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リニア 1

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第 2 章 イギリスにおける資格認証制度構築の促進要因

リニア 2 リニア 1

リニア 1

AS

( 1 年目)

国際バカロレア( IB )

( 2 年間を通じて履修)

A L ev el

修要件であり、カリキュラムの中核である。これは、大学での学習を超え、生涯にわたって学び 続けるための能力・スキルを育成することが想定されているといえる。それに加え、IBが世界的 に広く認知されているため、「国際通用性・移動性」の高い資格であるといえる。Aレベルにおい ても「ケンブリッジ国際Aレベル」(Cambridge International A Level)が提供されているもの の、これはイギリス人向けではなく、外国人向けのプログラムであり、イギリスへの大学進学が 想定された資格である点でIBとは異なる。

また、IBはリニア方式の評価を行なっており、これはAレベルが抱えていた再試験文化という 課題を解消し、より厳密な資格試験制度にすることが期待されている。さらに、2002 年の A レ ベル・スキャンダル報道以降に明らかになった、Aレベルの成績インフレであるが、IBではこれ まで成績インフレは起こしておらず、その点で「信頼性」(reliability)や「妥当性」(validity) の高いプログラムとして評価されている62。そして、IBのカリキュラムは、その開発段階から、

特定の政府や大学からの干渉や介入を受けることなく、国際レベルで様々な教育学者や心理学者 の影響を受けながら開発された国際的な教育プログラムである点から、「中立性」・「独立性」の高 い教育プログラムであると評価されている63。これは、政府、大学、学校(シックス・フォーム・

カレッジ)や資格付与団体等、多くのステークホルダーからの介入を受け、積極的な改革が進め られてこなかったAレベルとは大きく異なる点であるといえる。

以上のように、IBカリキュラムの構造、特質、能力観や評価方式等の各要素は、これまでAレ ベルが抱えていたカリキュラムの幅と深さ、早期の専門化、一貫性の欠如、文理系科目のバラン ス、コア学習の欠如、中立性等の課題を克服する教育プログラムとして期待されるようになった と考えられる。このようなIBに対する期待と注目の高まりは、その後2006年のブレア首相(当 時)によるIB拡大政策が発表されることで、さらに現実的なものへと変化していくことになる。

第 6節 イ ギ リ ス に お け る 国 際 バ カ ロ レ ア の 拡 大 と 資 格 試 験 制 度 の 展 開 6-1 ブ レ ア 労 働 党 政 権 に よ る 国 際 バ カ ロ レ ア 拡 大 政 策

イギリスの資格試験制度において、これまで統合的な資格試験制度の導入に向けて参考にされ、

周辺的な位置づけとされてきた IB が、特に注目を集めるきっかけとなったのが、2006 年の IB 拡大政策であるといえる。当時の政権与党であったブレア労働党政権は、2010年までに各地方当 局(Local Authority)の管轄下にIB教育を提供する公営学校を最低でも1校開校することを求 め、そのために250万ポンド相当の投資を行なう財政支援政策を発表したのである。この政策提 言の理由として、ブレア首相は、16歳時にカリキュラムの選択をしなければならない生徒にAレ ベル以外の選択肢を与えるためであると述べている64。このブレア首相のイニシアチブの結果、

2008年〜2010年にかけて、イギリス国内におけるIB認定校数は、一時的に大きな拡大を見せ、

その認定校数はそれまでの約2倍に増加している65。特に公的セクターにおけるIB認定校数が最 も拡大しており、これはこのブレア首相(当時)によるイニシアチブの効果であったといえる。

6-2 ケ ン ブ リ ッ ジ Pre-U の 開 発 ・ 導 入

2006年におけるIBの拡大政策が発表されて以降、イギリスでは特に公的セクターにおいてIB 認定校が急速に拡大していった。その一方で、A レベルに代わるイギリス独自の新たなアカデミ ックな資格も開発・導入されている。例えば、イギリスの資格付与団体である、ケンブリッジ国 際試験(Cambridge International Examination、以下:CIE)は、2008年にAレベルに代わる アカデミックな資格として、「ケンブリッジPre-U」(Cambridge Pre-U、以下:Pre-U)を開発・

導入している。このPre-Uは、政府からカリキュラム開発の付託を受けている独立行政機関であ る、資格カリキュラム機関(Qualifications and Curriculum Authority)66によって認定されて おり、イギリス国内の169大学中の145大学において大学入学資格として認知されている67。ま た、国際的にもアメリカ(60大学)、オーストラリア(21大学)、カナダ(14大学)の他、ドイ ツ、オランダ、デンマーク、香港、そして南アフリカのすべての大学において、大学入学資格と して認知されている68

Pre-Uは、学校、科目協会(subject association)と大学が恊働で開発した大学入学資格であり、

イギリスにおける資格・試験の監督・統制の責務を担う、資格試験規制局(Office of Qualifications and Examinations Regulation: Ofqual)にも認定されており、公的な資格として提供されている。

CIEによれば、その開発目的は、Aレベルの代替資格へのニーズに対応するために開発された資 格であると記している69。これは、当時の状況から A レベルに対する批判やその代替資格の模索 が行なわれている中で開発された資格であるということがいえる。

Pre-Uは、Aレベルと同様、2年間の課程であるが、より「深く掘り下げる学習」(digging deeper) を強調している70。Pre-Uの取得要件は、以下のとおりである;

・ Pre-U主要科目(principal subject)を3科目履修

・ 「グローバルな視点と研究」(Global Perspectives and Research: GPR):1年目に「グロ ーバルな視点」、2年目に「研究レポート」(Research Report)を履修する

Pre-U主要科目は、以下の中から選択することができる;

・芸術 ・生物 ・ビジネスとマネージメント ・化学 ・考古学 ・比較政治と政策

・経済学 ・英文学 ・高等数学 ・地理 ・古典ギリシャ語 ・歴史 ・美術史 ・ラテン語 ・中国語

・数学 ・現代外国語 ・音楽 ・哲学と神学 ・物理 ・心理学 ・スポーツ科学

Pre-U取得を希望する生徒は、上記の主要科目から3科目を選択し、各科目が10段階評価71

P3 以上の成績を修める必要がある。また、それに加え、「グローバルな視点」と「自律的研究レ ポート」も履修することになっている。しかし、主要3科目の代わりとして、Aレベルの科目を 2科目まで履修することもできる。つまり、2科目をAレベルの科目とし、Pre-U主要科目から1 科目履修することによって、Pre-U主要科目の取得要件を満たすこともできるということである。

この点から、Pre-Uがこれまでの伝統的な資格としてのAレベルの価値を保持しつつも、イギリ ス独自の新たな大学入学資格として開発・導入された資格であるといえる。

また、「グローバルな視点」は、今日の急速に変化する世界の中で、生徒が批判的、建設的な意 見をもつためのスキルを身につけさせるプログラムである。これは、ゼミ形式で進められるもの であり、倫理、経済、環境、技術、政治・文化の5つのトピックを学び、議論を展開し、プレゼ ンテーションを行なうことで、グローバルな視点をもった人材を育成することができるとされて いる。その評価は、1時間半の筆記試験、1500字の小論文と 15 分間のプレゼンテーションによ って総合的に評価される。

「研究レポート」は、「グローバルな視点」を通じて学んだトピックの中から1つを選択し、そ れをより深く掘り下げて研究することが目標とされている。生徒は、このレポートを通じて、特 に文献収集能力、多様な情報の操作能力、計画・時間管理・優先順位を判断する能力・自発性・

持続的な集中力・コミュニケーション能力を含む、幅広い学習スキルを身につけることが期待さ れている72

しかし、バンネル(2008)は、このPre-UがIBの特徴の一つである「課題論文」(Extended Essay) を課すなど、IB と類似した教育内容を提供している点から、これを「偽りの IB ディプロマ」

(pseudo IB diploma)と呼んでおり、IBが模倣されやすいという特性があることを指摘してい

73。以下が、IBとPre-Uを比較したものである;

表 6 IB と Pre-U の 比 較 表

国際バカロレア(IB) ケンブリッジPre-U

創設 1968年 2008年

取得要件 6科目+

課題論文、知の理論、CAS

3科目+

GPR

(グローバルな視点と研究)

教授言語 英語、フランス語、スペイン語 英語

課程 2年間 2年間

評価方式 7段階評価・リニア方式 10段階評価・リニア方式

認知 世界146ヶ国 世界12ヶ国

出典:筆者作成

IBとPre-Uの共通点としては、両資格ともに国内外において通用する国際的な大学入学資格で

ある点と取得要件として、主要科目に加えて調べ学習やプレゼンテーション等を行なうコア学習 が含まれる点があげられる。

このようにPre-Uは、2002年のAレベル・スキャンダル報道以降、Aレベルに対する社会的 な不信感の高まりに伴い、学校、大学と関係機関が恊働でAレベルに代わる新たな資格として開 発・導入されたアカデミックな資格であるといえる。その特徴としては、これまでアカデミック な資格に含まれてこなかったコア学習の要件が含まれている点、2 年間の終わりの最終試験を通 じて学習成果を評価するリニア方式の採用、主要科目+コア学習というカリキュラムとしての一 貫性、世界の大学で認められる国際通用性等があげられる。しかし、バンネル(2008)が指摘す るように、そのカリキュラム構造は、IB のそれと類似している。これは、2006 年以降急速に増 加し始めていたIBに対して、新たな国内資格を導入することで対応したのではないかといえる。

そこにイギリスの資格試験制度の危機感を見ることができる。また、A レベルを変えるのではな く、国際的に通用する新たな資格を開発している点から、A レベルの価値を保持しつつも、その 批判に対応するために、もう一つのアカデミックな資格の選択肢を増やす意図があったのではな いかと考えられる。いずれにせよ、それまで周辺的な位置づけ、つまり海外からイギリスに留学 する生徒が取得する資格として認識されていたIBが、「黄金にスタンダード」であったAレベル を脅かす存在となり、Pre-Uの開発・導入までもが行なわれた点で、イギリスにおけるIBの存在 感が増していたということがうかがえる。

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