―質的データの検討―(研究 3 )
第 1 節 練 習 記 録 用 紙 の 内 容 ―KJ 法 を 用 い た 検 討 ― ( 研 究 3-1) 1. 目 的
研 究 2 で は ,量 的 デ ー タ を 分 析 対 象 と し ,マ イ ン ド フ ル・ヨ ー ガ の 効 果 を 検 討 し て き た 。一 方 ,近 年 ,母 親 一 人 一 人 の 率 直 な 意 見 を 分 析 す る た め に ,量 的 デ ー タ と 共 に 質 的 デ ー タ を 取 り 上 げ ,検 討 す る こ と の 重 要 性 が 指 摘 さ れ て い る ( 大 日 向 ,2001; 大 島 他 ,2001)。 そ こ で 研 究 3 で は ,質 的 デ ー タ と し て ,マ イ ン ド フ ル ・ヨ ー ガ 実 施 時 に 記 入 を 求 め た 練 習 記 録 を 取 り 上 げ ,そ の 内 容 を 検 討 す る 。練 習 記 録 の 内 容 を 分 析 ・ 検 討 す る こ と で ,マ イ ン ド フ ル・ヨ ー ガ が 育 児 期 の 母 親 に ど の よ う な 影 響 を 及 ぼ し て い た の か ,量 的 デ ー タ の み で は 明 ら か に さ れ な か っ た ,よ り 詳 細 な 知 見 が 得 ら れ る と 考 え ら れ る 。
な お ,質 的 デ ー タ の 分 析 に あ た っ て は ,手 作 業 に よ る 分 析 手 法 と ,ソ フ ト ウ ェ ア を 利 用 し た 自 動 化 さ れ た 分 析 手 法 の 両 方 を 実 施 す る 。 今 日 , 質 的 な 言 語 デ ー タ を 扱 う 研 究 で は ,KJ 法 の よ う な 「 人 の 手 に よ る 」 分 析 と 並 行 し て ,ソ フ ト ウ ェ ア を 利 用 し た テ キ ス ト マ イ ニ ン グ を 行 い ,よ り 適 切 な 分 析 結 果 を 示 す よ う 目 指 す こ と の 重 要 性 が 指 摘 さ れ て い る( 山 西 ,2011)。手 作 業 に よ る 分 析 手 法 は ,KJ 法 や グ ラ ン デ ッ ド・セ オ リ ー に 代 表 さ れ る 。こ の 手 法 で は ,文 字 通 り 人 の 手 に よ っ て 主 要 キ ー ワ ー ド お よ び カ テ ゴ リ ー が 生 成 さ れ る 。利 点 と し て ,ダ イ ナ ミ ッ ク か つ 繊 細 な 分 析 を 行 う こ と が 可 能 で あ る 点 が あ げ ら れ る 。し か し ,対 象 と な る デ ー タ が 膨 大 な 量 に な る と ,時 間 が か か り 作 業 量 も 多 く な る た め ,実 用 性 に 欠 け る と い う 欠 点 も 持 ち 合 わ せ て い る 。さ ら に ,カ テ ゴ リ ー を 生 成 す る 者 の 解 釈 に 大 き く 影 響 さ れ る と い う 特 徴 も 有 し て い る 。一 方 ,ソ フ ト ウ
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ェ ア を 利 用 し た 分 析 に は ,統 計 学 に 基 づ く も の や 言 語 学 に 基 づ く も の な ど , さ ま ざ ま な 手 法 が あ る 。 近 年 は ,SPSS Text Analytics for Surveys な ど ,有 用 性 の 高 い ソ フ ト ウ ェ ア が 開 発 さ れ て い る 。本 手 法 は ,恣 意 性 を 極 限 ま で 省 き ,大 量 の デ ー タ を 分 析 す る こ と が 可 能 で あ る と い う 利 点 が あ る 。一 方 ,デ ー タ の 奥 に 潜 む 繊 細 な 情 報 を 読 み 解 く こ と に 関 し て は , 不 得 手 と さ れ て い る ( 山 西 ,2011)。 こ の よ う な , 異 な る 特 徴 を 持 つ 手 法 を 組 み 合 わ せ て 実 施 す る こ と に よ り ,そ れ ぞ れ の 分 析 結 果 に 見 ら れ る 欠 点 を 補 う こ と が 可 能 と な り ,質 的 デ ー タ に 関 す る よ り 精 緻 な 知 見 を 得 ら れ る こ と が 期 待 さ れ る 。
ま ず , 研 究 3-1 で は , 手 作 業 に よ る 分 析 手 法 と し て ,KJ 法 に 基 づ い た カ テ ゴ リ ー 化 に 着 目 し ,練 習 記 録 用 紙 の 内 容 を 分 析 す る 。な お ,今 回 は , 練 習 時 期 に よ る 記 録 内 容 の 変 化 を 明 ら か に す る た め ,2 週 間 の 技 法 実 施 期 間 中 に み ら れ た 記 録 を , 前 期 1 週 間 と 後 期 1 週 間 の 二 つ に 分 け , 分 析 を 行 う 。 こ の よ う に , な ん ら か の 介 入 を 実 施 し , そ の 時 期 ご と に , 言 語 記 録 を 分 析 ,比 較 し て い る 研 究 は 他 で も な さ れ て い る( 大 山・椿 本・
鋤 柄 ・ 斎 藤 ,2008)。 特 に , 本 研 究 で 実 施 す る マ イ ン ド フ ル ・ ヨ ー ガ を は じ め と す る マ イ ン ド フ ル ネ ス・ ト レ ー ニ ン グ は ,継 続 し た 練 習 が ,そ の 効 果 の 出 現 に 大 き く 影 響 し て い る こ と が 知 ら れ て お り(Curtis et al., 2011; Shelov, 2008), こ の 指 摘 か ら も , 時 期 に よ り 記 録 を 分 け た 上 で , そ れ ら の 共 通 点 お よ び 相 違 点 を 明 ら か に す る こ と は ,マ イ ン ド フ ル・ヨ ー ガ の 母 親 に 対 す る 影 響 を 詳 細 に 検 討 す る 上 で 適 し て い る と い え る 。
2. 方 法
2.1 分 析 対 象
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マ イ ン ド フ ル・ヨ ー ガ の 自 宅 練 習 用 に 配 布 し た 練 習 記 録 用 紙 よ り 得 ら れ た 記 録 ( 前 期 110 件 , 後 期 79 件 ) を 分 析 対 象 と し た 。 な お , 上 記 の 練 習 記 録 用 紙 に は ,「 技 法 日 時 」 お よ び 「 練 習 中 , ま た は 日 常 生 活 の 中 で の 心 や 体 の 変 化 」を 記 入 す る 欄 が 設 け ら れ て い た 。(Appendix, p.223)
2.2 手 続 き
分 析 は ,KJ 法 ( 川 喜 田 ,1970; 川 喜 田 ,1987) を 参 考 に , 下 記 の と お り 実 施 し た 。
(1) ま ず , 前 期 1 週 間 , 後 期 1 週 間 の 時 期 ご と に , 練 習 記 録 用 紙 の 内 容 を 抽 出 し , そ れ ぞ れ の 内 容 が 似 て い る と 考 え ら れ た も の を ま と め , カ テ ゴ リ ー 化 を 行 っ た 。た と え ば ,「 心 地 よ か っ た 」や「 リ ラ ッ ク ス で き る の で , 気 持 が お だ や か に な る 」 と い っ た 感 想 を 中 心 に 構 成 さ れ た ま と ま り に は ,「 安 静 感 」 と い っ た カ テ ゴ リ ー 名 を 付 け た 。 (2) 次 に , 時 期 ご と に , カ テ ゴ リ ー 間 で 関 連 が あ る と 考 え ら れ る も の は
カ テ ゴ リ ー 化 を 繰 り 返 し た 。 こ れ ら を ま と め て ,Table5-2( 前 期 1 週 間 ) お よ び Table5-3( 後 期 1 週 間 ) を 作 成 し た 。
(3) さ ら に , 前 期 1 週 間 お よ び 後 期 1 週 間 の 記 録 に み ら れ る 共 通 カ テ ゴ リ ー と 相 違 カ テ ゴ リ ー を ま と め ,Table5-4 を 作 成 し た 。 こ こ で い う 共 通 カ テ ゴ リ ー と は , 前 期 お よ び 後 期 の い ず れ に お い て も 見 出 さ れ た カ テ ゴ リ ー を 指 す 。 ま た , 相 違 カ テ ゴ リ ー と は , 前 期 あ る い は 後 期 の い ず れ か の み に 見 出 さ れ た カ テ ゴ リ ー を 指 す 。
な お ,分 析 結 果 に は ,著 者( 分 析 実 施 者 )の 過 去 の 経 験 や マ イ ン ド フ ル・ヨ ー ガ に 対 す る 捉 え 方 等 が 反 映 さ れ る 可 能 性 が あ る 。そ の バ イ ア ス を 補 う た め ,上 記 の 分 析 は ,第 三 者( 心 理 学 を 専 門 と す る 大 学 講 師 3 名 お よ び 大 学 院 生 3 名 ) に 協 力 を 求 め , 実 施 し た 。
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3. 結 果 と 考 察
上 記 の 手 続 き に よ り ,前 期 1 週 間 お よ び 後 期 1 週 間 の 記 録 内 容 を 分 類 し た 結 果 ,各 時 期 共 に ,技 法 実 施 に 関 す る カ テ ゴ リ ー ,日 常 生 活 に 関 す る カ テ ゴ リ ー ,そ の 他 ,の 三 つ か ら 成 っ て い た 。こ こ で は ,主 要 な 要 素 と な っ て い る 技 法 実 施 に 関 す る カ テ ゴ リ ー と 日 常 生 活 に 関 す る カ テ ゴ リ ー に 焦 点 を 当 て , 分 析 結 果 を 述 べ る 。
な お ,文 章 化 す る 際 ,大 カ テ ゴ リ ー は【 】で 囲 ん だ 。ま た ,中 カ テ ゴ リ ー は 《 》 で 示 し , そ れ ら を 構 成 す る 各 カ テ ゴ リ ー は 〈 〉 は で 示 し た 。 さ ら に , 各 カ テ ゴ リ ー の 具 体 例 は 「 」 で 示 し た 。
3.1 各 時 期 の 記 録 数
前 期 1 週 間 お よ び 後 期 1 週 間 の 記 録 数 を Table5-1に 示 す27。ま ず ,前 期 1 週 間 は , 技 法 実 施 に 関 す る 記 録 が 103 件 (88% ), 日 常 生 活 に 関 す る 記 録 が 11 件(9% )あ っ た 。次 に ,後 期 1 週 間 は ,技 法 実 施 に 関 す る 記 録 が 83 件 (77% ), 日 常 生 活 に 関 す る 記 録 が 24 件 (22% ) あ っ た 。 各 時 期 と 記 録 内 容 の 連 関 性 を 見 る た め に , χ2 検 定 を 行 っ た 。 そ の 結 果 ,1%水 準 で 有 意 で あ っ た(χ2(1)=6.74, p<.01)。Table5-1 の 調 整 済 み 残 差 よ り ,技 法 実 施 に 関 す る 記 録 は 前 期 で 多 く 見 ら れ ,日 常 生 活 に 関 す る 記 録 は 後 期 で 多 く 見 ら れ た こ と が 示 さ れ た 。
27 Table5-1 に は , 記 録 用 紙 に 示 さ れ て い た 内 容 を , 技 法 実 施 に 関 す る 記 録 お よ
び 日 常 生 活 に 関 す る 記 録 に 分 け た 後 の 数 を 示 す 。 な お , 記 録 を 分 け る 際 , 一 つ の 記 録 内 容 の 中 に , 技 法 実 施 と 日 常 生 活 の 両 者 に 関 す る 記 述 が 見 ら れ た 場 合 は , そ れ を 二 つ に 分 け る 手 続 き を 行 っ た 。そ の た め ,「2.1 分 析 対 象(p.115)」で 示 し た 記 録 数 よ り も ,Table5-1で 示 し た 記 録 数 の 方 が , 数 が 多 く な っ た 。
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技法実施 日常生活 合計
度数 103 11 114
調整済み残差 2.60 -2.60
度数 83 24 107
調整済み残差 -2.60 2.60
合計 度数 186 35 221
後期
Table5-1. 時期ごとの記録数
前期
3.2 前 期 1 週 間 の 記 録
こ れ よ り ,各 時 期 に お け る 記 録 内 容 に つ い て 述 べ る 。ま ず ,前 期 1 週 間 の 記 録 を ま と め た 結 果 を ,Table5-2 に 示 す
118 実施したアーサナの
報告
実施した アーサナ内容
寝る前に肩ほぐし,三日月のポーズ,頭ほぐしを行いまし
た。 7
技法実施後に 就寝
朝からバタバタしていたので,ヨーガをしたら昼寝しちゃい ました。
夢見のポーズ
後に就寝 夢見のポーズで寝てしまった。
技法への慣れ ポーズを取るのがだんだん楽になってきた。
技法のうまくい
かなさ 腕を上げるポーズがまだキツイ…。
技法実施への意欲 練習への意欲 毎日できるように心がけます。 2 安静感 リラックスできるので,気持ちが穏やかになる。
楽しさ 娘と一緒にヨーガをし,二人とも楽しくなった。
すっきり感 寝不足だったのですが,少しすっきりとしました。
覚醒水準の 低下
昨日は,ヨーガを行い最後の瞑想の後も頭も体もすっき りしたのだけれど,今日はなんだかボーっとしてしまいま した。
温感 手足がとてもあたたかくなった。
軽快感 頭が軽くなったような気がした。
脱力感 肩の力が抜けた。
痛み 肩が痛すぎて辛かった。
緊張 まだ体が緊張している。
気分の改善 今日もヨーガでイライラを解消できました。
緊張の緩和 からだが疲れていたが,緊張がほぐれた。
コリの改善 背中のこりが少しやわらいだ。
眠気の喚起 練習の後,とても眠くなりました。
寝つきの良さ 眠りにつくのがいつもより早かった。
熟睡 いつもより深く眠れたように思います。
目覚めの良さ 夜中一度も起きずに朝5時にぱっちりと目覚め,日中も活 動的に過ごせた。ヨーガのおかげな気がします。
集中有 集中して行えました。
集中無 眠くてあまり集中できませんでした。
身体への
気づき 山のポーズの時,どっしりと安定しているのがわかる。
呼吸への
気づき 呼吸を意識しないと,やっぱり浅くなる。
内的状態への 気づき
集中できていないなぁと気づくことができた。
ついつい考えてしまうが,「あ,また考えている」と気づく ことができた。
技法中の観察 自己の観察 自分を観察するという行為は楽しい(面白い)と思った。 1 Table5-2. 前期1週間の記録に見られたカテゴリー
技法前後で見られ た心身の変化
技法の実施状況
不快感の緩和
技法中の精神活動
内的感覚の実感
身体感覚の実感
15
25 技法の実施
技法実施への思い
7 技法実施後に就寝
技法中の気づき
技法中の集中 15
10 睡眠の質の変化
5
10 6
大カテゴリー 中カテゴリー カテゴリー 具体例 数
技 法 実 施 に 関 す る カ テ ゴ リー