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デジタル 3S カード for iPad についての考察

第 4 章 アプリケーション開発と利用法の検討に関する考察

4.1 アプリケーション開発についての考察

4.1.1 デジタル 3S カード for iPad についての考察

本件研究のアプリケーションのうち「デジタル 3S カード for iPad」の開発では,iPad において3Sカードを作成し,画像として保存する機能を備えたアプリケーションを作成し た。アプリケーションの開発では,指でiPadの画面をなぞることで文字を直接書き入れら れること,試行錯誤してカードを作成可能であること,作成したカードをデータとして保存 可能であることに重点を置いた。

開発したアプリケーションでは,キーボードを使った文字入力ではなく,iPad の画面に 直接指でなぞり書き込むような仕様になっている。キーボードを利用しないことで,iPad に直接,手書き(手描き)で3Sカードを作成する。紙媒体では,3Sカードに対して鉛筆や ペンなどを利用して直接手書きで書き込むが,3Sカードの1つの重要な点として「手書き で書く」ことが挙げられる。

ゼブラ株式会社が2014年8月22日から31日にかけて行った全国の10代から60代の

男女計1,300人を対象に手書きに関する意識調査を実施した。調査の中で「質問6:手書き

の良さを感じることがありますか?」という質問では,全回答のうちの 88%が手書きの良 さを感じることがある,もしくはかなりあると答えた。

ゼブラ株式会社の調査では,10 代から 60代までの広い年代に対して調査を行なってい るが,この結果は 3S カードアプリケーションの利用者に対しても同様であると考えられ,

「手書き」で3Sカードを作成できることに対する満足感につながる。したがって,指で画 面をなぞり文字を書き込む機能はアプリケーション版の 3S カードにとっても重要な要素 であると考える。

一方で,ゼブラ株式会社が行った調査では,ペンや鉛筆などの筆記用具を利用しての「手 書き」が前提になっており,アプリケーション版の3Sカードの指でなぞることと全く同質 のものではないため,「iPad の画面にタブレットデバイス用のペンを利用して書き込む」

「タッチペンは利用せず,指でなぞって手書きを行う」などの違いについて調査検討する必 要が課題として残された。しかしながら,本研究で開発した「デジタル3Sカード for iPad」

では,指でなぞり書き込むことやタッチペンを利用した書き込みも可能であるため,指でな ぞること,タッチペンを利用して書き込むことの両面に対応することができたと考える。

以上のことから,iPadの画面に対して手書きで入力できる良さをアプリケーション取り 入れることができたと考える。

また,iPad アプリケーションの良さとして試行錯誤をして3S カードを作成することが できる点も挙げられる。紙媒体の3Sカードでは,書画カメラなどを用いた際に見えやすく

なるように,鉛筆ではなくペンやクレヨン,色鉛筆などを使う必要がある。よって,万が一 失敗した場合などには,修正ペンを用いたり再度新しい3Sカードに書きなおしたりする必 要があった。一方でiPadアプリケーションでは,色の変更はボタン一つで行うことが可能 であり,色の修正や削除なども「消しゴム」や「全削除」の機能を利用することで簡単に行 うことが可能であると考えられる。それに加えて,紙媒体のカードと比較した際に,iPadア プリケーションの特徴として,太さや色を自由に変えられる点が挙げられる。手書きの3S カードの場合は,文字の太さを変えてカードを作成しようとした場合に,ペンの太さを変更 したり文字を重ねて書いたりすることで太さを出す必要があった。本研究で開発したアプ リケーションでは,機能の 1 つである文字の太さの変更を利用することで,任意に太さを 変更することが可能である。さらに,色に関しても同様であり,ペンによる色の変更では表 現できなかったような色の変更も可能になっている。iPad 版の特徴として,ペンの色を透 過させることができ,紙のカードで蛍光ペンを利用して文字を強調するような手法が簡単 に取れるようになった(図19)。

図19 文字の透過設定

文字の色の変更や,太さを変更できる機能は,アプリケーション利用者が強調したい内容 や要点について整理した上で利用するため,学習内容の整理や要点の把握につながる。ま た,作成された3Sカードを利用して行われる発表では,聞き手の意識も集中しやすいと考 えられる。

つまり,アプリケーションの利用者は,消しゴムなどを利用していつでも書き消しできる ため下書きなどの必要がなく,iPadの画面に対して何度でも書き込みや修正を行い,3Sカ ードを要点の整理を行いながら何度も試行錯誤し色や太さを工夫ながら作成することがで き,聞き手は利用者のポイントに集中することが可能である。

3Sカードの作成時の試行錯誤の可能性に加えて,画像としてカードをカメラロールに保 存できる点もiPad版の良さとして考えられる。

小学校などの学校現場において,作成された3Sカード(成果物)を保存し利用すること は重要であると考えられる。しかしながら紙媒体のカードでは,例えばカードを紛失してし まったり,破れるなどで破損してしまったりする可能性がある。現職教員の意見として「紙 媒体のカードで作成した場合に,紛失したり汚れてしまったりする場合がある」というもの もあった。したがってiPadのアプリを利用することで作成されたカードは画像として保存 されるため,iPad が故障したり紛失したりする場合を除き,成果物をいつまでも保存して おくことが可能であるため,そういった保存に対する問題を解決できる。

そういった保存などを行う際,紙媒体のカードでは,一旦収集しデータ化する必要があ る。しかしながら,カードの収集やデータ化は大変時間がかかるという難点があった。開発 したアプリケーションでは,デジタル媒体のメリットでもある,データのコピーや収集の容 易さによって,作成後すぐに保存でき,データの移行も容易である。

また,保存の容易さに加えて,共有の利便性もあげられる。iPadのカメラロールに画像 データとして保存された3Sカードは,プロジェクタを利用することで全体共有に共有する ことができる。iPadを手に持って仲間に見せて共有することも可能であるが,iPadの特性 上,人数を制限したグループでの学習には有効だと考えられるが,教室の全体に向けた共有 では文字が後ろの席に座っていると見られないなどの問題も考えられる。したがって,iPad とプロジェクタを繋ぐためのケーブルを購入することで教室全体へ画面を投影し共有する ことができる。

共有性に加えて,iPadの利用で可能になったことに,作成したカードの交換があげられ る。これは,iOS に搭載されているファイル交換機能である “AirDrop” を用いるもので,

利用者同士がカードを指定し送信することで3Sカードの交換が可能になった。しかしなが ら,AirDropを利用した通信では,iPadの台数が増えるほど通信が困難になる可能性もあ り,問題なく交換機能を利用できるかを検討する必要があり,今後の課題である。

さらに,カメラロールにはアルバム機能が搭載されており,作成し保存した3Sカードを カメラロールにてアルバム作成して収集することや,学習内容や活動内容をポートフォリ オのように保存することも可能であると考える。これらの利用については後に述べる。

しかし一方で,iPadアプリケーションには問題がいくつか考えられる。1つ目としては,

文字の書きにくさである。大きい端末であれば文字を容易に書くことも可能であるが,iPad miniなどの画面の小さい端末での利用を考えると文字をタイトルや内容欄に書き込みにく い可能性があるとも考えられる。

また,アプリケーションの利用者を小学生として想定した場合,普段から使い慣れている

鉛筆などを実際に持って作成する紙媒体の方がカードの作成が容易であるとも考えられる。

家電量販店などにおいて,デジタル端末向けのタッチペンが市販されているが,うまく反応 しない場合や,普段のノート書きの際と同じように使用するため手の一部が画面と接触し てしまうため,不要な線が描画されてしまうなどの問題も発生する。

2点目としては,端末の普及状況や,導入されている端末の製造年などの,端末自体の問 題が挙げられる。第3章の「デジタル3Sカード for iPad の開発」でも述べたように,学 校現場に普及している端末のうちiOS を搭載している端末は2.4%であり,Windowsを搭 載した端末が 96%を占めていること現状もあり,作成したアプリケーションを実際に利用 できる学校現場は非常に少ない。

また,学校現場に端末が導入されておりiPad版のアプリケーションを利用できる場合で も,端末の製造年(搭載されているプロセッサ)によっては描画速度に若干遅れが生じるな ど利用はできるが使いにくいと行った問題が起こることも想定される。iPad に搭載されて いるプロセッサは次のように変化している(図20)。

図20 iPadの端末別ベンチマーク

(https://corriente.top/ipad-performance-compare/を参考に作成)

上に挙げたベンチマークによれば,第1世代のiPadと最新版のiPad Proでは,およそ 11 倍の性能差があり,アプリケーションの動作面でも大きな差が見られる。したがって,

アプリケーションが導入できる端末が整備されている場合でも,満足にカード作成を行う 0

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Benchmark

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