I. 基礎調査
2. タイの食品産業および市場規模
(1)タイの食品産業の概況
タイではこれまで豊富な原材料と安価で良質な労働力という好条件を活かして、食品加 工産業が大きな発展を遂げてきた。特に 1980 年以降、日本市場での鶏肉製品、エビ製品等 に対する需要拡大を背景に、いわゆるアグロインダストリーを形成する食品輸出企業が育 った。また加工技術向上の背景として、日本企業の進出や生産委託による技術指導が大き く貢献したといえる。現在、日本市場のほか、米国、EU、アジア諸国、中近東諸国等に幅 広く加工食品を輸出しており、タイはアジアの食品加工センターの役割を担うようになっ ている。一方、タイ国内市場についてみると、乳製品やパンなど食卓の洋風化が進むとと もにファミリーレストラン、ファーストフードのような外食産業も急成長している。今後、
所得向上、食生活の多様化により、加工食品の国内市場は着実に拡大していくものと考え られる。
タイ食品産業の規模としては、国立統計局が 2001 年に公表した 2000 年の統計によれば タイの製造業者 2 万 550 社のうち食品製造業者は 3,089 社(タバコ製造業者を除く)であ り、2000 年の名目 GDP 付加価値額をみると、食品産業は 1,022 億バーツで、製造業全体の 13.3%を占めている。
現在、タイには多数の日系食品企業が進出しており、冷凍食品、農産加工品、インスタ ントラーメン、菓子類、飲料、調味料、化工でん粉など多岐に渡る品目を製造している。
さらにサポートインダストリーも充実しており、日本しょう油、みりん、小麦粉、パン粉、
日本野菜等が現地で入手できるほか、冷凍倉庫、輸送システム等のインフラが整っている。
主な事業活動は日本市場またはタイ国内市場への供給が中心であるが、AFTA 等、自由貿易 化が進む中で、タイを生産拠点として位置づけ、アセアン諸国、欧米諸国等の第三国に販 路を拡大している企業もある。
一方、近年、経済発展に伴うコストアップから、中国、ベトナム等のアジア諸国、南米 諸国等に対する価格面での競争力の維持がタイ食品産業の大きな課題となっている。米国 市場では南米諸国と、日本市場では中国との競争が激化している。こうしたことから、タ イの食品産業は一層の高品質化、高付加価値化を進めるため、技術力を向上しなければな らない状況となっている。
また世界的に消費者の安全性に対する関心が高まる中で、輸出先市場の要求に応じて、
食品の品質管理、衛生管理の向上を官民一体となって熱心に進めているところである。具 体的には輸出向け企業の多くは HACCP、ISO などを既に取得しており、またタイ政府は食品 の適性製造基準(GMP)を 2000 年に定め、2003 年 7 月以降、54 品目類の食品工場に対し、
その基準に適合することを義務付けており、タイ食品産業全体のボトムアップを進めてい る。
(2)食品産業の構造
①食品産業の概要
国立統計局の製造業調査( 2001 年公表)によると 2000 年のタイ国内の飲食料品製造業者数 は 3,089 業者であり、製造業全体の 15%を占める。業種別にみると、農産物加工(肉類、
魚介類、果実、野菜、油脂類の加工)が 872 業者、乳製品が 119 業者、穀類加工(製粉、
でん粉、調整飼料の製造)が 859 業者、その他食品が 1,002 業者、飲料が 237 業者となっ ている。
従業員数別の製造業者数でみると、穀類加工、その他食品に従業員 20 人未満の小規模業 者が多く、逆に農産物加工、そのうち水産加工分野に規模の大きい業者が多いことが伺え る。
業態別でみた場合、飲食料品製造業者の 26%が個人事業主、71%が法人、約 4%が国営、
協同組合、その他の割合となっており、製造業全体とほぼ同様の割合となっている。業種 ではその他食品に比較的個人事業主が多く、乳製品で国営企業、協同組合の割合が多い。
表 2‑1 従業員別の飲食料品製造業者数(2000 年)
単位:製造業者数
区分 20 人未満 20 人以上 合計
% % %
製造業全体 8,012 39% 12,538 61% 20,550 100%
飲食料品製造業 計 1,290 42% 1,799 58% 3,089 100%
食品加工 261 30% 611 70% 872 100%
肉類加工 80 56% 63 44% 143 100%
水産加工 86 23% 296 77% 382 100%
果実または野菜加工 83 31% 185 69% 268 100%
油脂製品 12 15% 67 85% 79 100%
乳製品 45 38% 74 62% 119 100%
乳製品 45 38% 74 62% 119 100%
穀類加工 402 47% 457 53% 859 100%
穀類ミルまたは製粉 362 55% 301 45% 663 100%
スターチ製造 9 18% 42 82% 51 100%
調整飼料 31 21% 114 79% 145 100%
その他食品 482 48% 520 52% 1,002 100%
ベーカリー製品 97 49% 99 51% 196 100%
ショ糖 26 24% 84 76% 110 100%
マカロニ、麺類および同等品 65 49% 67 51% 132 100%
その他食品 294 52% 270 48% 564 100%
飲料(アルコール飲料含む) 100 42% 137 58% 237 100%
醸造、アルコール蒸留 1 3% 32 97% 33 100%
ミネラルウォーター、ソフトドリ 99 49% 105 51% 204 100%
出所:国立統計局「Report of The 2001 Manufacturing Industry Survey」
表 2‑2 業態別の飲食料品製造業者数(2000 年)
単位:製造業者数
区分 個人事業 法人 国営企業、協同 合計
% % % %
製造業全体 5,248 26% 14,865 72% 437 2% 20,550 100%
飲食料品製造業 計 794 26% 2,181 71% 117 4% 3,089 100%
食品加工 232 27% 622 71% 18 2% 872 100%
肉類加工 73 51% 66 46% 4 3% 143 100%
水産加工 91 24% 291 76% 1 0% 382 100%
果実または野菜加工 67 25% 187 70% 13 5% 268 100%
油脂製品 1 1% 78 99% 0 0% 79 100%
乳製品 32 27% 67 56% 21 18% 119 100%
乳製品 32 27% 67 56% 21 18% 119 100%
穀類加工 110 13% 707 82% 44 5% 859 100%
穀類ミルまたは製粉 105 16% 519 78% 39 6% 663 100%
スターチ製造 2 4% 50 98% 0 0% 51 100%
調整飼料 3 2% 138 95% 5 3% 145 100%
その他食品 360 36% 613 61% 29 3% 1,002 100%
ベーカリー製品 107 55% 85 43% 4 2% 196 100%
ショ糖 14 13% 88 80% 8 7% 110 100%
マカロニ、麺類および同等品 80 61% 51 39% 1 1% 132 100%
その他食品 159 28% 389 69% 16 3% 564 100%
飲料(アルコール飲料含む) 60 25% 172 73% 5 2% 237 100%
醸造、アルコール蒸留 0 0% 30 91% 3 9% 33 100%
ミネラルウォーター、ソフトド 60 29% 142 70% 2 1% 204 100%
出所:国立統計局「Report of The 2001 Manufacturing Industry Survey」
②事業年数
飲食料品製造業者の事業年数をみると、10 年未満が 32%を占め、一方、30 年以上が 12%
となっている。製造業全体と比較すると、全体的に事業年数は長い。業種別にみると、伝 統的なタイの食品産業である穀類加工業者の事業年数が比較的長い。
表 2‑3 事業年数別の飲食料品製造業者数(2000 年)
単位:製造業者数
区分 合計 5 年未満 5 年〜9 年
% % %
製造業全体 20,550 100% 2,016 10% 5,795 28%
飲食料品製造業 計 3,089 100% 260 8% 751 24%
食品加工 872 100% 101 12% 223 26%
肉類加工 143 100% 12 8% 45 31%
水産加工 382 100% 63 16% 69 18%
果実または野菜加工 268 100% 22 8% 93 35%
油脂製品 79 100% 4 5% 16 20%
乳製品 119 100% 7 6% 44 37%
乳製品 119 100% 7 6% 44 37%
穀類加工 859 100% 52 6% 157 18%
穀類ミルまたは製粉 663 100% 26 4% 110 17%
スターチ製造 51 100% 7 14% 6 12%
調整飼料 145 100% 19 13% 41 28%
その他食品 1,002 100% 79 8% 235 23%
ベーカリー製品 196 100% 21 11% 43 22%
ショ糖 110 100% 8 7% 13 12%
マカロニ、麺類および同等品 132 100% 13 10% 33 25%
その他食品 564 100% 37 7% 146 26%
飲料(アルコール飲料含む) 237 100% 21 9% 92 39%
醸造、アルコール蒸留 33 100% 0 0% 15 45%
ミネラルウォーター、ソフトドリン 204 100% 21 10% 77 38%
区分 10 年〜19 年 20 年〜29 年 30 年以上
% % %
製造業全体 8,340 41% 2,793 14% 1,606 8%
飲食料品製造業 計 1,098 36% 622 20% 358 12%
食品加工 351 40% 134 15% 62 7%
肉類加工 46 32% 32 22% 8 6%
水産加工 168 44% 46 12% 36 9%
果実または野菜加工 104 39% 34 13% 14 5%
油脂製品 33 42% 22 28% 4 5%
乳製品 44 37% 17 14% 8 7%
乳製品 44 37% 17 14% 8 7%
穀類加工 293 34% 248 29% 111 13%
穀類ミルまたは製粉 199 30% 227 34% 101 15%
スターチ製造 24 47% 7 14% 8 16%
調整飼料 70 48% 14 10% 2 1%
その他食品 351 35% 189 19% 146 15%
ベーカリー製品 71 36% 46 23% 15 8%
ショ糖 40 36% 22 20% 26 24%
マカロニ、麺類および同等品 39 30% 27 20% 20 15%
その他食品 201 36% 94 17% 85 15%
飲料(アルコール飲料含む) 59 25% 34 14% 31 13%
醸造、アルコール蒸留 8 24% 4 12% 6 18%
ミネラルウォーター、ソフトドリン 51 25% 30 15% 25 12%
出所:国立統計局「Report of The 2001 Manufacturing Industry Survey」
③資本金
飲食料品製造業者の資本金については、資本金登録業者の割合は 60%で、そのうち 1,000
万バーツ未満の製造業者が全体の 64%を占めている。一方、1 億バーツ以上は 6%となって いる。業種別にみると、水産加工、ショ糖、ミネラルウォーターまたはソフトドリンク類 が他の業種に比較して資本金が大きい。
表 2‑4 資本金別の飲食料品製造業者数(2000 年)
単位:製造業者数、100 万バーツ
区分 計 資本金登録 <10 10−99 ≧100
% % % %
製造業全体 20,550 13,317 100% 8,317 62% 3,777 28% 1,223 9%
飲食料品製造業 計 3,089 1,865 100% 1,202 64% 548 29% 118 6%
食品加工 872 505 100% 232 46% 226 45% 50 10%
肉類加工 143 47 100% 32 68% 9 19% 7 15%
水産加工 382 258 100% 89 34% 143 55% 29 11%
果実または野菜加工 268 143 100% 86 60% 53 37% 4 3%
油脂製品 79 57 100% 25 44% 21 37% 10 18%
乳製品 119 78 100% 59 76% 18 23% 1 1%
乳製品 119 78 100% 59 76% 18 23% 1 1%
穀類加工 859 626 100% 486 78% 131 21% 11 2%
穀類ミルまたは製粉 663 486 100% 408 84% 77 16% 3 1%
スターチ製造 51 38 100% 17 45% 17 45% 4 11%
調整飼料 145 102 100% 61 60% 37 36% 4 4%
その他食品 1,002 523 100% 341 65% 145 28% 40 8%
ベーカリー製品 196 70 100% 30 43% 40 57% 1 1%
ショ糖 110 64 100% 24 38% 26 41% 14 22%
マカロニ、麺類および同等品 132 46 100% 26 57% 13 28% 7 15%
その他食品 564 343 100% 261 76% 66 19% 18 5%
飲料(アルコール飲料含む) 237 133 100% 84 63% 28 21% 16 12%
醸造、アルコール蒸留 33 15 100% 3 20% 1 7% 5 33%
ミネラルウォーター、ソフトドリ 204 118 100% 81 69% 27 23% 11 9%
出所:国立統計局「Report of The 2001 Manufacturing Industry Survey」
④外国からの投資状況
外国からの投資を有する飲食料品製造業者数の割合は 6.6%となっており、製造業全体の 12.1%と比較するとその割合は小さい。また、国別の投資状況については、日本が最も多 く 38%を占め、次いで、台湾、EU、中国の順となっている。業種別でみた場合、水産加工、
果実または野菜加工で外国投資を受け入れている業者数が多く、日本からの受け入れが最 も多い。さらに日本からの投資も約 4 割強がこの分野に投資されており、この業種が最も 多い。またその他食品(マカロニ、麺類および同等品、ベーカリー製品、ショ糖)の分野 でも日本からの投資受け入れが比較的多い。その他の国の状況としては EU の醸造またはア ルコール蒸留分野への投資の割合が大きい。
表 2‑5 飲食料品製造業者における国別投資状況(2000 年)
単位:製造業者数
合計 日本 韓国 台湾 シ ン ガ ポ ー
区分
% % % % % 製造業全体 2,488 100% 978 39% 77 3% 587 24% 92 4%
飲食料品製造業 計 203 100% 78 38% 9 4% 26 13% 16 8%
食品加工 88 100% 43 49% 0 0% 20 23% 7 8%
肉類加工 15 100% 8 53% 0 0% 0 0% 0 0%
水産加工 35 100% 12 34% 0 0% 9 26% 6 17%
果実または野菜加工 32 100% 23 72% 0 0% 10 31% 0 0%
油脂製品 6 100% 0 0% 0 0% 1 17% 1 17%
乳製品 7 100% 1 14% 0 0% 0 0% 0 0%
乳製品 7 100% 1 14% 0 0% 0 0% 0 0%
穀類加工 37 100% 6 16% 9 24% 2 5% 3 8%
穀類ミルまたは製粉 12 100% 1 8% 9 75% 0 0% 3 25%
スターチ製造 6 100% 3 50% 0 0% 0 0% 0 0%
調整飼料 19 100% 2 11% 0 0% 2 11% 0 0%
その他食品 46 100% 27 59% 0 0% 4 9% 6 13%
ベーカリー製品 15 100% 9 60% 0 0% 2 13% 4 27%
ショ糖 13 100% 8 62% 0 0% 0 0% 0 0%
マカロニ、麺類および同等品 9 100% 8 89% 0 0% 0 0% 1 11%
その他食品 9 100% 2 22% 0 0% 2 22% 1 11%
飲料(アルコール飲料含む) 25 100% 1 4% 0 0% 0 0% 0 0%
醸造、アルコール蒸留 12 100% 0 0% 0 0% 0 0% 0 0%
ミネラルウォーター、ソフトドリ 13 100% 1 8% 0 0% 0 0% 0 0%
中国 米国 EU その他
区分
% % % %
製造業全体 153 6% 94 4% 276 11% 231 9%
飲食料品製造業 計 9 4% 17 8% 28 14% 21 10%
食品加工 2 2% 3 3% 5 6% 9 10%
肉類加工 0 0% 2 13% 5 33% 0 0%
水産加工 0 0% 1 3% 0 0% 7 20%
果実または野菜加工 0 0% 0 0% 0 0% 0 0%
油脂製品 2 33% 0 0% 0 0% 2 33%
乳製品 0 0% 0 0% 0 0% 6 86%
乳製品 0 0% 0 0% 0 0% 6 86%
穀物加工 5 14% 3 8% 8 22% 1 3%
穀物ミルまたは製粉 0 0% 0 0% 0 0% 0 0%
スターチ製造 0 0% 0 0% 3 50% 0 0%
調整飼料 5 26% 3 16% 5 26% 1 5%
その他食品 2 4% 2 4% 4 9% 1 2%
ベーカリー製品 0 0% 0 0% 0 0% 0 0%
マカロニ、麺類および同等品 0 0% 0 0% 0 0% 0 0%
その他食品 2 22% 2 22% 0 0% 0 0%
飲料(アルコール飲料含む) 0 0% 9 36% 11 44% 4 16%
醸造、アルコール蒸留 0 0% 0 0% 9 75% 3 25%
ミネラルウォーター、ソフトドリ 0 0% 9 69% 2 15% 1 8%
出所:国立統計局「Report of The 2001 Manufacturing Industry Survey」
⑤投資委員会による恩典付与
飲食料品製造業におけるタイ国投資委員会の恩典付与状況をみると、恩典を有している製 造業者の割合は全体の7%となっており、製造業全体と比較するとその割合は小さい。ま た、業種別にみると食品加工、特に油脂製品製造において恩典ありとする割合が大きい。
表 2‑6 飲食料品製造業におけるタイ国投資委員会の恩典付与状況(2000 年)
単位:製造業者数
区分 全体 恩典なし 恩典あり
% % %
製造業全体 20,550 100% 18,340 89% 2,210 11%
飲食料品製造業 計 3,089 100% 2,875 93% 215 7%
食品加工 872 100% 726 83% 146 17%
肉類加工 143 100% 125 87% 18 13%
水産加工 382 100% 323 85% 59 15%
果実または野菜加工 268 100% 224 84% 44 16%
油脂製品 79 100% 54 68% 25 32%
乳製品 119 100% 113 95% 6 5%
乳製品 119 100% 113 95% 6 5%
穀類加工 859 100% 830 97% 29 3%
穀類ミルまたは製粉 663 100% 650 98% 13 2%
スターチ製造 51 100% 47 92% 4 8%
調整飼料 145 100% 133 92% 12 8%
その他食品 1,002 100% 971 97% 32 3%
ベーカリー製品 196 100% 187 95% 10 5%
ショ糖 110 100% 104 95% 6 5%
マカロニ、麺類および同等品 132 100% 123 93% 9 7%
その他食品 564 100% 557 99% 7 1%
飲料(アルコール飲料含む) 237 100% 235 99% 2 1%
醸造、アルコール蒸留 33 100% 33 100% 0 0%
ミネラルウォーター、ソフトド 204 100% 202 99% 2 1%
出所:国立統計局「Report of The 2001 Manufacturing Industry Survey」
⑥輸出状況
飲食料品製造業者のうち、製品を輸出している業者の割合は全体の 22%となっている。
特に、食品加工製造業者の割合が高く 38%となっており、そのうち果実または野菜加工、