1.推奨されるブロードバンドサービス
第 4 章で、各情報通信インフラの簡易積算比較を実施した。本章では比較結果をもとに推奨されるブ ロードバンドサービスの特徴を検討する。
積算結果からわかるように最安価情報通信インフラは各離島によって、大きく分かれる。また、IRU 検 討でもわかるとおり、最安価離島は比較する条件によって、大きく変動する。
ただし、ある程度の傾向はみられるため、今までの検討をまとめると以下のようになる。
(1)FTTH
世帯数・面積など影響を受ける項目は多いが、もっとも影響を受ける項目は実延長距離となる。イニシ ャルコストに関しては、最安価となる離島はないが、ランニングコストに関しては、実延長距離が短い離 島では最安価となる場合がある。通信容量はもっとも大きいことから、コスト面よりも将来的な運用利便性 を鑑みて費用対効果等の面から検討が行われることが望ましい。
(参考)図表 5-1.実延長距離別イニシャルコスト分布(FTTH)
(千円)
(km)
0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000 350,000 400,000
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0
*分布傾向を表示するため、すべての離島は表示されていない
(2)無線 LAN
世帯密集率・面積など影響を受ける項目は多いが、もっとも影響を受ける項目は世帯数となる。世帯 数が少なく、かつ同時に面積が狭い地域ほど最安価となる。
有線敷設が難しい地域など、離島状況を鑑みて検討が行われることが望ましい。
(参考)図表 5-2.世帯数別イニシャルコスト分布(無線 LAN)
(千円)
0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000
0 50 100 150 200 250 300 350 400 (世帯)
(3)ADSL
世帯数・実延長距離など影響を受ける項目は多いが、もっとも影響を受ける項目は面積となる。イニシ ャルコストではほぼすべての離島でもっとも安価であるという結果が出ており、ランニングコストでも約 3/4 の離島でもっとも安価となる積算になる。速度効率がよいとはいえないが、費用的にはもっとも推奨 されるラストワンマイルと言える。
(参考)図表 5-3.面積別イニシャルコスト分布(ADSL)
(千円)
0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0
(k㎡)
*分布傾向を表示するため、すべての離島は表示されていない
(4)CATV
面積・実延長距離など影響を受ける項目は多いが、もっとも影響を受ける項目は世帯数となる。FTTH よりも高額となるため、最安価となる離島はないが、1 世帯あたりの単価としては、世帯数増による費用増 額分より全世帯対象とする分の減額率が高く、世帯数の増加により 1 世帯あたりの単価は安価となって いく。地上デジタル放送対応など、別途の要件が絡む際は導入が考えられる。
(参考)図表 5-4.世帯数別イニシャルコスト分布(CATV)
(千円)
0 100,000 200,000 300,000 400,000 500,000 600,000
0 50 100 150 200 250 300 350 400
(世帯)
*分布傾向を表示するため、すべての離島は表示されていない
(5)海底光ファイバーケーブル
主に最近接陸地との距離により影響を受ける。調査費用等が高額であるため、イニシャルコストとして は本土間距離が短くても最安価情報通信インフラとはなりえないが、ランニングコストが比較的安価であ るため、トータルで見た場合は、費用的にも通信速度的にも比較的推奨される情報通信インフラとなる。
特に FTTH や CATV を実施する場合は、容量的にもっとも組み合わせの相性がよいと言える。
(参考)図表 5-5.最近接陸地距離別イニシャルコスト分布(海底光)
(千円)
(km)
0 100,000 200,000 300,000 400,000 500,000 600,000 700,000
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0
*分布傾向を表示するため、すべての離島は表示されていない
(6)衛星ベストエフォート
主に世帯数によって影響を受ける。設置費用が安価であるため、イニシャルコストだけで見た場合はも っとも推奨される情報通信インフラとなる。特に自営でインターネットを提供する場合は、ほとんど全ての 条件でもっとも推奨される情報通信インフラとなる。バックアップ回線という視点もいれると全ての離島で 推奨されるが、特に世帯数が少なく、通信容量の大きいブロードバンドサービスの必要性が少ない離島 で導入が考えられる。
(参考)図表 5-6.世帯数別イニシャルコスト分布(衛星ベストエフォート)
(千円)
0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000 100,000
0 50 100 150 200 250 300 350 400 (世帯)
*分布傾向を表示するため、すべての離島は表示されていない
(7)衛星専用線
イニシャルコストは固定であるが、ランニングコストは主に世帯数によって影響を受ける。自営の場合は、
ランニングコストだけを見た場合、もっとも平均費用が安価な情報通信インフラとなる。衛星ベストエフォ ートと比較した場合、離島間距離が長く、世帯数が多い離島ほど最安価情報通信インフラとなる場合が 多く、このような離島や近接離島と連携して通信がおこなえる離島で適用が考えられる。
(参考)図表 5-7.世帯数別ランニングコスト分布(衛星専用線)
(千円)
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000
0 50 100 150 200 250 300 350 400 (世帯)
*分布傾向を表示するため、すべての離島は表示されていない
(8)FWA
主に最近接陸地との距離により影響を受ける。ただし、FWA の周波数が距離別に変わることにより、構 築システムそのものが変わるためであり、海底光ファイバーケーブルほど距離に比例するわけではない。
イニシャルコストは安価であるが、ランニングコストが高額となる。ただし、IRU 検討時にはランニングコス トも安価となるため、条件により推奨される場合もある。最近接距離が比較的短く、世帯が多く面積も広 い離島で海底光ファイバーケーブルほど通信容量が求められない場合に適用が考えられる。
(参考)図表 5-8.最近接陸地距離別イニシャルコスト分布(FWA)
0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000
(千円) 90,000
100,000
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0
(km)
*分布傾向を表示するため、すべての離島は表示されていない
2.整備推進のために
1 節で各情報通信インフラの特徴や推奨条件を整理したが、実際の構築に際しては、さまざまな検討 要素が存在する。これらについて以下にまとめるとともに、全体的な推奨条件について整理する。
(1)通信容量からの検討
ブロードバンドサービス導入の際に目安とされるものは、一般的にはイニシャルコストであり、ランニン グコスト(事業者の場合は収入も含む)であると考えられる。それ以外で重要視される項目として通信速 度があげられる。定額制が当たり前となってきた現在では、ほぼ通信容量によって利用料金が定められ ている(携帯電話等の通信では、まだ定額制は定着しているとは言えないが、世帯におけるブロードバ ンドサービスとしては通信速度に応じた価格設定が一般的であろう)。
では、ブロードバンドサービスの通信速度はどの程度からを示すのかという問題については、日々コン テンツが進化している現在では、明確な数値は出しえない状況にある。文章主体のホームページを閲 覧する程度であれば 1Mbps 程度でも、閲覧は十分であるが、動画やネットワークゲームなどのコンテン ツを利用しようとする場合は、100Mbps 程度が必要となる場合もありえる。
実際に 1Mbps あたりの費用という視点で比較した場合は、以下のようになる。
図表 5-9.1 世帯 1Mbps あたりのイニシャル込ランニング費用が最安価となる情報通信インフラ離島数
海底光+FTTH海底光+無線LAN 海底光+ADSL 海底光+CATV
FWA+FTTH
FWA+無線LANFWA+ADSL FWA+CATV
自営 66 0 0 4 114 4 2 7
IRU 13 0 1 1 107 22 53 0
衛星ベスト+FTTH衛星ベスト+無線LAN衛星ベスト+ADSL 衛星ベスト+CATV 衛星専用線+FTTH衛星専用線+無線LAN 衛星専用線+ADSL 衛星専用線+CATV
自営 0 0 2 0 0 0 0 0
IRU 0 0 2 0 0 0 0 0
自営・IRU 含めて衛星通信関係はほぼ 0 になり、自営・IRU ともに FWA+FTTH がもっとも安価になる 離島が多い。自営では次いで海底光ファイバーケーブル+FTTH であり、IRU では FWA+ADSL となる。
1 世帯 1Mbps あたりの費用では、大容量通信が可能な組み合わせが安価となる離島が多くなる。
ただし、この積算は例えば 100Mbps サービス提供であれば費用を 1/100 として考えているため、実際 のサービスの性能を正確に示すものとは言えないが、通信容量を重視した場合は、海底光ファイバーケ ーブル+FTTH、FWA+FTTH・ADSL が推奨される離島が多いことがわかる。
(2)全体費用からの検討
情報通信インフラのトータル的なコストを求める場合、1 年運用だけでなく、長期的に運用を想定し た方が望ましい。例として 10 年間運用した場合のトータルコストをまとめると以下のようになる。
図表 5-10.イニシャル+ランニング 10 年運用総額費用(バックボーン+ラストワンマイル)
198,429,957 194,786,509 168,237,705
257,332,839 122,883,892
119,036,608 93,601,237
181,394,344 100,810,306
97,166,858 68,939,350
159,713,188 94,270,956
90,627,508 62,400,000
153,173,838 58,114,431
45,661,547 43,853,020
179,264,411 150,737,128
0 60,000,000 120,000,000 180,000,000 240,000,000 300,000,000 海底光+FTTH
海底光+無線LAN 海底光+ADSL 海底光+CATV FWA+FTTH FWA+無線LAN FWA+ADSL FWA+CATV 衛星ベスト+FTTH 衛星ベスト+無線LAN 衛星ベスト+ADSL 衛星ベスト+CATV 衛星専用線+FTTH 衛星専用線+無線LAN 衛星専用線+ADSL 衛星専用線+CATV イニシャル最安価 ランニング最安価 イニシャル込ランニング最安価 1M:1世帯月額最安価 1M:イニシャル込ランニング最安価
(千円)
イニシャル+ランニング(10年目)
トータルコストとしては、イニシャル込ランニングが最安価となる。イニシャル込ランニング最安価の情 報通信インフラの組み合わせは前述したとおり、衛星ベストエフォート+FTTH・無線 LAN・ADSL、衛星 専用線+ADSL となる。長期スパンでみた場合、最安価を達成する組み合わせはこれら 4 種類からの選 択が推奨される。
以上のことを念頭に踏まえたうえで、イニシャル・ランニングの最安価離島数、コストを 1Mbps あたりの 費用がもっとも安価となるイニシャル込ランニングを含めた形で再整理すると次ページのようになる。