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第 6 章 イタキ港の現状と課題

6.5. イタキ港および周辺整備にかかる諸課題(技術、制度、環境、資 金、その他)

6.5.3. ファイナンス

(1) 伯国の財政状況

2015 年、伯国経済は昨年から引き続き低調な動きであり、2015 年度の経済成長率について民間 シンクタンクなどでは0%(東京三菱UFJ銀行)、−1%(IMF予想)などと予想されている。一 方、物価上昇率は政府目標の上限である 6.5%を大幅に超える見通しとなり、昨年度よりも悪化 すると見られている。

2015年の連邦予算において、インフラ整備や教育などの公共支出について R$ 699億(約 2兆8 千億円)の執行停止が表明された。更に、銀行を対象に税率引き上げも決定され、財政健全化を 優先する方針が打ち出された。

伯国では、1999年にインフレ目標政策(Inflation Targeting Policy)が導入され、同政策のもと、毎 年、通貨審議会がインフレ目標値を決定し、中央銀行は目標達成のための通貨政策委員会におい て政策金利の誘導目標が決定されている。

伯国では、2001年からプライマリーバランス(基礎的財政収支:債務の管理支払いを除いた歳出 と国債発行額を除いた歳入の差)は黒字が続いてきたが、2014年、景気減速や商品価格下落によ る税収の落ち込みなどを背景に赤字に転じており、2015年も赤字となる可能性が高いとみられて いる。財政収支は過去に発生した国債の利払い費が大きな赤字の原因となっている。

伯国政府は、失業対策・低所得者支援・基礎教育・医療など、より貧困対策を重視する一方で、

産業インフラである輸送インフラ事業には、民間資金の積極的な導入による整備を推進している。

(2) 伯国のインフラ整備政策

伯国では、憲法において公共サービスを公共セクター自身で行う、もしくはその権利と義務をコ ンセッションやPPP(Public Private Partnership)スキームで民間セクターに移譲することが認めら れている。

伯国では、1995年にコンセッション法が整備されインフラ整備・運営事業への民間企業の参入が 認められた。その後、2000年に規制当局設置後、PPP法(PPP Law ,Law No.11,079/2004)や公共 事業体法(Law of Public Consortia, Law No.11,107/2005)など、PPP事業に関連する法制度が整備 されてきた。

上記PPP法の成立によって、政府が保証もしくは補助金の形で、直接民間コンセッションに財政 的支援を行う事ができるようになった。しかしながら、近年の景気低迷による低調な財政収入に より、実際は事業採算性を改善するための政府支援(政府保証、税金)はあまり行われていない ことが民間から指摘されている。比較的裕福な州であるサンパウロ州では州政府の補助金が供与 されているケースも見られる。また、連邦PPP法では、各州・自治体がそれぞれの地域特性・地 域課題に対応した独自のPPP事業を行うための(連邦法に準じた)法律を整備することが認めら れており、サンパウロ州・ミナスジェライス州・サンタカタリーナ州・バイーア州・リオグラン デドスル州などでは既に法整備され、PPP管理委員会やPPPユニットの設置が行われている。マ

トピバ地域では、バイーア州(http://www.sefaz.ba.gov.br/administracao/p pp/index.htm)を除き未だ 整備されていない。

(3) 伯国のインフラ整備における民間資金の活用

伯国のインフラ整備全般に大きく影響する「経済成長加速度計画(PAC 2)」において、その資金 源は連邦基金(連邦予算)、公営企業の資本投資(ペトロブラス、VALECなど)、公的投資奨励 金、および民間資金である。最近の経済・財政環境の悪化により、特に輸送インフラについては 民間資金に大きく期待されている。PAC 2 では、民間投資を促すために伯国国立経済社会開発銀 行(BNDES)がインフラ整備事業の8割のクレジットを提供することとされていた。インフラ整 備におけるセクターとしては、次のセクターが対象とされている。

• 高速道路、鉄道、港湾、空港、水道

• 電力(発電、送配電)、石油(探鉱、精製、輸送)、天然ガス、再生可能エネルギー

• 公衆衛生、住宅、都市交通 (4) 伯国におけるPPP投資額推移

伯国におけるインフラ整備のPPP事業数をみると、2004年PPP法制定後、順調に増加傾向を示し たが、2010年に一時的に落ち込み、2011年以降は横ばい傾向にある。一方、PPP投資額の推移を 見ると、PPP事業数と同様に2004年以降、増加傾向を示し、2012年(PAC 2発表の翌年)に一時 的に突出して増加している。

出典:世界銀行

6.5.2 インフラセクター別PPP事業件数の推移

出典:世界銀行

6.5.3 インフラセクター別PPP事業費(百万USドル)の推移

(5) 伯国のインフラ整備におけるBNDESの役割 BNDESの概要

1)

BNDESは、伯国にて長期融資を行う目的で1952年に設立された政府系銀行で、本店をリオデジ

ャネイロに置く連邦政府 100%出資の開発銀行である。PAC、PAC 2 などの連邦政府のインフラ 整備に係る与信供与については、BNDES独自の判断に基づいて実施されている。

BNDES組織は、大きく3つのセクションで組織されている。産業部門、社会インフラ部門(都市

交通・公衆衛生)、産業インフラ部門(電力・再生エネルギー・輸送・物流)である。

出典:BNDES

6.5.4 BNDESの組織図

BNDESの融資条件は、長期政策金利(5~6%)をベースとし、与信期間が10年前後と伯国では

唯一の低金利・長期安定資金の供給を担っており、金融市場からの資金調達が依然高金利・短期 の状況下、伯国でインフラ事業を手がける企業にとっては必要不可欠な資金調達先と位置づけら れている。

伯国政府では、民間金融機関の育成を図りつつ BNDES の機能と役割を見直す中期計画が掲げら れているが、BNDESの果たす役割は当面継続されると見られている。

輸送・物流に対する融資 2)

BNDESの輸送部門への融資実績累計件数は、道路が6~7割と最も多く、続いて鉄道、内陸水運

(港湾含む)、パイプライン、空港の順である。一方、融資額をみると、道路が 45%、鉄道が 26%、続いて港湾、空港、パイプラインの順となっている。累計件数、融資金額ともに道路が最 も多くなっている。

道路については、コンセッションによる整備への融資が多くなっている。鉄道分野では ALL、

VLI、MRS、Vale など、国内の巨大企業への融資が多く、特に、機関車や貨車などへの融資枠が

今後増加する傾向にあると見られている。

6.5.2 BNDESによるセクター別投資額(2013年、単位:千R$)

出典:BNDES

BNDES へのヒアリングによると、これまでの輸送インフラへの融資はセクター単位での検討が

一般的であったが、今後はEPLで検討される回廊ベースとしてインターモーダルの視点から輸送 インフラへの融資を検討するとしている。しかしながら、輸送インフラへの融資について、今後 連邦政府予算の削減などにより民間投資との協調・連携が重要になるということであった。

以下、BNDESにおける2015〜2018年の融資計画を示す。今後も道路整備への融資傾向が伺える。

6.5.3 BNDESの将来投資計画(2015-2018、単位:10億R$)

出典:BNDES

輸送インフラ整備におけるファイナンス 3)

BNDESの輸送インフラへの支援スキームは、融資・債務保証・出資の3つの形態がある。融資ス

キームとしては、企業金融とプロジェクト金融である。企業金融については、ホールディング企 業への融資、SPCへの融資が可能である。出資比率はホールディング企業への上限は20%、SPC への上限は30%としている。

輸送セクター毎に貸出比率、金利などの大枠が定められているが、基本的には案件毎の審査を経 て融資条件が決定されている。例えば、鉄道と内陸水運の融資枠の上限は総投資額の70%、道路

は50%、空港は30%と定められている。返済期間も概ね15~20年を上限としている(企業金融

は概ね10年を上限)。

また、プロジェクト融資におけるEIRR(Equity Internal Rate of Return)は最低9%以上が必要であ り、DSCR(Debt Service Coverage Ratio)は融資返済期間を通じて1.3を目安とされている。

JBICとのツーステップローン

4)

2011年、JBICとBNDESとの間でツーステップローンに関するMOUが締結されたが、これまで 一度もその実績はない。日本企業はJBICに対する要望書(事業計画)を提出し、次にJBICから

BNDESに対して事業計画が知らされる手順である。

以下、日本企業による伯国での投資事業向けツーステップローンの協調スキームを示す。

出典:JBIC資料より

6.5.5 日本企業による伯国での投資事業向けツーステップローンスキーム

JBICからBNDESに対して事業計画が送られた後、BNDESは予備審査を開始する。プロジェクト

に応じて様々な観点からデュー・デリジェンスを行う。特に、事業の収益性(Equity IRR・DSCR など)を重視する。また、手続きとしては環境ライセンス・事業免許などの提出が必要とされて いる。

ツーステップローンを含む BNDES の融資において、環境ライセンス・事業免許取得の手続きが 大きな障害となっていることが指摘されている。また、環境ライセンスなどは州を跨ぐ場合、各 州のライセンスが必要となるが、各州により基準が異なるため手続きが煩雑となり融資の障害に

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