -2201.6

-2800 -2700 -2600 -2500 -2400 -2300 -2200 -2100 -2000

0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6

リスク形状パラメータ κ

モデルの対数尤度 loL)

図 5.3.9  性能維持する寿命関数と性能低下の予測年次(例示) 

上の図のように,性能維持する寿命関数と性能低下の発生確率の曲線は,余寿命の中央値(メ ディアン)の時点で交わる。このメディアンは平均余寿命を理論的に導出した予測値と近似する。

また,性能低下の発生確率0.25となる予測年次(25%-quantile)は,劣化の早い構造物がいち 早く性能低下する年次を表す。一方,性能低下の発生確率0.75となる予測年次(75%-quantile) は,劣化の遅い構造物がライフサイクル後半まで粘って性能低下する年次を表す。

さらに,ワイブル型のライフタイム変数の平均余寿命は,その寿命関数が

S u ( ) = exp{ − ρ u

κ

}

で あることを用いて次のように表される。

exp{ }

( ) exp{ }

u

t dt

MRL u

u

κ κ

ρ ρ

= ∫ −

(5.3.30)

以下,表記の便宜上,分子の積分関数を MRL( , , ) exp{ }

I u

ρ κ

=

u

ρ

tκ dtとおく。

κ

>0であるが,

ワイブル型の平均余寿命を算定するためには,一般に分子の数値積分が課題となる。ここで,変 換

y = ρ t

κを行うと

dt = t

1κ

dy / ( ρκ )

であり,

ρ > , 0 κ

>0より

t → ∞

のとき,

y ( = ρ t

κ

) → ∞

なる。

1

( , , ) exp{ }

MRL u

I u κ y t dy

κ

ρ κ

ρ

ρκ

=

(5.3.31)

ここで,

t

1κ

= ρ

1 1− /κ

y

1/ −κ 1であるので次のように変形できる。

1 1

1 1

( , , ) exp{ }

MRL u

I u κ y y dy

κ κ

ρ

ρ κ ρ

ρκ

− / / −

=

(5.3.32)

ここで,不完全ガンマ関数

Γ , ( ν z )

は次のように定義される。

( ) exp{ } 1 ( 0 0)

z z w wν dw z

ν

ν

Γ , =

− , > , > (5.3.33)

これを用いて,前述した分子は次のように表される。

1 1

( , , )

IMRL u u

κ κ

ρ κ ρ ρ

κ κ

− /

= Γ , (5.3.34)

したがって,ワイブル型の平均余寿命は,不完全ガンマ関数を用いて次のように導出できる。

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0

0 20 40 60 80 100 120

供用年数(年)

RC部材の性能低下

性能低下の発生確率F(t)=1-S(t)

性能維持する寿命関数S(t)

Q(.25)

( 8 3.98)

( ) exp 3.036 10

S t = × t

Median Q(.75)

1

1

( ) exp( )

u MRL u

u

κ κ

κ

ρ ρ

κ κ

ρ

− /

Γ ,

= −

(5.3.35)

不完全ガンマ関数は,数値積分が可能であり,寿命関数の推定パラメータを用いて,ワイブル型 の平均余寿命を予測指標として算定することが可能である。 特に,経過年数がゼロ(u=0)の 場合は,ワイブル型の平均余寿命は次式で表される。

1

1

1 0

(0) 1 0

exp(0) MRL

κ

κ

ρ

κ κ ρ

κ κ

− /

− /

Γ ,

= = Γ ,

(5.3.36)

(0)

MRL

は,対象とするコンクリート構造物群が,新設時に期待される平均余寿命を表し,実耐 用年数の予測値を意味する。供用開始後において経過年数u年の時点で期待される平均余寿命を 予測値として算定し,次のようにプロットすることが可能である。

  図 5.3.10  経過年数において期待される平均余寿命(例示) 

 

70.2 60.2

50.4 41.2

33.0 26.0

20.3

0 10 20 30 40 50 60 70 80

0 10 20 30 40 50 60

経過年数(年) u 経過年数における平均余寿命の (年) MRL(u)

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