2.6章で説明した通り,電源側EMIフィルタではモータ側ケーブルに流出する電磁ノ イズの抑制はできない。航空機用途など安全性が重視される場合は,モータ側CMフィ ルタでインバータの電磁ノイズ源であるCM電圧を抑制することが,望ましいと考えら れる。
モータ側フィルタを挿入するのは,(1)CM電流を電源側にバイパスし接地系への流出 を低減する,(2)インバータが発生する CM電圧と同じ CM 電圧を重畳してキャンセル する,などの方法を用いてノイズ低減効果を期待している。以下では,この2種類の方 法の例を示す。図 5-1 に,正弦波化フィルタと CM フィルタを組合せたモータ側フィ ルタを示す[69]。このフィルタは,(1)の方法によるものであり,インバータ出力に接続し た交流側YコンデンサCdと直流側YコンデンサCfにより,CM電流を直流入力側にバ イパスする。インバータのCM電圧は階段状波形の電圧源であり,交流側にコンデンサ だけを接続した場合に CM 電圧のステップ変化時に過大な電流が流れるのを防止する ために,CMインダクタLcが接続されている。したがって,Lc,Cd,Cfで構成されたCM フィルタのカットオフ周波数以上の高周波CM電圧は,ほとんどインダクタ Lcに印加
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され,この結果として生じたCM電流のほとんどは,モータの浮遊容量よりCMインピ ーダンスが小さなバイパス回路を還流する。一方,インバータ出力に接続した Y コン デンサCdはDMに対してもスイッチング時に過大なDM電流を相間に流すため,これ を防止するDMインダクタLdを接続する必要がある。YコンデンサCdとDMインダク タLdで構成された DMフィルタのカットオフ周波数をインバータ出力周波数とスイッ チング周波数の間に選ぶと,モータ印加電圧が正弦波化され,モータの高調波電流を低 減することができる。しかし,DM インダクタの重量・体積は比較的大きくなり,DM インダクタによる基本波のインピーダンス降下はモータ印加電圧の基本波成分を低下 させて電圧利用率が低下する。
図 5-2 に,4.1 章で説明した従来のパッシブコモンノイズキャンセラ(PCC)を再掲す
る。このPCCは,(2)の方法によるものであり,インバータ出力に接続したCMトラン スを用いて,インバータが発生するCM電圧をキャンセルすることを目的としている。
これを実現するために,式2-1で示されるインバータのCM電圧を抽出し,その電圧を CMトランスに印加する必要がある。その際には,CMトランスには励磁電流が流れる ため,これにより印加電圧が変化しないように低インピーダンスである必要がある。一 方,この PCC の接続によりインバータに流れる電流が増加することは好ましくない。
したがって,CMトランスの励磁電流がインバータ出力電流に対して十分小さい必要が ある。DMに対しても,相間に流れる電流が十分小さい必要がある。図 5-2の非零相チ ョークLdとYコンデンサCdは,インバータのCM電圧を抽出するために用いている。
非零相チョークはCMに対しては低インピーダンス,DMに対しては高インピーダンス とするために挿入されている。CM に対して低インピーダンスである必要があるため,
Y コンデンサの静電容量 Cdは比較的大きくする必要があり,DM 電流を小さくするた めに非零相チョークのインダクタンスも大きくする必要がある。CMトランスの励磁イ ンダクタンスが小さいと非零相チョークと Y コンデンサの両方がさらに大きくなるた め,CMトランスの巻数を多くする必要がある。しかし,CM電圧をキャンセルするた めにCMトランスの巻数比は1:1でなければならないため,貫通型のCMトランスを採 用することは難しかった。
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図 5-1 正弦波化フィルタ+CMフィルタ
図 5-2 パッシブコモンノイズキャンセラ(PCC)
C
d1:1:1
E
dcL
dC
fInductor CM
M Motor Inverter
C
fSine wave filter + CM filter
Inductor DM
L
cC
dL
c1:1:1:1 E
dcL
d1:1
C
fNon-zero
sequence choke
Transformer CM
M
C
f Passive common-noise canceller (PCC)Motor
Inverter
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