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第1章 緒論

1.4. シミュレーション駆動による問題分析手法

1.4.3. 制御モデル

前述のように, 本稿では, 以下の3つをテーマとして取り上げた.

(1) 鉛バッテリー内部抵抗測定器の開発 (2) リチウムイオンキャパシタのモデル化 (3) 循環器シミュレータの開発

各プラントモデルについては, 前節で紹介した. この節では制御モデルについて述べる.

まず, 第1番目の鉛バッテリーの場合のプラントモデルは, 図 1.4.8 のバッテリー部分以外のもの を想定している. 前節で紹介した MATLAB/Simulink の例題[10]の拡大図である.

図 1.4.8 鉛バッテリーシミュレーションの例題

左側の理想温度源(Ideal Temperature Source)に左下の周囲温度値(ambient temperature)が入 力され, 温度設定が行われる. 鉛バッテリーへの温度伝播は, 対流熱伝播器(Convective Heat Transfer)を通して, 実施される. 一方で, 鉛バッテリーの充放電は, 中央の定電流源(Battery current)を制御することで行われる. その制御シーケンス例は, 図 1.4.8 上段に示すようなもので ある. ここで, マイナスの電流値(Current)は放電を意味し, プラスの電流値は, 充電を意味する.

図中の S_PS なるブロックは, 通常の Simulink の信号を物理信号(Physical Signal)に変換するも のである. 通常の Simulink の信号は, 伝播方向が一方向であるが, 双方向の相互作用を扱う物 理モデルの部品類(Simscape Toolbox)を扱う際には, こういった変換器が必要となる[12].

第2番目のリチウムイオンキャパシタのシミュレーションモデル例を図 1.4.9 に示す.

このうち, 赤い線で囲んだ部分がプラントモデルで, 青い枠線で囲んだ部分が, 制御モデルで ある. これは, リチウムイオンキャパシタの放電実験を模したものである.

左側に電子負荷(Electrical Load)を配置し, これが制御モデルの大半である. 放電を行う電流 量は, 定電流源(Controlled Current Source)によって実施される. その制御シーケンスは, 信号 構築器(Signal Builder)で指定され, 放電電流量は, DischargeC(Constant; 定数)で設定できるよ うに組まれている. 放電は, デバイスの電圧が一定以下になったら停止する必要があり, その停止 条件の値は Vend 定数で設定し, モニタリングされる電圧 V0 との比較で停止条件が成立すると (SW 部分)シミュレーションは停止(STOP)するように記載されている.

LIC

Voltageof LIC

VEnd

SW

Electronic Load

図 1.4.9 リチウムイオンキャパシタのシミュレーションモデル例

第 3 番目の循環器シミュレータは, 大動脈と抹消動脈をプラントモデルとし, 心臓の左心室を制 御モデルとしている. 図 1.4.10 は, 大動脈を単一管で模擬したものである.

これは, 図 1.4.7 の部分拡大図であるが, 青い心室モデル部分が心臓で, 制御モデルに相当す る. 赤い大動脈モデルがプラントモデルである. 循環器のような自然物をシミュレートする場合は, システム制御工学系の用語であるプラントモデル, 制御モデルの名称はふさわしくないかも知れな いが, 便宜上, そのように区別した.

心臓の左心室をモデル化したコンセプト図を図 1.4.11 に示す.

これは, 血流を電流, 血圧を電圧, エラスタンス(弾性)を容量, 血流の流体抵抗を電気抵抗, 弁(僧帽弁, 大動脈弁)をダイオードとして捉えたものである. 左心房から左心室への静脈還流を 前負荷モデル, MV(Mitral Valve), 流入抵抗 Rin で表し, 左心房から大動脈への駆出血流を左心 室のエラスタンス, 内部抵抗 Ri(p), 大動脈弁 AV(Aortic Valve)で表したものである.

循環器系の例では, 完成した制御モデルはそのまま使い, プラントモデルを別なモデルに取り 図 1.4.10 循環器シミュレーションのモデル例