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バックグランド・ノート Sally Van Siclen *

ドキュメント内 コンセッションの勧め (ページ 94-131)

 競争当局はオークションについてさまざまなルートで関心を抱くようになった。競争を唱導す る観点から、競争当局は、政府の他の官庁に対し、効率性を改善するために、すなわち競争度を 高めるために、どのようにオークションを設計すべきか、助言することができる。競争当局はオー クション市場で行われている企業間の合併および合意についても評価するができる。また、競争 当局はオークションでの共謀と支配的な地位の濫用についても、懸念を抱くことがある。

 公式なルールがノイズ(noise)を減らし、競争者間のコミュニケーションをより容易にする ため、オークションは、通常の「公開価格」(posted-price)市場と比較し、共謀を助長する可能 性がある。しかし、オークションの設計次第で、共謀を減らし、オークションへの参加を促すこ とができる。したがって、オークションの設計は、ロビー圧力の対象になりうる。だが、オーク ション主催者も、戦略的に行動し、競争が促進できるようなオークション形式を選択することが できる。

 理論文献から得られる効果的なオークション設計のための基本的な対処法は、次の2つであ る。入札者に対して、入札額だけではなく支払額も考えて、評価値を正直に表明するように導く ことであり、また各参加者に対して入札前の利用できる情報を最大化することである。文献が指 し示す他の勧告には、以下のようなものがある。

・共謀が重要な脅威となる場合、競り上げ入札(ないし「公開」)オークションではなく、封 印入札を用いるべきである。オークションにかけられる対象物件の真の評価値についての情 報が入札者の間で広まり、重要な不確実性がある場合、競り上げオークションを用いること を検討すべきである。

・ 高めに、だが信頼できる留保価格を設定すべきである。入札額が留保価格の以下である場合、

オークションは取り消しされる。

Sally Van Siclen は OECD 競争部署の元メンバーである。

・入札者や公衆に提供する情報について慎重に検討すべきである。これには、敗北者の身元の 情報公開や後で起こりうる談合告訴において利用できるオークション・データの保存なども 含まれる。

・小規模な入札案件を束ねることや、今後の入札予定の公表を控えることも検討すべきである。

・入札準備費用を削減する手段を検討すべきである。

・「弱気な入札者(weaker bidders)」の参入を促進することが重要である場合、競り上げオー クションではなく、封印入札を用いるべきである。

・セットアサイド(set  asides)、入札与信、及び対象物件の分割など、「弱気な入札者」を参 入させるほかの手段を検討すべきである。

 「入札市場」での合併の効果は、それを「私的価値」の文脈で見るか、「共通価値」の文脈で見 るかに大きく依存している。私的価値の世界では、入札者間の合併は、通常の市場から類推でき るように、入札を消極的にし、需要を減少させよう(効率性の欠如)。共通価値の世界では、競 争の減退は、「勝者の災い」効果の減少によって相殺される可能性がある。この効果が他の効果 を十分上回るかどうかは、実証的な問題である。共通価値から私的価値を区別する方法について は、現在研究が進行中である。最後に、実際「二人で十分である」というケースもあるが、合併 審査ではその可能性はほとんど重要視されていない。

 オークション理論は非常にテクニカルである。したがって、著名なオークション理論家兼実務 者が次のように書いていることは頼もしい。

 「オークションのコンサルティングにおける経験から、賢明であって新しいデザインは、オー クションの成功のための重要なポイントの一つに過ぎないことが分かった。それよりも、入札費 用を低く抑えたり、良い入札者の参加を促したり、誠実に手続きを行ったり、落札者が約束通り に支払いもしくは契約履行するかに注意することのうほうが , はるかに重要である」(Milgrom  2004, p. ⅶ)

 本論文は三つの部分と三つの附録で構成されている。最初の部分では、重要な用語と概念を紹 介する。第二部では、競争に損害を与えたり、競争を支援するオークションの特性について、特 に入札談合と協調慣行、および入札への参加について取りあげる。第三部では、入札市場におけ る合併評価に関して言及する。最初の附録では、政策議論や提言を支えるオークション理論の基 本的な概要を示す。それに、テクニカルな二つの附録が続くことになる。

1.用語と概念

1.1 標準オークションのタイプ

 4つの標準オークションのタイプがある。

・競り上げ(もしくは英国)オークション。ここでは、入札者が一人になるまで価格(入札)

が引き上げられ、その人が最終価格で落札することになる。

・競り下げ(もしくはオランダ)オークション。ここでは、入札者がシグナルを発する(cry  out)まで価格を引き下げ、その人がその価格で落札することになる。

・第1位封印オークション。ここでは、各入札者が、他の入札者の入札額を知らずに、一回入 札して、一番高い入札額(価格)を入れた人が落札し、その額を支払う。

・第2位封印オークション。各入札者がほかの入札者の入札額を知らずに、一回入札して、一 番高い入札額(価格)を入れた人が落札し、二番目の高い入札額を支払う。

 この4タイプの一般的なバリエーションには、留保価格、入札の刻みや入札タイミングに関す る制限などがある。複数の対象物件が同時に、もしくは連続的に販売される場合には、入札はさ らに複雑になる。

1.2 価値評価、私的価値と共通価値

 情報はオークションを理解するうえでキ─をなしている。実際、効果的なオークションの設計 は、入札者が対象物件に対する自分の評価値を正直に顕示するように誘導し、入札時に入札者が 利用できる情報を最大化させる。競売される対象物件は、入札者にとって価値のあるものであり、

それは入札者の「価値評価」(valuation)と呼ばれている。これは、必ずしも入札額ないし支払 額と等しいものではない。

・各入札者が対象物件に対し自分らの評価値を知っている場合、入札者は私的価値を持ってい るという。ここでは、入札者はライバルたちの評価値を知っても、自分の評価値を変えない。

・これに対し、共通価値の世界では、入札者はライバル情報を知ると、対象物件に関する自分 の評価値について、自分の信念(belief)を変えることになる。

・ アフィリエートな(affiliated)価値は、純粋な私的価値と純粋な共通価値の中間的な状態と いってよい(これは関連価値という一般的概念の特殊ケースとして検討される)。

 私的価値の例は、消費者が自分の評価値を知っており、他人の評価値によって影響されない入 札物件であり、転売(resale)が不可能であるため、非耐久消費財ということになるであろう。

私的価値では、入札者が戦略的な理由でライバルの評価値を知ろうとするが、(ライバルの)情 報を知っても対象物件に対する自分の評価値についての信念を変更しない。共通価値の世界で は、対象物件の価値は必ずしもすべての入札者にとって同一でなくてもよい。純粋な共通価値の 世界では、共通価値の特殊なケースにおいて各入札者は対象物件に対して同一の評価値を持つこ とになる。

 共通価値の例は、埋蔵量が不確実である石油の採掘である。そこには、採掘して市場まで運送 する費用がどれほどか、将来の価格はいくらなのか、という不確実性がすべての入札者にある。

入札者はこれらの不確実性についてさまざまな情報を持っていて、ライバルの情報が分かった場 合には、それを利用して彼らはこうした不確実要因についての自分の信念を変更する。ほかの例 は対象物件の転売である。入札者が将来の市場環境に関するさまざまな情報を持っているため、

転売は共通価値の世界で起こりやすい。共通価値では、対象物件に関する情報が、入札者の間で 分散している。

1.3 入札戦略と結果

 このセクションでは、入札戦略と起こりそうな諸結果に言及する。後者については、ゲーム理 論分析が、共謀がなく、参入ないし参加障壁がないと仮定したときに、上の四つの標準的なオー クションに関し、導きだす諸結果を扱うことになる。

・私的価値モデルの競り上げオークションでは、各入札者は価格が自分たちの評価値に至るま で入札を続ける。二番目に高い評価値を持った入札者が脱落した後、唯一残っているのは一 番高い評価値を持つ入札者であり、彼は二番目に高い評価値と等しい(もしくはほんのわず か高い)価格で落札する。

・私的価値モデルの2位価格封印オークションでは、各入札者は自分の評価値で入札する。一 番高い評価値を持つ入札者が落札し、二番目に高い評価値で支払うことになる。

・私的価値モデルの1位価格封印オークションでは、入札者は、勝つために、低めに入札して 利幅を増大させるか、それとも高めに入札して落札する確率を引き上げるかのトレードオフ に直面しなければならない。ここでは、一番高い金額を入れた入札者が、その入札額で支払 うことになる。しかし、彼は、必ずしも一番高い評価値を持つ人である必要はない。彼の入 札額はその評価値より少し低いものとなる。

・私的価値モデルの競り下げのオークションでは、入札者は1位価格封印オークションと同じ 戦略を用いる。なぜなら、彼らは同一の情報にアクセスでき、同じようなトレードオフに直 面するからである。

 共通価値の世界では、入札額は情報提供的なものになり(informative)、理論は多少確実性を

ドキュメント内 コンセッションの勧め (ページ 94-131)