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5 がん原性試験

5.1 マウスにおけるがん原性試験

5.1.1 CByB6F1ハイブリッド(非トランスジェニック)マウス28日間経口投与毒性試験

(4.2.3.4.2.1 試験番号DM09022、概要表2.6.7.7A)

本試験はTg-rasH2マウス26週間投与がん原性試験の用量設定のために実施した。

CByB6F1ハイブリッドマウス(1群雌雄各10匹)にアスナプレビルを0(媒体対照),50, 150

及び500 mg/kg/dayの用量で28日間経口投与した。投与容量はいずれも3.5 mL/kgとした。別途

トキシコキネティクス測定用サテライト群(1群雌雄各20匹、対照群のみ雌雄各5匹)を設け、

同様に投与した。生死及び一般状態観察、体重及び摂餌量測定、臨床病理学的検査、器官重量測 定、剖検及び病理組織学的検査を実施し、4週間投与後のトキシコキネティクスを測定した。

投与4週におけるAUCは50~500 mg/kg/dayで用量比を上回って増加し、雄のAUCは雌より 低値(0.5倍)であった(表5.1.1-1)。

表5.1.1-1 CByB6F1ハイブリッドマウス28日間経口投与毒性試験における

トキシコキネティクス値

アスナプレビル投与量 (mg/kg/day)

50 150 500

測定項目 採血日 雄 雌 雄 雌 雄 雌

Cmax

(μg/mL) 投与4週 4.02 7.43 48.3 72.1 118 163

AUC(0-24)

(μg•h/mL) 投与4週 16.1 29.0 171 426 922 2310

試験期間中、各投与群には死亡例はみられなかったが、サテライト群では、500 mg/kg/dayで雌 2例が投与4日及び9日に死亡発見された。また、同群の雄2例を投与8日に状態悪化により安 楽死させ、更に150 mg/kg/day雄1例を投与21日に状態悪化により安楽死させた。サテライト群 の一般状態観察は行わなかったが、誤投与を示唆する外傷がみられず、500 mg/kg/day試験群の一 般症状から、これらのサテライト群における死亡はアスナプレビルの投与に関連したものと考え

られた。ただし、150 mg/kg/dayの雄における状態悪化については本薬投与との関連性は不明であっ

た。

150 mg/kg/day以上では、アスナプレビルの投与に関連した変化として、ヘモグロビン減少(雄

のみ、対照群の0.91~0.94倍)、ヘマトクリット減少(150 mg/kg/dayでは雄のみ、0.89~0.94倍)

及びMCV減少(150 mg/kg/dayでは雌のみ、0.94~0.98倍)、雌における肝臓の絶対重量の増加(150

及び500 mg/kg/dayで対照群のそれぞれ+11.5%及び+13.3%)が用量に依存して認められた。

500 mg/kg/day では、活動性低下、浅速呼吸、円背位及び立毛(投与後 1 週間から発現、最大

9日間持続)、赤血球数減少(対照群の95%)及びMCH減少(97%)、体重減少(雄、投与1日と

比較して−7.3%)が認められた。これらの所見は概して投与2日~29日に認められた。

その他、50 mg/kg/day以上で立毛及び、腎臓の皮質尿細管及びその隣接のリンパ管の拡張の増

加(媒体の影響がアスナプレビルの投与により亢進したものと推察)、150 mg/kg/day以上で血清

中塩素増加(雄、対照群の1.03~1.04倍)、500 mg/kg/dayの雄でナトリウム(1.03倍)及び総ビ リルビン(2.56倍)の増加、500 mg/kg/dayの雌でカリウム増加(1.13倍)、ALP増加(1.39倍)、 総コレステロール増加(1.21倍)、アルブミン増加(1.10倍)及び総蛋白増加(1.07倍)が認めら れたが、いずれも軽微で毒性学的又は生物学的意義の低い変化と考えられた。150 mg/kg/day以上 でみられた電解質及び蛋白質の変化は、軽度な脱水及びこれらの用量で発現した一般症状に関連 したものと推察された。

以上より、アスナプレビルを28日間経口投与したCByB6F1ハイブリッド(非トランスジェニッ ク)マウスにおいて、150 mg/kg/day(AUC:299 μg•h/mL)まで忍容性は良好であった。500 mg/kg/day

(AUC:1616 μg•h/mL)では重篤な一般症状及び死亡が発現した。本試験における最大耐量(MTD)

は、雌では一般症状が発現したがアスナプレビルに関連した病理組織学的所見が認められなかっ た150 mg/kg/day(426 μg•h/mL)、雄では死亡例がみられたことから150 mg/kg/day(AUC:171 μg•h/mL) 未満と考えられた。

5.1.2 CByB6F1-Tg rasH2トランスジェニックマウス26週間経口投与がん原性試験

(4.2.3.4.2.2 試験番号DM11012、概要表2.6.7.10A)

Tg-rasH2マウス(1群雌雄各25匹)にアスナプレビルを0(水対照),0(媒体対照),25, 100

及び200 mg/kg/dayの用量で1日1回、26週間経口投与した。本試験に使用した動物の非トラン

スジェニック同腹児(1群雌雄各36匹)に同用量(媒体対照を含む)を投与し、トキシコキネティ クスを評価した。更に、陽性対照として雌雄各15匹にNMUを75 mg/kgの用量で試験1日に単 回腹腔内投与し、試験系におけるがん原性の検出性を確認した。アスナプレビルは媒体(60%

PEG-400 及び40% TPGS)に溶解し、いずれの用量も対照群を含め投与容量を3 mL/kgとした。

水対照群にはMilli-Q Gradient A10精製超純水を投与した。NMUはクエン酸塩緩衝食塩水(pH4.5) に調製して10 mL/kgの容量で投与した。生死及び一般状態観察、体重及び摂餌量測定、剖検及び 病理組織学的検査を実施した。また、投与4週及び26週のトキシコキネティクスを測定した。

投与4週及び26週におけるアスナプレビルのAUCはいずれの用量でも概して用量比を上回っ て増加した。25 mg/kg/dayでは明らかな性差はみられなかったが、100 mg/kg/day以上の用量では 雌のAUCは雄よりわずかに高値(1.6~2.5倍)であった。投与26週における雄のAUCは25 mg/kg/day では投与4週より減少したが、100 mg/kg/day以上ではわずかに増加した。雌では概して投与4週 及び26週で同程度であった(表5.1.2-1)。

表5.1.2-1 Tg-rasH2トランスジェニックマウス26週間投与がん原性試験における トキシコキネティクス値

アスナプレビル投与量 (mg/kg/day)

25 100 200

測定項目 採血日 雄 雌 雄 雌 雄 雌

Cmax (μg/mL)

投与4週 7.74 2.99 34.4 67 61.8 105

投与26週 2.06 3.29 54.4 68.7 153 219

AUC(0-24) (μg•h/mL)

投与4週 28.5 12.7 102 237 352 876

投与26週 13.5 13.8 256 417 983 1600

アスナプレビルの忍容性は最高用量まで良好であった。本薬の投与に関連した死亡はみられず、

25 mg/kg/day以上で粗毛が用量に依存しない頻度でみられ、200 mg/kg/dayの雄で脱水がみられた

のみであった。アスナプレビル投与群の生存率に対照群との有意差は雌雄ともに認められなかっ た。対照群(水及び媒体)及びアスナプレビル投与群で試験期間中の死亡例又は状態悪化による 安楽死させた例が数匹みられたが、いずれも試験早期の誤投与、試験後期に発生した偶発的な腫 瘍(血管肉腫)5),6),7)、排尿障害又は特定できない病因によるものであった(表5.1.2-2)。

表5.1.2-2 Tg-rasH2トランスジェニックマウス26週間投与がん原性試験における生存率

雄 雌

投与量

(mg/kg/day) 0 a 0 b 25 100 200 0 a 0 b 25 100 200

試験27週の

生存例数 25 24 21 24 24 25 24 23 24 24

生存率 (%) 100 96 82 96 96 100 96 92 96 96

a 水対照群

b 媒体対照群

NMU投与群では、予測された生存率の減少(媒体対照群との比較)が雄で投与14週から、雌 で投与13週からみられ、6ヵ月間の試験終了時の生存例数は、雄3例及び雌2例であった。NMU 投与群では有意な体重の低値、体重減少、体重増加抑制及び摂餌量の減少(溶媒対照群との比較)

が投与2週から試験期間中を通して認められた。

アスナプレビル投与群の200 mg/kg/dayでは雌で体重のわずかな増加(溶媒対照群の+6.8%)が 試験終了時にみられたが、摂餌量には関連した変化はみられなかった。

剖検では、アスナプレビルの投与に関連した所見は認められなかった。NMU 投与群では耳介

(金属性耳標識部位)に皮膚乳頭腫及び皮膚癌が散見された。

水対照群及び媒体対照群の腫瘍発生頻度は同程度であり、アスナプレビルに関連した腫瘍の病 理組織学的所見はいずれの用量でもみられなかった。本試験に使用した系統のマウスに特有の腫

瘍が対照群及びアスナプレビル投与群に認められたが、いずれも通常みられる自然発生性の所見

8)又は対照群(水及び媒体)と本薬投与群で同程度の発生頻度であったことから、偶発的所見と 考えられた。NMU投与群では、雌雄ともにリンパ腫 9)の発生頻度(雄 53%、雌80%)が媒体対 照群(雌雄ともに0%)と比較して増加した。NMU投与群の結果から、導入遺伝子の安定性及び がん原性の検出モデルとしての感度が確認された。

非腫瘍性病理組織学的変化として、200 mg/kg/dayで肝臓の小葉中心性肝細胞肥大(雄のみ、ご く軽微~軽微)及び肝細胞空胞化(ごく軽微~軽度)、腸間膜の白色脂肪組織の慢性血栓増加(雄 のみ、ごく軽微~中等度)がみられた。これらの所見は、自然発生性の病変が亢進したものと考 えられた。肝細胞肥大は28日間用量設定試験ではみられなかったが、長期投与における適応反応

(ミクロソーム酵素の誘導)と考えられた。

以上より、アスナプレビルを最高用量200 mg/kg/day(AUC:1292 μg•h/mL、ヒトAUCの350 倍)まで6ヵ月間経口投与したTg-rasH2マウスにおいて、がん原性は認められなかった。

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