第 5 章 まとめと今後の課題
5.2 今後の課題
本研究で開発したアプリケーションは,iPad版のアプリケーション,Webブラウザを利 用するアプリケーションのそれぞれで,画面に描画し3Sカードを作成するアプリケーショ ンである。したがって,端末の性能の差によって描画が不安定になる場合が考えられる。そ の要因として,端末のメモリ量やCPUの性能などが考えられ,描画速度が制限されてしま い,快適にカードを作成できないことが課題として考えられる。加えて,ブラウザを利用す るアプリケーションにおいては,カードを作成することができないブラウザ(Internet Explorer)が存在し,カードを画像として出力できない問題を,アプリケーションプログラ ムの修正を通して行っていく必要がある。
また,ネットワーク環境が外部への接続を許可していない場合にはWeb版のアプリケー ションを利用することができないため,カードの共有はもとより,カードの作成すら不可能 な場合もあり,外部のネットワークに接続していない端末に対してどのようにアプリケー ションの利用環境を整えるかが,大きな課題であるといえる。しかし,ネットワーク環境が 整ってさえいれば,アプリケーションを利用することが可能であり,作成した3Sカードの 共有機能が利用でき,学習活動に貢献することが可能である。
一方,開発したアプリケーションの利用方法として,カードの作成のみではなく,カード の共有や,カードを交換について検討した。特にカードを共有する方法については,iPad版 のアプリケーションではAirDropを利用したカードの交換や収集,ブラウザを利用したア プリケーションでは,共有サイトに送信することで一覧としてカードを見ることがそれぞ れ可能になった。しかしながら,AirDropの利用は同時に何台可能であるか,共有サイトに 送信するために必要な回線の速度など,本研究の調査では確認できなかった点もいくつか あるため,大規模な利用などを通してそれらを検討する必要があると考えられる。また,共 有サイトにおけるカードの並び替えや,色分け,投稿されたカードの分析など,筆者の能力 では解決できなかった問題も存在する。これらのアプリケーション自体の問題に加え,アプ リケーションの利用した共有場面での恥ずかしさやカードを見せることに対するためらい などを調査することで,より利用場面を明確にすることが可能であると考える。
以上のことから,本研究の今後の課題として,アプリケーションを利用可能な端末を増や す(描画処理の際の負担をさらに減らせるようにソースコードを見直す),本研究では達成 できなかった大規模な利用を通したサーバーの負荷やAirDropの通信などの検証,共有サ イトの利用を促進するための機能追加,恥ずかしさやためらいの調査などを行っていきた いと考える。
おわりに
本研究では,タブレット端末で 3S カードを作成可能なアプリケーションの開発を行っ た。開発では,iPadのみで利用できるiPad用のアプリケーションと,OSに依存すること なくブラウザ上で 3S カードを作成することができるアプリケーションのそれぞれ開発し,
その利用法について検討した。
iPad アプリケーションの開発では,3 つにまとめられることや,指でなぞって手書きで カードを作成できる利点を生かしながら,タブレット端末の特徴である「簡単にデータ化で きること」や「色や太さを自由に変更できること」「簡単に削除できること」を実装したア プリケーションを作成することができた。Web ブラウザ上で利用できるアプリケーション の開発では,内容を 3 つにまとめ指でなぞって書き入れられることに加えて,キーボード からの文字入力や,背景色の変更,図形の描画が可能になった。さらに,3Sカードを作成 後に共有ボタンを押すだけで共有サイトに送信され,他の学習者の作成した3Sカードが見 られる共有システムの作成を行った。
一方で iPad アプリケーションの利用では,3S カードを画像として保存できるメリット を活用して,複数枚のカードを保存してプレゼンテーション用の資料や,アルバムにまとめ てポートフォリオとして利用する方法を検討した。実際に児童が作成した 3S カードでは,
文字の色を変更することで強調するような利用がなされていた。
また,Web ブラウザを利用したアプリケーションでは,共有機能を活用した利用法につ いて検討した。共有機能を利用することで,3Sカードにまとめた内容を共有し,他の学習 者が行ったまとめを見ることが可能であり,学習内容をまとめた場合には振り返りに繋が る。また,3Sカードの背景色を指定した色に変更し共有することで,全体の傾向を一目で つかむことができる。このような全てのカードを学習者が操作して自由に閲覧することが できるのは,ブラウザを利用したアプリケーションの利点であると考える。
アプリケーションの利用に関するアンケートでは,アプリケーションを利用してカード を作ることや使うことに関しては紙媒体には及ばない結果となったが,全体で共有を行う 場面で優れていることや,文字や背景色を自由に変えることが可能な点ではタブレット端 末が優れており,授業者の工夫や授業場面に応じた使い分けで,より効率的な利用が可能だ と考えられる。
今後の課題としては,アプリケーションの機能や動作の改良が挙げられ,より使いやすい アプリケーションを目指す必要がある。また,本研究では明らかにできなかった,授業場面 に応じたより良い使い方や,恥ずかしさやためらい,紙媒体との使い分けなどについても実 際の利用と,授業者と利用者の感想などを踏まえた上で検討していき,ゆくゆくは学校現場 において筆者自身でも利用していきたいと考える。
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謝辞
本論文作成にあたり,三重大学教育学部附属教職支援センターの諸先生をはじめ多くの 方々に支えられ完成できますことを心からお礼申し上げます。
指導教員である須曽野仁志教授には,ご多忙な中懇切丁寧にご指導いただき,また様々な 学会発表を通して,研究に関する視点や方向性,理論などをご教授いただきました。心より 感謝申し上げます。下村勉教授には,ゼミ発表や談話の中で開発や資料の作成など様々なア ドバイスをいただき,心より感謝申し上げます。
教育学部附属教職支援センターの新田貴士センター長には,折に触れ,励ましのお言葉を いただきました。事務の宮村嘉子さんには,日頃よりお世話いただきました。大沢院での生 活を支えていただきましたことに,厚く御礼申し上げます。
学校教育領域をはじめとする教育学研究科の各先生方には,修士課程の講義を通して 様々なご教示をいただきましたことに心より感謝申し上げます。
同じ研究室の大学院生や情報内地留学先生方からは,日々様々なアドバイスをいただき,
アプリケーション開発の原動力となりましたことを,心より感謝申し上げます。
学習支援研究会のメンバーの方々には,機会があるごとに,学校現場目線でのご意見やア ドバイスをいただき,厚くお礼申し上げます。
最後になりましたが,3年という長い研究生活を励まし支えていただきました全ての方々 に心からお礼申し上げます。
三重大学大学院での研究と,教育学研究科で学ばせていただきました知識や経験を,今後 教育の場で活かし,教育の発展に尽力させていただきます。
2017年2月13日 芳田 翔太郎