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テキストマイニングによる分析結果, 考察および第三者評価

テキストマイニングによる分析結果, 考察, および第三者評価について, 以下に述べる.

8.5.1 テキストマイニングによる分析結果

テキストマイニングによる分析から, 以下の三点を確認することができた.第一に, 雇用形 態を問わず出現率の多い上位

3

項目は「店舗」, 「スタッフ/従業員」, 「お客様」であった.表

23

はフリーコメント回答者のうち, 特定のキーワードを利用した回答者の割合が多い順に並び かえ, 正規従業員, 非正規従業員それぞれの上位

20

位までを抽出した結果である.第二に, 正規従業員では「会社」や「人材」といった, 方針や人事施策など, 店舗における日常業務の 範囲を超えた視点での提案が特徴的であるのに対して, 非正規従業員は「商品」や「シフト」と いった日常業務に視界が集中している特徴がみられた.表 24は上位

3

項目(店舗, スタッフ または従業員, お客様)以外で正規従業員, 非正規従業員それぞれで頻出したキーワードの

うち, 特徴的なものを示した.正規従業員, 非正規従業員のうち*または**が付いている項目 は, 正規従業員のみ, または非正規従業員のみで活用されているキーワードである.第三に, 従業員満足度「この店舗で働いてよかったと思う」の設問に対する

5

段階選択の回答により, 3 点以上の回答者(選択肢「かなりあてはまる(5 点)」, 「ややあてはまる(4 点)」, 「どちらともい えない(3 点)」)と

2

点以下の回答者(選択肢「あまりあてはまらない(2点)」, 「あてはまらない

(1点)」)の

2

つのグループに分け, テキストマイニングによるグループごとの頻出キーワードを 集計したところ, 正規従業員では従業員満足度が

3

以上のグループ

A

2

以下のグループ

B

に顕著な差が見られなかったが, 非正規従業員については, 従業員満足度が

3

以上のグ ループ

C

のみに多くのカテゴリーの頻出キーワードが認められた(表 25).

表 23 店舗改善に向けた提案に寄せられたフリーコメント (上位 20単語)

※nはフリーコメントの回答者のうち, 該当するキーワードが回答に含まれている回答者数

%はフリーコメントの回答者のうち, 該当するキーワードが回答に含まれている回答者数の割合

同じ出現数のキーワードがあるため正規従業員は22単語, 非正規従業員は21単語を掲載

*正規従業員のみに見られるキーワード, **非正規従業員のみに見られるキーワード

表 24 上位

3

項目を除き正規従業員および非正規従業員の特徴的なキーワード

表 25 従業員区分別の頻出キーワード

8.5.2 考察および第三者評価

テキストマイニングの結果から, 非正規従業員の従業員満足度が

3

以上のグループに, 店 舗の改善に関して多くのカテゴリーのキーワードが認められた.このことは, 店舗運営に対す る視界の広さと働くモチベーションに関係があることを示唆している.つまり, 視界が広がること によって, 自身が創意工夫をし, 店舗全体に対して影響力を与えることができると認識した時 に顧客満足が向上すると解釈した.

この解釈の妥当性を確認するために, 第 6 章でインタビューをした飲食業界の実務者にも 視界の広さと働くモチベーションに関係があるという結果について, 納得感の有無をヒアリング した. 飲食チェーンの人事マネジャーB 氏は「視界を広げることにより, 働くモチベーションが 高まることに違和感がない」との見解を持っていた.人事マネジャーA 氏は両者の関係はある としながら, 「従業員満足度の低い層は組織が改善することに諦めていて, 高い層は組織へ の期待があるから意見を言っているのではないか」と述べている.一方, 業界経験の長いコン サルタント

D

氏からは, 「従業員満足度の低いスタッフは目の前の不満が強いと, 他の問題に 目が向かなくなる.従業員満足度が高いからこそ, 金銭などに不満がなく, 他の部分に視界を 広げられると考えるという順序が妥当である」とのコメントを得られた.

実務者の見解を踏まえると, 従業員満足度と視界の広さとの関係に相互作用があることは 分析結果と一致している.因果関係について, 「視界が広いから従業員満足度が高まる」,

「従業員満足度が高いから視界が広がる」のいずれの可能性も考えられる.視界が広がること によって, 自身のタスクの効率を高めるための改善策を考えることは職務充実化につながり

,

店舗運営に貢献しているという効力感が得られ, 従業員満足度が高まる.一方, 自身が店舗 運営に対して貢献しているという実感が得られると, 店舗の他の課題についても意識が向くよ うになり, 視界が広がっていくという好循環を生み出すことができる.

店舗運営の視点で考えれば従業員満足度は結果であり, それ自体のコントロールが難しい ため, 非正規従業員の視界を広げるほうが施策としては実現しやすい.例えば, マニュアル に基づく複数のタスクを覚えていくことを求めるだけではなく, 担当するタスクをどのように改善 していくのか, また, 後輩に伝えていくのかといった職務充実化への貢献を期待することで, 非正規従業員の視界を広げ, 内的要因である効力感を刺激することで, 働くモチベーション の高い店舗を実現していくことができる.

本章の分析およびインタビューの結果から, 非正規従業員の従業員満足度と視界の広さに 相互作用があり, 店舗運営に対する視界を広げることが非正規従業員の内的要因を刺激し,

働くモチベーションを高める可能性を示した.視界の広さが働くモチベーションに寄与すると いう先行事例はなく, 新たな内的要因の項目の可能性を見出すことができた.しかしながら, テキストマイニングによる分析結果の解釈についても, さらに多くのデータを集め, 研究の精 度を高めていく必要がある.

補論 2 人的資源管理の効果を予測するシミュレーションの開発

本章では, 店舗運営のヒントを店舗管理者やチェーン経営者へ伝えるため, 「システム・ダ イナミクス(SD: system dynamics)」を用いた店舗経営のシミュレーションを設計する.第

1

節で は, シミュレーション開発の意義について述べる.第

2

節では, 先行研究, 第

3

節では, 店舗 運営のモデル設計について説明する.第

4

節では分析方法を説明し, 第

5

節では,シミュレー ションの結果に対する考察を行い, 実務者より評価を得る.