NCVFC

7.2.4 リーケージ

リーケージは、事業バウンダリーの外での燃料の抽出、加工、運搬、分配等の過程で発生 する。ACM0011では、次の式でリーケージを計算するとしている。

LE y = LE CH4,y + LE LNG,CO2,y (11)

ここで、

LE y = 年y のリーケージ (tCO2e)

LE CH4,y = 年y の上流工程でのCH4排出量(tCO2e)

LE LNG,CO2,y = 年y の 天 然 ガス か らLNGへ の 液 化 、運 送 、 ガ ス 化 に 伴 うリ ー ケ ー ジ

(tCO2e)

上記のCH4やCO2は、ACM0011では、主に天然ガスを使用することで発生するものである。本 事業では、天然ガスを使わないのでその発生量は相対的に少ない。また、事業の前後で石 炭の採掘、運搬等のプロセスも変わらないので、排出削減量を計算するときのリーケージ はゼロとみなすことができる。

7.2.5 排出量の削減

年yにおける事業活動による排出削減量は、ベースラインによって異なる。排出削減量は以 下の式で計算できる。

y y

y BE PE

ER = − (12)

ここで、

ER y = 年yの 排出削減量 (tCO2e/yr)

BE y = 年yの ベースライン排出量 (tCO2e/yr) PE y = 年yの 事業排出量 (tCO2e/yr)

7.2.6 排出量削減の試算

削減量の試算のため、次の条件を仮定する。

・事業実施発電所から電力グリッドへの電力供給量は、2,600,000MWh。これとは別に自家 消費電力量が電力供給量の約5%にあたる135,256MWh。過去3年の電力供給量実績(EG AVR ) を上回るが、最大値(EG MAX )は超えない、ベースラインの設定におけるケースBに相当。

・乾燥後の石炭の使用量(FC i,j,y )は、1,300,000t。

・乾燥後の石炭の高位発熱量は分析結果から、6,000kcal/kg 程度なので、事業実施後の石 炭は、亜瀝青炭と瀝青炭の間の性状と仮定。低位発熱量(NCV coal,y )はIPCCのデフォル ト値、瀝青炭:0.0258GJ/tと同亜瀝青炭:0.0189 GJ/tの平均をとって0.02235GJ/t。同

130

様にCO2排出係数(EF CO2,i,y )は、デフォルト値、瀝青炭:94.6tCO2/GJと同亜瀝青炭:

96.1 tCO2/GJの平均として、95.35 tCO2/GJを適用。

データと変数

データ/変数 EG PAPP,x

単位 MWh/yr

説明 過去3年の各年の事業実施発電所から電力グリッドに供給された電力量 情報源 PT Indonesia Power

値 2007 2008 2009

2,596,960 2,540,690 2,080,320 等式(5)より、EG AVR = 2,405,990

データ/変数 EG PAPP,total,x

単位 MWh/yr

説明 過去3年の各年に事業実施発電所で発電した電力量 情報源 PT Indonesia Power

値 2007 2008 2009

2,782,000 2,727,170 2,084,290 よって、EG AVR,total = 2,531,153

データ/変数 FC i,x 単位 t

説明 過去3年の各年の、事業実施発電所での石炭消費量 情報源 PT Indonesia Power

値 2007 2008 2009

1,509,228 1,658,187 1,517,109

データ/変数 NCV i,x

単位 TJ/t

説明 過去3年の各年の事業実施発電所で燃焼した石炭の単位発熱量 情報源 PT Indonesia Power

値 2007 2008 2009

0.0184 0.0181 0.0190

データ/変数 EF FF,BL 単位 tCO2/TJ

説明 事業実施前の、事業実施発電所で使っていた水分の多い石炭の二酸化炭素排 出係数

情報源 IPCC デフォルト値(亜瀝青炭)

値 96.1

データ/変数 η PAPP,y

単位 -

説明 次の二つのうち、大きな値。

η PAPP,hist

事業実施前の事業実施発電所のエネルギー効率。過去3年間の実績値。電力 グリッドへ接続する電力量を対象としたネットのエネルギー効率。

η PAPP,y

事業実施後の事業実施発電所のエネルギー効率。電力量2,600,000MWh、燃料 使用量1,300,000t、燃料低位発熱量0.002235TJ/t(亜瀝青炭と瀝青炭の平 均をとった推定値)を使って算出。

情報源 等式(7)よりηPAPP,hist =29.96 等式(8)よりηPAPP,y = 32.21

値 32.21

よって、等式(6)より、事業実施後の年yの事業実施発電所のベースライン排出係 数、EF BL,plant,y = 1.074 tCO2/MWh

データ/変数 ηPAPP-gross,,hist

単位 -

説明 次の二つのうち、大きな値 ηPAPP, gross ,hist

事業実施前の事業実施発電所のエネルギー効率。過去3年間の実績値。総発 電量を対象としたグロスのエネルギー効率。

ηPAPP,gross,y

事業実施後の事業実施発電所のエネルギー効率。電力量2,735,256MWh、燃料 使用量1,300,000t、燃料低位発熱量0.02235TJ/t(亜瀝青炭と瀝青炭の平 均をとった推定値)を使って算出。

情報源 等式(7)’よりη PAPP,gross,hist = 31.52 等式(8)’よりη PAPP,gross,y = 33.89

値 33.89

よって等式(6)’より、事業実施後の年 y の事業実施発電所のベースライン排出

132

係数、EF BL,plant--grpss,y = 1.013 tCO2/MWh

データ/変数 EF BL,grid,y 単位 tCO2/MWh

説明 年yにおいて、事業実施発電所の接続する電力グリッドの排出係数 情報源 インドネシア国家CDM委員会より、Jamaliグリッド規定値

コンバインドマージン0.891)、ビルドマージン0.933 の最小値 値 0.891 (Ex-ante)

データ/変数 CAP max 単位 MW

説明 事業実施前の事業実施発電所の最大発電容量 情報源 PT Indonesia Power

値 371.5

データ/変数 Tmax 単位 Hours

説明 事業実施前の事業実施発電所の運転時間 情報源 PT Indonesia Power 運転記録。過去の平均

値 2007 2008 2009

7,584 8,059 8,473 等式(4)より、EG MAX = 2,990,384 MWh 等式(12)より

y y

y BE PE

ER = −

={EGAVR × EFBL,plant,y + (EGPJ,y – EGAVR ) × min (EFBL,plant,y ; EFgrid,y )

+ ECaux,y ×EFBL,plant-gross,y

×

i

y j

FC

i, ,

NCVi, y x EF CO2, i, y  

} -

={ 2,405,990 × 1.074 + (2,600,000 - 2,405,990) × 0.891 + 135,256 × 1.103 } - ( 1,300,000 × 0.02235 ×95.35 )

= 2,893,692 tCO2 - 2,770,430 tCO2 = 123,262 tCO2

よって、ACM0011ベースの排出削減量は、123,262tCO2(年間)と試算できる。

7.3 方法論の詳細検討と排出削減量の試算(参考)-AM0061を基にした場合-

今回の調査では、時間の制約から、AM0061の適用条件である過去5年分のデータの一部が入手できなか った。よって、本報告書ではデータのそろった3年分のデータのみを使い、あくまで参考情報として排 出削減量を試算した。

ACM0061 は、「既存発電設備の修復/エネルギー効率改善に関する方法論」である。タイトルに示される

ように、経年稼動により機能の低下した発電所施設のリハビリ事業や、エネルギー効率向上事業を対象 とする方法論である。適用条件と対象となる本事業の内容、適用の可否と検討課題を表7-3-1にまとめ る。

表7-3-1 ACM0061に基く検討課題

適用条件 該当する本事業の内容 適用の可否 と課題 対象発電所施設は、電力グリッドに電

力を供給していること。

Jamali 電力グリッドに接続し て、電力を供給している。

適用可能。

新規の発電装置の導入・運転を含めな いこと。

新規の発電装置の導入・運転 は含んでいない。

適用可能。

事 業 実 施後の 施 設全 体の 発 電能 力

(容量)の増加が、実施前と比べて15%

を越えないこと。

ボイラーやタービンの能力を 変化させる事業ではない。発 電施設全体の効率も 1~2 ポ イントの改善である。

適用可能。

事業実施発電所は、過去10 年以上稼 動していて、過去 5 年分のデータが入 手可能であること。

スララヤ発電所1984年から稼 動している。

適用可能。ただし、今 回の調査では、3 年分 のデータで試算。

エネルギー効率の改善とともに、燃料 転換を含む事業にも適用可能だが、燃 料転換による排出削減量はクレジットに 含めない。

石炭乾燥施設を導入し、熱量 の低い低品位炭を、乾燥させ て、熱量の高い石炭に転換処 理している。

適用可能と判断。

(今後定まる二国間制 度の内容による)

資本投資を必要とする改修/エネルギ ー効率改善の手法のみを含み、通常 の保守点検・維持管理の手法を事業に 含めることができない。

通常の保守点検・維持管理の 手法は含んでいない。

適用可能。

最も起こりうるベースラインシナリオが、

該当する発電施設を現状のまま、使用 し続けること。

現状のままが、最も起こりうる ベースラインシナリオである。

適用可能。

また、インドネシアにおける火力発電所の平均稼動年数は、30年程度といわれる。スララヤ発電所の2 号機は1986年4月から、6号機は1997年9月からそれぞれ稼動している。つまり、2号機の残存稼動年数は、

2010年末時点で2号機が6年、6号機が18年となる。

AMC0061が参照するツールは、「ベースラインの特定と追加性の証明の統合ツール」、「電力システムの排

出係数計算ツール」、「化石燃料の燃焼による事業、もしくはリーケージCO2排出計算ツール」の3つで

7.3.1定義

【事業実施発電所(PAPP ;Project Activity Power Plant ) 】.

本事業を実施するスララヤ発電所。排出削減量の試算においては、スララヤ発電所の発電施設のうち、

2号機を対象にしている。

【電力グリッド】

電力グリッドとは、多くの消費者と発電所が接続されている、電力を供給するシステム。システムに接 続されている発電所は、ディスパッチセンターにより、統制されている。スララヤ発電所は、インドネ シアのジャワ島のJamali電力グリッドに接続している。

【事業バウンダリー】

バウンダリーは事業実施発電所であるスララヤ発電所と、接続するJamali電力グリッドとなる。事業バ ウンダリーと、排出源と排出ガスを以下の図7-3-1-1と表7-3-1-1に示す。

図7-3-1-1 ACM0061に基く事業バウンダリー

Coal with more moisture

Coal with less moisture

Upstream Emissions CO 2

Electricity Electricity

Grid

Other Power Plants

CO 2

Upstream Emissions CO 2

Electricity Electricity

Grid

Other Power Plants

CO 2

Baseline scenario Project scenario

PAPP

PAPP

higher efficiency Auxiliary fuel/

electricity

表7-3-1-1 排出源と排出ガス、事業バウンダリーへの包含の区別

排出源 ガス種 包含/除外 正当性/説明

ベースライン

事業実施発電所での、発電の ための、低品位の水分の多い 石炭(褐炭、亜瀝青炭)の燃 焼による排出

CO2 包含 主な排出源 CH4 除外 軽微な排出源 N2O 除外 軽微な排出源 電力グリッドに接続する他の

発電所での化石燃料の燃焼に よる排出

CO2 包含 主な排出源 CH4 除外 軽微な排出源 N2O 除外 軽微な排出源

事業活動 事業実施発電所での、発電の ための、より水分の少ない石 炭の燃焼による排出

CO2 包含 主な排出源 CH4 除外 軽微な排出源 N2O 除外 軽微な排出源

7.3.2 ベースライン排出量

事業実施発電所での効率の高い発電は、ベースラインである同発電所での効率の低い発電に取って代わ る。これに加えて、事業実施によって発電量が増加した場合は、ベースライン確認過程で特定された電 力グリッドの電力と、あるいは、プロジェクト事業が無ければ建設されたであろう他の発電所からの電 力を置き換えることになる。それゆえ、ベースライン排出量は、事業実施発電所での発電量に応じて異 なる排出係数を用いて計算することになる。以下に3つのケースを示す。

また、スララヤ発電所では、発電した電力の一部をグリッドに接続しないで自家消費しているが、この 消費電力量が総発電量の 5%程度に達しているので、ここで発生する排出量も、ベースラインの計算に 含めて考える。これは、AM0061のベースラインの算定式に追加する部分となる(以下の等式で下線を引 いた部分)。

【ケースA】

事業実施発電所での発電量(=電力グリッドへの電力供給量) (EL PJ,adj,y )が、事業実施以前の過去の最大 年間発電量(=同最大電力供給量)(EL BL, MAX )を超える場合、ベースライン排出量は次の式で計算され る。

BE y = EL BL,AVR × EF BL,plant,y + (EL BL,MAX – EL BL,AVR ) × min(EF BL,plant,y, EF BL,non-plant,y ) + ( EL PJ,adj,y – EL BL,MAX ) × EF BL,non-plant,y + EL aux, y × EF BL,plant-gross,y (1)

【ケースB】

事業実施発電所での発電量(=電力グリッドへの電力供給量) (ELPJ,adj,y )が、事業実施以前の過去の年間 平均発電量(=同平均電力供給量) (ELBL,AVR )より大きく、かつ、過去の最大年間発電量(=同最大電力供給 量)よりは小さい場合、ベースライン排出量は次の式で計算される。

BE y = EL BL,AVR × EF BL,plant,y + (EL PJ,adj,y – ELBL,AVR ) × min(EF BL,plant,y EF BL,non-plant,y)

+ ELaux, y × EF BL,plant-gross,y (2)

【ケースC】

事業実施発電所での発電量(=電力グリッドへの電力供給量)(ELPJ,adj,y )が、事業実施以前の過去の平均年 間発電量(ELBL,AVR ) (=同平均電力供給量)よりも小さい場合、ベースライン排出量は次の式で計算される。

BE y = EL PJ,adj,y × EF BL,plant,y + ELaux, y × EF BL,plant-gross,y (3)

ここで、

BE y = クレジット期間中の年yにおける、ベースライン排出量 (tCO2)

EL PJ,adj,y = クレジット期間中の年yに、事業実施発電所から電力グリッドに供給

された電力量 (MWh)(ベースラインの計算のために補正された電力供 給量)

EL MAX = 事業実施以前に事業実施発電所から事業実施以前の発電能力で、電力 グリッドに供給された最大年間電力量 (MWh)

EL = 事業実施以前の直近の5年間に、事業実施発電所から電力グリッドに

ドキュメント内 平成22年度地球温暖化対策技術普及等推進事業,インドネシアにおける火力発電所における低品位炭利用の高効率化調査 (Page 130-138)