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ベースマネージメント

第 6 章 サラウンド番組制作時の注意点

解説 1 ベースマネージメント

ベースマネージメントは、その名が示すようにモニターシステムの低域制御を目的としている。

メインチャンネルの低域成分と LFE チャンネルを、サブウーファを使用して再生することで低域 音響特性(再生帯域、定在波、低域位相特性など)の改善を可能としている。一般にベースマネー ジメントを行うには、専用機器やサブウーファに組み込まれている回路を使用する。

ベースマネージメントは、メインスピーカに十分な再生能力があれば使用する必要性は少ないが、

室内の低域音響特性改善のために採用する場合もある。また、比較的小さなスピーカシステムに使 用した場合は低域の再生帯域を改善することができる。

1.1 ベースマネージメント機器の構成例

図 1-1 にベースマネージメントの構成例を示す。ベースマネージメント機器に入力されたメイ ンチャンネル信号(L, R, C, LS, RS)は、メインスピーカ用とサブウーファ用に分岐される。メイ ンスピーカ用信号はハイパスフィルタ(通常80Hz前後)で処理された後、新たなメインチャンネ ル信号として出力される。サブウーファ用信号はメインチャンネル用加算アンプに加えられ、ロー パスフィルタ(通常80Hz前後)で処理された後、LFEチャンネル信号と加算されサブウーファ用 信号として出力される。専用機器ではフィルタ周波数(クロスオーバー周波数)を何種類か切り替 えて使用できるものがある。

図 1-1 ベースマネージメントコントローラの構成

コンシューマ製品ではフィルタを簡素化するためLFEチャンネルについても80Hzカットオフと している場合がある。LFEチャンネルのAMPゲインは+10dB(DVD-Video、劇場映画、デジタル テレビ放送が該当する)が標準となっている。DVD-AudioやSACDではLFEチャンネルの規定が

で再生する。

1.2 クロスオーバーフィルタと位相

ベースマネージメントのクロスオーバーフィルタ減衰特性は一般に24dB/octが使用されている。

ただし、スピーカによってフィルタ特性を使い分ける場合もある。その場合、低域再生能力が80Hz 程度の小型スピーカでは12dB/octを用い、重低域まで再生できる大型スピーカの場合は24dB/oct とするのが一般的である。

適切なベースマネージメントを行う為にはサブウーファの設置位置を含め、メインスピーカとサ ブウーファのクロスオーバー周波数付近の位相合わせが大切である。位相が合っていないとディッ プを生じることになる。

図 1-2 にベースマネージメントによる総合周波数特性の例を示す。この例ではクロスオーバー 周波数付近の位相が合っていないため100Hz付近にディップを生じている。

図 1-2 ベースマネージメントコントローラによる周波数特性の一例

1.3 ベースマネージメントを使用した検聴

制作時にベースマネージメントを併用して検聴する事が望まれる。制作スタジオのスピーカに十 分な低域再生能力があるとしても、各スピーカから再生された低域成分が空間合成される場合と、

ベースマネージメントによって電気的に合成され一つのスピーカから再生される場合とでは、再生 音場に違いを生じることがある。特に2つのチャンネルに電気的に同一レベルで逆相の信号があっ た場合、空間合成では音が全く聴こえなくなると言うことは少ないが、電気的な合成ではこのよう

なことが生じる。ベースマネージメントによる検聴でその違いをチェックし、必要であれば修正す ることが望ましい。多くのコンシューマ機器がベースマネージメント機能を採用していることを考 慮するとこのような検聴は重要と考えられる。

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