前節の実態調査の結果から、比較的使用頻度が高いバンド教本のうち、次のバンド教本を 用いて内容分析を行う。
〈総合的なバンドメソッド〉
・ネム バンドメソード ・ベスト イン クラス ・新しい吹奏楽教本
〈目的を絞ったバンド教本〉
・3Dバンド・ブック
・テイップス・フォー・バンド ・トレジャリー・オブ・スケール
分析方法として、それぞれの記載内容をから技術的要素を抽出する。その技術的要素は、
リズム・メロディー・ハーモニーの3項目に分類する。リズム・メロディー・ハーモニーは 音楽の3要素であり、これらを総合して捉えることにより質の高い音楽が形成されると考え
る。この3要素は、音楽活動の基礎となるものであり、バンド指導においても、初心者から 上級者までそれぞれに合わせた技能を身につけることにより高度な演奏につながるものであ
る。3項目の内容は次のようなものとする。
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リズム メロディー ハーモニー
音価 調性 音程
(音符、休符の表す長さ) スケール 調性
拍子 ユニゾン 和音
(拍子記号、拍子感吟) ダイナミックス ユニゾン
テンポ アーテイキュレーション バランス
(速度標語、速度変化等) フレージング ブレンド
アーティキュレ・一ション テンポ サウンド
(速度標語、速度変化等) 分散和音
ヴィブラート アインザツツ インターバル バランス
ブレンド サウンド
・リズムの項目は、音価やアーティキュレーションなどの表記に示されるもの以外にも、
拍子感やテンポなどのリズム感を身につけるものなどを含むものである。
・メロディーの項目は、調性やフレージング、スケールなど、音楽の横のつながりをもつ ものとして必要なものである。
ハーモニーの項目は、音程や和音、調性やブレンドなど、音楽の縦のつながりを持つも のとして必要なものである。
その他に、各楽器の基本的知識や楽典などの、バンド指導において重要なものが項目とし て上げられるが、ここでは、初歩的な段階の指導を取り上げるために音楽の根本的な要素で ある3要素のみを項目として分類する。これらの分類は必ずしもひとつの項目だけに当ては まるものではない。複数の項目に重なるような要素は、それぞれ各項目に記載する。また、
1.「3Dバンド・ブック」の内容分析
「3Dバンド・ブック」は、1983年にアメリカで出版された。 J.DプロイヤーとG.
B.セブの共著によるものである。日本では、1993年に出版された。このバンド教本は、
「楽曲に入る前の予備的な練習として、もっとも効果的な3つの次元(Dimention)によるア プローチの方法を示したもの」注1である。
この教本の内容は、3つの次元であるチューン・アップとウォームアップ、調の練習、リ ズムの練習により構成されている。また、コラールなどの練習をより効果的にするために、
最初にハーモニーの基礎知識と耳のトレーニングを行うようになっている。このバンド教本 は目的を絞った内容のバンドメソードである。
この教本の概要は次のようになっている。
・このメソードの扱い方、進め方、掲載されているコラールの曲名
・楽器編成
・ハーモニーの基礎知識(音程、調性、和音の解説)
・耳のトレーニング(ハーモニーを音に出して響きを感じる)
・チューン・アップ、ウォームアップ(より良い演奏をするためのウォーミングアップ)
・調の練習(調性感やテクニック、音楽性を養う・コラールを用いて総合的に行う)
・リズムの練習(拍子とリズムについての集中的な演習
次に、このバンド教本の内容とその中に含まれる技術的要素を項目別に分類し、表にて内 容に添えて示す。
注! i.D.プロイハー/G. B.ゼップ共著『3Dバンド・ブック』 P2 47
〈ハーモニーの基礎知識、1 チューン・アップとウォーム・アップ〉
バンド教本の内容
技術的要素(リズム=R、@メロディー=M、ハーモニー=H)
・ハーモニーの基礎知識 ・楽典
(音程の度数、長調と短調の違い、完全音程、
増・減音程、コード〈和音〉の解説)
・耳のトレーニング ・音程(H)、和音(H)、
(各種音程と基本になる和音 ユニゾン(H)、調性(H)
1 チューン・アップとウォーム・アップ
・チューニングのための10のパターン ・ユニゾン(H)、和音(H)、
(Bb. Eb. F.Ab. C.Db. Gb. G.D.A) 調性(H>、バランス(H)、
〈低音から音を重ねる、和音(4つのコード)〉 拍子(R)、アインザッッ(M)
・金管のための6つのリップスラー ・インターバル(M)、音程(H)、
〈木管楽器はハーモニー、打楽器はリズム〉 和音(H)、音価(R)、拍子(R)
・木管のための6つのアンブッシュァの練習 ・インターバル(M)、音程(H)、
<上行と下降のインターバル サウンド(H)、和音(H)、
(Bb. Eb. F.Ab. C。Db)〉 音価(R)、拍子(R)、
【金管楽器はハーモニー、打楽器はリズム】 アーテイキユレーション(M)
・木管のための二七(ドミナント・セブンス) ・アルペッジョ(H)
のアルペッジョ 〈アンブッシュァの練習と要素は同じ〉
〈6つのパターン、上行のアルペッジョ〉
【金管楽器はハーモニー、打楽器はリズム】
・半音階の練習 ・アーティキュレーション(M)
〈12の調の半音階、打楽器はリズム〉 スケール(M)、調性(H)、
音無(R)、拍子(R)、
〈H 調の練習、.皿 リズムの練習〉
バンド教本の内容
且 調の練習
く各調性(長短20の調)に慣れるための練習〉
・2分音符による上・下行スケール
・上記の音階に対するハーモニー
・8分音符のスケールとアルペッジョ
・3度音程のスケール
・音階のテクニック
.コード(主要三和音)
・コラーフレ
HI リズムの練習 く各種リズムの基本形と
りズム・トレーニング(練習曲)〉
・音響(8分音符と16分音符、3連符)
・拍子(アラ・ブレーベ、3/8、6/8、9/8、
8/12、混合拍子、シンコペーション)
技術的要素(リズム=R、
メロディー=M、ハーモニー=H)
〈全体を通しての要素〉
調性(H)、ユニゾン(H)、
和音(H)、インターバル(M)、
アーティキュレーション(M)、
アインザッツ(M)、スケール(M)、
フレージング(M)、音価(R)、
拍子(R)、楽典
〈全体を通しての要素〉
音価(R)、拍子(R)、
テンポ(R)、ダイナミックス(M)、
アーテイキュレーション(M)、
フレージング(M)、ユニゾン(H:)
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2.「テイップス・フォー・バンド」の内容分析
「ティップス・フォー・バンド」は、ユ959年にアメリカで出版された。ニロ・W・ホ ビーにより書かれたもので、マーク・ウォーカーにより編集された。日本では、1988年 に出版された。ティップス(TIPPS)とは、バンド指導の5つの要素の頭文字である。
5つの要素には、それぞれに次のような意図が盛り込まれている。
T=Tone(音色)
アンサンブルの良い音色を得るために、各セクションのバランスだけに気を取られるの ではなく、個々の演奏者から良い音色を引き出す。
1=Intonation(イン「トネーションの正しさ)
このメソードで扱われている練習曲は、ユニゾンやハーモニーなどの要素が含まれてい るが、全ての課題においてイントネーションの修正を図るために利用する。
P=Phrasing(フレーズの感覚)
フレーズの感覚を訓練するのに、コラールと4声の課題が適している。この教本では、
指揮者の指示に従って演奏するよう、各パートの譜面にはアーティキュレーションの指定 がされていない。
P=Precision(演奏の正確さ)
アタックとリリースをそろえることや、アーティキュレーションの明確な表現など、演 奏者が指揮棒の動きに注意をはらうようにする。
S=Style(表現)
スタカートやマルカート、レガートなど、各パートの譜面では省略されている。これは 指揮者の棒の変化により音楽表現の統一性を訓練するためである。
これらの要素は、「すぐれたスクールバンドを育てるためには、基本となる、習得すべき要 素」注2である。この教本は目的を絞った内容のバンド教本である。この教本の概要は次のよ
うになっている。
・楽器編成
・リズム・パターン(4分の4拍子、8分の6拍子)
・チューニング(チューニングの音、和音、分散和音)と、ウォーミングアップ(ユニゾ
ン)
・各キー(Eb、 Bb、 Ab、 F、 Db、 C、 G)での練習(スケール、アルペッジョ、インタ ーバル、ハーモニー、練習曲)
・半音階の練習(Bb、 Eb、 F)
・音階練習のまとめ
次に、このバンド教本の内容とその中に含まれる技術的要素を項目別に分類し、表にて内 容に添えて示す。
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バンド教本の内容
技術的要素(リズム=R、@ メロディー=M、ハーモニー=H)
・音階練習のためのヴァリエーション ・音価(R)、拍子(R)、
(各キーの音階練習に用いるパターン) アーテイキュレーション(M)
・リズム・パターン ・音価(R)、拍子(R)
・チューニング ・音程(H)、和音(H)、
チューニングの準備 アルペッジョ(H)、楽典
チューニングのための音 チューニングのための和音 チューニングのための分散和音
・ウォーミング・アップの練習 ・ユニゾン(H)、音程(H)、
アインザツツ(M)、
アーティキュレーション(M)
・各キーでの音階練習 ・調性(H)、ユニゾン(H)、
(Eb、 Bb、Ab. F. Db. C. G) バランス(H)、ブレンド(H)、
音階練習 和音(H)、アルペッジョ(H)、
低音から重ねる音階練習 スケール(M)、アインザッッ(M)、
リズムを変えた音階練習 アーテイキュレーション(M)、
ハーモニーをともなった音階練習 フレージング(M)、
アーティキュレーションを付けた音階練習 音価(R)、拍子(R)
インターバル アルペッジョ 和音
低音から重ねる和音 練習曲
・半音階の練習 ・調性(H)、音程(H)、
スケール(M)、音価(R)、
拍子(R)
3.「トレジャリー・オブ・スケール」の内容分析
「トレジャリー・オブ・スケール」は、1952年にアメリカで出版された。レナード・
B・スミスにより書かれたものである。日本では、1988年に出版された。このメソード は、「芸術としての演奏を手がける前に、まず奏者がツールとしての『音階』を習得し、完 壁な知識を持つことが大切」注3というような意図のもとに作成された『バンドのための音階 教本』である。このメソードの中では、バンド全体を4つのグループに分け、その内のひと つにスケールを全音符で受け持たせ、他のグループは対位法的にハーモニーを演奏するよう になっている。この教本は、ハーモニーを中心とした目的を絞った内容のものである。4つ のグループとスケールの一覧は次の通りである。注4
スケール表
コン9一ト
@ 専イ 乳・.」舜・.一i乳・..1勇…1乳・渦・.湧。調・..i錫冠先・..i姿島_i鉱.
華i華日華蚕1華i荘i華i薙i華}華1孝些;華…1韓
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1T9 1
27i 63i・318gi75i・7i・・i…i・3i
131 巳 67グルーア@ w 1S5 1 1
3gl 311・gi・1・・;491351・・i51i
531 9 613ン←ト
@ キイ 1
9・ナー隣一!9・ナ」奪㌧・一i奪・ナード・ナー臨」9・・」91・一i会・ナ」駐㌧ナー…撃・ナー
華1荘i…轄i輕撃
1・拳i荘:…繹・ 1華i葎1華i麹i華蓬
グループ@ 1
761 1
74 1 1 50 垂 1
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62{ , 2グループ@ II 30 1
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781 i 44{ 64120・6 1 l I l l i@ l 54 1 90 112 1 1 1 421 36
グループ@ m 38 1 ■ 4 1 34 1 1 72{
48i82186; 461・・i52 i
561 1 4①グループ@ lV
921
28; 24 1 1 58 i i811417・i
%118166; l l261
84この教本の内容は上記のスケール表の数字の順に記載されている。
次に、このバンド教本の内容とその中に含まれる技術的要素を項目別に分類し、表にて内 容に添えて示す。
注3 激iード・B・スミス著『トレジャリー・オブ・スケール』 P4
注4
ッ上 P6
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