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2. ヨーロッパにおける太陽光発電システム市場動向調査

2.1 太陽光発電システム導入動向調査

2.1.3 ヨーロッパにおける主な太陽光発電関連政策一覧

第 2 章 ヨーロッパにおける太陽光発電システム市場動向調査

2.1 太陽光発電システム導入動向調査

2.1.1 太陽光発電システムの単年導入量及び累積導入量推移と今後の見通し

・ヨーロッパの太陽光発電システム導入は、2000 年よりドイツで施行されたフィードイン・タリ フ(固定価格による電力買取制度)が周辺国に波及したことで、急膨張の一途をたどっている。

・1 位はイタリア市場で、9,301W を導入、前年の 4 倍超となり、初めて単年で世界第 1 位の導入 量となった。累積導入量は 12,803MW となり、ドイツに続く世界第 2 位に躍り出た。

・2 位はドイツ市場で、 2011 年だけで 7,500MW を導入し、前年よりは微増だったが世界一クラス の導入量を維持している。累積導入量は 24,820MW となり、引き続き世界 1 位を維持した。

・3 位はフランス市場で、前年比倍増の 1,634MW であり、累積導入量は 2,831MW となった。

・4 位はスペイン市場で前年よりも減少して 345MW であった。 2008 年は 2,758MW の導入で飛躍 的に伸びたが、導入枠による反動が“スペイン・ショック”を引き起こす結果となった。累積

導入量は 4,260MW で、アメリカや日本と同じくらいの規模となっている。

〔今後の見通し〕

・フィードイン・タリフ制度と需給ギャップの継続により、太陽光発電システム価格の下落が続 いている。固定価格の度重なる低減や制度の改正にもかかわらず、膨張した市場での一定規模 の導入は進む可能性がある。

・ドイツをはじめとする各国は、フィードイン・タリフ制度の調整により、今よりも小規模な持 続可能な市場へ移行しようとしている。しかし、制度の大幅な変更の可能性もあり、導入への 悪影響の懸念も拭えない。固定価格引き下げの直前期の駆け込み需要も避けられず、需要の平 準化が一層求められる。

・スペイン及びチェコのような固定価格の見直しや導入枠設定が広がることにより、国によって は市場停滞の可能性も懸念される。

・一方で、ヨーロッパ域内の太陽電池生産能力不足は深刻化しており、中国製太陽電池モジュー

ルの反ダンピング調査が続けられるも、アジアを中心とした輸入品に頼る状況は続くと考えら

れる。ヨーロッパ域外からの輸入製品の拡大がインセンティブ見直しの原因の一つとなってお

り、適正な市場規模・産業規模を探るための取り組みが継続される。

(単位:MW)

国 年 ~2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

ドイツ

単年 - 670.0 951.0 843.0 1,271.0 1,950.0 3,794.0 7,406.0 7,500.0 累計 435.0 1,105.0 2,056.0 2,899.0 4,170.0 6,120.0 9,914.0 17,320.0 24,820.0

スペイン

単年 - 12.0 25.0 99.0 557.0 2,758.0 60.0 392.0 345.0

累計 12.0 24.0 49.0 148.0 705.0 3,463.0 3,523.0 3,915.0 4,260.0

イタリア

単年 - 4.7 6.8 12.5 70.2 338.1 723.0 2,321.0 9,300.6

累計 26.0 30.7 37.5 50.0 120.2 458.3 1,181.3 3,502.3 12,802.9

フランス

単年 - 4.9 7.0 10.9 31.3 104.5 200.5 817.1 1,634.1

累計 21.1 26.0 33.0 43.9 75.2 179.7 380.2 1,197.3 2,831.4

オランダ

単年 - 3.5 1.5 1.5 0.6 4.0 10.7 21.0 43.4

累計 45.7 49.2 50.7 52.2 52.8 56.8 67.5 88.0 131.4

スイス

単年 - 2.1 4.0 2.6 6.5 11.7 25.7 37.3 100.2

累計 21.0 23.1 27.1 29.7 36.2 47.9 73.6 110.9 211.1

英国

単年 - 2.3 2.7 3.4 3.8 4.4 3.5 43.8 906.2

累計 5.9 8.2 10.9 14.3 18.1 22.5 26.0 69.8 976.0

オーストリア

単年 - 4.3 2.9 1.6 2.1 4.7 20.2 42.9 91.7

累計 16.8 21.1 24.0 25.6 27.7 32.4 52.6 95.5 187.2

ポルトガル

単年 - 0.6 0.3 0.4 14.5 50.1 34.2 28.6 12.8

累計 2.1 2.7 3.0 3.4 17.9 68.0 102.2 130.8 143.6

出典:Trends in Photovoltaic Applications (TASK 1 Report IEA/PVPS、2012 年 9 月)

2.1.2 各国政府やその他民間企業等の導入支援事業の内容及び当該事業による実績

(1) 欧州連合における太陽光発電普及方策

欧州連合(EU)は、再生可能エネルギーやエネルギー効率、新しい技術への投資拡大は、持続 可能な発展、供給の安定、新規雇用の創出、経済成長、競争力の強化、農村開発に資するとして、

太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの導入を推進している。

2008 年 12 月には、首脳会議で、温室効果ガスを 2020 年までに 1990 年比で 20%削減する数値 目標などを盛り込んだ包括的な温暖化対策で最終合意した。 「20-20-20(トリプル 20) 」と呼ばれ る包括的温暖化対策は、 2020 年までに温室効果ガスを 1990 年比で 20%削減し、 20%の省エネを実 現し、エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を 20%に拡大するというものである。

この目標の達成のために欧州委員会(EC)は、加盟国各国に対して拘束力のある目標を課して いる。2010 年下期に加盟国各国は、EC に対して、国家再生可能エネルギー行動計画(NREAP)

を提出した。 NREAP は、各国における再生可能エネルギーの技術別導入見通し、導入施策や許認 可、行政手続きの効率化、建物の最低要件、国民への情報提供の改善、装置設置業者のトレーニ ング、電力系統連系、運転条件などをまとめたものであり、2010 年 12 月時点で 26 ヶ国が提出し ている。各計画書による見通しをまとめると、2020 年までに EU における太陽光発電システムの 累積導入量は、約 84GW となる見通しが示されている。今後、欧州指令と国家行動計画を組み合 わせて、目標達成のための枠組みが決定されていく予定である。また、EC では、各国における導 入の進捗状況の報告を求めており、達成状況を評価している。

太陽光発電システムの普及施策は、加盟国に委ねられているために、各国が様々な支援施策を 展開している。欧州における普及支援の中心はフィードイン・タリフ制度であり、欧州全域に拡 がりつつあるが、市場の発展状況は様々である。2009 年以降に太陽光発電システム価格が下落し たこともあり、各国は、市場拡大の状況に応じて買取額の見直しや買取対象の変更を実施してい る。 2008 年にスペインで生じた駆け込み需要による市場拡大とその後の崩壊、いわゆるスペイン・

ショックを避けるべく、持続可能な市場をめざした方策が議論され、その結果がフィードイン・

タリフの見直しや制度改正に反映されている。

なお、EU として実施している取り組みには、 「欧州インテリジェント・エネルギー・プログラ

ム II(2003~) 」がある。このプログラムは 2003 年に開始された「欧州インテリジェント・エネ

ルギー(Intelligent Energy for Europe (IEE) ) 」の後継プログラムであり、この枠組みの下で太陽 光発電システムの導入基盤整備や導入が進められている。欧州太陽光発電産業協会(EPIA)は、

IEE において PV LEGAL プロジェクトに各国の産業団体とともに取り組んでいる。同プロジェク

トは行政障壁(設置認可、ライセンス、系統連系までの日数等)を代表とする市場障壁の除去に 取り組むものであり、各国の認可手続き、プロジェクト手続きに関わる日数等をデータベースで 公表したり、ワークショップを通じて意見交換を実施するなど、各種の活動に取り組んでいる。

IEE の下、PV PARITY プロジェクト・コンソーシアムは 2011 年から、EU の政策決定者に対して

太陽光発電が競争力をもつために必要となる施策の理解を促し、 Grid parity を達成するための戦略

を策定している。住宅用、商用及び電力事業規模の太陽光発電システムの Grid parity に関する分

析を実施し、2012 年末には、システム価格、小売電力価格、資金コスト、及び欧州諸国における

太陽光発電システムによる電力の自家消費容量の推移を評価し、数ヶ国で Grid parity が実現間近 であるとの結果をまとめた。

EU は、太陽光発電システムの普及基盤を整備するためのプログラムや研究開発・実証プロジェ クトを通した支援を継続している。7 次枠組プログラム(FP7、 2007~2013 年)においては、新プ ロセス、標準化・試験済みの建築部材、太陽光発電の付加価値の実証、高効率化、低コスト化等 を課題とするプロジェクトを推進している。2007~2012 年には 6 件のプロジェクト提案が要請さ れた。これまでに EU の多額の研究開発予算が、さらに長期的な応用向けの材料開発、集光型太 陽光発電、製造プロセスの開発に投じられている。また、薄膜技術分野への予算も多く投じられ た。 EC は、太陽光発電部門の研究開発及び実証の長期支援を継続しており、研究者と産業界が協 力して技術及び応用開発ができる枠組みを提供している。FP7 の下で開始された初めの 5 件の公 募では、 太陽光発電に関する革新的プロジェクトに対して既に 1 億 9500 万ユーロ超が投資された。

2007 年 11 月に EC は、低炭素社会を目指す欧州戦略的エネルギー技術計画(SET 計画)を発表 した。 2020 年目標達成のための今後 10 年間の欧州の重要技術課題として、第 2 世代バイオ燃料、

二酸化炭素捕捉、風力発電機の発電規模の倍増(洋上発電が主要応用分野) 、大規模太陽光発電と 集光型発電の商業化可能性の実証、再生可能エネルギー・分散型エネルギーの連系が可能な欧州 共通のスマートな電力系統(Smart Grid) 、建物・輸送・産業における高効率省エネルギーとエン ドユース機器、核分裂技術の競争力の維持と廃棄物管理を挙げた。さらに、SET 計画では、欧州 風力イニシアチブ、欧州太陽エネルギー産業イニシアチブ(SEII、 Solar European Industrial Initiative) 、 バイオエネルギー・ヨーロッパ・イニシアチブを含む 6 つの産業イニシアチブが策定され、2009 年 10 月に、 「低炭素技術の開発への投資に関する技術ロードマップ(SET-Plan) 」が発表された。

SEII は、 2020 年までに欧州における電力需要の最大 12%を太陽光発電で賄い、 2020 年までに欧州 の電力供給の 3%を集光型太陽熱(CSP)発電所により賄うことを目標に設定している。2010 年 5 月に欧州太陽光発電技術プラットフォームと欧州太陽光発電産業協会(EPIA)が SEII 実行計画を 発表、今後の研究開発目標や予算配分の方針等をまとめた。

SEII の太陽光発電実施計画(2010~2012 年)では、コスト削減及び大規模普及を目指し、新製 品技術、太陽光発電の系統連系及び建物への一体化に関する研究開発及び実証に約 12 億ユーロを 投じる必要があることを明らかにしている。SEII における重点のひとつは、SEII の優先事項の実 施に注力する欧州研究領域ネットワーク(ERA-NET)の財政支援提案の定義づけである。 ERA-NET は、太陽光発電及び CSP 分野において官民双方の研究開発・実証を支援する資金調達団体の中か ら、様々な形の協定による利益を探究する機会を参加機関に提供することで、既存の多国間協力 メカニズムを補完している。 ERA-NET が財政支援する活動は、相乗効果や相補性が得られる一方 で、資金提供の重複を避けるためその他のスキーム(NER300 など)による財政支援の見通しを 国家レベルで調整しなければならない。ERA-NET はまず、 (2012 年末からの)共同公募の開始に 着手する。

なお、欧州においては、 2012 年 7 月に独・ Solar World が中心メンバーとなっている産業団体 EU

ProSun が、EC に対して中国製太陽電池(セル、ウエハー及びモジュール)のダンピング及び不

当な補助金に関する調査を要請し、 EC は同 9 月にダンピングに関する調査の開始を発表した。今

後、EC は中国の輸出企業、EU 域内の製造企業及び輸入者等に調査書類を送付、回答結果に基づ

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