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ハザードモデルにおける確率分布とハザード形状

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5.3  ハザードモデル

5.3.5  ハザードモデルにおける確率分布とハザード形状

港湾構造物を対象に,ハザード形状を特定するには,供用年数

t

の経過にともない,性能低下 のハザードがどのように変動するかの仮説を設定する必要がある。具体的に,経過年数

t

におけ る性能低下のハザードを表現する関数

λ ( ) t

と,

t

年以降も継続して要求性能が維持される確率(生 存率関数)

S t ( )

を作業仮説として設定し,その構造物のデータセットを用いて,ハザードの形状 を推定することが課題となる。つぎの表に紹介するように,パラメトリックな関数形は様々なタ イプが使用されている。

  (1)時間に無関係に性能低下のリスクが一定であるハザード形状 

性能低下のハザードを指数型に特定化したモデルは,最も容易に尤度関数の導出とパラメータ 推定の数値計算が可能である。しかし,性能低下のハザードが時間に関して一定である仮説は,

強い仮定を前提にしており,この特殊な条件設定は対象のコンクリート構造物に適用できるとは 限らない。

表 5.3.2  性能低下のハザードと性能維持確率の関数形(リスク一定型) 

確率分布の関数形  経過年数

t

における性能低下の 

ハザード

λ ( ) t

 

t

年以降も継続して要求性能が 維持される確率

S t ( )

 

指数分布 

Exponential

ρ > 0, t ≥ 0

 

ρ

exp

(

ρ

t

)

 

  (2)経過年数に関して性能低下のリスクが逓減するハザード形状 

性能低下のハザードは,ライフサイクルの初期段階に高く,時間の経過とともに,そのリスク が逓減していく状況において,パレート分布を適用することが可能である。

 

表 5.3.3  性能低下のハザードと性能維持確率の関数形(リスク逓減型) 

確率分布の関数形  経過年数

t

における性能低下の 

ハザード

λ ( ) t

 

t

年以降も継続して要求性能が  維持される確率

S t ( )

 

パレート分布  Pareto 

, 0, t

θ ρ > ≥ ρ

 

t

θ

t

θ θ

ρ

 

図 5.3.3  供用年数と性能低下のハザード(パレート分布) 

  (3)経過年数に関して性能低下のリスクが逓増するハザード形状 

性能低下のハザードがライフサイクルの前半にほとんど見られないが,その後半に時間の経過 とともに,性能低下のハザードが加速して逓増する状況で,ゴンペルツ分布の適用が可能である。

表 5.3.4  性能低下のハザードと性能維持確率の関数形(リスク逓増型) 

確率分布の関数形  経過年数

t

における性能低下の 

ハザード

λ ( ) t

 

t

年以降も継続して要求性能が維持  される確率

S t ( )

 

ゴンペルツ分布 

Gompertz

κ ρ , > 0, t ≥ 0

 

exp( t )

ρ κ

{ ( ) }

exp ρ 1 exp κ t κ

⎡ − ⎤

⎢ ⎥

⎣ ⎦

 

パレート分布

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45

0 20 40 60 80 100

供用年数 t

性能低下のリスク λ(t)

θ=0.1 θ=0.5 θ=1.0 θ=1.5 θ=2.0

 

図 5.3.4  供用年数と性能低下のハザード(ゴンペルツ分布) 

  (4)性能低下のリスクが逓増してピークを迎えて逓減するハザード形状 

性能低下のハザードが初期に低いが,供用途中段階においてある特定の時期に性能低下のハザ ードがピークとして現れて,その後に時間の経過とともに性能低下リスクが逓減していく状況に おいて,対数ロジスティック分布の適用が可能である。

 

表 5.3.5  性能低下のハザードと性能維持確率の関数形(ピーク・リスク型) 

確率分布の関数形  経過年数

t

における性能低下の

ハザード

λ ( ) t

 

t

年以降も継続して要求性能  が維持される確率

S t ( )

 

対数ロジスティック  Log logistic 

, 0, t 0 κ ρ > ≥

 

1

1 t

t

κ κ

κρ ρ

+

1 1 + ρ t

κ

 

 

図 5.3.5  供用年数と性能低下のハザード(対数ロジスティック分布) 

  (5)性能低下のリスクが一定・逓増・逓減のいずれかに近いかを柔軟に表現するハザード形状  性能低下のハザードが一定であるケースに加えて,時間の経過とともにリスクが逓増するケー スと,一方で時間経過にあわせてリスクが逓減するケースの3ケースのいずれかを選択的に適用 したい場合は,3ケースのハザード形状を統合的に表現することができる点で優れた累積指数分 布とワイブル分布を使用することが可能である。ワイブル分布の方がシンプルな関数形であり,

ハザード形状の表現力も相対的に豊かである点で優れている。

対数ロジスティック分布(ρ=0.001)

0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09

0 20 40 60 80 100

供用年数 t

性能低下のリスクλ(t) κ=1.5

κ=1.8 κ=2.0 κ=2.2 κ=2.5 ゴンペルツ分布(ρ=1.0E-08)

0 0.002 0.004 0.006 0.008 0.01 0.012 0.014

0 20 40 60 80 100

供用年数 t

性能低下のリスク λ(t)

κ=0.10 κ=0.11 κ=0.12 κ=0.13 κ=0.14

表 5.3.6  性能低下のハザードと性能維持確率の関数形(ハザード形状統合型) 

確率分布の関数形  経過年数

t

における性能低下の 

ハザード

λ ( ) t

 

t

年以降も継続して要求性能が  維持される確率

S t ( )

 

ワイブル分布 

Weibull 

κ ρ , > 0, t ≥ 0

 

t

κ 1

κρ

exp ( ρ t

κ

)

 

図 5.3.6  供用年数と性能低下のハザード(ワイブル分布) 

 

図 5.3.7  供用年数と性能低下のハザード(ワイブル分布:続き) 

 

  以上のように,ワイブル分布は,ハザード形状の表現力が豊かであり,それを適用すると,指数 型を包含し,なおかつ性能低下リスクが時間の経過とともに逓増するケース,さらに逓減するケー スのいずれかをひとつの関数形により統合的に表現することが可能である。そして,ハザード形状 パラメータの推定結果を通じて,実状にあったハザード形状を選択的に使用することが可能である。

さらに,性能低下のハザードと性能維持確率の関数形がシンプルであり,比較的容易に尤度関数の 導出とパラメータ推定の数値計算が可能である。以下では,性能低下リスクと性能維持確率の関数 形としてワイブル分布に特定化することとする。  

 

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