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第 6 章 直交ゲートナノワイヤ共振器 55

6.7 DC ゲート電圧依存性

6.6 2つの振動モードの、両ゲート電極による加振効率の違いを示したグラフ。

ソースドレイン電圧VsdAC 2 mV、ゲート電極に印加した加振電圧VgAC 300 mV である。

6.7 DC ゲート電圧依存性

最後に、ナノワイヤの共振特性がゲート電極に印加するDC電圧によってどのように変 調されるかを測定した。モード1に注目し、サイドゲート電極から加振を行った結果を図 6.7に示す。横軸は印加したDCゲート電圧、縦軸は加振周波数であり、そのときの電流 値の変化をカラーマッピングしたものである。

測定結果より明瞭な共振周波数のシフトが観測され、フィッティングの結果、バック ゲート電極に印加するDC電圧を変調したときはおよそfres = 4×105(VgDC)2 の依 存性に従って共振周波数fresはシフトし、サイドゲート電極に印加する DC電圧を変調 したときはおよそfres =4×106(VgDC)2 の依存性に従って共振周波数fresはシフト した。どちらも前章の結果と同様に、共振周波数がゲート電極に印加するDC電圧の二乗 に比例した形で変化している。しかしながら両者のシフト量はおよそ10倍異なっており、

これはFET特性の結果同様、主にナノワイヤと両ゲート電極間の距離が異なることによ るキャパシタンスの違いが原因であると考えられる。また本研究で作製した共振器では2 つの振動モードの共振周波数を一致させることも試みていたが、この結果から3 MHzと いう周波数差を埋めるためには1000 Vに近いDC電圧が必要であることが分かった。こ

6.7 モード1に注目しサイドゲート電極から加振を行い、()バックゲートにDC 変調を加えた場合(右)サイドゲートにDC変調を加えた場合。ソースドレイン電圧 VsdAC 2 mV、ゲート電極に印加した加振電圧VgAC 300 mVである。

れは現実的な値ではなく、2つの振動モード縮退のためには、よりナノワイヤとゲート電 極間の距離を近づけた共振器を作製するか、アスペクト比が小さく2つの振動モードの共 振周波数が最初から近いナノワイヤを共振器に用いる必要がある。

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第 7

結論

本研究では、第一の研究目的として定めた「ナノワイヤの高精度位置決め手法の開拓お よび実証」に対し、液滴と壁構造を用いた新規手法により、従来の手法よりも高い位置制 御性を有するナノワイヤの機械素子作製手法を確立した。その結果、これまではその作製 の難しさから報告例の無かった、直交する2つのゲート電極を有するナノワイヤ機械共振 器を実現した。次に、第二の研究目的である「同直交ゲートナノワイヤ共振器の特性評 価」に対して、作製した共振器の I-V特性、 FET特性の測定や Mixingの手法を用いた 機械共振特性の測定を行い、ナノワイヤの直交する2つの振動モードの共振の検出やその 周波数変調に成功した。作製した2つのゲート電極からの2つの振動モードに対する加振 効率に差があることも確認され、将来的に2つの振動モードを個別に加振できる可能性も 示された。しかしながら、今回作製した共振器ではナノワイヤとサイドゲート電極間の距 離がおよそ600700 nmと、ナノワイヤとバックゲート電極間の距離の250 nm に比べ て倍以上に大きく、その結果、サイドゲート電極を用いた場合のFET特性におけるゲー ト電圧の効きや機械共振の加振・検出効率が3分の1程度と低く、またDC電圧変調によ る共振周波数のシフト量もバックゲート電極から行った変調に比べて一桁小さい値となっ た。今回の直交ゲートナノワイヤ共振器作製時には構造を確実に作製するために距離に余 裕をもたせた設計にしたが、本研究の液滴と壁構造の手法を用いれば、原理的にはナノワ イヤとサイドゲート電極間の距離を100 nm以下にすることも可能であるため、今後はそ のような共振器の作製に取り組むことで、バックゲートと同程度の効果が実現できると考 えている。ナノワイヤとゲート電極間の距離を50 nmに近づけることが出来れば、ゲート 電圧50 Vという現実的な値で3 MHz程度の共振周波数シフトを実現することができ、冒 頭で述べたような2つのモードの共振周波数を一致させるということも期待される。

 本研究の「液滴と壁構造を用いたナノワイヤの高精度位置決め手法」は、基板に設計す る構造や素子として用いる材料の組み合わせによって、多種多様な機械素子を作製できる 可能性を秘めた発展性のある手法である。例えば序論で述べたように、量子ドットの組み

込まれたナノワイヤを機械素子の材料として用いれば機械系と量子系が強く相互作用する 物理現象についての研究が期待されるが、その際にナノワイヤとゲート電極の距離が近い ことにより機械共振特性をより大きく変調させることが可能となり、直交するゲート電極 を用いることより機械振動子の研究対象を2つの振動モードまで拡張することができる。

また作製条件の最適化が必要ではあるが、本手法を用いて半導体ナノワイヤではなくカー ボンナノチューブにより機械共振器を実現することにより、高い感度や応答速度のセン サー技術への応用が期待できる。

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論文・発表リスト

論文

W. Tomita, S. Sasaki, K. Tateno, H. Okamoto, and H. Yamaguchi,

“Novel Fabrication Technique of Suspended Nanowire Devices for Nanomechanical Applica-tions”,

Physica Status Solidi B,257, 1900401 (2020)

口頭発表

富田 航、佐々木 智、岡本 創、舘野 功太、山口 浩司

「NEMS応用に向けたナノワイヤ架橋構造素子の研究」

第65回応用物理学会春季学術講演会、東京、32018

富田 航、佐々木 智、岡本 創、舘野 功太、山口 浩司

「バックゲート付きナノワイヤ架橋構造素子の作製とその共振測定」

第80回応用物理学会秋季学術講演会、札幌、92019

ポスター発表

W. Tomita, S. Sasaki, K. Tateno, H. Okamoto, and H. Yamaguchi,

“Novel Fabrication Technique of Suspended Nanowire Devices for Nanomechanical Applica-tions”,

Compound Semiconductor Week 2019, Nara, Japan, May 2019

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謝辞

本研究はNTT物性科学基礎研究所での研究実習として行われました。一人前の研究者 には足りないところばかりの私でしたが、優れた研究者の方々がいらっしゃるこの素晴ら しい環境で多大なご助力を頂きましたおかげで博士研究を進めることができました。ここ に感謝の意を表させて頂きます。

山口浩司客員教授には、指導教員として、研究方針についての打ち合わせや他所で行わ れている研究の紹介、留学受け入れ先の紹介、就職活動など、あらゆる側面でご指導頂き ました。学の足りない私の初歩的な質問にも丁寧に答えて頂いた他、物理の本質的な考え 方やナノメカニクスの面白さを教えて頂きました。山口先生のご指導のおかげで、物理現 象に対するより深い考察ができるようになったと思います。至らぬ点が多く何度もご迷惑 をおかけいたしましたが、その都度私が成長できるように親身に相談に乗って頂きまし た。深く感謝し、心より御礼申し上げます。

佐々木智様には、デバイスの作製やナノデバイスの基礎的な物理について教えて頂きま した。また貴重なお時間を割いて頂き、実習生の私には扱うことのできない電子ビーム描 画プロセスにご協力頂きました。私が最終的にデバイスの作製に成功できましたのは佐々 木様のご助言とご協力のおかげです。深く感謝し、心より御礼申し上げます。

NTT物性科学基礎研究所・ナノメカニクス研究グループのグループリーダーである岡 本創様には、新型コロナウイルスへのご対応で非常にお忙しい中、私が実験できるように 様々なご支援とご配慮をして頂きました。同グループの畑中大樹様、太田竜一様、浅野元 紀様、黒子めぐみ様には、本研究に対する議論の他、実験装置の扱いやデータの解析な ど、研究者として必要な様々な知識やスキルをお教え頂きました。舘野功太様には、本研 究で用いた半導体ナノワイヤを提供して頂いた他、その結晶成長技術についてお教え頂き ました。室伏祐昭様にはクリーンルーム内での様々なプロセス装置の使用法や高品質なデ バイス作製のためのコツを教えて頂きました。大杉廉人様、知田健作様、山端元音様、高 瀬恵子様には研究を進めるにあたって多くのご助言を頂きました。その他、同研究所の多 くの方のご協力の下で本研究を行うことが出来ました。深く感謝し、心より御礼申し上げ ます。

修士1年次前期まで在籍しておりました東北大学理学研究科量子伝導研究室の平山祥郎 教授、橋本克之助教には、私が研究室を移した後も気に掛けて下さり、本研究に関しても 貴重なご意見を頂きました。同研究室の遊佐剛教授、職員の皆様、卒業生の皆様からも4 年次より多くのことを学ばせて頂きました。また平山教授にはお忙しい中、本論文審査の 主査もお引き受け頂きました。深く感謝し、心より御礼申し上げます。

リーディング大学院「マルチディメンジョン物質理工学リーダー養成プログラム」の長 坂徹也教授、森田雅夫特任教授、佐藤讓特任教授、松下ステファン悠助教には、私が同プ ログラム内で様々な活動が行えるようご支援頂きました。私はこのプログラムに在籍し3 つの長期インターンシップなどの活動を通して、幅広い知識や考え方を身につけることが できました。また東北大学工学研究科三ツ石研究室の三ツ石方也教授、山本俊介助教には プログラム内インターンシップを受け入れて下さり大変お世話になりました。同インター ンシップでお教え頂いた界面処理に関する考え方は本博士研究を進めるにあたり大変参考 になりました。深く感謝し、心より御礼申し上げます。

落合明教授、柴田尚和准教授、大谷知行客員教授には、お忙しい中、本論文の審査員を お引き受けいただき多くの有益なご助言を頂きました。深く感謝し、心より御礼申し上げ ます。

東北大学光物性研究室秘書の渡辺由紀子様には、多くの事務手続きにおいてご協力頂き ました。深く感謝し、心より御礼申し上げます。

最後に、これまでずっと私を精神的・経済的に支え、成長を見守ってくれた両親に対し て、この場をお借りして改めて感謝の意を示したいと思います。

皆様、本当にありがとうございました。

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