第 4 章 多モードデバイスの強制加振実験
4.3 多モードデバイスの振動特性解析
- 56 -
- 57 -
デバイスの自由振動式は、式(4.3)にて外生入力項である右辺を0とし
𝑀𝑢̈ + 𝐾𝑢 = 0 (4.4) ここで状態方程式は次式となる。
𝑥̇ = 𝐴𝑥 (4.5) ただし
𝑥 = [𝑢
𝑢̇] , 𝐴 = [ 0 𝐼
−𝑀−1𝐾 0] (4.6)
ここで状態変数の解をx = φestとすれば、式(4.5)は次式となる。
[𝑠𝐼 − 𝐴]𝜑 = 0 (4.7)
式(4.7)においてφ = 0 は外生入力項が0のときデバイスの応答も0であるという自明な解 である。式(4.7)が振動する解(φ ≠ 0)を持つためには、係数マトリクスの行列式[sI - A]が0 となればよい。固有周波数、固有モードは、それぞれマトリクスAの固有値sと固有ベク トルφに対応する。
図4.12 多モードデバイスの力学モデル
- 58 -
多モードデバイスの物理パラメータを表4.9に示す。表4.9に示した物理パラメータのとき の多モードデバイスの振動形を2層の半周期間で図示したものを図4.13に示す。縦軸は各 層を表し、横軸は各層の変位を表す。同図では、2層の変位を1と固定し、それに対する1 層変位を示している。固有値より、固有周波数は一次モード18.6[Hz]、二次モード48.6[Hz]
となった。図4.13のシステム同定結果の共振周波数と非常に近い値であることが確認でき る。図より二次モードの変位は、1層より2層側の変位が大きいことがわかる。これは、二 次モードの1層より2層側の出力が大きい実験結果と一致している。また、一次モードで は、2層より1層側の変位が大きく、同定結果と一致している。以上より、理論モード解析 と実験結果の妥当性がある。
表4.9 デバイスの物理パラメータ
パラメータ
m1 28×10-3 [kg]
m2 28×10-3 [kg]
k1 1000 [N/m]
k2 1000[N/m]
図4.13 多モードデバイスの振動形
- 59 -
4.3.2 Solidworksによる解析
Solidworks による多モードデバイスの加速度解析結果を図 4.14に示す。(a)はモード毎に
スケーリングを施している。理論モード解析と異なり、分布定数系に起因した三次モード まで再現されている。図より、二次モードの加速度が一次モード、三次モードと比較し非 常に高く、実験結果とよく一致していることがわかる。また、PZT貼付位置の加速度は、1 層より2層側の加速度が高く、実験結果と一致している。このことから、加速度(変位)と発 電量の相関関係が伺える。
総じて Solidworks による解析結果の信頼性の高さが伺え、条件をより詳細に設定してい くことで、デバイスを設計する段階で、デバイスの特性を把握することが可能となってい くと考えられる。
(a)加速度解析 相対表示
(b)加速度解析 絶対表示 図4.14 Solidworksによる加速度解析
- 60 -
第 5 章 まとめ
本論文では、自動車振動をターゲットとし、用途を自動車の無線機器やバッテリーとし た振動発電デバイスの開発を目的とした。走行実験による自動車振動の解析を行い、その 結果、複数の共振点が出現することがわかった。その複数の共振点に対応できるよう、同 様に複数の共振点を持つ多モード振動発電デバイスの提案を行った。そして、多モード振 動発電デバイスに対し、システム同定実験を行い、周波数特性を取得した。また、偏芯構 造のデバイスに対しても同様にシステム同定を行い、振動特性の比較を行った。そして、
PZTを貼りつけたモデルでの、最大電力、エネルギー評価実験を行った。
まず、自動車振動解析では、走行路や車種、設置箇所など、走行条件を様々に変化させ、
加速度センサによる計測を行った。比較結果より、振動のスペクトルは走行路や走行速度 など、設置後に変動する条件により変化する。そして、振動の周波数はセンサの設置箇所 や、車種など取り付けの段階で決まる条件で定まることが分かる。よって、振動スペクト ルの大きい箇所に設置し、その設置箇所と車種に合わせた、振動発電構造が適していると 考えられる。
多モードデバイスは振動モードとして、曲げのモードだけでなく、ねじれモードも出現 することが確認でき、複数のモードで振動していることが確認できた。そのねじれモード に対しても出力が期待でき、偏芯構造を取ることで、Y軸方向の振動を増幅させることが可 能となることを確認した。ねじれモードと曲げモードをどう活用していくかを、入力振動 や、PZTの特性などからも決定し、構造を決定していく必要がある。
発電能力評価では、複数の共振点を持つ多モードデバイスと、単一の共振を持つ一質点 デバイスに対し強制加振実験を行い、最大電力、エネルギー比較を行った。単一周波数に よる加振だけでなく、自動車振動のような複数の振動周波数を持つ入力での加振も行い、
より差を明確化した。その結果、一質点デバイスでは、単一周波数の入力でのみ発電量が 見込めるのに対し、多モードデバイスでは、複数の振動周波数を持つ入力で加振した場合 でも出力の増加が見込めることがわかった。また、多モードデバイスでは、1層より2層側 の出力が非常に大きいことが確認でき、その結果に対する解析を行った。理論モード解析、
Solidworksによる解析の結果から、2層側は加速度、変位ともに大きく、発電量に大きく関
与していることがわかった。この検証から、Solidworksによる解析の信頼性の高さが確認で き、今後のデバイス構造設計に大きく貢献できることがわかった。
以上のことから、自動車振動に対して、一質点デバイスより多モードデバイスが適して いると言え、また、Solidworksを用いることで、偏芯構造など、出力の増加が見込める構造 設計を、設計できるようになったと言える。
- 61 -