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V. ヘルスボランティア調査

1.調査の概要

(1)調査の目的

 m章に述べたように、コミュニティと行政との協働は、目標達成を効果的に進める概念 である。この概念が社会に浸透するには、行政側の協働意識の向上と積極的機能を担うコ

ミュニティの再生が望まれている。しかし、現在の日本の地域社会は、自律的に目的を見 出し連帯するという意識が希薄であり、連帯の基盤となる一一般他者との信頼を形成するこ とも経験しづらい状況にある。この条件下で健康的な社会を構築するには、健康分野の行 政が協働意識を持ち、地域住民がグループや組織に参加できる機会を提供し、多様な組織 のネットワークを支援し、住民が協働を体験するなどの住民への支援が求められている これは、地域住民が一般他者への信頼を獲得し連帯するための一一方法に過ぎないが、コミ ュニティの再生を図る一助となりえるといえよう。

 今回の調査は、保健行政の中で全国的に実施されて、地域住民の組織的対応を進めてい るヘルスボランティア活動を取り上げた。この活動は、地域住民の健康状態の向ヒを目的 に組織化されているが、一一方でコミュニティの再生に寄与する組織であろうと考えられる。

そこで、下記の目的で調査を実施した。

 第1の目的は、「行政と住民の協働」の実態を把握することである。ヘルスボランティ アグループは、現在、「行政と住民との協働」での実践がなされているのか。そこで保健セ ンターという運営側と、この活動の担い手であるヘルスボランティア側の2側面から「行 政と住民の協働を導き出す参加型運営の実態と、その問題点を明らかにすることを試み

た。

 第2の目的は、保健センターという運営側と活動の担い手であるヘルスボランティアに よって提供される実践が、受け手側である地域住民に対して健康面で有用な効果をもたら

しているのかを明らかにすることである。そこで「行政と住民との協働」の帰結として、

ヘルスボランティア活動の住民の健康に関する有用性の検証を試みた、

 第3の目的は、ヘルスボランティア活動が発展し継続していくために必要な要因を明ら かにすることである。前章で述べたようにアメリカでは自・励勺・野心的などに代表される 垂直的個人主義文化の台頭により、経済力の格差が健康格差を招いている1〕といわれ、日 本においてもますます健康的課題が増えていくであろうと懸念されている。 ・方で、社会 や経済の効率的な運営のために自発的な集団や組織形成が重要であり、家族の枠を超えた

他者一般に対して、信頼を持つ必要性が指摘されている、しかし、現在、社会貢献を前面 に出すヘルスボランティア活動のなり手は減少し、さまざまな区市町村で人材を探すこと が困難な状況になっているという、ヘルスボランティア活動が地域住民の健康に有用性が あれば、地域住民がヘルスボランティア活動に積極的に参加し、継続を希望する新しい枠 組みや目的が必要と考えられる。そこで、ヘルスボランティア活動が発展し継続していく ために必要な要因を明らかにしようと試みた。

 これらのことから、地域社会の健康に貢献できるヘルスボランティア活動について考察

した。

 なお、本調査の対象とする「ヘルスボランティア活動」とは、区市町村保健センターな どの保健行政が運営の母体となり、一般の地域住民に対して実施しているボランティア活 動で、保健委員、食生活改善普及員、保健ボランティアなどの名称で行われている活動を 指す。疾患によって日常生活が困難になりやすい当事者や、家族のグループ活動は含まれ

ない。

(2)調査課題へのアプローチ

本調査は、事実探索アプローチと仮説の検証を組み合わせて実施した。

 区市町村保健センターのヘルスボランティア活動の運営と活動状況については、事実探 索的アプローチで調査票を設計した。

それ以外については、ド記の4点の仮説に基づいて調査票を設計した。日的1に対応するのは 仮説1・2、目的2に対応するのは仮説3、目的3に対応するのは、仮説4である。

仮説ユ.

 「ヘルスボランティア活動の運営に、ヘルスボランティア自身が深くかかわっているグルーフで は、ヘルスボランティアの活動への参加状況が良好で、参加的運営に対する評価、活動に対す る満足度が高く、ソーシャル・キャピタルの蓄積があり、活動の継続を希望するものが多い、また、

住民からの評価が高い、。」

仮説2.

 「ヘルスボランティア活動の運営に、ヘルスボランティア自身が深くかかわっているグループで は、ヘルスボランティアの役割意識が高く、単に自己満足やグループ内の満足にとどまらず、社 会に向けて何らかの活動を展開するという力量が形成されている。」

仮説3.

 「ヘルスボランティア活動の運営に、ヘルスボランティア自身が深くかかわっているグループの 活動は、ヘルスプロモーションに貢献している。」

仮説4.

「継続を希望するヘルスボランティアは、エンパワv-一一メントされている。また、ヘルスボ ランティアメンバーのエンパワーメントは、メンバーの持つソーシャル・キャピタルと参 加型運営により増大される。」

(3)調査の種類・対象者・実施結果

 この調査では、区r七町村保健センターのヘルスボランティア担当者、ヘルスボランティ アメンバー、地域住民の3者を対象として段階的に調査を実施した。まず、区市町村保健 センターのヘルスボランティア担当者を対象に実態調査を行った,次にヘルスボランティ アメンバーを対象として、仮説1・2・4の検証をするための調査を実施した、最後に地域 住民を対象とした調査を実施し、区市町村保健センターのヘルスボランティア担当者を対 象とした調査の結果とあわせて、仮説3の検証の調査を行った、

1)区市町村保健センターヘルスボランティア担当者を対象とした調査

 『全国市町村保健センター要覧(2001年)』2戊に掲載されている3,395区市町村保健セ ンターより、1,175区市町村保健センターを系統抽出法で抽出し、質問紙郵送法により回 答を得た。質問紙への記入は、区市町村保健センターのヘルスボランティア活動担当者へ 依頼した。調査時期は2004年8月である。回収数は606、回収率51.6%であった.

2)ヘルスボランティアメンバーを対象とした調査

 1)の区市町村保健センターのヘルスボランティア担当者調査の結果を用いて、調査対 象区市町村を選定した。具体的には、調査結果からヘルスボランティア活動を「全体サポ ート型」、「保健センター事業サポート型」、「料理サポート型」、f成人・高齢者サポート型」

に4分類(詳細は後述する)した。また、活動の決定方法を得点化して四分位法で4分類

(詳細は後掲)した。両者のクロス表で、もっとも分布の割合の高かった群に属する区市 町村(表5・1’Hのゴシック太字の4つのパターン)の中で、保健センター担当者からJ’

解を得られた7市町のヘルスボランティアメンバー512名を対象とし、質問紙法により調 査を実施した。活動の決定方法による四分位は、活動内容に関する19項目について、実 施なし0点、活動の運営方法を1~4点とした合計得点を用いた。調査票は保健センター あてに送付してヘルスボランティアへの配布を依頼し、ヘルスボランティア個人から郵送 回収した。調査時期は2005年1月~2.月である。表5-1・1-2に示したようにA町~F市ま では、ヘルスボランティア数が100人以下のため、全数調査とした。G市はヘルスボラン ティア数が512人と多数であったため、無作為抽出による100人を調査対象とした、、ヘル スボランティア調査数は450人で、回収数は362人、回収率80.5%であった,

3)地域住民を対象とした調査

 ヘルスボランティアへの調査を実施した同市町の住民を対象とした。ゼンリン住宅地図 を用いて世帯を系統抽出し、各市町500世帯、計3,5001ft帯に質問紙郵送法によって実施 した。調査時期は2005年3月~ll月である。回収数は1,393人、回収率39.8%であった。

(表5・1・1・3参照)

表5-1-1-1ヘルスボランティア活動分類と活動決定の四分位による区市町村分布 第1四分位 第2四分位 第3四分位 第4四分位

全体サポート型 0(0) 7(20.0) 9(25.7) 19(54.3) 35(100.0)

保健センター事業サポート型 147(51.4) 99(34.6) 34(11.9) 6(2.1) 286(100.0)

料理サポート型 0(0.0) 17(13.6) 64(51.2) 44(35.2) 125(100.0)

成人・高齢者サポート型 0(0.0) 0(0.0)  13(20.0) 52(80.0) 65(100.0)

D()内は%

表5-1-1-2ヘルスボランティア調査対象市町と調査の回収状況 保健センター事業サポ

[ト型

料理サポート型 成人・高齢者サポー g型

全体サポー g型

市町村 A町 B町 C町 D市 E町 F市 G市

地域 東海 中国 東北 中部 東海 関東 近畿

ヘルスポランティア数 59 50 50 79 32 80 512 862

調査数 59 50 50 79 32 80 100 450

回収数 39 49 48 43 18 56 73 326

回収率(%) 66.1 98.0 96.0 54.4 56.3 70.0 73.0 72.4

表5-1-1-3地域住民調査の回収状況

A町 B町 C町 D市 E町 F市 G市

回収数 188 197 146 215 247 199 201 1393

回収率(%) 37.6 39.4 29.2 43 49.4 39.8 40.2 39B

(4)調査内容

1)区市町村保健センターのヘルスボランティア担当者を対象とした調査内容

①ヘルスボランティア活動実施有無

②組織形態  a.名称

 b.活動開始時期

 c.組織運営(規約の有無・市町村長からσ)業務委託の有無・総会の有無)

 d.メンバー(メンバーの選出方法・メンバーの任期・メンバー人数・メンバーへの報償   費の有無と金額)

 e.活動の対象地域割り

 £会議(行政側の主催する会議回数・会議への参加者)

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