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第 3 章 Au を触媒とした化学エッチングによる Si ナノワイヤの作製と物性評価

3.4 実験結果及び考察

3.4.7 ラマン分光測定

Fig. 3.16にH2O2の濃度を変えて作製したSiナノワイヤのラマン散乱スペクトルを示す。

Siナノワイヤは以下に示す条件で作製を行っている。

エッチング溶液…HF(30%):H2O2(50%)=50 ml:M (M=1~12 ml)

Auの厚さ:10 nm エッチング時間:30 min エッチング温度:30C

Fig. 3.16(a) にSiナノワイヤの一次ストークスラマンスペクトルを示す。ラマン散乱強度

はH2O2の量に依存するという結果が得られた。Fig. 3.16(b) にラマン積分強度のH2O2依存 性について示す。Fig. 3.16(a) より、すべてのSiナノワイヤのラマン散乱強度は、優位なフ ォノンピーク(519 cm-1)で増大していた。H2O2の量を2 mlで作製したSiナノワイヤが最 も大きい散乱強度の増大を示した。バルクSiのラマン散乱強度と比較すると、Siナノワイ ヤの散乱強度は約20倍になっていた。この増大はSiナノワイヤの表面で起こる部分的な光 トラップによる励起光の強い散乱が原因である。また、“ブラックシリコン”のような見た 目は、それぞれのサンプル表面における反射損失の最小化を示す。

バルクSiとSiナノワイヤのストークスラマンピークをそれぞれFig. 3.17(a)とFig. 3.17(b) に示す。バルクSi のラマンスペクトルは、波数に関してほぼ左右対称であり、それゆえ、

Lorentzian線形でフィッティングできる。(3.5)式にLorentzianの式を示す。

2 2

TO S

) 2 / ( ) ) (

(    

  I

I

(3.5) ここで、ISは特有のラマンの強さ、TOは1次光学フォノン振動数、はローレンツ広がり のパラメータである。Fig. 14(a) で最もよいフィッティングはTO=519.4 cm1、 =3.2 cm1を得られた。

Fig. 3.17(b) に示すSiナノワイヤのラマンスペクトルは、低波数のすそがやや広く、左

右非対称である。このような結果は、陽極化成で作製したPSiでときどき観測されてい て、その原因は、多孔質成分のナノ結晶サイズの大きな勾配によるものであると解釈され

ている。43,44化学気相成長(CVD)法で作製されたSiナノチューブとSiナノワイヤのラマ

ンピークは、低波数において非対称線形を示した。45,46これらのピークは結晶Si、結晶粒 界、アモルファスSi(a-Si)の3つの個々の成分から逆畳み込みしている可能性がある。

a-Siの成分は480 cm-1付近でかなり広いピークを示すことが観測された。本研究で、我々

が作製したSiナノワイヤのラマンスペクトルからa-Siの成分は観測されなかった。

次に、本研究で観測された非対称のラマンスペクトルを説明するため、修正された

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500 505 510 515 520 525 530 535 540 Raman shift (cm

–1

)

In te n sity ( ar b . u n its )

1 mL 2 mL

5 mL 12 mL

Bulk Si

(a)

519.4 cm–1

0 2 4 6 8 10 12 14

H

2

O

2

(mL)

I

R

( ar b. u nits )

(b)

FIG. 13. Y. Matsui Lorentzianの式を(3.6)式に提案する。

1

TO 2

2 TO

S

1 exp

) 2 / ( ) (

) (

 

 

 

 

 

 

 

  I

I

(3.6)

ここで、は非対称要素である。

Fig. 3.17(b) に、 (3.5) 式を用いTO=519.4 cm1、 =3.2 cm1を代入してフィッティン グした結果と (3.6) 式を用いTO=519.4 cm1、 =3.2 cm1、=100を代入してフィッティ ングした結果を示す。Siナノワイヤのラマンスペクトルはわずかに増加した =4.0 cm1異 方性要因=100をどうにゅうすることによって、(3.6)式できれいにフィッティングでき た。

このようなSiナノ構造物質から可視発光する場合、Siナノワイヤの非対称なラマンスペ クトルは、例えばナノ構造のよる運動量保存の緩和の誘発などを通した量子力学的な閉じ 込め効果によって解釈することができる。ナノスケールの空間におけるフォノン閉じ込め は、限られたフォノン(∆ℏ𝑘)の運動量に不確実性を生む。それはフォノンエネルギー

(ħq)におけるわずかなシフトを引き起こす場合がある。つまり、ナノ構造中のラマン スペクトルは、ピークエネルギーのわずかなシフトにより左右対称から非対称線形に変化 している。

65 519.4 cm–1

(a)

510 515 520 525 530

Raman shift (cm

–1

)

In te n sity ( ar b . u n its )

(b)

FIG. 14. Y. Matsui

Fig. 3.16

Fig. 3.17

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