第 2 節 ウィークタイを持つ発明者の特定
2.3 ウィークタイの生成過程
(1)ウィークタイを持つ発明者の特性
さらに、ウィークタイを持つノードが、どのようにしてウィークタイを持つように なったのかを明らかにするため、各頂点が過去にどのような性質を持っていたかにつ いても調査する。
サイモンによると、コミュニケーションネットワークの除々の変化は、組織構造や 変 革 の 影 響 も 受 け る が 、 過 去 の ネ ッ ト ワ ー ク の 影 響 も 受 け る (March and Simon,1958)
インタビューからは、マエカワにおいて、非公式なコミュニケーションネットワー クは研究開発にとって非常に重要であり、そうしたコミュニケーションネットワーク は主に「かつて一緒に仕事をした仲間」やその仲介によって作られることが明らかに
なった。
「今度独法という、いつ潰れるかわからないときに、一人で出来ないときは当然人 の力を借りようとするわけですよ。で、借りるときは昔一緒に働いた仲間をまず頼る と言う。」
これらのことから、技術者の過去の人脈は、現在のネットワーク上の位置に大きな 影響を与えていると考えることができる。そこで、ウィークタイを持つノードが、そ れよりも過去の時点で、ネットワークのどのような位置にいたかを調査した。
可視化された各年のネットワーク図からは、ウィークタイを持つノードは過去にお いて彼らは高い次数をもっている可能性が高い(図29)と考えられた。
図29 ウィークタイを持つ発明者の過去のネットワーク
(2)仮説の評価
彼らが過去に次数が高かったかを調査した結果、7つのうち5つが、過去のグラフ において、平均よりも高い次数中心性を持っている、つまり下記条件を満たすことが 明らかになった。
k
k C
C >
ウィークタイをもつ各ノードがウィークタイとして特定された年と、高い次数を持
つノードであった年を表3に示す。
Year Node of weak tie Year of High degree
1977 2 1973,1974,1975,1976,1979,19831985 1986 2 1973,1974,1975,1976,1979,19831985
1991 261 None
1993 2 1973,1974,1975,1976,1979,19831985 1995 78 1987,1988,1993,1994,1997,1998,1999
1998 122 None
2000 227 1990
2000 350 1993,1996,1997 2003 248 1993,1994,1995
表3 ウィークタイを持っていた年度と高い次数を持っていた年度
この分析結果から、ウィークタイを持つノードのうち71.42パーセントが、ウィー クタイを持っていた年よりも過去の年度のネットワークにおいて、高い次数を持つノ ードであることが明らかになった。
第3節 まとめ
これらを踏まえて、本調査で明らかになったことをまとめる。
まず、中心性の高かった人物のネットワーク上の位置の変化について述べる。ネッ トワークの可視化図からもわかるように、ネットワーク自体も成長しその構造も複雑 になっているように、時間の経過によって、個人のネットワーク上の位置も変化して いる。
70年代に媒介中心性・次数中心性の高い二名は、実際に管理職であり、他の技術者 を指導する立場であった。しかし彼らは1995年以降においては、それほど高い媒介中 心性・次数中心性を示していない。実際には、このころになると彼らは会社役員にな ったり研究室を持つようになり、多くの技術者の指導をする立場からは外れていた。
しかし、彼らのうち片方は、ウィークタイを持っており、他の技術者を媒介していた。
それでは、ウィークタイを持つ人はどのような人なのだろうか。インタビューの結
果から、媒介性の高い人は、何らかの業績や飛びぬけた技術力によって敬意を持たれ ている人物であったことがわかった。本調査においては、媒介性の高いノードのうち、
次数の低いノードがウィークタイを持つとされるが、調査の結果、ウィークタイを持 つノードは775中の7つであり、ウィークタイを持つ発明者の74%が過去に高い次 数を持つ人であることが明らかになった。
これらの結果から、ネットワークの中心人物は多くの次数を持つ(多くの発明者の 中心である)いわば「強いリーダータイプ」と、ウィークタイを発揮する「ウィーク タイタイプ」に分けることができる。しかし、ウィークタイを効果的に使用できた人 の多くが、過去において多くの人々と研究開発に関わるコミュニケーションネットワ ークを持ち、「発明」という成果を上げてきた人であることを示している。