第 4 章 検討したモデルの課題と今後の評価方法
4.3 モルタル圧縮下の評価
実験の目的
前述の通り,本工法を適用した補強壁がせん断水平力を受けたとき、モルタルが壁面対 角に圧縮場を形成し、鋼板が壁面対角に引張場を形成する。そのため、鋼板を留め付けて いるビスはモルタルの圧縮力を主としてせん断力が生じるビスと鋼板の引張力を主として せん断力を負担するビスが存在することになる。本論文で入力したビスばねの復元力特性 算出根拠となった2016年度柱脚引張実験はモルタルと鋼板に対して引張力を加力している ためモルタルが初期にひび割れを起こし鋼板が負担する張力も評価した実験となっている。
つまり,鋼板せん断ばねの特性を重複して評価されているため,木架構-モルタル間の相 対変位に対するビスばねの復元力特性値として解析モデルに入力することは不適切である ことが考えられる。また,本論文においてモルタル強度が
モルタル圧縮下ビス接合部一面せん断試験ではモルタルの圧縮力を主としてせん断力が 生じるビスの性能を評価することで,木架構-モルタル間の相対変位に対するビスばねの 復元力特性を算出することを目的とする。
評価項目
本試験は(財)日本住宅・木材技術センターの「木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2008 年度)24)」の「試験方法と評価方法 継手・仕口接合部の試験」に準拠し、試験体上部柱を 材軸方向に繰り返し載荷を行う。試験体は 17 体行い、そのうち 1 体を予備試験で単調圧縮 加力する。予備試験の結果を踏まえ、本試験で試験体柱の材軸方向に一方向の繰り返し加 力を行う。予備試験(単調加力)から得た降伏変位δyの 1/2,1,2,4,6,8,12,16 倍の 変形まで順に 1 回の繰り返し加力を行う。なお、降伏変位δyが得られない場合には、最大 荷重時変位δmax の 1/10,1/5,3/10,2/5,1/2,3/5,7/10,1 の順で繰り返し加力を行う。
第 4 章 検討したモデルの課題と今後の評価方法
35 試験体構成
試験体はモルタル既存仕上げを再現した上でゴムスペーサーと防水両面テープ(ブチル ゴム)を介して鋼板をビス(6φ×115 ㎜)により留め付ける。木架構は梁・柱が 105 角,
土台は 150×105 ㎜としいずれも杉(無等級材)とした。モルタル養生後,ゴムスペーサー
(幅 50 ㎜,厚さ 2 ㎜)を防水両面テープ(ブチルゴム)を使用してモルタルに貼り付ける。
その上から鋼板をビスにより留め付ける。柱・梁に留め付けるビスによりモルタル・鋼板 を木架構に固定し,土台に留め付けるビスにより,木架構-モルタル間の相対変位に対す るビスばねの復元力特性を評価する。試験体は圧縮力を裁荷するために土台と柱の間には 50 ㎜の隙間を設けた。
図 4.7 モルタル圧縮下のビス接合部一面せん断試験概要(再掲)
第 4 章 検討したモデルの課題と今後の評価方法
36 4.4 鋼板張力下の評価
実験の目的
前述の通り,本工法を適用した補強壁がせん断水平力を受けたとき、モルタルが壁面対 角に圧縮場を形成し、鋼板が壁面対角に引張場を形成する。そのため、鋼板を留め付けて いるビスはモルタルの圧縮力を主としてせん断力が生じるビスと鋼板の引張力を主として せん断力を負担するビスが存在することになる。本論文で入力した鋼板せん断ばねの復元 力特性算出根拠となった 2014 年度ビス接合部一面せん断試験は木架構と鋼板の接合部の力 学的特性を評価した実験であり,本工法においては木架構と鋼板の間にモルタル仕上げ(厚 さ 15~35mm)が存在する。また止水を考慮してビス頭には AZ ワッシャーを設けている。従 って,ビスの曲げ変形進行に伴うビス頭の鋼板へのめり込み及び AZ ワッシャーによる支圧 強度の変化を考慮できていない。従って,モルタル-鋼板間の相対変位に対する鋼板せん 断ばねの復元力特性値として解析モデルに入力する際には見直しが必要であると考えた。
鋼板モルタル間のビス接合部の一面せん断試験では鋼板の張力を主としてせん断力が生 じるビスの性能を評価することで,モルタル-鋼板間の相対変位に対する鋼板せん断ばね の復元力特性を算出することを目的とする。
評価項目
耐震補強壁にせん断水平力が作用した場合にモルタル-鋼板間に作用するせん断力,つ まり鋼板の張力を主としてせん断力を伝達する鋼板せん断ばねの復元力特性を評価する。
試験体の木材の繊維方向に単調加力し,ビス接合部位置でのモルタルと鋼板の鉛直変位 を測定することで,モルタル-鋼板間の相対変位と引張荷重の関係を得る。ビスの曲げ変 形を考慮する目的でモルタルは鋼板に追従しない範囲で木架構に半固定とした。
第 4 章 検討したモデルの課題と今後の評価方法
37 試験体構成
試験体はモルタル既存仕上げを再現した上でゴムスペーサーと防水両面テープ(ブチル ゴム)を介して鋼板をビス(6φ×115 ㎜)により留め付ける。木架構は柱が 105 角,柱の 間の横架材は 210×105 ㎜としいずれも杉(無等級材)とした。モルタル養生後,ゴムスペ ーサー(幅 50 ㎜,厚さ 2 ㎜)を防水両面テープ(ブチルゴム)を使用してモルタルに貼り 付ける。その上から鋼板をビスにより留め付ける。上側柱に十分なせん断耐力を保持する ように複数のビスにより固定した。下側柱に留め付けたビスにより,モルタル-鋼板間の 相対変位に対する鋼板せん断ばねの復元力特性を評価する。
図 4.8 鋼板張力下のビス接合部一面せん断試験(再掲)