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デジタル 3S カード for Web を利用した実践についての考察

第 4 章 アプリケーション開発と利用法の検討に関する考察

4.2 デジタル 3S カードの利用に関する考察

4.2.2 デジタル 3S カード for Web を利用した実践についての考察

筆者は,2016年7月17日の教員免許状更新講習において,紙媒体の3SカードとWeb ブラウザを利用する3Sカードアプリケーションについての調査を行った。

調査対象:「参加型アクティブラーニングのためのICT活用」受講参加者34名 調査日時:2016年7月17日

調査方法:講習において最初に紙媒体の3Sカードを利用した。その後,改めてWeb ブラウザ版の3Sカードを利用してカードの作成を行った。両3Sカードの 利用後に受講者に対して,紙媒体の3SカードとWebブラウザ版の3Sカ ードについてMoodleを利用し5件法での回答を求めた。

質問内容:

①「『3sカード』について,紙のカードと,デジタル(Web)のカードでは,

学習者が作るとき,それぞれのカードで,次の5段階で,答えてください。」

(1.作りにくい 2.やや作りにくい 3.どちらともいえない 4.やや作りやす い 5.作りやすい)

②「『3sカード』について,紙のカードと,デジタル(Web)のカードでは,

学習者がプレゼンなどで使うとき,それぞれのカードで,次の5段階で,

答えてください。(1.使いにくい 2.やや使いにくい 3.どちらともいえない 4.やや使いやすい 5.使いやすい )

③「『3sカード』について,紙のカードと,デジタル(Web)のカードでは,

学習者が仲間でカード(内容)を共有するとき,それぞれのカードで,次 の5段階で,答えてください。」(1.使いにくい 2.やや使いにくい 3.どちら ともいえない 4.やや使いやすい 5.使いやすい )

以上の調査の結果は次のようなものであった。

① 「『3sカード』について,紙のカードと,デジタル(Web)のカードでは,学習者が 作るとき,それぞれのカードで,次の5段階で,答えてください。」

図22 紙媒体とデジタル媒体のカードでの作りやすさの差

上の集計結果では,紙媒体の3Sカードの平均が4.853でWebブラウザを利用する3S カードの平均が3.382であった。これらについて対応のあるt検定を実施したところ,紙媒 体のカードの平均が有意に高いことがわかった(t(33) = 8.924, p<.01)。

利用者である更新講習受講者は,Webブラウザを利用して3Sカードの作成を行ったが,

PC教室に備え付けられている据え置き型のPCを利用したことが理由の一つとして考えら れる。利用した据え置き型PCはタッチパネルではなく,マウスを利用してカードの作成を 行う必要があった。マウスを利用した文字の書き込みは,不安定な線になったり,操作が難 しかったりと,作成の際に思う通りに行かなかったことが要因であったと考えられる。加え て,紙媒体の3Sカードでは,普段から利用する,筆記用具を用いた作成であったため,よ り簡単に作成できたと考えられる。マウスを利用した書き込みとは違う,思う通りに文字を 書けることが大きく影響したと考えられる。

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9

1

5

3

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5

0% 20% 40% 60% 80% 100%

紙 デジタル

カードの作りやすさ

作りにくい やや作りにくい どちらでもない やや作りやすい

作りやすい

n = 34

② 「『3sカード』について,紙のカードと,デジタル(Web)のカードでは,学習者が プレゼンなどで使うとき,それぞれのカードで,次の5段階で,答えてください。

図23 紙媒体とデジタル媒体におけるカードの使いやすさの差

カードの使いやすさについてのアンケートについて,紙媒体の 3S カードでは平均が

4.647,Webで利用できる3Sカードでは平均が4.176であった。これらの回答の平均につ

いてのt検定を行った。その結果,使いやすさに関しても紙の3Sカードが有意に高いこと がわかった(t(33) = 5.416, p<.01)。

この調査での対象は更新講習の受講者であり,その多くが教員である。受講者はそれぞ れ,自身の経験などと関連して「どのように利用できるか」を考えながら受講していると考 えられ,それぞれの受講者の学校現場などの状況や自身のスキルと照らし合わせて紙のカ ードとデジタルのカードを比べたと考えられる。したがって,授業などで利用する際に,よ り容易に利用可能な(PC教室や情報端末などを必要としない)紙媒体のカードが使いやす さの面で支持されたと考えられる。

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紙 デジタル

カードの使いやすさ

使いにくい やや使いにくい

どちらでもない やや使いやすい

使いやすい

n = 34

③ 「『3sカード』について,紙のカードと,デジタル(Web)のカードでは,学習者が 仲間でカード(内容)を共有するとき,それぞれのカードで,次の5段階で,答えて ください。」

図24 紙媒体とデジタル媒体におけるカードの共有しやすさの差

3点目の調査として,紙媒体の 3Sカードと Webブラウザを利用して作成したカードに ついて共有しやすさについての調査を行った。これらの結果について同様に t 検定を行っ たところ,有意な差が得られた(t(33) = 2.659, p<.05)。3Sカードを共有する際には,紙媒 体ではカードを直接グループで見せ合ったり書画カメラを利用してプロジェクタへ投影し たりする。一方でデジタル媒体の3Sカードでも同様に端末を見せ合ったり(据え置き型の 端末の場合は画面の前に移動したり),プロジェクタに接続して全体で共有したりする。こ の調査の際に学習者はボタンを押すだけで手軽に全体共有できる共有システムを利用した ため,カード作成後すぐに,書画カメラを利用する手間がかからず,手元の端末で共有した カードを見られるWebブラウザでのアプリケーションが有効であったと考えられる。

また受講者の自由記述欄におけるコメントでは「紙のよさは,みんなの前で自分の考えを 発表するときに,あらかじめ考えがまとめやすいことだと思いました。Web のよさは,多 数の人のカード(意見)が一度に見られることだと思いました。」というコメントがみられ

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2 3

12 10

18 21

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紙 デジタル

カードの共有しやすさ

共有しにくい やや共有しにくい

どちらでもない やや共有しやすい

共有しやすい

n = 34

た。1枚のカードをグループやクラス全体に見せる場合,紙媒体とデジタル媒体のそれぞれ のメリットがあるため,それらを生かした授業の工夫が必要である。複数枚のカードを瞬時 に共有したり,投稿された全てのカードをみたりできる点においては,Webブラウザの3S カードと共有システムの即時性が利点になるため,さらに有効性の検討を行いたい。

また筆者は,三重大学教育学部1年生48名に対してもデジタル3Sカード for Webを利 用した実践を行い,アンケート調査を実施した。調査内容は次のとおりである。

調査対象:三重大学教育学部「情報科学基礎」受講生48名 調査日時:2016年7月26日

調査方法:「情報科学基礎」の授業において,「HTMLとJapaScript」という内容で Web ページの基本や Web利用についての授業を行ったのち,授業のまと めを「デジタル3Sカード for Web 」を利用して行った。作成したカード をグループで共有し,その後全体で共有することで授業内容のまとめの振 り返りを行った。Webブラウザ版の3SカードについてGoogle Formを利 用し5件法での回答を求めた。

質問内容:

Q1. Web3Sカードを利用することで,授業の内容を復習することができま

したか?

Q2. Web3Sカードを利用することで,学習内容を積極的に振り返る機会に

なりましたか?

Q3. Web3Sカードは利用しやすかったですか?

Q4. Web3S カードの良いところ・不便なところを教えて下さい。(自由記

述,任意)

Q5. 仲間の作成したカードを見ることで,授業内容を振り返ることができ ましたか?

Q6. 仲間の作成したカードを見ることで,自分が気付かなかった授業のポ イントに気づくことができましたか?

Q7. 仲間にカードを見せることに,ためらいがあったり,恥ずかしかった りしましたか?

Q8. 作成したカードをクラス全体で見ることによって,授業内容を振り返 ることができましたか?

Q9. カードをクラス全体で見て,自分が気付かなかった授業のポイントに 気づくことができましたか?

Q10. カードの色を分けたことで, クラス全体の意見がよくわかりました か?

Q11. クラス全体でカードを見ることに,ためらいがあったり,恥ずかしか

ったりしましたか?

Q12. カードを仲間に見せることの良いところや悪いところがあれば教え

て下さい。(自由記述,任意)

Q13. クラス全体でカードを共有することの良いところや悪いところがあ

れば教えて下さい。(自由記述,任意)

以下に調査の結果を示す。

図25 質問項目別の点数分布

質問項目のうち,「Web3Sカードを利用することで,学習内容を積極的に振り返る機会に なりましたか?」では,79%の学生が「学習内容を積極的に振り返る機会になった」と答え ており,「作成したカードをクラス全体で見ることによって,授業内容を振り返ることがで

n = 48

きましたか?」では,88%の学生がクラス全体でのカード共有によって,授業内容を振り返 ることができたと答えた。一方で任意で回答を求めた自由記述欄には「みんながどんなこと を考えているのかわかってよかった」「同じ授業を聞いて感じたことの違いがみれて面白い」

と言った回答が寄せられた。これらから,3Sカードを作成し他者と共有することで,自分 にはなかった新たな学びや,学びをさらに深めるきっかけになった可能性がある。

また,実践では,直接カードを見せる(作成者がわかる)方法と,共有システムに送信し てカードを共有する(作成者が特定できない)方法において,共有システムを利用すること でためらいや恥ずかしさが軽減されることを期待した。しかしながら,「仲間にカードを見 せることに,ためらいがあったり,恥ずかしかったりしましたか?」の項目と「クラス全体 でカードを見ることに,ためらいがあったり,恥ずかしかったりしましたか?」の項目の間 には有意な差は見られなかった(t(47) = 1.323, p=n.s.)。これは,実践において作成したカ ードを無関係の他者とではなく,同じ学部の友人同士でカードを見せる活動を行ったこと が原因の一つとして考えられ,無関係の他者に対して作成したカードを共有する際には,有 意な差を得られる可能性があると思われる。加えて,クラス全体での共有の際に,クラス一 人ひとりのカードを紹介できなかったことも原因だと考える。実践では,共有システムに投 稿されたカードのうちのいくつかを取り上げ,取り上げられなかったカードについては各 自で確認する流れであった。したがって,プロジェクタで取り上げられなかった学生は,た めらいや恥ずかしさを感じなかった可能性がある。今後の課題として,ためらいや恥ずかし さをどういった場面で感じるのかを調査していきたい。

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