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ドキュメント内 学位の分野 ソーシャルワーク (ページ 36-55)

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図V−6 時間の長さと自己否定

  ④ドミナント・ストーリーとDI者との対話

 ドミナント・ストー..一リーをil張する医療者等の権力を有する者の「力」は, DI者が「語 り続ける」ことにより相対化される.とすれば,権カー一一服従という関係の中ではなく,対 話するという関係の中で次の段階へとDI者を解放していく可能性が広がるのではないだろ

うか.

 新たに構築された物語によって,DI者と他者との関係が次の段階へと解放されていく可 能性に着目することが,ソーシャルワークでいうストレングス・アブローチの視点である

と筆者は考える.

 ストレングス・アプローチとは,人間とはいかなる現状形態の中においても,成長・変 化・学習する能力があるという人間観に支えられている.その人間観をもって,①支援を 必要とする人の持つ力・可能性を信じ,②その力を引き出すために,強さ・長所・魅力な どに着日し,③利用者と援助者のパートナーシップを尊重し,④[地域]を[社会資源の宝劇 としてiE視し,⑤地域ケアの頂要性を認識した理論である.また,ストレングスは利用者 の「長所または強さ」あるいは「能力・意欲・嗜好等」を活用し,利用者の能力に着目し たアセスメント並びにケアが,結果として利用者のQOLの向上につながる、

 っまり,ソーシャルワークは,ナラティブ・アプローチでDI者の「物語」に寄り添いつ づけ,DI者の「物語る」権利,すなわちDI者の思いを他者に伝える権利(表現の自由)

を人格権として擁護し続けることにより, DI者のみならず, DI者を取り巻く社会状況をも,

パターナリズムを背景とするAIDを取り巻くドミナント・ストーリーから解放する可能性 がある.ナラティブ・アプローチからストレングス・アブローチへのソーシャルワークの 実践ヒの連結は,DI者と社会との関係性を変革し,DI者と対峙してきた他者を解放し,人々 のQOLの向ヒ,あるいはWel1−beingの保持・発展につながる可能性がある.これによっ て,DI者と対峙する社会システムとの対話が構成されれば, DI者の人権としてのコミュニ ティ開発(共生)権が回復される道が開かれるのではないだろうか.

 ここまでの調査研究で,ナラティプ・アプローチによるDI者の声を繰り返し聴取し,発 話記録を構成し,ソーシャルワーク理論を用いて,主体的な情報発信とSHG等のネットワ ーク活用の可能性を考察してきた結果,本論で1つの課題として明らかにすることを目指 した「DI者の解放のための理路の構築」に対する結論を,上記のように得ることができた.

 次の課題は,いかにしてDI者と支援者のパートナーシップに基づく相互関係が結べるの か,その要点とそこからスタートすることの妥当性にかかる根拠を明らかにしていかなけ ればならない.

2.DI者の発話に対するレスポンス比較調査

 この節では,2つの調査一日本の対人援助職のレスポンス(第5調査)とアメリカの対 人援助職のレスポンス(第6調査)一の結果について考察していく.

 ここでの調査は,Dl者の求めに即したソーシャルワーク・プラクティスのあり方を見出 すことを目的としている.この研究では,アメリカおよび日本のDl者へのインタビューを 行って得られた発話記録を研究上の指標として用いて,わが国における医療・保健・福祉 にかかる}ぴ門家へのインタビューを行い,Dl者の発話に対する専門家としてのレスポンス をll頭並びに文」芋にて得た(以ド,第5調査).その後,米国における不妊カウンセリング を行う第 人者であるSharon N. Covingtonと面接し7,第3調査と同様の指標を用いて,

筆者とSharonとの問でロールプレイ形式による構造化インタビューを実施した(以下,第

6調査).

 第5調査と第6調査によって得られたトランスクリプトを分析し,両調査の対象者のレ スポンスとDl者の求めるレスポンスとを比較検討し, Dl者の求めに即したソーシャルワー ク・プラクティスに関する探索を行った8.

 (1)日本の対人援助職のレスポンス(第5調査)

 第5調査は,次のような趣旨及び質問項目をインタビュー対象者一人一人に事前に伝え,

グループ・インタビューの形式で行った.すなわち,事前に示した調査の趣旨は,「精子の 提供等を受けて受精や妊娠を図る生殖補助医療によって,わが国ではすでに1万人以上の子ども が生まれています.この医療によって生まれた子どもが自らの出自を知る権利等を主張すると共 に,アイデンティティ確立をめざしてメッセージを発信しはじめています.私たちの研究グルー プでは,こうした生殖補助医療で生まれた子どもにインタビューを行い,子どもたちへのサポー トのあり方について当事者を交えて探究してきました,つきましては,専門職の皆様のご意見を 踏まえて,生殖補助医療を取り巻く様々な課題を整理し,生殖補助医療で生まれた子どもへのサ ポートのあり方を明確にし,かつ,それらの普及に努めて」いくというものである.

 「調査の口的,対象及び方法・手順,調査上の留意点」にっいては,「田.研究の方法 2.

調査の枠組み  (7)第5調査」で示した.

  1.調査の結果

 インタビュー記録の中にある「児相」とは「児童相談所」の略語として,そのまま活 用した.インタビュー対象者から得た回答はrAO二〜」で示し,○に相当する数宇はイ

ンタビュー対象者の人数に対応しており,その属性は・致していない.各質問について何 名から回答が得られ,それをランダムに順位付け,整理したものである.

 具体的なデータは「参照データ⑨:専門職の概況と応答」で示した、

  2.考 察

 このインタビューの対象者は,自己紹介の記録(参照データ⑨)で確認できるとおり,

福祉関連業務における・定程度以上の学識経験を持つ者で構成されている.したがって,

本インタビューの記録は,直ちに一t・般化できるものではないにしても,調査当時の諸情勢 を加味した」二で,一一定程度以一Eの学識経験を持っ者が抱く,AIDに関する認識の表出とし ての意味を有すると推測することができる.

 続く【質疑・意見交換】にみられるように,…定程度以上の学識経験を持つ者において も,その経験と知見を生かすための1・分な情報が,まず求められるのであり,1一分な情報 を取得するための定の時間とそれを提供する研修等の機会が必要であることが読み取れ る.つまり,いかなる学識経験者であろうとも,新しい課題に対して的確な判断を行うた めには,十分な情報と研修等の機会が必要であるといえ,新しい課題に対する「教育のあ

り方」を明確にしていくという課題があることを指摘できるだろう.

 各々の質問項日に対するインタビュー対象者の回答は,ケースワークまたはカウンセリ ングにおける,来談者を受容していくという原則にのっとった回答が大半を占めている.

しかしながら,ともすると来談者であるAIDで生まれた子どもの立場に立った受容の原則 を外れ,AIDをそJった親の側に立つ助言・指導が加えられる部分がある.誰の立場を受容

し,共感していく、 f:場なのかという原則が崩れてしまう要因には,従来までの支援者の「常 識」が関tj しているのかも知れない.木原(2005:128)は,ナラティブ・アブローチで言 うパワー(権力)との「対抗文章」とは「口頭のナラティブの文章版」と呼び,口頭による語 りと文章による語りは,基本的には同じであるが,口頭の場合より文章の場合はより「し み込んだ」度合いが強固になる可能性があるとし,文章の場合は,読者の中で反復し,リ フレクトし,それが確固たる普遍の現実として定立していく可能性が高くなるとしている.

つまり,文章として確認できるナラティブが,従来までの支援者の「常識」という名のパ ワー(権力)であるととらえることができるとすれば,それこそがドミナント・ストーリ ーである可能性があり,ここで抽出された文章記録はドミナント・ストーリー性を帯びて いる.したがって,図V・7のように支援者が日常業務の中で身につけている「支援者とし ての常識」(A)の範疇を,AIDで生まれた子どもたちが抱える問題(C)は,はるかに超 えており,「支援者としての常識」では対応しづらい領域へと拡大している.また,対応可 能領域も存在し,図中では(B)として示した.

支援者としての常識 DI者の悩み

図V−7「支援者としての常識」とDI者の悩み

 (2)Dl者の声と支援者のレスポンスの対比

 支援者へのインタビュー調査を行った後,AIDで生まれた当事者にも同じ質問項目につ いて,自記入式メールでの提出という方法で回答を寄せて頂いた.

 1)対人援助職のレスポンスとDI者の求めの比較

 ここでは,支援者と当事者の声を対比させ,図V−7において提示した領域AとBとCが 認められ,L二記の仮説「図V・7にいう『A・B・C』が存在する」が成り立っことを検討

していくこととする.なお,具体的データは「参照データ⑩:第5調査の検討データ」で

示した.

 2)比較結果の考察

 第5調査の対象者から寄せられた口頭並びに文書によるレスポンスのうち,DI者が同 意・納得しがたいレスポンスを(A)とし,DI者が同意・納得できるものを(B),そして DI者 1 1 igが求めるレスポンスを(C)とした.なお,図V−8の作成においては,第2調査 の対象者とDI者のレスポンスの一致・不 致をヒストグラムの記述形式を範としている.

33.9

A

 領域

レスホンス量

37.2

C

図V−8 対人援助専門職のレスポンスとDI者の求めの比較

 図V−8を簡単に説明すれば,例えば領域1においては,対象者のレスポンスの総量が10 項目(A十B)であり,そのうち(B)である5項目に対してDI者が同意または納得して おり,残り5項〔の(A)については新たなレスポンスである(C)を5項目自ら提示し ているのである.っまり,(B)が多ければ多いほど,DI者は自らの思いが第1調査の対象 者に「受容または共感」されたと感じている度合いが高いことになる.このように整理し てみると,2005年当時に第5調査の対象者による約半数のレスポンスは,DI者にとって同 意または納得しがたいものであった.同意または納得しがたいレスポンスとは,DI者の言

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