(1)講義「男女共同参画とキャリア形成支援」
講義の柱は、①男女共同参画社会形成の実現に向けた政府全体の取り組み、②内閣府の女性のチャレン ジ支援策、③キャリア形成支援の最近の動向などの 3 点である。女性のキャリア形成支援が求められる 社会的背景や意義について説明があり、学校教育や社会教育におけるキャリア形成支援の方向性について 説明があった。
(2)講義「男女共同参画とキャリア教育」
『キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議による報告書』をもとに、キャリア教育のこ れまでの経緯や社会的背景を説明し、キャリア教育の概念を「児童・生徒一人一人の勤労観、職業観を育 てる教育」「望ましい職業観、勤労観及び職業に関する知識や技能を身につけさせるとともに、自己の個 性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育」と押さえた。
また、キャリア教育は、児童・生徒一人一人のキャリア発達を支援するものであり、生涯にわたって発 達していくその時期にふさわしい教育が必要であるとの発達心理学的なとらえ方が示された。具体的には、
学校全体でカリキュラムを組み、組織的に取り組むことが重要であり、同時に、キャリアカウンセリング の技能についても教員の力量を高めることが必要であるとの提案があった。
最後に、女子学生と男子学生の能力と職業について触れ、女子のキャリアを阻んでいるのは、性別役割 分業意識等の社会的要因と女子学生自身の自尊感情の低さ等、両方の問題があるとの指摘があった。
(3)講義「キャリア形成支援に必要な男女共同参画の視点とは」
現在の日本では社会経済の変化によって雇用形態や賃金形態に賃金形態に変化が現れており、フリーター・
ニートの現状や非正規雇用の増大など雇用状況の変化を例に、具体的データを示して解説があった。こうし た中、高度成長期に定着した性別役割分業の考え方は、経済的な合理性を失いつつあると強調された。今後は、
夫も妻も働くことを前提とした新たな社会システムづくりを行ってい く必要があり、その基本的考え方になるのがポジティブアクションや タイバーシティの考え方、つまり、男女共同参画社会の考え方である。
まとめとして、①自分探しを早い時期に行いモラトリアムからの 脱却を図ること、②女子学生のシンデレラコンプレックスを除去す ること、③固定的性別役割分業にとらわれないこと、④ノーといえ る人間をつくること、⑤学校を自分探しの場にすることの 5 点を指 摘した。女性のキャリア形成を支援することは、今後、新たな社会 の枠組みをつくるための効果的な学習支援として期待される。
(4)グループ討議「男女共同参画の視点から見たキャリア形成支援の課題」
これまでの講義を踏まえて、男女共同参画の視点から女性のキャリア形成支援の現状を見直し、参加者 一人ひとりの課題を明確にした。焦点化した討議ができるようグループは同質のメンバー構成になるよう 所属別とした。
グループ討議の結果、出された課題についてのキーワードをあげると、女性関連施設職員やグループ団 体職員からは、男女の意識の差、ニーズの把握、プログラムづくり、スタッフの啓発、活動資金の確保等 であった。大学関係者からは、大学と保護者の連携、キャリア教育の内容、支援の方法、全学的課題化、
男女共同参画の意識改革などであった。大学以外の学校関係者からは、キャリア教育の概念の理解と啓発、
自校のカリキュラムづくり、社会教育との連携などであった。
(5)ワークショップ「ジェンダーの視点でデータを読み解く」
ジェンダー統計とは、社会における女性と男性の格差や差別に関わる社会問題を反映した統計であり、
人々の意識改革や政策立案のために必要であることを確認した上で、家族・世帯、労働、生活時間、教育、
意思決定などの具体的なデータを使って男女が平等に利益を享受していない状況を指摘した。
実際に「性、雇用形態別雇用者数と女性割合の推移」のデータを使ってのワークショップを行い、デー タの読み方を体験した。
(6)講義「自在に使いこなそう!情報の収集・分析・活用法」
民間の情報誌の編集長から、女性のキャリア形成支援の有効な支援となる情報活用の手法について講義を 行った。情報活用のポイントは「仮説→調査・実行→検証」の繰り返しであるとまとめられた。情報の収集 については、多様性を見せるように留意しつつ、収集の方法として、①メディアからテーマ・キーワードで 検索、②各分野の専門家からのヒアリング、③高感度人が今興味を持っていることの把握、④企業を調査し、
ヒット商品に関わる女性の動きを把握するなど、複数の方法で行うことが大事であることの指摘があった。
情報を上手にアウトプットするポイントとして、①あらかじめ活用の目的・アウトプットの形を想定す る、②特徴を抽出してキーワードを引き出し、端的に伝達する、③ビジュアル化・図式化し、楽しくわか りやすく伝達する、の 3 点が指摘された。
(7)情報提供「国立女性教育会館の情報事業」
国立女性教育会館の情報事業について具体的な情報提供を行った。収集資料の主題と特徴、各種サービ ス、各種データベースなどをプロジェクターで紹介し、この後の実習のプログラムにつなげた。
(8)分科会
男女共同参画社会の形成に向けた、学校教育や女性関連施設等における女性のキャリア教育・キャリア形 成支援の現状を知り、今後の支援の方法について事例や実習を通して学ぶことをねらいとして、コース別の 分科会とした。A・B 分科会は主に学校関係者を、C・D 分科会は女性関連施設等職員を対象として実施した。
熱心に講義を聞く参加者
A「キャリア教育の実践」
参加者は、42 名であった。
まず、校種ごとのグループで課題を出しあった。小学校段階では教員がキャリアの観点で教育活動を 見直す必要があること、中学校段階ではそれぞれの教科指導の中で位置づけられていないこと、高校段 階では進路指導との違いやキャリア教育の方法が体系化されていないこと、大学では組織づくりも含め て大学全体として取り組まれていないことが挙げられた。
次に、東京都渋谷区立鉢山中学校のキャリア教育について事例提供があった。中学校の 3 年間を見 通したカリキュラムをつくり、職業体験や働くことを考える授業をしていく中で、将来ビジョンをもつ ようになった生徒が増えてきたこと、また、親以外の多様な人々との人間関係が広がったことなどが成 果として発表された。
事例提供の 2 つめとして、立教大学キャリアセンターの実践例が紹介された。1 年生で「仕事と人生」
の講義のニーズが高いこと、インターンシップや企業勉強会、就職支援プログラムなどを実施している ことが発表された。ただ、これらはキャリアセンターのプログラムであり、大学教員の意識の問題も含 めて全学的なキャリア教育の取り組みとなっていないことが課題であるとの指摘があった。
意見交換が活発になされた後、助言者から、キャリア教育は男女共同参画の視点をもち、10 年先を 見通して実践することが大事であり、特に女性の場合、ジェンダー・フレンドリーな企業に着目し、将 来を見据えて実践することが重要であると指摘された。
B「女子のキャリアデザイン」
参加者は、33 名であった。
女子のキャリア教育に特化した分科会であり、2 つの事例が提供された。1 つ目は、実際に女子高校 で行った早稲田大学と国立女性教育会館の連携プログラムの事例で、ロールモデルの提示と働くことと いうことの意味を考える内容であった。2 つ目は、神戸の松蔭高校の事例で、実際に生徒が変容する様 子を VTR で視聴した。事例提供者一人が始めた試みが全校的なキャリア教育に発展していったとのこ とであった。
20 代 30 代の女性が、先が見えないという状況で将来や選択肢を狭めることは問題である。大学や他 機関とどのように連携していくかが鍵になる。女性のキャリア形成には男性ももちろん関わってくるが、
女性の多くが抱える問題に焦点を当てることが必要であるとの指摘があった。
C「女性関連施設等におけるキャリア形成支援」
参加者は、26 名であった。
はじめに、助言者からミニ講義があり、①女性のキャリアを男性のキャリアと比べた場合、雇用する 側の問題、職種の選択の問題、女性自身の意識の問題が絡まっており、それは、女性が成長していく段 階で影響を受けた社会のシステムの問題でもあること、②キャリア形成支援の視点としては、性別役割 分業からの脱却、企業の人事管理の変更、社会レベルのサポート、個人の意欲・能力の向上等があり、
女性関連施設は、「意欲の向上」「能力の開発」「情報の提供」という点から支援していくとよいという 講義があった。
次に、支援の方策をさぐるためにあらかじめ読んでおいたキャリアのブックレットのロールモデルの 事例から、①情報の入手手段は何か、②学習がどういかされているかの視点でグループ討議を行った。
2 つのロールモデルに共通しているのは、女性関連施設が果たした女性のキャリア形成を支援する拠点 としての有効性であり、彼女らが学習において自分の問題を整理しつつ女性のキャリアを形成していっ たことの指摘があった。
その後、各自が抱えている課題や解決策をグループで討議し、施設におけるキャリア形成支援のプロ グラムの大きな課題は集客であり、女性のキャリアについて個人差や多様性があることも、集客を難し くしていることが明らかになった。助言者からは、育児・介護などのニーズのある話題を取り上げ、女 性のキャリア形成の必要性を訴え続けることが大事であるとのまとめがあった。
D「キャリア形成支援のためのプログラム作り」
参加者は 19 名であった。
はじめに、助言者から、キャリアとは何か、キャリア形成の社会的背景、助言者自身の「キャリア設 計史」とともにプログラム作成の視点についての講義があった。
次に、4 つのグループに分かれ、事前に提出されたプログラムを参考に、1 つは若年層対象、3 つは 主婦層対象のプログラムを作成した。助言者からは、目標が決まったら、最初の一歩を見つけさせ、挑 戦を促すようなプログラムをつくって欲しいとの目標が示された。