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第1章 職場における出会いと結婚意欲の関係

2 データ

使用するデータは次の3つである。

第一は、結婚生活や子育てについてのグループインタビューである。この調査は、平成26 年7月5日(土)に中京大学名古屋キャンパスにおいて、愛知県在住の未就学児をもつ20

~30代既婚女性6名を対象に実施した。6名の内訳は、正社員 2名、パート2名、専業主 婦2名である。この調査は、株式会社CPP(現・株式会社プラグ)に対象者リクルートお よび当日の司会進行を委託して実施した。

第二は、国立社会保障・人口問題研究所が2010年に実施した「第14回出生動向基本調 査(独身者調査)」の二次分析である。この調査は、「国民生活基礎調査」の調査地区5,510 カ所の中から選ばれた840地区内の全世帯に居住する18歳以上50歳未満のすべての独身 者を対象にしたものである。調査方法は配票自計、密封回収方式である。調査票配布数は

14,248票、有効票数は10,581票で、有効回収率は74.3%である。

第三は、内閣府経済社会総合研究所が実施した「未婚男女の結婚と仕事に関する意識調査」

である。この調査の概要は第1章を参照されたい。

34 3 グループインタビュー

3-1 当初の結婚意欲

グループインタビューでは、既婚女性に対して、結婚前の結婚意欲や結婚に対する考え方 などを尋ねた。以下では、インタビュー結果の中から、当初の結婚意欲、結婚意欲が強くな ったきっかけについてまとめる。

まず結婚前の結婚意欲を尋ねたところ、全員既婚者ではあるが、当初は結婚意欲はそれほ ど強くはなかった人が多い。正社員(建設業、事務)として働いているBさん(31歳、0歳 7カ月娘、夫と3人暮らし)は、若い頃は仕事優先で結婚のことは考えていなかったという。

28 歳くらいまでは結婚願望がなくて、仕事一筋で、正社員で定年まで勤めてもいい と思っていた。自分の同期の子達もシングルのスタンスの人が多かった。(Bさん、

正社員)

同じく正社員(不動産・経理)のAさん(39歳、父、母、夫、3歳3カ月息子の5人暮 らし)も、仕事があるので結婚をしなくてもよいと考えていたという。

前に長く付き合っていた彼がいて、問題があって別れた。そのあとに単発で付き合う 人がいたが違うと思った。(結婚願望は)ないな…独りでもいいと、その時は思って いた。女性社員で仕事はちゃんとしていたので、後々もやっていけると思っていた。

だから最悪独りでもいいと思っていた。(Aさん、正社員)

当初結婚意欲が弱かったのは、正社員として働いていた人だけではない。専業主婦のEさ ん(39歳、5歳と1歳4カ月の娘、夫の4人暮らし)は、結婚前に非正規雇用者であった が、結婚したいとは「全く(思っていなかった)」という。また、「みんなが独身だったので、

将来誰も結婚しなかったら、みんなで住もうと軽い感じで喋っていた。みんな結婚しないと 思っていた。」と語った。

対象者の中で結婚意欲が比較的強かった部類に入るパートタイマー(飲食業・接客)のF さん(24歳、4歳息子、3歳娘、夫の4人暮らし)も、当初結婚願望は弱かったという。

(ご主人と出会う前、結婚願望は?)あまりなかった。一番仲良かった友達が子どもを 産んでいて、「子どもってかわいいな」と思っていた時に出会った。「たぶんこの人と結 婚するんだろう」と思った。半年後にはお互い毎日一緒にいたいと思っていた。(Fさ ん、パート)

以上のように、調査対象者の多くは当初結婚意欲がそれほど強くはなかったという。しか しながら、結婚意欲が弱かったという人も、その後結婚意欲が強まり、結婚に至ったと回答 している。そのきっかけは何であろうか。

35 3-2 結婚意欲が強くなったきっかけ

対象者の多くにおいて、結婚意欲が強くなったきっかけは、「(ご主人と出会う前、結婚願 望は?)あまりなかった。」という先述のFさんの発言の中にもある。キーワードは<出会 い>である。結婚相手として魅力的な人と出会うと、人は結婚意欲が強くなるようである。

夫と付き合ってから、すぐにでも結婚して一緒に住みたかったが、夫の親が許してくれ なくて、できちゃった結婚。結婚したかった。毎日一緒にいたくてしょうがなかった。

彼と一緒にいたくて結婚した。(Fさん、パート)

専業主婦のCさん(27歳、年中息子、1歳娘、夫の4人家族)も、当初結婚願望が低か った前掲のAさんやBさんも、いまの夫と出会って結婚したいと強く思うようになったと いう。

(「結婚はするもの」と思っていたか?)そんなに考えていなかったが、夫と出会って、

それまでの彼氏と違った。職場で出会った。職場のみんなに優しくて、みんなに気配り ができる人。猛アプローチをして付き合ったが、ひとまわり以上年上で、当時私が 21 で夫が35だった。「40になったら結婚したい」と言っていた。でも2人子どもが欲し くて、彼が40になってからでは子どもが大学に行った時を考えると年が行き過ぎてい るから、もっと早いほうがいいと思った。地元も一緒で話がとんとん拍子に進んで、結 婚した。そんなに年上でなければ、まだだったかも。(Cさん、専業主婦)

(「結婚はするもの」と思っていたか?)いつかはするだろうと思っていて、夫を紹介 されて1年くらいして、なんとなく結婚した。今の旦那を紹介されるまでは、独りでも いいかなと思っていた。

(結婚を決めたきっかけは?)結婚生活とか、子育てとか、なんとなく「私には無理だ な」と思っていた。10代後半くらいから。なんとなく。大変そうだし、私にはできな いと思った。(中略)(結婚しようと思ったきっかけ、強い理由は?)今の旦那さんだか らかな、結婚してもいいと初めて思えた人。(どういう所で?)なんでしょう、今まで の人とは違う。(Aさん、正社員)

「私は夫と会った時に<この人なら結婚しようかな>と思えて、そこから付き合い始 めた。そうでなかったら結婚しなかったかも。」という。(Bさん、正社員)

以上のように、出会いが結婚意欲を強める重要なきっかけであることを示す発言が多く みられた。

ただし、少数ではあるが、出会いが結婚意欲を強めることにはならなかったという人もい た。前掲の専業主婦のEさんは、次のように語った。

36 27 歳くらいで主人と知り合ったけれど、当時友達は誰も結婚してなかったし、夫も全 く結婚願望がなかった。なんとなく仲の良い友達だった。29歳くらいの時に「ちゃん と結婚を考えて付き合おう」と言われて、両親に報告に行く時に結婚式場のブライダル フェアをちょっと見に行ったら、いい日柄が空いていて、決めてしまった。彼のお母さ んには、事後報告になってしまった。私は心の中ではいつでも引き返せると思っていた ので、なんとなく予約して気づいたら結婚していた。(Eさん、専業主婦)

以上から、Eさんのように結婚相手と出会っても、結婚意欲が強くはならなかったケース はある。他に、出会い以外に結婚意欲を強くしている理由として、Cさんは自分の両親の夫 婦生活が影響していることも述べている。

(いつかは結婚すると思っていた?)思っていた。若い時から。親が仲良しで、ずっと 一緒にお風呂に入っている。(B:うちもそう、と同意)今でも手をつないで寝ていた ので、そうなるのだろうとずっと思っていた。(Cさん、専業主婦)

以上のように、総じて今回の対象者では、出会いが結婚意欲を強くするきっかけになった という発言が確認された。この調査では既婚女性に対して結婚を決めたきっかけなどを尋 ねているため、彼女らが実態以上にいまの夫との出会いの影響を強調している可能性はあ る。しかし、結婚意欲が強くなったきっかけとして、両親の影響の他に理由がほとんどあげ られていない。これをみると、出会いが重要なきっかけであることは間違いないといえる。

4 出生動向基本調査の二次分析 4-1 2変量分析

ここでは、出生動向基本調査(独身者調査)の二次分析を行い、次の3点を解明する:① 非正規雇用者の女性は、正規雇用者の女性よりも、交際相手の学歴が低く、職業は非正規雇 用が多いのではないか、②非正規雇用者の女性は、結婚したいと思える交際相手がいること が少ないのではないか、③非正規雇用者の女性は、交際相手と 1 年以内に結婚する場合の 障害があることが多いのではないか。

以下のクロス集計で用いたサンプルは、出生動向基本調査(独身者調査)のうち、学生を 除く、18歳以上35歳未満の男女5,435人である。

はじめに、全体、性・雇用形態別に交際相手の有無をみたものが表1である。全体では、

「交際している異性はいない」が 56.3%であり、約半数が何らかのかたちで異性と交際を している。残りのカテゴリーの回答割合は、「友人として交際している異性がいる」(11.5%)、

「恋人として交際している異性がいる」(28.9%)、「婚約者がいる」(3.3%)である。男女 とも正規雇用者よりも非正規雇用者の方が、「交際している異性はいない」割合が高く、「恋 人として交際している異性がいる」割合が低い。「交際している異性はいない」割合は、女

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