第五章で得られた炭素金属混合パーティクルを初期配置してさらに計算を進める.改めて初 期条件をまとめると,全方向に周期境界条件をほどこした一辺96.7Åのセルに炭素原子 2500個,
ニッケル原子25個からなる炭素金属混合パーティクルを配置し,並進,回転,振動の各温度を同 一の目標温度TCに制御する.ここで温度による影響を調べるため,TCとして 1500K, 2500K,
3500K,さらに2500Kから始めて100ps ごとに500K冷却させた場合と、逆に100 ps ごとに上昇 させた場合の5条件(Fig. 6. 2) で計算し,スタート時間は第五項からの計算の続きとして t = 6900 ps とした.Fig. 6. 1 は初期配置である.
Fig. 6. 1. Initial position at annealing process.
7000 7200 7400
1000 2000 3000 4000
Time (ps)
Temperature (K)
(a) 1500K Const.(b) 2500K Const.
(c) 3500K Const.
(d) up
(e) down
Fig. 6. 2. Temperature condition between 6900 – 7400 ps.
Fig. 6. 3.からFig. 6. 7.で,5条件それぞれ100 ps毎のパーティクルの形状を詳細に示す.この 際,初期状態において存在した炭素が68個からなるクラスターがパーティクルと衝突後,どのよ うに振る舞い方に着目した.
Fig. 6. 3. Snapshots of annealing process with 1500 K. (a)
Fig. 6. 4. Snapshots of annealing process with 2500K. (b)
Fig. 6. 5. Snapshots of annealing process with 3500K. (c)
Fig. 6. 6. Snapshots of annealing process with temperature up. (d)
Fig. 6. 7. Snapshots of annealing process with temperature down. (e)
まず(a)から(c)の温度を一定にした場合を比較する.いずれの場合も早い段階でクラスターが パーティクルと衝突するが,その後の様子は温度の違いによって顕著に現れた.2500Kの場合は,
衝突後,時間の経過とともにクラスターとパーティクルとの結合部分で構造のアニーリングが起 こり,チューブの閉端らしきものが隆起した状態に進化した.以下この隆起状態をバルジ(bulge) と呼ぶことにする.一方1500Kの場合,衝突後もクラスターの形状はほとんど保たれたまま,時 間が経過した後でもほとんど変化することがなくバルジ状態にまで発展することはできない.こ れは1500K程度では,構造変換に要するポテンシャルの障壁が熱振動のエネルギーに対して高く,
この領域の低温では容易に構造の組み替えが出来ないためであると考えられる.また3500Kまで 温度を上げてしまうと,パーティクル自体が結合数4(sp4)の炭素原子を多数含むランダムな三次 元構造に変化してしまい,衝突したクラスターは完全にパーティクルに吸収されてしまうので,
バルジの生成のためには温度が高すぎると判断できる.3500Kでのsp4の炭素原子を多数含むラン ダムな三次元構造は,高温,高圧条件下でのダイヤモンド構造生成を示唆している.よってクラ スターの衝突によってバルジ構造が出現できるのは2500K近辺であるという結論がこの計算結果 より得られた.
(d)と(e)は2500Kで衝突した後,それぞれ温度を上昇,冷却させた場合である.上記の理由より いずれも一時的にバルジ構造が出現するが,(d)は(c)と同様にランダムな三次元構造に変化してし まいバルジが消滅する.(e)は一旦バルジ構造に進化した後に冷却されたことを再現しているが,
この場合は(a)と異なり1500Kでもバルジ構造が維持されている.