第三章のクラスタリング過程で成長途中のクラスター同士の衝突により,ナノチューブに近い 構造に成長したクラスターC227が存在した.これを前項と同様に十分なアニール時間を与え,そ の構造について詳細に検討した.一辺50Åの立方体セル内に配置し,回転,振動の各温度を同一 の目標温度Tc = 2500 Kに制御し400 ns まで計算した.Fig. 4. 19. に初期配置を示す.
Fig. 4. 19. Initial position at annealing process of tube-like cluster.
Fig. 4. 20. に炭素原子1個あたりのポテンシャルエネルギーとクラスターに存在する五員環の 数の時間履歴を,Fig. 4. 21. に時間履歴のスナップショットを示す.
0 200 400
–6.9 –6.8
0 20 40
Time (ns)
Potential energy (eV/atom) Number of 5 membered ring
Potential Energy 5 Membered Ring
Fig. 4. 20. Time change of potential energy and the number of 5-membered ring.
Fig. 4. 21. Snapshots of annealing process for tube-like cluster C227.
150 ns あたりまでは楕円型を維持しているが,時間の経過とともに球形に変化した.約30 ns で 中心部分の直径は,実験的に生成されやすい(10,10)SWNT の直径(13.6Å)と一致するが (Fig. 4.
22.) ,この段階のクラスターのみが選択的に生成される理由はこの計算だけでは導けない.ただ 不完全なクラスター同士の衝突からのクラスターの直径とアニール時間の関係を知る指標となる.
また初期状態は第三章の計算からサンプリングしたので,炭素数が奇数のクラスターとなったが,
炭素数を1つ減らしたC226でも同様の計算を行った.Euler(付録 A. 2. 1) の定理より炭素数が奇数 のクラスターはダングリングボンドを 1,3,5..と持ち,常にダングリングボンドを持った状態で不 安定なため,ほとんど偶数クラスターのみが生成されるというのが一般的な説明である.
(a) (10,10) SWNT (b) Tube – Like Cluster Fig. 4. 22. Structure of (10,10) SWNT and the tube-like cluster.
Fig. 4. 23. にC226の400 nsまでの時間履歴のスナップショットを示す.
Fig. 4. 23. Snapshots of annealing process for tube-like cluster C227.
0 200 400 –6.9
–6.8
0 20 40
Time (ns)
Potential energy (eV/atom) N umber of 5 membered ring
Potential Energy 5 Membered Ring
Fig. 4. 24. Time change of potential energy and the number of 5-membered ring.
炭素数を1つ減らした偶数クラスターC226でもほとんどC227の結果と傾向は変わらなかった.
FT-ICR質量分析実験で,Ni/Co 0.6 %混合試料をレーザー蒸発超音速膨張クラスタービーム源で生 成されたクラスターで,炭素数が160以上では正イオンでも奇数のクラスターの存在が確認され ている(30).またこれまでは12個の五員環,六員環のみで構成されるという付加条件を満たす構造 が偶数のみのスペクトルを表すとの見解が一般的であったが,シミュレーションで得られるクラ スターの5員環の数を調べるとダングリングボンドを含まない場合でも12個以上の5員環と,7 員環なども含みうる多様な構造の存在を示唆しており,炭素数が大きくなるにつれ拘束条件も小 さくなると予想される.
1400 160 180 200 220
4000 8000
Number of Carbon Atoms
Intensity (arbitrary)
Fig. 4. 25. Mass spectrum of large size positive cluster.