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ヘルスボランティア活動の発展に向けて

⑫OB会

VI. ヘルスボランティア活動の発展に向けて

 この章では、調査の考察から検出されたヘルスボランティア活動の問題について、先 行研究も踏まえヘルスボランティア活動発展のための考察を加える。

 ヘルスボランティア活動が地域の健康に効果を示すプログラムとして存在するためには、

行政担当者(保健センター担当者)の手で、ヘルスボランティアメンバーが運営に積極的 に参加するシステムを構築し、メンバーのエンパワーメントに寄与する必要がある、そこ で、行政担当者の活動への意識や行動改革のための考察と、近年の地域社会のネットワ ークの希薄さを踏まえ、地域社会を捉える視点についての考察を行う。

1健康増進活動への潮流

 実際に、健康増進活動を積極的に展開するためには、保健センター担当者の活動運営能 力に加えて、保健センター担当者など保健行政全体の住民との協働に対する認識や、取り 組み姿勢などが必要である。第H章で、社会の変遷と保健ボランティアの変遷の概観をみ てきたが、行政による長年の中央集権化と住民参加の意図への無理解によって、保健セン ター職員の中にも、住民の代表であるヘルスボランティアが実施する内容は、「行政の手伝 い」に過ぎないという意識が残っていることを述べた。また、今回の調査からもこの実態 が色濃く残っていることが明らかになった。また、保健センター担当者の約85%を占める 保健師の2000年の業務を確認すると、ヘルスボランティア活動を支える「組織育成」の項 目は、全体の業務の数%にも満たない状況であり])、活動としての位置づけや仕事としての 優先順位は、低いと捉えることができる。

 しかし、今回の保健センター担当者への調査で、住民参加という言葉にパートナーシッ プが含まれると答えたものは全体の約75%に達しており、「行政の手伝い」という意識から、

住民とのパートナーシップへと変化しつつある。また、行政と住民との協働の健康増進活 動であるヘルスボランティア活動への取り組み意識は、「とても積極的」と「積極的」と回 答した合計は76.8%であった。このことから、保健センター担当者の住民との協働にっい ての理解も進み、活動への取り組みに対しての姿勢も整いだしているといえよう。しかし、

保健行政の中での優先順位はまだまだ低いと考えられる。

 保健分野の活動は、住民の健康増進を図る一次予防、健康診断などによって疾病を早期 に発見して早期治療に結びつける二次予防、疾患を持ちながら地域で生活をしている人び との病状悪化を予防する三次予防(リハビリテーション)に大きく分類することができる、

 第1次世界大戦以降の日本の保健活動の流れを大きく捉え直してみると、結核など感染 症対策から始まって、母子保健対策、成人保健対策と活動が広がっていった、二次予防で

ある検診(胸部レントゲン撮影)によって、患者を早期発見し治療に結びつける活動が成 果を示し、同様に乳幼児の健診、成人健診など、二次予防のプログラムが拡大された、そ の後、難病対策や精神保健対策など、疾患を持ちながら地域での生活をどう支えるかとい

う、三次予防のプログラムが展開された。

 一・次予防プログラムである健康増進は、どの時代でも実施されてはいたが、前述したよ うに、第1次世界大戦以降の大きな保健活動のうねりの中では、常に末端に位置していた、、

このプログラムを育成するための技術開発は、二次予防や三次予防の技術に比べて、水を あけられた状況であったといえよう。

 専門家中心の保健活動(二次予防)から住民中心の保健活動(一次予防)へのゆり戻し が始まったのは、WHOがヘルスプロモーション(1986年)を提唱した後、2000年に「健 康日本21」プログラムが開始されてからである。また、国内でも財政問題による医療費の 見直しなどもあり、世界的な潮流が、一次予防のための技術向一ヒの時代へと向かわせてい

る。

 しかし、この活動は長期的であり、単年度予算執行の方法をとる行政にとっては、1年後 に効果が見えにくく、評価が困難である。また、今回の調査結果にも示したように、直接 的な因果関係で住民の健康効果を示すことは難しく、間接的な効果の連続によって住民の 健康への効果を示すこととなり、活動の効果を端的には説明しにくい。このために予算の 削減が生じたり、必要性が疑問視される状況になりやすい。

 一次予防の時代へと保健分野が動き出しているということは、結果としての有効1生が期 待されているということでもある。ヘルスボランティア活動も、前年度を踏襲するのでは

く、明確な目標を示し、結果を出す時期に突入しているといえよう。

2.ヘルスボランティアのかかわりと住民のイノベーション

 ヘルスボランティアが直接住民とかかわる実践は、体験の中から生まれてきた事柄であ る。そこで、住民と直接かかわることの意味を確認するために、住民の「ヘルスリテラ シー(健康に関する知識)」と「保健行動」から、検討を加える。住民調査の「参加者」、「認 知不参加者」、「不認知不参加者」の3群間での比較では、「ヘルスリテラシー」については、

差はみられなかった。しかし、「保健行動」については12項目の内7項目で「参加者」に 良好な状況がみられた。この差異は、イノベーション2ノの理論によって解釈ができる。

 ロジャーズ,E.M.は、イノベーション(個人によって新しいと知覚されたアイディア)の 伝播過程を「認知、関心、評価、試行、採用」とまとめ、「広域志向的な情報源は、認知段 階でもっとも重要である。地域志向的な情報源は、評価段階においてもっとも重要である。」

と示している。「ヘルスリテラシー」は、健康情報の理解度を確認する内容であり、イノベ

一ションで示す「認知段階」と捉えられる。この認知は、広域志向的な情報源であるマス メディアからの情報が大きな役割を占めており、ヘルスボランティア活動のプログラムの 影響は小さく、3群間での差がみられなかったと捉えることができる。

 一方「保健行動にみられた差は、「地域志向的な情報源は、評価段階においてもっとも 重要である」という理論と結びつく。地域志向的なコミュニケーションは、新しいアイデ ィアを最初に知る社会体系のメンバーによって地域のメンバーに伝播される。これは、 ’ 方的な情報の伝達ではなく、送り手と受け手の間に直接的で対面的な双方向の伝達がある。

この関係の中で評価(やってみようという心理的思考)が高まり、試行、採用へと結びっ くとしている、、また、仲間のパーソナル・インフルエンス(個人的影響)は、評価段階で もっとも重要としている。

  「保健行動」の差が生じたのは、同地域に住む知人のヘルスボランティアからの情報提 供よって、「やってみよう」という「評価」が高まり、実施するという「採択」が増えるこ とに結びっいていると捉えることができる。つまり、ヘルスボランティア活動は、ヘルス ボランティアという知人や参加者である仲間からの良好な保健行動の情報により、評価を 高める場として存在しているとも捉えることができよう。

  「広域志向的な情報源は、認知段階でもっとも重要である」ことが示すように、マスメ ディアでの健康情報の提供や、保健センターの職員や専門家による情報提供の役割と、「ヘ ルスボランティアは評価の段階でもっとも重要である」という役割を認識し、役割を分担 することが、保健センタースタッフには期待される。このことが「ガバメント」(政府)か

ら「ガバナンス」(統治)への流れをつくることとなると考えるc 3.保健センタースタッフの意識改革とイノベーション

 全国の約85%の区市町村がヘルスボランティア活動を実施し、そのうちの約45%で、ヘ ルスボランティアが運営に深くかかわる方法を採用していた。このような運営方法を取り 入れる中で、ヘルスボランティアがエンパワーメントされ、他の活動でも地域社会に貢献 をしていたのはその4分の1である。これらを再計算すると、全国の約10%の区市町村で、

「地域社会の信頼できる人間関係をつくりだす」、「健康的な環境をつくりだす」活動を実 践していると推測される。この10%という数字をどう高めていくかを考える必要があろう。

 ロジャーズ,EMのイノベーション普及モデルは、この活動の広がりにも適応できよう31。

既存のアイディアに変わるものとしてあるイノベーションが登場した場合、既存のアイデ ィアから新たなイノベーションへと変更するためには、「相対的な利点」、「適合性」、「複雑 性」、「可分性」、「コミュニケーション可能性」の5つのイノベーションの特質を知る必要

があると示している4)。この5つの特質に照らし合わせて、工夫すべき内容を考察する。

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