プランクによるエネルギー量子の発見
(続き)プランクはヴィーンの式の改良を試みるうちに、電磁波の放射の分布が、
(10 月) の形であれば、実験結果を完全に説明できることに気づいた。
彼は、当時まだ新しい学問であった統計力学を使って、光のエネルギー E が E = nhν (n = 1,2 …) と表せるならば、上の形を取ることを示し、
と上の a, b の値も決定できることを示した(12 月)。
h: プランク定数 6.626070040 10-34 J・s
(プランクが得た値、6.55 10-34 J・s)
(振動数の単位 [Hz]=[1/s] をかけると、エネルギーの単位 [J]=[kg・m2/s2] になる
k: ボルツマン定数 1.38064852 10-23 J・K-1
(プランクが得た値 1.346 10-23 J・K-1) c :光速
エネルギーは飛び飛びの値を取る !
→エネルギーの最小単位としてのエネルギー量子の発見 ただし当時は物理的な実体が何かはわからず
R(ν, T) = aν3
ebν/T − 1
R(ν, T ) = 8πh c3
aν3
ehν/kT − 1
青破線: ヴィーンの公式 黒実線: プランクの公式
画像は九州大学実験核物理研究室 インターネットセミナー第3部4頁
「プランクの公式」より
Max Planck
(独、1858-1947)
「量子論の父」
1918 年ノーベル物理学賞 (エネルギー量子の発見) ドイツにいながら、
反ナチズムを貫く。
大戦中は息子の死、
空襲に遭うなど不遇 ドイツの大学教授、研究所長、
学会の要職を歴任
弟子: マイスナー、ラウエ、ボーテ等
画像は Wikipedia 「黒体放射 (英語版)」より引用, Photo by Poke2001, (11th October 2015), CC-BY-SA 4.0 ライセンス
星の色は近似的に黒体放射として 理解できる。
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原子から宇宙まで
(https://sites.google.com/site/kfukukawa00/hosei) 第 14 回 (1/12) 前期量子論から量子力学へ
1. 光の粒子性
2. ボーアの原子模型 3. 電子の波動性
4. 電子軌道 (基礎方程式の完成) 5. アンケート
6. その後の発展 (ごくごく一部) 第 15 回 (1/19) 授業内試験
1
前回の復習
J.J.トムソンによる電子の発見 (1897年)
クルックス管を真空にして電圧をかけると-極から電気(陰極線)が発生
陰極線の電場と磁場に対する反応から、電子の(電荷)/(質量) = e/me を計算。
水素イオンよりはるかに小さな粒子 (電子) である事を発見 ミリカンの油滴実験 (1909年)
油滴は常にある電気量 e の整数倍 → e は電気量の最小単位 (電気素量) 電子の質量 me も間接的にわかる。
原子模型
1. ブドウパン型原子模型 (J.J. トムソン) 2. 土星型原子模型 (長岡半太郎)
3. 太陽系型原子模型 (ラザフォードチーム) α粒子と金の衝突 (原子核の発見) エネルギー量子の発見 (プランク、1900年)
黒体の隙間から見える炎の色から温度がわかるか?
(どの色の光のエネルギーが一番多いだろうか?)
その説明の過程で、光が E=nhν(n=1,2,3…) のエネルギーを持っていれば OKである事が分かる。光は、エネルギーを好き勝手に持てない。
h : プランク定数 6.626 … 10-34 J・s ミクロとマクロをつなぐ架け橋
2
1.光の粒子性 1-1. 光電効果
物質に光をあてると、電子が飛び出してくる現象
1839 年 アレクサンドル・エドモン・ベクレル(仏、1820 - 1891)が 光を電極にあてると電流が流れることを報告
19世紀後半にかけ、様々な現象が報告される。
1900年代の初め レーナルトによる実験
(独、1862-1947, 1905 年陰極線の一連の研究でノーベル物理学賞) 0. 光電子の正体は陰極線中の電子と同じものである
1. 金属表面から出てくる電子の持つ最大のエネルギーは 強さではなく、光の振動数νによって決まる。
2. 振動数がある決まった振動数ν0以下になると光を強めても、
光電子は出てこない
3. 光の強さ(明るさ)を増やすと、光電子の数が増える
古典論 (電磁気学、光を波として扱う) では、光の強さが強くなれば、
光のエネルギーが増えるので、電子は光を吸収するとその分エネルギーを増すはず
→ 実験結果 1, 2 に反する なぜ?
3
1-2.アインシュタインによる光量子仮説 (1905年 ,1921年ノーベル物理学賞)
黒体放射の式と、統計力学の式のエントロピーの式の類似性から、
光はエネルギー E=hν の粒子 (光子) の性質も持つのではないかと発想。 ﹅ 光電効果の説明
3. 光の強さを増やす→光の粒を増やす
→エネルギーを受け取る電子の数を増やす
1, 金属の表面から電子が出るのに必要なエネルギーを W (仕事関数) とする。W は金属の種類によって決まる。
電子が持てる最大のエネルギー eVmax は eVmax= hν-W となる。
(1916年、ミリカンにより直接実証)。
2. W=hν0とすると、eVmax=h(νーν0)となる。
ν>ν0の時のみ電子が表面から出てくる 。
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1-3. コンプトン効果
(1922 年、1927 年ノーベル物理学賞)光が波でもあり粒子であることの証明
光子(波長λ)
光子(波長λʼ)
電子 X線等の高エネルギー=高振動数の光を
電子に当てた時、X 線の波長が伸びる現象 光子の衝突前の波長をλとすると
そのエネルギー E は E = hν=hc/λ 衝突後の波長を λʼ とすると、
そのエネルギー Eʼ は Eʼ = hc/λʼ λʼ>λなので、E > Eʼ
逃げたエネルギーは電子が持ち去ると 考えたことで、このズレを説明できた。
λʼ>λ θ
コンプトン散乱の結果 縦軸: X 線の強さ
横軸: 散乱されたX線の波長
光が粒子であり波でもあるという二重性を確認する実験 二重スリット実験
動画 単一光子によるヤングの干渉実験 (浜松ホトニクス、1982年) https://www.youtube.com/watch?v=ImknFucHS̲c
5
2. ボーアの原子模型
(1913 年, 1922年ノーベル物理学賞)各原子は特有の波長 (=色) の電磁波を放出・吸収する。(第7回の講義) 1885年 ヨハン・ヤコブ・バルマー (スイス、1825 - 1898)
水素のスペクトルの波長の間に以下の関係が成り立つ頃を発見 (n2=3, 4, 5,…)
リュードベリ定数 RH=1.097… 107m-1 1890年: リュードベリが上の式を一般化
(n2 = n1+1, n1+2, n1+3, …)
バルマーの場合は n1 = 2の場合
n1 = 1 (ライマン系列、1906 年), n1 = 3 (パッシェン系列、1906 年) n1 = 4 (ブラケット系列、1922 年), n1=5 (プント系列、1924 年)…
1
λ = RH
! 1
22 − 1 n22
"
1
λ = RH
! 1
n21 − 1 n22
"
水素原子のバルマー系列 画像はWikipedia 「バルマー系列」より引用
6
ボーアの原子模型
(続き)ラザフォードの原子模型には、以下の問題があった。
問題1. 原子の大きさを理論的に決定できない → h と結びつければ良い?
問題2. 電磁気学によると、円運動する電子はエネルギーを失う。
その結果、電子は原子核にすぐに引き寄せられ、原子はつぶれる。
ボーアはバルマーの公式とプランクの発見から問題 1の解決を着想
「光のエネルギーに最小単位があれば、電子にあっても良いのでは?」
以下の 2 条件を置いて、問題 1 を解決
1. (量子条件) 電子軌道半径 r, 電子の速度 v, 電子の質量を me とすると、
その積 mevr はh/(2π)の整数倍しか取れない。
(主量子数 n=1, 2 ,3 …)
電子軌道は、原子核と電子の電気力と、電子にかかる遠心力が 釣り合う半径で決まる。→ 電子軌道の概念
半径やエネルギーは nを使って表され、勝手な値は取れない。
n が大きいほど、半径やエネルギーは大きくなる。
水素原子の半径 (ボーア半径) … 0.53 10-10 m
m
evr = n h 2 π
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ボーアの原子模型
(続き)2. (振動数条件) 電子が量子数 n (エネルギー En)から 量子数 nʼ (エネルギーEnʼ)に移る時、
En > Enʼ (n>nʼ)であれば光を放出し、
En < Enʼ (n<nʼ)であれば光を吸収する。
その光の振動数νは hν=|En-Enʼ| で与えられる。
水素原子におけるスペクトルを完全に再現
Niels Bohr「量子力学の父」
(デンマーク、1885-1962)
コペンハーゲン大学
(途中でイギリスに留学)
→ニールス・ボーア研究所 コペンハーゲン学派を形成 サッカーの腕前もプロ級 画像は Wikipedia より引用 水素原子の軌道イメージと放出・吸収される光の波長
画像はWikipedia 「水素スペクトル系列」より引用、Photo by Szdori, (19th March 2009),
CC-BY-SA 2.5 ライセンス 8
3. 電子の波動性
(ド・ブロイ1924年、1929年ノーベル物理学賞)ラザフォード模型の問題2「電子は何故、原子核とくっつかないのか?」
アインシュタインのエネルギーの式 E2=m2c4+p2c2 を光子について考える。
光子の質量は m = 0なので、E2=p2c2 E = pc
これとプランクの公式 E = hν= hc/λ=(h/λ)c を組み合わせると、
p = h/λ λ=h/pと書ける。「この式は物質でも実は成り立つのでは?」
電子の運動量 pe は、相対論が重要でない範囲では、pe=mev
従って、ボーアの量子条件 を変形すると、2πr =n(h/pe)=nλe
「電子の波」があるとすると、「軌道の円周」=「波長の整数倍」になる (一周した時波の位相が揃う)。
量子条件は電子が波として安定するために必要な条件を与える。
物質波は後に電子線回折に応用。現在では電子顕微鏡に応用される。
電子も波としての性質と粒子としての性質を持つ。
電子も二重スリット実験により干渉模様が現れる (外村彰 (日立製作所等、1942-2012) 、1989年)。
mevr = n h 2π
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(上) 電子の物質波のイメージ (n=7 の場合)
画像は Wikimedia Commons より引用
(下左) Louis de Broglie (仏、1892 - 1987) 紹介した業績は彼の博士論文
(下右) 透過型電子顕微鏡。電子線が光線の役割をし、
磁場がレンズの役割をする。
物質波の波長は非常に短いので、
極めて細かいところ(原子レベル)まで見分けられる。
画像はともに Wikipedia より引用