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第3章 未婚者の結婚・出生意欲を規定する諸要因について

3 データ

結婚及び出生の意欲の同時性、及びそれらに影響を与える要因の検討について、前述の通 り、2つのデータを用いる。第14回出生動向基本調査(独身者調査、2010.以下「出生動 向基本調査」という)は国立社会保障・人口問題研究所の許可を得て2次分析を行う。サン プルには、もう1つのデータである未婚男女の結婚と仕事に関する意識調査の個票には含 まれない18歳以上25歳未満及び40歳以上の者、過去に結婚の経験のある者、自営業者が 含まれる。インターネット調査との比較を行うため、「25歳以上39歳以下」「正規雇用又は 非正規雇用11」「過去に結婚をしたことのない者」の3要件を満たすサンプルを比較対象サ ンプルとするデータセットを作成して分析を行う。比較対象サンプルのサイズはN=4,187

(男性n=2,128、女性n=2,059)である。

2つめのデータである内閣府経済社会総合研究所が実施した「未婚男女の結婚と仕事に 関する意識調査」の個票データは上記「分析対象サンプル」と同条件のサンプルがN=

9,200(無職・家事を含めるとN=10,200)である。内訳は男性・正規雇用、男性・非正規雇 用、女性・正規雇用、女性・非正規雇用がそれぞれ2,300件ずつである。なおこの調査はイ ンターネット調査会社のモニターとして登録している人を対象に実施され、調査期間は 2015年1月13日~2月9日であった(以下本調査を「インターネット調査」という)。

10 母親とそうでない女性、あるいは出産前と後との間に観測される乖離として推計される。

ワーク・ライフ・バランスの達成度の代理指標として用いられてることが多い。(野崎 (2011))

11 インターネット調査には無職・家事も含むが本稿は被雇用者のみを分析対象とすることか ら、出生動向基本調査の分析対象にも含めないこととした。

86 4.分析

4-1 出生動向基本調査による分析 4-1-1 結婚意欲と出生意欲

まず、出生動向基本調査により、全体的な結婚意欲、出生意欲を確認する。前述の比較対 象サンプルを正規雇用・非正規雇用の内訳別に示したものが表1である。なお、ここで示す 結婚意欲とは、自分の一生を通じた結婚の考えについて「いずれ結婚するつもり」と回答し た者の割合、出生意欲とは「子どもは何人くらいほしいですか」との設問に「子どもはいら ない」以外の回答(1人以上子どもが欲しい)をした者の比率である。

表1 結婚意欲と出生意欲(第14回出生動向基本調査(独身者調査))*比較対象サンプル

比較対象サンプルのうち正規雇用と非正規雇用を比較すると、男女ともに、結婚意欲・出 生意欲ともに正規雇用が非正規雇用の水準を上回る。例えば男性の結婚意欲は正規雇用の

場合 91.0%、非正規雇用の場合には 81.9%と約 10%ポイントの差がある。出生意欲は同

87.3%と75.9%である。

次いで、結婚のメリットについて図1に示す。比較対象サンプルを正規雇用・非正規雇用 の内訳によって示す。

図1 結婚のメリット*比較対象サンプル

比較対象サンプルを正規雇用・非正規雇用別に集計しているが、ほぼすべての項目で正規 雇用の選択率が非正規雇用の選択率を上回っており、正規雇用の方が結婚にメリットを感 じている状況であると言える。「経済的に余裕がもてる」は女性において非正規雇用が正規

35.9% 38.8%

27.6%

27.9%

34.1%

53.9%

27.8%

42.7%

0%

20%

40%

経済的に余裕がもて 社会的信用を得た周囲と対等になれる 精神的な安らぎの場が得られる 現在愛情を感じ人と暮らせ 自分の子どもや家族をもて 性的な充足が得られる 生活上便利になる 親から独立できる 親を安心させ周囲期待にられる

男性 正規 男性 非正規

女性 正規 女性 非正規

正規雇用 非正規雇用 正規雇用 非正規雇用

結婚意欲 91.0% 81.9% 93.4% 86.5%

出生意欲 87.3% 75.9% 89.8% 83.2%

女性 男性

87 雇用を上回るが、これは女性非正規雇用者の年収が、男女別雇用形態別の4区分のうちでも っとも低く、また今後5年間で増加する見込みが最も低いことと関連しているものと思わ れる。

4-1-2 結婚意欲・出生意欲とライフコース

分析を進めるにあたり、まず分析対象サンプルの希望するライフコース(男性の場合はパ ートナー(あるいは妻)となる女性に望むライフコース)と結婚相手に求める要件を概観す る。結婚・出産・就業に対する希望や、結婚後の生活に対するイメージを把握するためであ る。

まずは女性の理想のライフコースであるが、出生動向基本調査(独身者調査)の結果を時 系列で比べると(全サンプル対象)、女性の理想のライフコースとして 1997年時点に比べ て2010年時点で増加しているのは両立(「子どもを持ち、就業も継続する」18.5%→30.6%)、 再就職(「出産・子育て時に就業をやめ、その後再就職する」31.1%→35.2%)であり、減 少したのは専業主婦(「子育てに専念し、以後就業しない」、33.6%→19.7%)である。両立 と再就職を合計すると65.8%の女性が出産後も何らかの形での就業を希望している。

なお、男性がパートナーに望むライフコースも同様に、1997 年と 2010年の2時点間で 大幅に増加しているのが両立(10.5%→32.7%)であり、横ばいなのが再就職(38.3%→

39.1%)、大幅に減少したのが専業主婦(37.9%→10.9%)である。このようなライフコース

の希望の変化を受け、結婚相手に求める条件にも変化が見られる。

図2 調査年別 結婚相手の条件として重視・考慮する割合の変化 *全サンプル

(1997年、2010年)

図2によれば、男女とも「人柄」(2010年:男性95.1%、女性98.2%)につづいて重視 する要件が「家事・育児能力」(2010年:男性93.1%、女性96.4%)であり、女性におい ても「経済力」(2010年:男性38.7%、女性93.9%)を上回る。男性の3位は「仕事への

95.2

30.8 35.8

74.1

23.5

86.8 88.2 95.1

38.7 43.4

82.4

26.4

93.1 89.0

0 20 40 60 80 100

人柄 経済力 職業 容姿 学歴 家事・育児能力 仕事へ理解

1997 2010

97.8 90.9 77.9

67.3 49.7

89.8 88.4 98.2 93.9

85.8 77.1

53.3

96.4 92.7

人柄 経済力 職業 容姿 学歴 家事・育児能力 仕事へ理解

【 男 性 】 【 女 性 】

88 理解」(2010年:男性89.0%、女性92.7%)であり、これは女性においても4位である。

なお、2010年調査のデータによれば、このような相手に求める条件は正規雇用においても 非正規雇用においても違いは見られない。

なお理想のライフコース(パートナーに望むライフコース)別にみた、比較対象サンプ ルの結婚意欲と出生意欲、他に平均年齢、学歴(大学卒業以上の人の比率)、平均年収、結 婚相手に「仕事理解」を求める人の比率と「家事・育児能力」を求める人の比率を表2に示 す。両立、再就職、専業主婦という結婚を前提とする3つのライフコースを選んだ人の間で は男女ともに結婚意欲と出生意欲の間には大きな違いは見られない。男女間で非対照的な 状況が見られる項目は「大学以上卒業比率」、「平均年収」、「仕事理解」を求める人の比率、

「家事・育児能力」を求める人の比率である。まず大学以上卒業比率は、男性では結婚を前 提とする3つのライフコース間において違いが見られないのに対し、女性では両立コース で大学以上卒業者の比率が高い。平均年収は、男性では前述の3つのライフコースのうち最 も高いのが専業主婦コースで最も低いのが両立コースだが、女性では逆に、最も高いのが両 立コースで最も低いのが専業主婦コースである。高学歴で高収入な女性が両立を理想とす るケースが多いことは、高い人的資本を有する女性の間には出産ペナルティが消えつつあ

り(野崎(2011))、特に金銭的要因においては両立の環境が整いつつあることと、及び従来

から言われるように労働市場から離脱することの逸失利益が大きいことが理由として挙げ られるだろう。さらに「仕事理解」を求める比率にも同様の男女の非対称性が見られ、「家 事・育児能力」を求める比率は、女性ではライフコースの選択による差は見られないが、男 性では専業主婦コースを選択した場合に高いという違いが見られる。

表2 パートナーに望むライフコース(男性)理想のライフコース(女性)

(*)平均年収は、階級値で示された年収区分の中央値に置き換え算出した平均値。

【パートナーに望むライフコース】 *25~39歳の雇用者(男性)

結婚 意欲

出生 意欲

平均 年齢

大学以上 卒業比率

正規雇用 比率

平均 年収(*)

「仕事理解」

求める比率

「家事育児 能力」求め る比率 非婚 71 (3.3%) 42.3% 28.2% 31.9 28.2% 59.2% 245.6 28.2% 32.4%

DINKS 55 (2.6%) 67.3% 25.5% 32.2 34.5% 65.5% 288.5 52.7% 54.5%

両立 726 (34.1%) 93.0% 90.5% 31.8 42.8% 76.6% 274.2 83.9% 87.1%

再就職 883 (41.5%) 94.8% 93.9% 31.7 40.5% 77.8% 291.8 83.8% 90.3%

専業主婦 204 (9.6%) 95.1% 91.7% 31.4 43.1% 78.4% 302.1 88.7% 94.1%

Total 2,128 (100%) 88.8% 84.5% 31.8 39.8% 75.6% 283.2 78.4% 83.0%

【理想のライフコース】 *25~39歳の雇用者(女性)

非婚 83 (4.0%) 34.9% 38.6% 31.5 22.9% 47.0% 200.0 28.9% 31.3%

DINKS 62 (3.0%) 80.6% 19.4% 32.7 27.4% 64.5% 233.3 77.4% 77.4%

両立 599 (29.1%) 96.5% 95.8% 31.3 40.9% 69.6% 245.2 92.8% 93.8%

再就職 762 (37.0%) 96.7% 96.2% 30.9 31.2% 65.5% 229.2 90.7% 94.1%

専業主婦 432 (21.0%) 96.1% 93.3% 30.7 25.7% 63.2% 216.2 82.2% 93.5%

Total 2,059 (100%) 91.0% 87.5% 31.1 31.5% 64.7% 229.0 83.8% 87.9%

89 4-1-3 結婚意欲・出生意欲への影響が考えられる要因

以下では、推計式に用いる変数の内容を確認する。

[年収]

年収と結婚意欲・出生意欲との関係を表3に見る。

表3 年収区分別雇用形態別 結婚意欲と出生意欲 *比較対象サンプル

表3によると、分析対象となる年齢層では、男性正規雇用以外では年収500万円以上の 人は極めて少ない状況である(非正規雇用は男女とも、年収500万円を超える人はいない)。 したがって一般化には注意を要するが、正規雇用の場合には男女ともに年収区分による結 婚・出生意欲には大きな違いは見られない。一方男性の非正規雇用の場合には、年収300万 円を境に差が観察される。前述のライフコースの選択と合わせると、年収などにより男性で は結婚・出生の意欲それ自体に差がもたらされ、女性では結婚・出生と組み合わされる就業 選択の意欲に差がもたらされると言えそうである。この状況を踏まえ、結婚・出生意欲を推 計する際には収入関連項目として、年収300万円以上ダミーを投入する。

年収に関しては、今後5年間の収入の見通しも尋ねている。「かなり減ると思う」~「か なり増えると思う」の5段階で回答を求めているが、この将来に対する見通しと、現在の年 収水準との間に有意な関連はない。すなわち現在年収水準が低くても将来の年収を楽観視 する者もいれば、現在年収水準が高くても将来を悲観的に捉える者もいる。将来に不安を抱 いている者の出産確率は低いという永井(2004)の指摘を踏まえ、ここでは「かなり減ると 思う」「ある程度減ると思う」を「減少」と、「かなり増えると思う」「ある程度増えると思 う」を「増加」と定義し直し、「変わらない」をレファレンスグループとする変数として推 計に投入する。表4に今後5年間の収入の見通し別の結婚意欲・出生意欲を示す。特に男性 の出生意欲を中心に影響が見られる

表4 今後5年間の収入の見通し別結婚意欲・出産意欲 *比較対象サンプル

n 結婚

意欲 出生

意欲 n 結婚 意欲

出生

意欲 n 結婚

意欲 出生

意欲 n 結婚 意欲

出生 意欲 100万円未満 115 0.93 0.85 115 0.77 0.75 96 0.96 0.94 181 0.82 0.78 100~300万円未満 557 0.91 0.88 303 0.82 0.75 694 0.94 0.90 436 0.88 0.85 300~500万円未満 753 0.92 0.89 50 0.92 0.88 423 0.93 0.91 38 0.87 0.84 500万円以上 109 0.92 0.87 29 0.97 0.90 Total 1,534 0.92 0.88 468 0.82 0.76 1,242 0.94 0.91 655 0.87 0.83

年収階級 正規雇用 非正規雇用

男 性 女 性

正規雇用 非正規雇用

n 結婚

意欲 出生

意欲 n 結婚

意欲 出生

意欲 n 結婚

意欲 出生

意欲 n 結婚

意欲 出生 意欲 減少する(減少) 285 88.4% 84.2% 105 81.9% 74.3% 295 92.5% 87.8% 199 85.9% 83.4%

変わらない(不変) 690 90.7% 85.4% 226 77.4% 68.6% 628 93.5% 90.3% 355 86.8% 83.7%

増加する(増加) 584 93.5% 92.8% 140 90.7% 89.3% 361 95.6% 92.2% 116 89.7% 84.5%

Total 1559 91.3% 87.9% 471 82.4% 76.0% 1284 93.8% 90.3% 670 87.0% 83.7%

今後5年間の 収入の見通し

男 性 女 性

正規雇用 非正規雇用 正規雇用 非正規雇用

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