第 6 節 ネットワーク分析の発展
6.1 ネットワーク分析の発展
(1)中心性
中心性の概念は、バベラスによって提唱された。(Bavelas,1948) これ以降多くの
研究者がさまざまな研究目的のための中心性の指標を開発していたが、これらの指標 はフリーマンによって代表的な三つの指標(次数中心性、近接中心性、媒介中心性)
にまとめられている。(Freeman,1979)
次数中心性は最もシンプルな指標である。次数とはネットワークの各ノードが持つ 紐帯の数であり、次数中心性はネットワークにおいて各ノードが持っている次数の比 率である。つまり、次数中心性が高いノードほど多くのノードと関係を持っており、
ネットワークがスター型(ネットワークの中心であるごく少数のノードから放射状に リンクが伸び、そのほかのノードが中心のノードを介してつながっているような構 造)である場合には、ネットワークの中心に位置するノードであるといえる(金 光,2003)。
近接中心性は組織構造や権力構造のデザインに用いられる指標であるが、その測定 は孤立点(ひとつもリンクを持たない頂点)が存在しないネットワークに限られる。
本研究では、取り扱うネットワークに孤立頂点が存在するため、近接中心性について の分析は行わない(金光,2003)。
媒介中心性はそのノードがほかのノード同士の媒介にどれだけ貢献しているかを 示す指標である。ここでいう媒介値は全ての頂点に対し、最短経路を通った場合、ネ ットワーク全体の経路に対してその頂点を通過する経路の数であり、媒介中心はその 比率である。つまり、媒介中心性が高いほど、ネットワークの構造にかかわらずより 多くのノードを媒介しており、そのノードを除去した場合ネットワークが分断される 割合が大きいといえる(金光,2003)。
(2)紐帯(リンク)の強さ
紐帯の強さについて着目されるきっかけとなったのは、グラノヴェッターの指摘で ある。グラノヴェッターはこれまでの多くの研究が強い紐帯(ストロングタイ)のみ を研究対象としており、ネットワークの全体像を把握するためには弱い紐帯(ウィー クタイ)についても研究する必要があると主張し、実際に近親者のような強い紐帯よ りも、まれに合う知人のような弱い紐帯のほうが有利な情報をもたらす事例を明らか にした(Granovetter,1974)。
それ以後、多くの研究者がそれぞれの研究テーマのために、コミュニケーションの
頻度((Hansen,1998)など、紐帯(リンク)の強さを決定するさまざまな基準を開発
してきた。近年ではバラバシが、媒介中心性の高さが紐帯の弱さを意味すると主張し ている。(Onela.et.al.,2007)
(3)ネットワークの構造
ネットワーク構造分析は、近年における情報分析技術の発達により、グラフ理論に よ る 構 造 分 析 が 可 能 に な っ た こ と で 、 急 速 に 着 目 さ れ て き た 分 野 で あ る (Freeman,1979)。
ネットワーク構造を測定する指標はこのほかにも多数あるが、本研究で用いた指標 について以下にのべる。なお本研究において最も重要視するスモールワールド性につ いては(4)において詳述する。
1.平均次数:ネットワークにおける各頂点のリンクの数の平均
2.到達可能性:ネットワーク上の各頂点から任意のほかの頂点へ到達する可能性 3.スモールワールド性:クラスタリング係数と平均経路長により規定される、情
報伝達効率のよいネットワーク構造
(4)スモールワールド現象
ネットワーク構造についてはさまざまな研究があるが、なかでもミルグラムらの実 験が契機となって着目されたスモールワールド現象は、脳神経などの自然界だけでな く人間の社会においても、俳優や取締役兼任のネットワークなどの様々な分野で確認 され、最も着目されるテーマの一つである(Watts,1999a;Watts,2003)。
スモールワールド現象とは、ネットワーク内のごく少数のノードがランダムにリワ イアリング(繋ぎ変える)ことによって、リンクの数を増やさずにネットワークの情 報伝達効率が飛躍的に上昇する現象である (Watts, 1999a)。
ネットワークのスモールワールド性はクラスター(局所ネットワーク)密度の高さ
と、平均最短経長(任意の二つのノードがネットワークを通して出会うための最短経 路の平均であり、ネットワークの直径とも言われる)の短さによって規定される (Watts,1999a; Watts,2003)。