(1) デザイン開発の形態
デザイン事務所が行うデザイン業務を、クライアントから基本デザインまたは具体的な コンセプトの提示を受けて行う受注型と、大まかなコンセプトの提示はあるが、基本デザ インからすべてのデザイン業務を事務所で行う提案型(コンペティションを含む)とに大 別して調査を行った。また、アンケートの回答で「その他」の業務形態として、自社で製 造販売する製品の開発(自社開発)と共同開発が挙げられた。
図 3.2.1.1 は、各デザイン事務所が行うデザイン開発の業務形態の割合を示している。
受注型中心(51%以上)のデザイン事務所は 8 社中 5 社であり、提案型・自社開発を中 心(51%以上)とするデザイン事務所は2 社であった。
図3.2.1.1 デザイン開発の業務形態
図 3.1.1 と比較して見てみると、デザイン開発の形態については、デザイン事務所の従 業員数やデザイナー数に応じた傾向は見られなかった。
(2) デザイン開発の製品分野
図 3.2.2 は、デザイン開発の対象製品の分野を示している。
デザイン開発を行っている製品分野を最大 3つまで、意匠分類グループ(A~M)によっ て選択可能としたところ、Cグループ(生活用品)、G グループ(運輸または運搬機械)、J グループ(一般機械器具)の分野が最も多く、F グループ(事務用品及び販売用品)、Lグ ループ(土木建築用品)、M グループ(A~Lに属さないその他の基礎製品)についてはデ ザイン開発を行っていると回答した事務所がなかった。
0 % 2 0 % 4 0 % 6 0 % 8 0 % 1 0 0 % A社
B 社 C社 D社 E社 F社 G社 H 社
受注型 提案型 自社開発 共同開発
図3.2.2 デザイン開発の製品分野別回答数(複数回答)
(3) 開発スケジュール
図 3.2.3 は、デザイン開発開始時期から製品販売開始までのスケジュールを表している。
全体の平均で見てみると、意匠出願は、製品発売の7.1 か月前にされるという結果であ った。
意匠分類グループ別に見てみると、分野ごとに大きく傾向が異なるが、回答数が少なか ったため、分野の傾向というよりも個別のデザイン事務所やクライアントの事情である可 能性がある。分野ごとの開発スケジュール等をより客観的に把握するためには、企業への 調査結果も参照することが望ましい。
1 1
3 2
1
3 2
3 2
2
0 1 2 3 4
A.製造食品及び嗜好品 B .衣服及び身の回り品 C.生活用品 D.住宅設備用品 E.趣味娯楽用品及び運動競技用品 F.事務用品及び販売用品 G.運輸又は運搬機械 H.電気電子機械器具及び通信機械器具 J.一般機械器具 K.産業用機械器具 L.土木建築用品 M.基礎製品 N .その他
図3.2.3 デザイン開発開始時期から製品販売開始までのスケジュール
注1)回答が1~3 ヶ月と幅のある場合は、中央値の 2ヶ月で集計した。
注2)製品分野「F:事務用品及び販売用品」「L:土木建築用品」「M:基礎製品」「N.その他」については、有効回 答数がゼロであったので表示を省略した。
3. 意匠の知財管理体制について
図 3.3は、デザイン事務所での知財管理実施の有無を示している。
知的財産管理(出願・権利の管理)を行っている事務所は 8 事務所中 5 事務所であり、
うち 3事務所は外部弁理士に委託している。知財管理を行っていない事務所は、意匠登録 を受ける権利をクライアントに譲渡している。なお、自社出願はないが、クライアントの 知財管理を支援する業務を行っている事務所(1 社)がある。
図3.3 知的財産管理実施の有無
5 3
0% 2 0% 40 % 60 % 8 0% 1 0 0%
知財管理を行っている 知財管理を行っていない 3 .6
2 2 2 .3 2 .5 3
6 .7 2 .5
4 5
2 .8
1 2 1 .5
0 .5
1 0 2 .7 2
4 3
2 .4
0 4 .5
2
0 4 .0 5 .5
2 1 .5
4 .7
3 1 .0
2
1 3 .3 3 .5
1 8 4
0 . 0 5 . 0 1 0 . 0 1 5 . 0 2 0 . 0 2 5 . 0 3 0 . 0 全体
A B C D E G H J K
開発開始~デ ザイン決定 デ ザイン決定~出願 出願~製品発表 製品発表~製品発売
4. デザインの保護状況について
(1) 意匠権による保護の必要性
デザイン事務所が開発したデザインについて、意匠権による保護が必要かどうかを質問 したところ、8 事務所中 6 事務所が必要と回答(図3.4.1)し、「Ⅲ.3.意匠の知財管理体 制について」で知財管理を行っていると回答した事務所はすべて必要であると認識してい ることが分かった。不要及び無回答とした事務所は、クライアントに意匠登録を受けよう とする権利を譲渡していることが理由であり、デザインの保護の必要性自体を否定してい るものではないと考えられる。
ヒアリングでは、事務所では出願しないが、クライアントに保護の必要性を説明して、
クライアントから出願してもらい、その際は弁理士を紹介する等のサポートを行っている 例もみられた。
保護が必要性であるとした理由(自由記述)は、模倣品・類似品対策(5件)、他社への 侵害性回避(1 件)、守るべき権利(1件)である。
図3.4.1 意匠権によるデザイン保護の必要性意識
6 1 1
0 % 20 % 4 0% 6 0% 80 % 10 0 %
①必要 ②不要 無回答
(2) クライアントとの関係における意匠権の扱い
事務所が開発したデザインについての権利がクライアントとの間でどのように取り扱わ れているか(図 3.4.2)は、意匠権を受ける権利の譲渡(有償)がもっとも多かった(8 事務所中 7 事務所)。これは、クライアント側の意向が強く働いている結果であり、対価は デザイン料に含まれていることが多いようであった。
共同出願やロイヤルティ契約は、クライアントが大学等でデザイン開発費用が十分得ら れなかった場合やコンペティションで権利を取得しておかないと流用されるおそれがある 場合に行っていた。
図3.4.2 クライアントとの関連における意匠権の扱い(複数回答)
0 1 2 3 4 5 6 7 8
自社出願 共同出願 ロイヤルティ契約 意匠登録を受ける権利の譲渡(有償)
(3) 日本への意匠出願
2012 年の意匠出願については、回答事務所のうち 4 社が出願を行ったと回答した(図 3.4.3.1)。1事務所あたりの年間平均意匠出願数は2 件であった。
図3.4.3.1 2012年の意匠出願件数
4 2
0
1 0
0
1 0
0 1 2 3 4 5
A社 B 社 C社 D 社 E社 F社 G社 H 社
過去 5年間の出願傾向については、増加1 社、変化なし 2社、減少 1 社である。増加の 理由はプロジェクトの増加、減少の理由は費用対効果との兼ね合い、コスト削減との回答
おり、その理由は、コスト削減のためであった。
図3.4.3.2 過去5 年間の出願件数の増減
意匠出願の目的については、2012 年に意匠出願をした全事務所(4 社)が模倣品・類似 品対策を挙げている。
図3.4.3.3 意匠出願の目的(複数回答)
出願目的ごとにその効果について質問したところ、全事務所が「模倣品・類似品対策」、 及び「特許権の補完」は期待どおりの効果を挙げているとの回答であった。なお、非侵害 確認の効果が低いとの回答理由は、実際に侵害訴訟や警告をされたことがないため、であ り、具体的に問題となったことによる回答ではなかった。(図 3.4.3.5)
1 2 1
0 % 2 0 % 4 0 % 6 0 % 8 0 % 1 0 0 %
増加して いる ほぼ変わらな い 減少して いる
0 1 2 3 4 5
模倣品・類似品対策
ブ ラ ンド力強化
非侵害確認
特許権の補完
ライセンス
図3.4.3.4 出願目的別効果
(4) 意匠権以外の産業財産権の利用
製品デザイン保護のために、特許権、実用新案権、商標権を取得したことがあるかどう かを示しているのが、図 3.4.4.1 である。
4 事務所で意匠権以外の産業財産権の取得経験があると回答を得たが、クライアントの 意向で特許権行使の例がある(結果は把握していない)のみで、いずれの事務所もこれら の権利に基づく権利行使経験は無い。なお、権利取得効果については、特許権・実用新案 権は、抑止力としての作用やより広範な権利取得、商標権はブランド力としての作用が挙 げられた。
図3.4.4.1 意匠権以外の産業財産権の利用
4
4
3
3
3
4
1
1
1
0 % 2 0% 4 0% 6 0 % 8 0 % 1 00 % 特許権
商標権
実用新案権
利用した ことがある 利用した ことがな い 無回答
2 2
1 1
1 1
2 1
0
1
2
3
4
5
6
低い 高い
模倣品・類似品対策
ブ ラ ンド力強化
非侵害確認
特許権の補完
ラ イセンス
(5) 産業財産権以外のデザイン保護
不正競争防止法及び著作権の利用について質問したところ、1 事務所が著作権の利用経 験があるのみで、ほとんどの事務所が利用していない。ヒアリング調査によれば、このよ うな保護制度の存在については承知しているが、製品販売を条件とするなど利用条件が満 たされないということであった。
図3.4.5.1 産業財産権以外の知的財産権の利用に関する回答数比率
(6) 日本国特許庁への意匠出願等にかかる費用、手続
意匠出願等にかかる費用について、知財管理を行っている 5 事務所及びクライアントの 知財管理を支援している 1 事務所が回答している。弁理士費用の負担感が高いが、その他 の各項目について負担感の差はあまりない。(図 3.4.6.1)
図3.4.6.1 意匠出願等にかかる各費用の負担感
1
7
7
7
1
1
0 % 2 0 % 4 0 % 6 0 % 8 0 % 1 0 0 % 不正競争防止法2条1項1号
不正競争防止法2条1項3号
著作権に基づく権利行使
利用したことがある 利用したことがな い 無回答
0 1 2 3 4 5 6
出願料
登録料
更新料
審判請求料
弁理士費用
年間にかかる費用については、4 事務所から回答があり、12 万円~100 万円/年で、平均 すると1 社あたり約 46 万円であった。ただし、知財管理を自社で行っている事務所は、約 5 万円/出願件数で、弁理士等に外部委託している場合の約 23 万円/出願件数に比べて、か なりコストを抑制していることがわかった。(図 3.4.6.2)
図3.4.6.2 1件の意匠出願等にかかる平均費用(単位:万円)
5
23
0 5 10 15 20 25
自社出願
外部弁理士出願
その他に、
・意匠登録は特許と比べて費用対効果がよく、自分自身で出願できることがメリットであ る
・出願関係費用が高額なため、小規模事業体にとっては戦略的な出願ができない
・図面作製は自社で行うため、図面作成費用はかかっていない
・自社で、電子出願ができるので有り難い
との意見があった。
なお、ヒアリング調査(2 事務所)によると、両事務所とも海外に出願したい意思はあ るが、費用面で断念しているとの回答があった。