第 4 章 内圧を受ける金属製リングジョイントガスケット付き管フランジ締結体
5.2. リングジョイント( RTJ )ガスケット付き管フランジ締結体の締付け
5.2.2. ボルト締付け実験結果
図5-2はASME PCC-1(9)に従い,トルクレンチを用いてトルク管理を行いなが
ら締付けた純アルミニウム(A1050,JIS)製オクタゴナル形 RTJ ガスケット付 き 3B 管フランジ締結体のボルト初期締付け作業中のボルト軸力の推移を示す。
目標ボルト初期締付け力FfがFf =10kNの場合の結果を示す。図より,各ボルト のボルト軸力がばらついていることがわかる。このとき,最終周回においては No.5 のボルトが最大の値のFf =13kN を示し,No.6 のボルトが全ボルト中最小
の値のFf =7kNが示されている。それ故に,最終周回の締付け係数αA(最大値/
最小値)は,1.86であり,ソフトガスケットを用いた管フランジ締結体のそれ(184) よりも大きな値となっている。なお,3B管フランジ締結体のボルト本数は8本 であるので,JIS B2251(52)による締付け手順は同じになる。
Fig. 5-2 トルク管理法によるボルト軸力の変化(3B-RTJアルミニウム)
0 2 4 6 8 10 12 14
0 1 2 3 4 5 6 7
Axial bolt force [kN]
Ff=10kN No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6 No.7 No.8 INSTALL 30% 50% 70% 100% ROUND1 ROUND2
Min 7kN Max 13kN
1 2 3 4 5 6 7
8
図 5-3 は,大口径20Bの RTJ ガスケット付き管フランジ締結体を目標ボルト 初期締付け力Ff が380kN(目標締付けトルクは1700 N-m)でトルク管理法を用 いて締付けた場合のボルト軸力の推移を示す。図5-3(a)および(b)は,それ
ぞれ ASME PCC-1(9) および JIS B2251(52)の締付け手順の結果を示す。使用した
RTJの材質は,クロムモリブデン(SFVA F5A)製オクタゴナル形リングタイプ ガスケットである。図から,各ボルトのボルト軸力にはかなりのばらつきがあ ることが確認できる。
図5-3(a)のASMEの一方向締付け(Round 1,2,3,4)では各ボルトの軸 力がやや上昇しながら滑らかに推移しているのに対し,図5-3(b)のJISの一方 向締付け(Round 1,2,3,4,5,6)では各ボルトの軸力がやや変動しながら推 移している。しかし,JIS B2251(52)の場合はRound 3以降,ASME PCC-1(9)の場合
はRound 2以降の平均ボルト軸力に大きな変化はなく,最終周回の締付け係数αA
(最大値/最小値)においては,それぞれ1.89(=499/264)および1.94(=491/252) である。すなわち,ASME PCC-1(9) およびJIS B2251(52)のRound回数がオクタゴ ナル形 RTJ ガスケット付き管フランジ締結体のボルト初期締付け力のばらつき に及ぼす影響はかなり小さいことがわかる。しかしながら,3Bのアルミニウム 製 RTJ ガスケットの場合と同様にソフトガスケットを用いた管フランジ締結体 のそれよりも大きな値となっている。
Fig.5-3 トルク管理法によるボルト軸力の変化(20B-RTJ Cr-Mo鋼)
(b) JIS B2251 (a) ASME PCC-1
0 100 200 300 400 500 600
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
1 2 3
4 5 6
7 8 9
10 11 12
13 14 15
16 17 18
19 20 21
22 23 24
Bolt preload [kN]
30% 60% 100% Round 1
Round 2
Round 3
Round 4
Round 5
Round 6
Install
Min 252kN Max 491kN
Bolt preload [kN]
0 100 200 300 400 500 600
0 1 2 3 4 5 6 7 8
1 2 3
4 5 6
7 8 9
10 11 12
13 14 15
16 17 18
19 20 21
22 23 24
30% 60% 100% Round 1
Round 2
Round 3
Round
Install 4
Bolt preload [kN]
Min 264kN Max 499kN
5.2.3. リングタイプジョイントガスケット付き管フランジ締結体の ボルト初期締付けに関する考察
実験により測定されたリングジョイントガスケットの締付け係数 αA は,
1.86~1.94 であり,VDI2230(199)に示されるトルク管理法の標準値である αA
=1.60~2.0の範囲内に入っている。しかしながら,5.3.で述べるインパクトレンチ
による渦巻ガスケットの結果(αA=1.38~1.48)や高木ら(184)の非石綿ジョイント シートガスケットの結果(αA換算:1.25~1.47程度)に比べて大きな値になってい る。これは,ソフトガスケットでは弾性相互作用によってボルト締付け力が隣 のボルトの影響を受け平均化される傾向にあるのに対し,金属ガスケットを用 いた場合にはフランジそのものが高いレーティングを用いているためにフラン ジの剛性が大きいばかりでなく,弾性相互作用が起こりにくいことで隣のボル トとの平均化が得られにくいために締付け係数 αAが大きくなっていると考えら れる。したがって,リングタイプジョイントガスケットや金属平型ガスケット などの金属ガスケットを用いた管フランジ締結体のボルト締付け力のばらつき を少なくさせるためには,トルク管理法のみではなく軸力管理法等のより精度 が高い管理方法の適用が推奨される。軸力管理法は,一般に超音波によりボル ト長さの変化をボルト軸力として測定し,ボルト締付け時にボルト軸力を管理 しながら締付ける方法である。また,ボルトテンショナーは油圧装置でボルト に所定の軸力を与えることにより伸ばし,ナットをセットした後に解放するこ とで精度の良いボルト締結体の締付けが可能になる。ボルトヒーターはボルト の軸方向にあらかじめ穴を空け,その穴に高周波誘導加熱等のヒーターを挿入 することでボルトを伸ばしナットをセットするものであり,ボルトテンショナ ーと同様にボルトのねじ部およびナット座面の摩擦の影響を受けないためにト ルク管理法に比べてボルト締付けのばらつきが少ない方法である。装置による するもので,るボルト軸力管理法等のより精度が高い管理方法の適用が必要と なる。このような締付け手法を適用することにより,金属ガスケット付き管フ ランジ締結体からの漏えい量をより減少させることが可能と考えられる。しか し,より適切かつ安価な締付け方法を考案することは今後実用的には重要であ り,今後の課題である。