E刊
6.2.2.2 モノ(6-0- p-トリルスルホニル)ーβーシクロデキストリンの アジド化
Fig. 6-15では2115cm-1にアジドのN三N逆対称伸縮振動の吸収が認められ る. またモノトシル化。-CDのIRスペクトル(Fig. 6-12)に見られたトシル 基由来の各吸収が消失している. これらの結果はアジド化β-CDの生成を意味 している.
一方モノトシル化。-CDの場合と同様に, TLCによってこの生成物を分析し (展開溶媒; 25%アンモニア水:イオン交換水:酢酸エチル:1-プロパノール
=1 : 3 : 2 : 5, ヨウ素検出法), RrO.37, Rc=1.50を得た. Rc値は文献値(
Rc=1.70) 23)とほぼ同じ値を示したが, この際ß-CDと同じ移動率を有するス ポットも検出された. これは, 本反応で得られた生成物が未修飾ß-CDとアジ ド化。-CDとの混合物であることを示す. モノトシル化。-CDのトシル基は良 好な脱離基であり, アジドイオンの求核攻撃を受ける際, 溶媒である水分子カ らの求核攻撃をも受ける. 上述のTLCで検出されたß-CDはモノトシル化。
CDの一部が水と置換して生じたものと考えられる. ここで何らかの精製操作 が必要であるが, 本研究ではこの時点での精製は行わずに以下の反応へと移行 した.
6.2.2.3 モノ(6-アジドー6-デオキシ)-βーシク口デキストリンの還元
アミノ化。-CDのIRスペクトルをFig. 6-16に示した. アジド化。-CDのIR スペクトル(Fig. 6-15)に見られたN三N逆対称伸縮振動の吸収の消失か ら, アジド基の還元によるアミノ化。-CDの生成が確認できる. 但し第一級ア ミンの特性吸収帯であるN-H変角振動の吸収(1650 cm-1付近)はC D骨格に10 II I� 1] 1・u
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4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500
Wavenumber / cm・1 Fig. 6・15 IR spectrum of N3-ß・CD
4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500
Wavenumber / cm・1
Fig.6・16 IR spectrum of NH2-ß・CD
由来する他の吸収帯に隠れており確認できなかった.
前項で述べたTLCと同じ方法で分析した結果, RrO.18, Rc=0.75が得られ,
R値は文献値(Rc=0.8)23)とほぼ同じ値を示した このことはアミノ化。
CDの生成を示唆している. しかしアジド化。-CDの場合と同様に, ß-CDの スポットも同時に検出された. パラジウムカーボンを用いた本反応ではアジド 基が還元されてアミノ基になる. 一方アジド化。-CD中に混在していたß-CD は官能基としてヒドロキシル基しか持っておらず 還元反応の対象とはならな い. したがって本反応で得られた生成物は, 先のアジド化。-CDの時点で検出 された量と同量のß-CDを含んで、いることになる.
ことでß-CD含量を測定するために, τ'SK-GELSCXカラムを用いたHPLC で分析を行った(Fig. 6-17(a)) . 9.785分のピークはアミノ化。-CDのもので ある.、 。-CDおよびアジド化。-CDの標品はいずれも6.4分あたりにピークを 示すため, 6.336分のピークは両者の混合物の可能性があるが, 還元時間が十 分であることとIRスペクトル(Fig. 6-16)にアジド基の吸収が見られなかっ たことを考慮して, ß-CDのものと考える方が妥当である.
以上の結果から, 本反応の生成物(粗アミノ化。-CD)は純度65.5%で, 不 純物として約25%のß-CDを含有していることが分かる. 但し ここでのH純 度"とはRI検出器の面積比で算出したものである. 次項ではこの粗アミノ化。
CDの精製について論じる.
6.2.2.4 モノ(6-アミノ-6-デオキシ)ーβーシクロデキストリンの精製 カチオン交換カラムの各フラクションの溶出の様子をFig.6-18に示した.
各フラクション(200 cm3)のうち10cm3を正確に濃縮した試料をHPLC分析 した際のピーク強度をフラクション毎にプロットしている.
。-CDの溶出は比較的速やかに進行し イオン交換水洗浄液が最初にカラム を素通りした時点(フラクション 1 )でその大半が溶出・除去されている. こ れに対してアミノ化。-CDは, 5.0Mアンモニア水を使用したにもかかわらず 非常に長い時間をかけて徐々に溶出する傾向が見受けられた. 溶出にかなりの 時間を要したものの, 回収率は86%という良好な値が得られた.
精製後のアミノ化。-CDのIRスペクトルは精製前のアミノ化ß-CDのIRスペ
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o 6.7 13.3
Retention time / min
o 6.7 13.3
Retention time / min
Fig.6・17 Chromatograms of NH2・0・CD (a) before and (b) after purified with cation-exchange chromatography. HPLC column: TSK・
GEL SCX, mobile phase: 0.75 mol dm-3 perchlorate buffer (pH
4 . 4
)・
100
50
図。3U伺』旧知。g』何者&23何万凶
。 。 5 10 15
Fraction number
Fig.6・18 Relative peak area of fraction vs. fraction number. Each fraction of 200 cm3 was eluted from cation-exchange
column with water
(0)
and 5mol dm-3 of aqueous NH3(・)・
クトル(Fig.6-16)と顕著な相違は認められなかった. しかしHPLC で分析し てみると, 精製後の純度の向上は明らかであった(Fig.6-17( b)) . ここで6分 付近に見られたß-CDのピークは消失し. また4分前後に検出された不純物 も, 精製後のアセトニトリルによる再沈殿操作で除去されている.
この結果から, イオン交換カラムによる精製によって94%という高純度のア ミノ化。-CDが得られた. したがって回収率は80%というととになる.
最後に, 精製後のアミノ化。-CDの1H NMRスペクトルをFig. 6-19に示 す. 高磁場側の所々に見られるシグナルは, モノトシル化。-CDの再結晶に使 用した混合溶媒に由来するものが多い. モノトシル化。-CDの1HNMRスペク トル(Fig.6-14 )と同様に, このアミノ化。-CDのスペクトルでもアミノ基 が置換したユニット(ユニットB )のみが他のユニット(ユニットA )と化学 シフトを異にしている. アミノ基近傍のフロトンはこの非等価性を最も顕著に 反映しており, ユニットBのC4-Hおよび別々のケミカルシフト値を与える非 等価なジェミナルメチレンフロトンC6-Hは, それぞれ対応するユニットAの
)
プロトンよりも高磁場へシフトしている(C4-Hで約0.2ppm, C6-Hで約 O.9ppmの高磁場シフト ). 報告によれば, ユニットBのC 1 -H についても 0.03ppm程度の低磁場シフトが観測されるはずであるが32), 本スペクトルで
はö4.924に一本のシグナルを与えたのみであった. シフト幅が非常に小さいこ ともあるがユニットのコンホメーション変化や, CD環構造のひずみなどに よってC1-Hは大きく影響を受けることが知られている31)ことから, 偶然重 なったものと思われる. それぞれの帰属はTable 6- 2 にまとめた.
6.2.3 βーシクロデキストリン修飾キトサンの構造
得られた白色ゲル状物質(ß -CD
-NCMCNa)のIRスペクトルをFig.6-20 (a)に示した. これは, NCMCNa のIRスペクトル(Fig. 6- 3 )とアミノ化。
CDのそれ(Fig.6-16)の特徴を合わせ持つスペクトルパターンとして得られ ている. すなわち2500---3800cm-1イ寸近には高分子のNCMC (キトサン骨格) とß-CD環のヒドロキシル基に由来するフロードな吸収( -OH伸縮振動),
1000---1200cm-1 イ寸近にはCD環特有の吸収(グルコピラノース環のC -O- C対 称伸縮振動および逆対称伸縮振動)が認められる.
司司
a
9 8 7
b
5.0 4.5
世UVlLu
6 5
ö/ppm
4.0 3.5
ö/ppm
4 3
3.0 2
2.5
Fig.6・19 (a) Entire and (b) pa凶ial 400 MHz 1 H NMR spectra of NH2-ß・CD in alkaline D20 (pD=12). The chemical shift was calibrated by HDO signal at ö=4.7.
司司
。
unitA unitB
Table 6・2 Assignment of signals for the
lH NMR
spectrum ofNHz-ß・CD
。Ippm
0.814 1.089 1.254 1.448 2.719 2.986 3.259 3.292 3.414 3.480 3.560 3.742-3.824 3.849 4.700 4.924
Assignment a)
CH3(I-BuOH) CH3(EtOH) y-CH2- (l-BuOH)
ß
-CH2-(I-BuOH) C6-H(B)C)C6-H(B)C) CH3(MeOH) C4-H( B) C4-H(A) C2-H(A, B) CH2・(EtOH)
CS-H(A, B), C6-H(A) C3-H(A, B)
HDO C1-H(A, B)
Multiplicity J 1Hz Intensityb)
[t] l7.2]
[
t]
[7.2][S]d)
[7.2]lq]d)
[7.2]d ofd 13.6, 7.2 1.092(IH) d ofd 13.6, 3.4 1.000(IH)
9.2 1.102(IH) 9.2 5.797(6H) d ofd 10.0, 3.6 7.207(7H)
[q] [7.2]
m 18.390(19H)
10.0 6.725(7H)
d 3.6 6.671(7H)
a) The symbols A and B represent glucopyranose units unsubstituted and substituted,
respectively.
b) Number in parenthesis corresponds to the number of proton.
c) U nequi valent geminal protons.
d) [
s]
and [q] mean sextet and quintet.喝司
4000 3500 3000 2500
Wavenumber I cm・1
4000 3500 3000 2500 2000 1500
Wavenumber I cm・1
500
1000 500
Fig.6・20 IR spectra of (a) ß-CD-NCMCNa and (b) ß・CD-NCMCHCl.
司司司
一方この生成物を 酸性条件下(pH2.0)で再析出させた生成物 (ß-CD-NCMCHCl) のIRスペクトル (Fig. 6-20(b))は, 1641cm-1にアミド I吸収帯
(C=o伸縮振動), 157 3cm-1にアミドII吸収帯 (N -H変角振動) が見られて おり, アミノ化。-CDがアミド結合により NCMCに結合していることを支持す る. と ころで, NCMCNa (Fig. 6-20(a)) において これ らの吸収が見られない のは, 1600cm-1イ寸近に カルボキシラートアニオンのcoo-逆対称伸縮振動吸 収帯に隠れていること が考えられ, このことは, 生成したß-CD-NCMC中に
カルボキシル基 が残存していることを示唆している.
さらに 生成物のlH N MRスペクトル (Fig. 6-21)を測定しその解析を試み た. Õ 5.06にß-CD環のC1-H, Õ 4.53に高分子主鎖のC1-H, Õ 3.4...,3.8付 近にはNCMCとアミノ化。-CD両者のグルコピラノースユニット に由来するプ ロトンシグナルが認められ, β-CD残基を有するキトサン誘導体の生成が示唆 される. 但し これらの結果のみでは, 単にNCMCとアミノ化。-CDの混合物で ある可能性も考えられるが, ( 1 )透析チューフによる酸およびアルカリ条件 下での 1週間 におよぶ低分子の除去操作, ( 2 ) Nーカルボキシメチル-Dーグル
コサミンユニットのC2' -H メチレンフロトンシグナル (Õ 3.36) の強度が NCMCの場合と比較して著しく低下 していること (アミノ化。-CDと結合する
ことで このメチレンプロトンシグナルは低磁場へシ フト する), ( 2 ) 未反応 のアミノ化。-CD由来のC6-H シグナルがÕ 2.72, 2.98 に検出されていない こと (透析操作 によってほとんどの未反応アミノ化。-CDは 除去されていると 考えられる), などの事実をß-CD-NCMC生成の根拠と して挙げた.
縮合剤, WSCから生じた尿素誘導体(WSU;下図)は, 反応後。-CD-NCMCとイオン対を形成して残存すると考えられ, 従って 酸 とアルカリ両条 件下で十分な時間を かけて透析を行いその除去を試みた. し かしFig. 6-21の 高磁場側(Õ 1.2, 1.8, 2.3) には この不純物に由来すると思われるシグナルが
ICH3 CH3 CH2-N=C=N一(CH2b-N、
CH3
wsc
ロ
,CH3CH 3CH2- N-C-N一(CH 2)3 -NH H
�
CH3
wsu
検出されている. 透析前後のlH N MR を比較す ればその含有量は明らかに減少
司司
減少したため, 透析が精製に有効な手段であるが, との混在する不純物の完全 な除去は困難であった.
H-HCOSYスペクトル(Fig. 6-22 )からは, それぞれのユニットのC1H
C2H, C2H-C 3Hの相関が見られた. Table 6-3にß-CD-NCMCNaのそれぞ、れ の帰属を示 した.
高分子主鎖のC1-HとCD環由来のC1-Hのシグナル強度を利用して, キト サン骨格に対するß-CD残基の導入率を求めた. 高分子の糖ユニット1個につ きß-CD残基が1個導入された導入率100%の場合を想定すると , 高分子主鎖 のC1-Hシグナルに対 してCD環由来のC1-Hシグナルは7倍のシグナル強度を 示すこと になる. 本研究では, ð 5 .06のシグナル強度の 7分の1をð4.53のシ グナル強度と比較して82%の導入率と なった. 本反応で得られたß-CD-NCMC は高率でCD残基を有するキトサン誘導体であること が分かる. もしN
ーアセチルグルコサミンユニットが未反応のまま残るとすると 6%はそのまま 変わらないこと になる. また, IRスペクトルからカルボキシメチル基は一部残 存していること が予想される. しかし 直接lHNMRスペクトルから計算する こと は困難であったので, 他のユニットの構成比は明らかに出来なかった.
一方, 生成物の収量に関しては若干の疑問が残る. すなわち 得られた修飾 体のCD導入率が80%以上と 高率であるにもかかわらず, その収量が反応原料 のNCMC と重量でほぼ同量であると いう点である. 高い導入率を考えれば, 実 際には今の5 倍程度の収量が得られるはずで、あるが, 透析後アセトニトリルで 再沈操作をした際の上澄みを全て濃縮乾固させてみても固形物は微量しか見ら れなかった. 透析途中での漏れも考えにくく, 結局どの操作の段階で高分子が 消失したのか明らかに出来なかった.
次に, ß -CD-NCMCNaの13C NMRスペクトル(Fig. 6-23)とH一C COSY スペクトル(Fig.6-24)について述べる. Fig. 6-23ではß-CD由来の13 C シ グナル強度が大きく, 高分子由来のそれが非常に小さいスペクトルが得られて いるのが分かる. この結果は, 本修飾体が高率でß-CD部位を有するキトサン 誘導体であると いう事実を反映していると思われる. 一方, 同スペクトルの6 177.0 には, ß-CD環と共有 結合したNーカルボキシメチル-Dーグルコサミンユ ニットのカルボニル由来の新しいシグナルが認められ,